先恋
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先恋〜さよなら〜
見つめ合う二人、沙奈は今にも泣きそうな、陸太は何処か冷たい眼差しで互いを見る。
「やっぱり、貴方だったんですね」
沙奈は目を細め、頷く。
「…瑞木さん…」
陸太が沙奈に歩み寄る。
「…このペンダント…ちゃんと持っててくれたんですね…、僕もちゃんと、ほら、」
陸太も、ペンダントを沙奈に見せる。沙奈は其れを聞いても、先程の陸太の行動を思い出し、問わずには居られなかった。
「…ねぇ、何で…何でさっき、それ…っ‼︎」
沙奈はそこまで言って、目を見開き、座り込んだ。身体全体が…心が凍るような感覚に侵される。陸太を見ることが…出来なくなった。何も言えなくらるような…冷たい目…
「…もう、終わりにしましょう、二人が出会った、この場所で…」
陸太の声は、その目同様、酷く冷たかった。何かを…別れを、決意した様にも感じられた。そして、陸太の言う別れを、沙奈も理解した。沙奈は首に掛けたペンダントを隠す様に手で覆い、後退りをした。
「瑞木さん、それを僕に渡して下さい。この場で、二人の出会いを…あの日を無かった事にしましょう、それで全てが解決します。この…二つのペンダントはもう、苦しさを感じさせる物に過ぎません。これさえ無ければ、胸を痛めることもない。貴方と出会ったことは、無かった事になるんです。だから、それを僕に渡してください」
陸太の目は少しずつ光を失い、ついには、黒く、黒く、一層冷たい目に変わった。その冷たい目をした陸太は、もう陸太でないように、沙奈には感じられた。
「…嫌…」
「…早く、渡してください、」
「…嫌!」
「…早くしろ…」
陸太が少しずつ、沙奈に近付く。沙奈は後退りをするも、公園周りの柵で逃げ場が無くなる。
「…もう、要らない。そんな物…」
陸太の言葉を聞き、沙奈は、首からペンダントを外し、それを握り締めると、
「…なら、これでっ!」
それを投げ捨てた。宙をまったそれは、遠くの草原に落ちていった。…と、
「…っ!」
沙奈が陸太の隣を走り抜け、山道に入っていく。
「…石でも投げて騙したってことか…」
陸太はそれに気付き、沙奈を追う。
「…ハァ、ハァ、ハァ、ハッ…ハァ…」
(…覚えてる、陸太君と初めて会ったあの場所、陸太君の…陸太君と私の秘密の場所…)
沙奈はただ全力で走った。そして、あの日の様に、視界が開ける。その空間が目に入る。
「…………___、」
涙が溢れた。分からない、何故かなんて分からない。それでも、涙が溢れた。
「…う…うぅ……、」
いくら拭っても止まらない涙は、ただ、沙奈の服を、地面を………そして、後悔で凍り付いていた陸太の心を優しく濡らした。
「……ぅぅ…」
グスンと鼻を鳴らし、また、涙を拭う。ペンダントを握り締め、ただ、涙を流した。
「…瑞木さん」
沙奈はドキンとする。陸太が怖かった。二人の思い出が消えるのが、怖かった。
「…や、だよ……何も失いたく無いよ!」
陸太は背後から、沙奈を強く抱き締めた。
「…っ⁉︎⁉︎」
「…瑞木さん…、瑞木さん、瑞木さん……」
陸太の力が強くなる。
「…りく……た…く…」
沙奈の体は、陸太を恐れていた事から、まだ、震えていた。陸太に抱き締められても、あの冷たい目が…頭から離れなかった。
「…離し………」
「…これで、最後です。」
陸太はそう言い、沙奈の前に座ると、何時もの優しい目でそっと微笑み、沙奈の唇に自らの唇をそっと、優しく重ねた。
「‼︎り……んっ…」
沙奈の体がピクリと反応するも、沙奈自身、自分から陸太を抱き締めた。
「…好き、好き…っ‼︎‼︎」
沙奈は陸太を強く、強く抱き締めた。
「…瑞木さ…」
「…好きなの…離れたく無い‼︎大好き‼︎大好きだからぁぁっ‼︎」
沙奈は子供の様に泣きじゃくった。陸太が離れない様、強く抱き締めた。陸太も沙奈を抱き締めた………。
「…ぅ…ん…」
しばらくして、泣き止んだ沙奈は、陸太に背中を摩られているうちに、眠ってしまった。陸太は自分に言った。「お前は何処までも卑怯な奴だから、勝手に終わらせるんだ。」と。そして、自分のペンダントを外すと、それも、沙奈の首に掛けた。
「…さよなら、沙奈さん、」
最後に眠る沙奈にそっと口付けをし、陸太は立ち去った。
山道を下る。もう、会えない。会うことは許されない。だから、沙奈が思い出を手放したく無いのなら、自分だけでも手放してしまえ…、陸太は目を細める。
__この…………卑怯者……。
山道を下り、公園に出る。最後にキスなんてするもんじゃ無い。沙奈はきっと、起きたら目の前に陸太が居ると期待するだろう。一人にされたとしたら…どれだけ苦しむだろう?陸太は拳を強く握った。
「…何で…だよ………好きだったんだ…両思いだったんだ…………何が悪いんだよ……教師と生徒だからって、何が悪いんだよ…………何でだよ、何で……クソ…クソッ、クソッ!クソッ‼︎」
陸太は自分の頭をガリガリと搔きまわしなが
ら、泣いた。
「何でだよ‼︎良いだろうが‼︎何でだよ‼︎」
認めたくなんか無かった。ただの教師と生徒になんて、戻りたくは無かった。
「うぅ…ああぁあぁァァアアっっ‼︎‼︎‼︎」
後悔は後悔のまま、残り続ける。陸太はそれを感じた。もし、卒業まで伝えていなければ…、我慢していれば、沙奈との未来も夢では無かったはずだ。我慢ができなかった自分は…まだまだ、子供だ____と。
「ん……」
沙奈は陸太がいると信じている事からの安心感で、心地よく、眠っていた。そして、その言葉は、優しく、口から漏れる。
「陸太…君………好き……」
もう、其処には、誰も居ないのに____。
後書き
最初のご挨拶抜き、すみません、
如何だったでしょうか?w
沙奈さんは目を覚ました後、何を考えるんでしょうか?
これからどうなるのか、此れからも二人を宜しくお願いします!
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