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真田十勇士

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巻ノ六十五 大納言の病その五

「その様に」
「ではな、ではな」
「はい、今後も」
「宜しく頼む」
「都において」
「何かあれば来てくれ」
 その都度というのだ。
「何でも話そう」
「そうして頂けるのですか」
「父と子じゃ」
 義父と娘婿であろうともだ、大谷は幸村に話した。
「だからな」
「何でもお話して頂けますか」
「それが親子ではないのか」 
 微笑みさせしての言葉だった。
「だからな」
「そうして頂けますか」
「息子達にもそうしておるしな」
 大谷の実の、だ。彼にはそうした息子もいるのだ。
「関白様、そして佐吉にもな」
「治部殿にもですか」
「あ奴はまさに竹馬の友じゃ」
「近江の頃からのお付き合いと聞いていますが」
「そうじゃ、思えば長い付き合いじゃ」
 笑っての言葉だった、ここでも。
「お互い幼い頃よりじゃからな」
「そのお付き合い故に」
「わしはあ奴にも何でも話す」
「そうされていますか」
「常にな」
「そうなのですか」
「他の者には話さぬ」 
 心を割って全てはというのだ。
「御主達だけじゃ」
「そうなのですか、では」
「また何かあれば来てくれ」
「そうさせて頂きます」
「わしからも呼ぶことがあるかも知れんしな」
 こうも述べた大谷だった。
「宜しく頼むぞ」
「では」
「これからも親子としてな」
「共に」 
 二人は誓い合いもした、この日は大坂に留まり次の日に都に戻ることにした、そのことを決めてからだった。
 一行は大谷の屋敷で稽古に励んだ、木刀や槍を手に縦横に剣術や槍術、それに忍術の鍛錬をするが。
 幸村は大谷と槍術の稽古をした、幸村は稽古の時も両手にそれぞれ一本ずつ槍を持ち縦横に振るう。その槍を一本の槍で受けてだった。
 大谷は幸村にだ、確かな声で言った。
「うむ、見事」
「よいですか」
「わしでは受けるのが手一杯じゃ」
 まさにというのだ。
「最早な」
「はい、殿の槍はです」
「まさに天下一かと」
「我等もそう思いまする」
 二人の稽古を見ていた十勇士達も言う。
「我等も殿には敵いませぬ」
「槍ではとてもです」
「それぞれの武芸ならともかく」
「槍と馬術ではです」 
 この二つの武芸ではというのだ。
「とても敵いませぬ」
「そして軍学についてもです」
「殿は孫呉の兵法に通じておられ」
「学問も立派なので」
「我等ではとてもです」
 敵わないというのだ。 
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