Blue Rose
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第三十話 幸せの影その十
「貴女のその信頼に」
「信頼ってそうしたものなのね」
「そう思うわ、重いものなのよ」
「重いものだけに大事にしないといけないんだね」
「そうね、ただ重く考えることもね」
「ないの」
「重しみたいにね、裏切ったり騙したりしないこと」
大事なことはというのだ。
「そうしなかったらいいのよ」
「そういうものなの」
「私が思うにね、じゃあトルコライスを食べて」
「今からね」
「楽しみましょう」
こうしてだった、二人でトルコライスを食べるが。
トルコライスを食べてだ、優子はまた笑顔になって言った。
「これもいいわね」
「美味しいよね」
「トルコ料理とは違うけれど」
「どうしてトルコの名前が付くのかしらね」
「そこがわからないわね、けれどね」
「それでもね」
「美味しいわね」
「とてもね」
このことは確かだというのだ、名前の由来はわからずとも。
そのトルコライスをスプーンで食べつつだ、優子は優花にこうも言ったのだった。
「長崎らしい料理ね」
「トルコなのに?」
「洋食もあるってことがよ」
「そのことが長崎らしいの」
「洋食自体がね」
「あっ、長崎は西洋もあるから」
「出島にグラバー園、それに蝶々夫人ね」
グラバー園がある場所を舞台としている歌劇もというのだ。
「こうしたものもあるから」
「だからカステラも長崎らしくて」
「このトルコライスもね」
「長崎らしいっていうのね」
「こう思ったわ、美味しいわ」
明るい笑顔でだ、優子は優花に言った。
「しかも二人で食べられるし」
「私と」
「それもいいわ、それとね」
「それと?」
「後でチリンチリンライスも食べるけれど」
やはり長崎名物のそれもというのだ。
「まずはね」
「このトルコライスを楽しむのね」
「そうしましょう、心からね」
「それじゃあね」
優花も笑顔で頷いてだった、そうして彼女もトルコライスを食べるのだった。そうしながらこうしたことも言ったのだった。
「私何か」
「何か?」
「もう一杯食べられそう」
そのトルコライスをというのだ。
「そんな感じよ」
「そうね、私もね」
「姉さんもなのね」
「何かね」
食べながらだ、優子は妹に言葉を返した。
「いけそうよ」
「美味しいからね」
「そうね、実は私大阪に行ったらよく自由軒に行くけれど」
難波にある洋食屋だ、織田作之助の小説『夫婦善哉』にも出て来る。
「そこの名物カレーもね」
「二杯食べられるの」
「よく食べるわ」
そのカレーをというのだ、最初から御飯とルーを混ぜてその上に生卵を乗せている独特のカレーである。
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