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Blue Rose

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第三十話 幸せの影その九

「いられなかったわ」
「そうなのね」
「人は一人じゃいられないっていうけれど」
「そうね、一人じゃね」
「どうにもなれないことがあるわよね」
「そのこともわかったのね」
「あの時にね」
 優子のその顔を見て微笑んで言った。
「わかったわ」
「私は逃げようかとも思ったけれど」
「けれど逃げなかったじゃない」
 やはり微笑んで言った。
「私に言ってずっと傍にいてくれたじゃない」
「逃げたら駄目だって思ったから」
 逃げようと思いつつだ。
「それでよ」
「だからなのね」
「そうしなかったのよ」
 あの時そうしたというのだ。
「結局ね」
「そうなのね」
「そうしたの、だからね」
「それじゃあ」
「そうしたわ」
 この判断のことも話したのだった。
「あの時逃げていたら私はここにいなかったわね」
「私と一緒に」
「逃げたらね」
 その時はというのだ。
「何もかもが終わっていたら、家族やお友達を切り捨てる様な人は」
「逃げる様な人は」
「誰にも信じられなくなるわ」
「そうなるのね」
「そう、そうなっていたわ」 
 優子はここでも遠い目で語った。
「私もね」
「人を裏切るから信じられなくなるのね」
「そうよ」
 まさにそれが為にというのだ。
「誰からもね」
「そういうことね」
「だから龍馬君は信じられるのよ」
 優花を裏切らない、絶対にそうだからだというのだ。
「あの子はね」
「そして姉さんもね」
「私は違うでしょ」
 自分のことについてはだ、優子はくすりと笑って返した。
「逃げようとしたから」
「逃げなかったじゃない」
「実行しなかったからっていうのね」
「人は弱いものだからね」 
 ここでこうも言った優花だった。
「迷ったりよくないことを考えたりするじゃない」
「だからっていうの」
「そう考えたりすることもあるわ」
「それはいいのね」
「私だってよくないこと考えたりするし」
 優花にしてもというのだ。
「姉さんや龍馬に対してね、けれど姉さんは私の傍にいてくれたじゃない」
「そうするって決めて実際にそうしたからっていうのね」
「信じられると思うわ」
「そうなの」
「思うことはあっても」
 それでもというのだ。
「実行しなかったらいいじゃない」
「そういうものなのね」
「だから私姉さんを信じるわ」
「そうなのね」
「ずっとね」 
 今だけでなく、というのだ。
「そうするわ」
「じゃあ私はそれに応えないといけないわね」
 優子はくすりと笑って優花に答えた。 
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