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真田十勇士

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巻ノ六十三 天下統一その八

「それは甲斐姫もじゃ、またその甲斐姫を止めておるがじゃ」
「それでもですな」
「どうにもですな」
「我等も攻めていますが」
「それでもですな」
「うむ、城の壁も門も越えられぬ」
 見ればその前で北条の軍勢の見事な守りに防がれている、島はその状況を見て軍監として言った。
「成田殿も見事じゃ」
「元々三方を沼や田に囲まれていますし」
「滅法攻めにくい城ですし」
「守るべき場所に兵を集め槍や弓矢、鉄砲で寄せつけませぬ」
「甲斐姫は封じていますが」
 幸村によってだ。
「しかしですな」
「これ以上は攻められませぬな」
「風魔の者達も来ておりますし」
「どうにも」
「うむ、これではな」
 どうにもとだ、島は言った。
「中々攻められぬ、しかしじゃ」
「攻め落とさねばなりませぬ」
「それではですな」
「そうじゃ、正門に兵を集めよ」
 攻める兵達をというのだ。
「わしも行く、出来れば本陣から桂松殿か源三郎殿に来てもらい」
「そして、ですな」
「そのうえで一気に攻める」
「数を頼みに正門の中まで押し入る」
「そうしますな」
「そうじゃ、この夜か遅くても朝飯を食った後でじゃ」
 一旦休んでもというのだ。
「城の中まで押し入るぞ」
「はい、では」
「集中的に正門を攻めましょう」
「飯を食った後も」
「まずは押し入りましょう」
「飯はかんぴょうや干米じゃ」 
 そうしたものを口に入れてというのだ。
「とにかくすぐに食って腹に溜めよ」
「そして、ですな」
「引き続き攻める」
「休まずに」
「城に攻め入り確かなものとなってからじゃ」
 攻める勢い、それがだ。
「休むぞ、よいな」
「はい、では」
「まずは攻めましょうぞ」
「朝になっても休まずに」
「食うのも急いで」
「立ったまま食え」
 その干し米やかんぴょうをというのだ。
「わかったな」
「わかり申した」
 兵達も応える、そしてだった。
 島はあくまで攻め続けた、実際にそうした飯を食ってまた攻めようとしたがそこで、だったのである。使者が来たのだ。
 石田はここまで話してだ、使者に言った。
「源次郎殿もな」
「まだですか」
「朝になったが」
 空は白くなっている、しかしというのだ。
「戦っておろう」
「さすれば」
「うむ、わしは納得した」
 秀吉の命だからだ。
「ならばな」
「はい、それではですな」
「左近や源次郎殿にも伝えよ」
「さすれば」
「戦を止める法螺貝も鳴らすからな」
 それもするというのだ。 
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