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真田十勇士

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巻ノ六十三 天下統一その七

 知らせは忍城にも来た、その時石田達はというと。
 夜通り戦ったが結局引き分けに終わり戻っていた、それでだった。
 本陣で朝飯を摂っていたがだ、その報を聞いて言った。
「そうか、終わりか」
「はい、そうです」 
 使者は石田に答えた。
「小田原は開城となりました」
「そうであるか」
「ですから」
「わかっておる、関白様のお言葉じゃ」 
 それならばとだ、石田も答える。
「ではな」
「その様に」
「それでじゃが」 
「はい、忍城の方にも使者が行っております」
「わかった、昨夜まで激しい戦を繰り広げておったが」
「そう聞いておりますが」
「その時のことを話そう」
 ここで石田は使者に昨夜、もっと言えばつい先程まで行われていた戦のことを話した。その戦はというと。
 幸村と甲斐姫は激しい一騎打ちを行っていた、幸村は二本の槍を次から次にと繰り出すがその攻撃をだ。
 甲斐姫は薙刀で防ぎ隙を見て反撃を繰り出す、そうして百合二百合と行い闇夜の中に激しい銀の火花を撒き散らしていた。
 十勇士達はその周りで風魔の者達と戦っている、風魔の者達は北条の兵達と共に十勇士に向かうが彼等は数の劣勢を個々の武勇とまとまった動きで対していた。 
 それを見てだ、軍全体の軍監を務める島は周りの者達に言った。
「十勇士達も強くそしてな」
「はい、源次郎殿ですが」
「相当なお強さですな」
「甲斐姫もそうで」
「互いに一歩も譲りませんな」
「まさにじゃ」
 島は二人の闇夜の中での一騎打ちを見て言う。幸村は赤い鎧兜に馬具、服に馬まで同じ色であり陣羽織もだ。
 対する甲斐姫は白だ、鎧兜も馬具も服も馬も。夜の闇の中に二人の姿が見事に浮かび上がっている。その二人を見て言う。
「あの者達はな」
「龍虎ですな」
「若しくは鬼と鬼ですな」
「そうした戦ですな」
「まさに」
「うむ、人の戦を超えておる」
 島はこうも言った。
「源次郎殿はただ采配だけではないな」
「武芸十八般の方と聞いていましたが」
「噂通りですな」
「両手で二本の槍を一本ずつ使いながら馬にも乗る」
「それも万全に」
「馬術も見事じゃ」
 それも見て言うのだった。
「姿勢がいささかも崩れぬ」
「手を使わず馬に乗っておられるというのに」
「それでもですな」
「姿勢が全く崩れませぬ」
「それでいて馬を見事に操っておられます」
「あれだけの馬術の持ち主は天下にもそうはおらぬ」
 幸村は馬術も優れているというのだ、そして。
 それは幸村だけでなくだ、甲斐姫もだ。島は甲斐姫についても言及した。
「甲斐姫も同じじゃ」
「その源次郎殿と互角に戦う」
「あれだけ強い方は天下にそうはおられませぬが」
「前田慶次殿位でしょうか」
「あそこまでの武芸者は」
「剣なら上泉殿か」
 この者の名前をだ、島は出した。
「足利義輝公もお強かったというが」
「そうした剣豪の方もおられますが」
「槍は、ですな」
「前田慶次殿ですが」
「真田殿もですな」
「見事じゃ」
 その武芸はというのだ。 
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