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魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者

作者:niko_25p
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第十八話 派遣任務 4

和やかな雰囲気で夕食が終わり、ゆったりとした時間が流れる。

そして、お風呂となるが……

魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。





アスカside。

子狼の刃に身の危険を感じていたオレだが、無事に後かたづけが終わった。

いつくるか分からないアルフさんを警戒していたけど、安全が確保されたの見てオレはホッと一息入れる事ができた。

ちょっと時間が出来たし、どうするかな?

そんな事を考えていた時だった。

「さて、サーチャーの様子を監視しつつ、お風呂済ませとこか」

八神部隊長の言葉に、オレ達ははいと答えた。

けど、このコテージに風呂なんてあったか?シャワールームも無かったように見えるんだけど。

「あー。ただ、ここお風呂無いし、湖で水浴びって季節でもないし」

コテージのオーナーであるアリサさんがそう言ってきた。

なるほど。ならオレに妙案あり!

って事で、サッと手を上げる、。

「はい、提案があります!シグナム副隊長がレバンティンさんを本気で燃やして湖に突っ込めば大丈夫じゃないッスか?」

そーすれば、でっかい露天風呂だ。うん、我ながらいいアイデアだ!

と思っていたら……

「アスカ、お前は私を何だと思っている?」

なんか、シグナム副隊長が腕を組んでオレを見てるよ。

チト怖い。

「えーと、瞬間湯沸かし器……っ痛て!」

ゴチンとオレの頭にゲンコツが落ちてきた。

シグナム副隊長!最近オレに遠慮ないッスよね?オレも無いけど!

「ほらぁ~、すぐ沸騰するじゃないですかぁ~」

頭を押さえて涙目で言うと、周りから笑い声がわき上がった。

うん。とりあえず笑いは取れたので良しとしよう。

「まあ、シグナムは沸点が低いからな」

ヴィータ副隊長がおかしそうに笑うが……

『『『『『ヴィータ副隊長がそれを言いますか』』』』』

念話で思わず呟くオレ達フォワード。

ある意味、前衛部隊が一つになった瞬間だ。

「さすがにそれはマズイやろなぁ。できるとは思うけど」

おい、部隊長。流石にその感想はどうかと思いますよ?

「あ、主はやてまで…」

ほら、シグナム副隊長、軽く凹んじゃったよ。

「まあまあ、シグナム温泉はまたの機会と言う事で」

シャマル先生、その慰め方、完全に方向性間違ってます。

「誰が温泉か!」

キレかかるシグナム副隊長だったが、なんか強引にシャマル先生とヴィータ副隊長に宥めさせられてる。

八神家のオレ的ポジションってシャマル先生かと思ったけど、シグナム副隊長も中々だな。

何となく腑に落ちる。

などと楽しく騒いでると、

「そうすると…」

「やっぱり」

「あそこですかね?」

「あそこでしょう」

なんか、現地協力者の方と隊長達で解決方法を見つけたみたいだ。

どうするんだろと見ていたら、

「それでは六課一同、着替えを持って出発準備!」

高町隊長が号令をかけた。何か、すげえ嬉しそうな顔してますけど?

「これより、市内のスーパー銭湯へ向かいます」

ハラオウン隊長も、楽しそうに言う。

「スーパー……」「銭湯?」

スターズの二人が首を捻る。ミッドじゃスーパー銭湯ってなかったっけ?

「アスカさん、スーパー銭湯って何ですか?」

エリオも知らないらしく、オレに聞いてくる。

「スパリゾート、まあ、お金を払って入るお風呂の事だよ。広くて気持ちいいぞ」

「「へぇ~」」

エリオとキャロが、そうなんだ、と納得した。

「って、一同!?」

ちょっとスルーしそうになったけど、オレはその事に気づいてエッ?となった。

スターズはすでに準備が終わってるし、エリキャロもハラオウン隊長似に手伝ってもらいながらほぼ出発準備は終わってる。

隊長達も準備万端だ。

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

「どうしたの、アスカ君?」

高町隊長がキョトンとした顔で聞いてきた。

ああ、年上なのに凄いカワイイなあ……じゃない!

「ここを空っぽにしちゃマズイでしょ?入浴中にもし反応があったら素っ裸で飛び出すつもりですか?」

オレは飛び出せるし、そうなったら嬉しいけどね!

「「「「「「あ……」」」」」」

部隊長始め、隊長、副隊長、医務官が声をあげちゃったよ。

それと同時に、フォワード……って言うか、スバルとティアナから「空気読めこのバカ!」オーラがザクザク突き刺さってきやがる。

「うーん、ちょっとくらい大丈夫だと思う「オレが残ります!」え?」

八神部隊長が言い掛けたのを、オレは割り込んで遮った。

「言い出しっぺはオレなんで、皆さんは入ってきてください」

隊長達は里帰りな訳だし、友達とゆっくり話をしたいだろうからな。

人情的に、ノンビリしてもらいたいし。ならオレが留守番するしかないよな、これは。

「ダメだよ、アスカ。それじゃ…」

「いいんですよ。行ってきてください」

ハラオウン隊長がものすごく申し訳なさそうに言ってくるのを、オレは大丈夫と言い切った。

優しい人だなぁ…多分、それじゃ不公平になるって言いたかったんだろうな。

「ほら、現地のみなさんと一緒に楽しんできてください。ロストロギア自体は危険性が無いんでしょ?だったら大丈夫です。反応があったら一足早く行って足止めしてますから」

オレは一気に畳みかける。

ハラオウン隊長って、結構こういう言葉の攻勢に飲み込まれやすいからな。

「じゃあ、ボクも残り…」

「お前は行け、エリオ」

オレは言い掛けたエリオの頭をグワシッと鷲掴みにした。

「え?えぇ!?」

訳が分からずに、エリオが戸惑う。

オレはそんなエリオをスバルに預け、キャロに耳打ちした。

「キャロ。エリオと一緒に風呂入ってこい。まだお前ら少し固い感じがするから、裸の付き合いで色々話をするんだ。チャンスがあったら、エリオを女湯に引きずり込め」

そう。

まだエリオとキャロの間に、ちょっとよそよそしさをオレは感じていた。

オレといる時はいいんだが、二人だけになると、どこか遠慮しているように思えたんだ。

だから、この風呂は良い機会だ。

……最後の女湯に引きずり込むって言うのは…ハラオウン隊長なんかも、多分エリオと一緒に風呂に入りたいんじゃないかというオレの気遣いだ。

決して面白そうだからでは無い!…多分ね。

「はい!分かりました!」

キャロは元気よく答え、ピッと敬礼した。

「健闘を祈る」

オレも、返礼をする。

そのやりとりを、不安そうな顔で見るエリオ。感のいいヤツめ。

しかし、気づいた時には遅いだろう!せいぜいスキンシップを楽しんできたまえ!

コンチクショウ!本当ならオレがそれしたかったよ!

「じゃあ、お言葉に甘えて…」

なんか、まだ申し訳なさそうにいているハラオウン隊長。

ほんと、こんなに気を使ってくれる隊長たちに囲まれてオレは幸せ者だよ。

「まあ、少し骨休めですよ、オレも。男には、一人でいたい時もあるので」

適当な事を言いながら、オレはみんなを見送った。

二台の車がコテージから離れて行く。

「さすがに、みんな居なくなると静かだな」

オレは静まりかえったコテージを見て、そう呟いた。

テーブルの上を見てみると、フリードが丸まって寝息を発てている。

ネコか、こいつは。

「ラピ、監視を怠るなよ」

《了解です》

オレはラピにモニター監視を頼んでイスに座る。

反応があれば、すぐにデバイスに情報が飛ぶから、モニターとにらめっこをする必要はない。

さて、どうやって暇潰しをしようかな?





outside

静寂に包まれたコテージで留守番する一人と一匹。

アスカはふと、テーブルの上に置いてあるノートパソコンを見た。

アリサが自由に使っていいよ、と置いていった物だ。

ネットもできるから、とも言っていた。

「ネットね」

アスカはパソコンを立ち上げ、ブラウザーを起動させた。

そして、あるワードを入力して検索をかける。

すぐにその結果が表示された。

「……これの何件かは魔法絡み何だろうか?」

ひどく深刻そうな顔で呟くアスカ。当然答えは返ってこない。

その時だった。

キィ……

コテージの扉が開いた。

「!」

バッと身構えるアスカ。

「ん、何かあったか?」

中に入ってきたのは、先ほど出かけた筈のシグナムだった。

「え?いえ、何でもありません!えーと、何か忘れ物でもありましたか?」

アスカはブラウザーを閉じてシグナムに尋ねる。

すると、シグナムはフッと小さく息を吐いた。

「いや、今回はお前が正しいと思ってな。私も残る事にした」

それを聞いたアスカが大いに慌てる。

「そんな!オレの事は気にしなくていいですから、みなさんと行ってきてくださいよ!副隊長も、こっちの世界は久しぶりなんでしょう?」

アスカとしてみれば、旧友との交流をやってもらいたいから気を利かせたつもりだった。だが、

「本来なら、私やヴィータがそれを言わなくてはいけない事だったんだが、少し気が緩んでいたようだ。それに気づかせてくれたお前には、むしろ感謝している、だから気にかけるな」

シグナムはそう言って、少し笑った。その大人の笑みにドキリとするアスカ。

(やっぱり、シグナム副隊長って美人さんだよな)

訓練では鬼だけど、と心の中で思う。

「ところで、そいつを使わせてもらっていいか?」

シグナムがパソコンを指す。

「え?あぁ、はい、どうぞ。オレはもう終わったんで」

アスカがシグナムに席を譲る。

「そうだ。高町隊長の御実家でもらってきた、コーヒーか紅茶、飲みますか?」

「ああ、紅茶をいただこうか」

「了解ッス」

アスカはカップを用意しはじめる。

その間に、シグナムはブラウザーを立ち上げた。

そして検索ボックスをダブルクリックして、過去ログを見る。

普段はアリサが使っているのだろう。

ファッションやグルメ情報と言ったワードが次々と出てくる。

が、その中に一つ、パソコンの持ち主が検索しないであろう異質なワードがあった。

行方不明者 名簿 警視庁

「……」

シグナムはお茶の用意をしているアスカを注意深く観察する。

こちら側にきてから、アスカの様子が少しおかしい事にシグナムは気づいていた。

フェイトを通して、過去にオルセアの戦場で護衛任務をしていたから、異世界では異常に警戒心が出ると聞いていたが、どうもそれだけではなさそうだと思ったのだ。

(アスカ。お前は何を隠している……地球で何があった?)





アスカside

紅茶とコーヒーを飲みながら、特に異常もなく1時間が過ぎようとしていた。

フリードはまったく起きる気配ないので、オレは必然的にシグナム副隊長と会話をする事になったんだが、共通の話題って言ったら日頃の訓練に関することしかない。

ってな訳で色々話していると、

「うむ、ならやってみようか」

とすぐにシグナム副隊長は訓練モードに突入してしまう為、

「いや、今は待機中ですから!」

とオレが慌てて止めるというのを繰り返していた。

そんなやり取りを5回ほど繰り返した時だ。

突然アラートが発令された!

「ラピ!場所は!」

一気に実戦モードに切り替わる。

《河川敷グランドにロストロギア反応、確認しました》

よし、そんなに離れちゃいない。

オレはフリードをトントンと指で叩いて起こす。

「くきゅう~?」

「フリード、お仕事だ」

フリードを抱えてオレは外に飛び出す。

「行くぞ、アスカ。私がお前を運ぶ!」

副隊長はすでにデバイスを構えていた。

「了解!」

オレもイヤーカフ、ラピに手を伸ばす。

『SET UP!』

『Activation!』

バリアジャケットを展開したオレと副隊長。

このまま副隊長に抱えて飛んで行く訳だが、その前にやっておく事がある。

「ラピ、簡易オプティックハイドをオレ達にかけてくれ」

このまま飛んでいったら、フライングヒューマノイドとして目撃されてしまうかもしれないので、透明化しておかなくちゃいけない。

この任務限定で、ラピには回数と効果が限定されているオプティックハイドがオートプログラミングされている。

オレはそれを発動させたのだ。

二人と一匹が透明になる。

「よし、行くぞ!」

シグナム副隊長が後ろからオレを抱き抱えて空に舞い上がる。

ポフン

最高です!

じゃない、じゃない。さすがに切り替えないと…

ポフン

無理だよ!





outside

グランドに向けて空を飛ぶアスカとシグナム。

フリードはアスカに抱えられていて、キョロキョロと辺りを見回している。

「まだ広域結界が張られてませんね」

アスカは通常空間の夜空を見てシグナムに言う。

「シャマルの準備ができていないのだろう。本来ならお前達に任せたいが、場合によっては私が抑える」

「その判断は現場を見てからにしましょう」

焦りは禁物だが、一般人に魔法を見られる訳にはいかない。

短期決戦で決めるのであれば、シグナムの判断の方が正しい。





「ついたが、何だ、あれは?」

シグナムがグランドの光景を見て思わずそう呟いた。

グランドに目を向けると、某ゲームに出てくるスライムのような物が、ポヨンポヨンとたくさん跳ねているのが確認できる。

「ラピ、複数のバリアにオプティックハイドをかける場合、その術式は空間単位で1回のカウントだったよな?」

アスカは状況を見て戦略を練る。

《はい、その通りです》

「オプティックハイドはあと何回できる?」

《1回です》

「充分。シグナム副隊長、オレをグランドに落としてください!」

アスカの中で作戦は決まった。

「どうするつもりだ」

「バリアにオプティックハイドをかけて、グランドを囲みます。あとは、みんな待ちって事で」

単独で無理に封印処理をする必要はない。仲間が駆けつけてくるまで、時間を稼げばいい。

そう考えたアスカは、スライムを逃がさない手段を取る事にした。

「分かった、上手くやってみせろ!」

マウンド付近上空まできたシグナムは、そのままアスカから手を離す。

「よっと!」

無事に着地するアスカ。素早く周囲を見渡し、行動に出る。

「カードリッジロード!ラージプロテクション、サークルポジション!」

カードリッジを一発消費してデバイスを振りかざすアスカ。

それに連動するように、バックネットと同じくらいの高さがあるバリアが次々とグランドを囲む。

「ラピ、オプティックハイドをバリアに!」

《了解》

最後の一回をバリアに使う。

これで目撃されたとしても、最悪の場合でもボールのような物が飛び跳ねてるくらいに見えるだろう。

アスカ、シグナム、フリードはオプティックハイドで透明化しているので、発見される心配はない。

『副隊長、外に何匹か出てませんか?』

『大丈夫だ。出ていたとしても、2、3匹だろう。お前はそのままバリアを維持。私が周囲を見回してくる…ん?』

念話で話している時だった。夜空の星が急に光りを落とし始めた。

「広域結界!シャマル先生か」

ホッと息をはくアスカ。

強力な広域結界の魔力に反応して、簡易オプティックハイドが解かれる。

「ほう、思ったより早かったな」

シグナムが高速で近づいてくる魔力反応に気づいた。

「お待たせ!」

バリアを飛び越えるようにウイングロードがグランドに届き、ティアナとキャロをおぶったスバルが飛び込んできた。

その後ろを、ソニックムーブで駆けつけたエリオが続く。

「なに、コレ?」「プニョプニョスライム?」

スバルとティアナが、目の前で飛び跳ねている群を驚きの表情で見ている。

「ちょっとカワイイ?」

ポヨンとしたのが可愛いのか、キャロが緊張感の無い声を出す。

「これ、全部本体ですか?」

グランドを跳ね回るロストロギアの群を見て、困惑気味のエリオ。

『危険を感じると、複数に分裂してダミー体を増殖する。そやけど、本体は一つや』

さすがにこれでは手が出ないと思ったのか、はやてがヒントを出す。

「本体を封印すれば、ダミーは全て消えるです!」

リインも到着し、フォワードのバックアップに入る。

「アタシとシグナムが町中を見てくる。そっちはお前達だけでやってみろ」

シグナムと合流したヴィータが、フォワードにそう指示を出した。

今まで訓練で培った物を見せろ、と言う事だ。

「素早く考えて、素早く動く!」「練習通りでいける筈だよ」

なのは、フェイトも揃い、万全の態勢となった。

万が一失敗しても、これなら大丈夫…と考えているフォワードは誰一人いない。

「サッサと終わらせるわよ!スバル、エリオ!」

ティアナがクロスミラージュを構える。

それが合図となり、スバルがダミーの一体に殴りかかる。

「うおりゃあぁぁぁぁ!…あれぇ??」

スバルの拳は間違いなくダミーに直撃した。だが、ポヨンと弾き飛ばされるだけで効果はなさそうだ。

「タアァァァァ!」

ならばと、エリオがストラーダで切りかかる。が、結果は同じく、切れも凹みもせず、ただ弾き飛ばされるだけだ。

「打撃無効?」「斬撃も無効です!」

一旦下がる二人。入れ替わるようにキャロがフリードに指示を出す。

「フリード、ブラストフレア!」

「これでどうよ!」

さらにティアナが魔力弾を射つ。

フリードの炎と、オレンジ色の弾丸がダミーを捕らえるが、まるで効果が無い。

「こっちの炎と通常魔力弾も効果無し…」

「さすがロストロギア。見た目はカワイイですが、侮れません!」

ティアナ、キャロも攻めあぐねていた。

そうなると、今度はアスカの番になるのだが…

「アスカも攻撃してよ!」

スバルがマウンド付近にいるアスカに言う。

「目下バリアの維持で手一杯だよ!」

アスカはダミーを逃がさない為にバリアを張っている。

あまりにも地味な役割である。

「そうだ!エリオ、あれでまとめていけない?ストラーダを地面に刺して、電気バリバリーのヤツ!」

「こら、スバル!それじゃオレも巻き込まれるだろ!」

「あ、そうか」

スバルの考え無しの提案を即座に却下するアスカ。

「それに、電気で止まるか分からないし、無傷で、って指示よ。ダメージコントロールし辛い攻撃は無し!」

まだ打開策を思いつかないティアナが苛立たし気に言う。

アスカはティアナの言葉に焦りが混じっているのを感じた。

「慌てるな!こいつらにオレのバリアを破る力も、飛び越える力もない。落ち着いて考えれば、必ず道は開ける!」

アスカの言葉に、ティアナはハッとする。そして、改めて冷静になってグランドを見た。

ダミーのいくつかは、アスカのバリアに体当たりを仕掛けているが、その程度ではびくともしない。

ジャンプ力も、精々頭に届くくらいで、バックネット程の高さのあるバリアを飛び越える事はできない。

「もうしばらく頑張ってもらうわよ、アスカ。スバル、エリオ!こいつらうをなるべく一カ所に集めて。アタシとキャロで本体を特定して封印する!」

素早くティアナが指示を出し、スバルとエリオが走り出した。





フォワード陣の奮闘を、隊長達は上空から見守っていた。

「新人達、悪くない動きよね。入隊当時から比べたら別人みたい」

シャマルが一人一人の動きを見てはやてに言う。

「なのはちゃんの教導の成果かな?」

はやての言葉にリインが嬉しそうに頷く。

「ヴィータちゃんも、最近は教導ガンバッてくれてるです!」

「留守番していたとは言え、アスカ君も初動が素早かったね。バリアでターゲットを囲い込むって、よく考えるよ」

相変わらずの突拍子もないアイデアに、呆れるようななのは。

上空は実にノンビリしている。だが、地上組はそうはいかない。

それまでバリアに体当たりをしていたスライムが、今度はアスカに向かってきたのだ。

ポヨンポヨンとアスカにぶつかっては、跳ね返る。

「まあ、このくらいならどうって事…ゴフッ!」

余裕の表情だったアスカが突然前のめりで倒れた。

5匹のスライムがまとまって、勢いをつけてアスカの後頭部に体当たりを仕掛けたのだ。

さらに、倒れたアスカの背中にポヨンポヨンと踏みつけるように体当たりを食らわしている。

「「アスカ!」」「「アスカさん!」」

スライムの思わぬ反撃に焦る4人。

「何か、数が増えてますよ!」

エリオがスライムの数が急激に増えている事に気づいた。

「アスカがバリアを張っているって分かったんだ!」

アワアワと慌てるスバル。

攻撃性は無い筈なのに、反撃してきた事に対してパニックを起こしかけている。

『数が増えたって事は、本体がダミーを産んでいるって事だろ?ならオレの所まで行列が出来てるんじゃないか?行列の先に本体がある筈だ!』

念話で叫ぶアスカ。

攻撃そのものは大した事ないが、数が集まると重くてかなわない。

「そうか!じゃあ、あそこの中心に!」

ティアナが行列の先、ホームベース付近のスライムの群に魔力弾を数発撃ち込む。

バン!とスライムが弾かれる中、一体だけ魔力弾を跳ね返した個体があった。それを確認するティアナとキャロ。

「あれが本体?」

「捕らえます。錬鉄召還!アルケミックチェーン!」

キャロが素早く魔法を発動させて、本体を絡め取ろうとする。だが、

バリバリバリ!

アルケミックチェーンに捕らえれるよりも早く、本体が防御魔法を発動させた。

「バリア展開!?」

ここまで抵抗されるとは思ってなかったのだろう。ティアナが驚愕する。

「い、意外と出力が!」

油断すればチェーンを弾かれそうになる為、キャロが魔力を強める。

今、この瞬間にもダミーがアスカを踏み続けている。

このままアスカに限界がきたら、バリアが解けてダミーが町中に逃げ出すだろう。

そうなったら任務失敗。隊長達が動かざるを得ない。

「そんな事はさせないよ!エリオ、アサルトコンビネーション、行くよ!」

「はい、スバルさん!」

スバルとエリオがカードリッジをロードする。

「マッハキャリバー!」

スバルの合図に、ローラーからリボルバーナックルに魔力が送り込まれる。高速回転し、唸りをあげるナックル。

「ストラーダ!」

エリオも、ストラーダに魔力を込める。

バッ!

同時に動くスバルとエリオ。

ジグザグに交差しながら二人が本体に迫る!

「「ストライクドライバー!!」」

同時攻撃が見事に決まり、本体のバリアが砕かれる。

アルケミックチェーンに絡み取られるスライム本体。だが、ピョンピョン飛び跳ねて悪足掻きをしている。

「クロスミラージュ、バレットS!」

《ロードカードリッジ!》

ティアナがクロスミラージュを構える。

「我が乞うは捕縛の檻。流星の射手の弾丸に封印の力を!」

キャロの詠唱に呼応するように、クロスミラージュが輝き始めた。

ティアナとキャロが、お互いに頷き合う。

「「シーリング・シュウゥゥゥゥト!!!」」

ブーストしたクロスミラージュの魔力弾がスライムに直撃した。

その途端、ロストロギアは急速に力を失い、おとなしくなった。

「やった!封印成功だ!」

エリオが喜びの声を上げた。

「うん、動作停止確認。完全封印処理しよか。シャマル」

「はい」

ロストロギアが完全停止したのを確認して、はやてがシャマルに指示を出した。その時、

『あ、あの、すみません。八神部隊長、シャマル先生』

キャロが念話で二人に話しかけてきた。

『完全封印、私がやってみていいですか?練習しておきたいんです』

キャロの申し出に、はやてが微笑む。

「うん!いい心がけや」

キャロの自主性が嬉しいのか、はやてが嬉しそうに笑う。

「じゃあ、ここから見てるから、やってみて」

シャマルも嬉しそうに言う。

『はい!』

許可をもらったキャロがスライムに近づき、完全封印処理を施し始める。

その様子を見守る、スバル、ティアナ、エリオ、フリード。

『えーと…できました!』

『では、私が確認するですね』

リインがロストロギアの封印を確認して、事件は無事終了した。

「よし、封印は万全。これにて出張任務完了や!」

「「「「はい!」」」」

はやての言葉に、フォワード一同元気に答えた……一名を除いて。

「そう言えばアスカは?」

キョロキョロとスバルが辺りを見回す。

「さっきまでこの辺にいたわよね?」

ティアナも周囲を見るが、アスカはいない。

「アスカさーん!終わりましたよ!」

エリオが声を上げるが、返事は無い。

「どこ行ったんでしょうか?」

キャロが首を傾げる。

4人がマウンドに集まった時だった。

ムニュ

4人同時に、何か柔らかい物を踏みつけた。

「「「「え?」」」」

驚いて足下を見ると、そこにはアスカが地面にうつ伏せでめりこんでいた。

「「「「わーー!!!!!」」」」

慌てて足をどける4人。

スバルが急いでアスカを引っ張り上げる。

ガコン!

そんな擬音が聞こえてきそうな感じでアスカは救出された。そして、開口一番、

「お前等、踏んだよな?踏みつけたよな!」

文句を言った。

「「ご、ごめんなさい!」」

エリオとキャロは素直に謝るが、

「まさか地面に埋まってるなんて、分かる訳ないでしょ!」

ティアナは逆ギレする始末だ。

「それにスバール!お前オレの頭をよりによってローラーで踏んだよな!ローラーで!大事な事だから2回言ったぞ!」

「わ、ワザじゃないんだから許してよぉ!」

結局、最後はアスカ落ちで終了したのであった。
 
 

 
後書き
えー、今回のお詫びですが…はい、温泉シーンがなかったですね。
しかもまた文章長くなったし。
あんだけ煽っといて、お色気シーンが無いなんて、切腹ものです。
自分、甘甘な話、書くの苦手な物で…はい、言い訳でしかありません。
今後の課題として、精進させていただきます。

この派遣任務の話の中で、ちょくちょくオリジナルシーンが出ていますが、それはアスカの正体バレフラグと、ティアナヒロインフラグをド下手ながら立てているんです。
アスカの正体フラグは、模擬戦訓練(魔王降臨編)で回収しますので、それまでお待ちください。

今回書いていて思ったのが、シグナムさんが意外とスキンシップしてるんですね、アスカと。
無自覚に。
双剣訓練では正しいフォームを教える為にムニュっと。今回は現場に急行する為にムニュッと。
あとは色々ゴチンと。
なんだかんだで、結構仲良しさんなのかもしれません。

さて、これで後は帰るだけですが…簡単には終わらせないよ!
だってさ、シグナムさんとアスカだけなんですよ!まだ入ってないのは! 
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