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真田十勇士

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巻ノ六十 伊達政宗その十

「大殿の言われる通りです」
「籠城を続けましょう」
「西国の軍勢はやがて去ります」
「何時までも囲めませぬ」
「そうしましょうぞ」
「もう少しの辛抱です」
 こう言うのだった、そして。 
 氏政はその彼等の言葉を聞いてだ、意を決した顔で言った。
「よし、ではこのままいこう」
「籠城ですか」
「それを続けられますか」
「このまま」
「そうされますか」
「うむ」
 断を下した、そしてだった。
 北条家は籠城を続けた、だが。
 その夜秀吉は城からの密使に会っていた、そしてだった。
 密使と会った後でだ、秀長を呼んで彼に話した。
「よきことじゃ」
「実際に城の中からですか」
「寝返りの話が来た」
「どの者からですか」
「家老衆から二人、松田という者と大道寺という者じゃ」
「あの二人ですか」
 その二人の名を聞いてだ、秀長も思わず声を挙げた。
「北条家の家老衆の中でもです」
「強い力の者達じゃな」
「そしてです」
 秀長はさらに言った。
「篭城策をです」
「言っておるな」
「はい」
 その通りというのだ。
「まさに」
「その二人がじゃ」
「内通をですか」
「言ってきた」
 そうだというのだ。
「これがな」
「それはまた」
「驚いたな」
「まさかとです」
 思っているというのだ。
「内通を申し出る者が出るとは思っていました」
「そうじゃな、御主も」
「はい、まさに」
「この申し出は大きいな」
「では内通の申し出を」
「受けぬ」
 これが秀吉の返事だった。
「それはせぬ」
「何故ですか、それは」
「ははは、これを公にするのじゃ」
「小田原の方に言うのですか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「それを言えばどうなるか」
「それは」 
 秀長にもわかった、このことは。
「あの二人は力も大きく」
「強硬派じゃな」
「籠城派です」
「その二人が内通を言うのじゃ」
「それが公に出れば」
「小田原は揺れる」
 秀吉は言った。 
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