ラブライブ!~夕陽に咲く花~
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コラボ:春人とナオキ。これは、とある日常
前書き
今回は、某小説投稿サイトにて、『ラブライブ!〜1人の男の歩む道』という二次創作を執筆していらっしゃるシベリア香川さんとのコラボ回になります。
僕自身"企画"には参加したことありますが、"コラボ"というものは初めてで、春人くんと別の方の主人公が同じ舞台でやり取りするということにわくわくしながら執筆してました。
と、いうことで。
どうぞごゆっくり楽しんでいってください
※今回のみ、音ノ木坂は共学校で春人くんが1年生、シベリア香川さんの作品の主人公"香川ナオキ"くんは2年生で絵里とは幼馴染み兼恋人同士という設定を用いて話が展開されます。よって本編とは一切関係ないということを御承知ください。
「ねぇナオキさん、これはなんでしょうか...」
とある水曜日の放課後。
僕、高橋春人と一つ年上の先輩である香川ナオキさんはたまたま時間が被ったこともあって一緒に部室にやってきた。
「ん?これドリンクかなんかちゃうの?」
まだ誰も来ていないみたい。だけど僕がまず最初に目に留まったのはテーブルの上の1本のドリンク瓶だ。ラベルの貼られていないただの瓶。
それを錘代わりにして1枚の殴り書きされた紙が置いてある。
あたかも、『変なものです』とアピールしているように。
「どうなん、でしょうね。パッと見怪しすぎるのですが......」
「せやな。何か変なものならせめてラベルくらい貼っとけっちゅうに」
しかし、ドアの前にずっと立っているわけにもいかないので僕達はドアを閉めて瓶に近寄る。
完全無印の中身の見えないただの瓶。だけど、僕には禍々しいオーラを放っているように見える。
ナオキさんは瓶を手に取って中を振ってみたり蓋を開けて匂いを嗅いだりと考察を繰り返す。
「どうですか?」
「ん〜せやね〜。匂いは全くせん、無臭やな。」
「無臭...ですか」
ということは無害、ということだろうか。
そう結びつけるのは早いけど、面倒な事はできればしたくないし巻き込まれたくない。
そもそも無視しておけばいいのにというツッコミはなしで。興味が無いというわけではないから僕は紙っきれに視線を向けてしまうのだ。
ただ、『栄養ドリンク』と書かれただけの紙っきれに。
「春人、これ飲んでみて」
「え!?い、嫌ですよ!!」
「ええからええから。中身が気になるんや」
「だ、だったら僕じゃなくてナオキさん自身が試したらイイじゃないですか〜!」
もう既に蓋を開けて僕に飲ませようと黒い笑みを浮かべてにじり寄ってくる。
割といつもの光景と言われればいつもの光景なので、慣れているけれどナオキさんの手に持っているその意味不明なドリンクモドキは飲みたくない。
その思いは儚くも届かず、ナオキさんに羽交い締めされてしまって身動きが取れない。
「や め て く だ さ い ー !!」
「ええじゃないかええじゃないか〜!」
もがいたところで力の差は歴然。
無駄に疲れるだけであった。
「は、離してーっ!」
「先輩命令や、飲めー」
遂には顎を捕まれ無理矢理口をこじ開けられる。
まずい!このままだと本当に飲まされ───
と、考えた時には既に時遅し。
口の中にエナジードリンク独特と甘味と後味が広がった時には......
──コラボ 春人とナオキ。これは、とある日常 ───
「よしっ!飲ます事に成功や!どう?どんな味したん?」
「......」
おれは香川ナオキ。おれは無事、一つ年下の後輩高橋春人に謎の栄養ドリンクを飲ませる事に成功して一安心したところだ。
大方、あの紫髪のスピリチュアル星人の作った使い道の無い実験結果の成れの果てだろう。
つまり、飲んだら最後碌でもない事になるのは間違いない。だったら!おれじゃなくて春人に被検体になってもらおう!
そう考えておれは強引に春人に栄養ドリンク(?)を飲ませたわけだが...
「どうや?春人」
「...」
ビクビクと小刻みに痙攣したまま言葉を発さない春人に「少しヤりすぎた?」と心配になってきた。あ、違う違う。強引に薬を飲ませ過ぎたということをやりすきだか?と心配になっただけであって、春人を性的な意味で襲ったとかそういう男×男の話ではない。
そもそもおれには愛しの絵里がいるし、春人にも今は想い人はおらんが凛か花陽のどちらかに想いは寄せているはずや。自覚は無いが、いずれかはどちらかとくっつくだろうとµ’sの一部のメンバーは予想している。
だから春人はそういう人間じゃ......ないよな?
そんなことはどうでもええっちゅうに。
「...う、ご」
「お?春人大丈夫なん?」
「ゲッホゲホッ!ま、まったく何してくれるんですかナオキ"くん"は」
「い、いやぁすまんすまんつい調子乗ってしもうたわ」
漸く春人は目を覚ました。元からコイツは肌白いけど具合悪い感じてはなさそうで一安心。
立ち上がろうとする春人をおれは肩を貸して支える。
しかし、おれは妙な違和感を覚える。
「春人、体に異変を感じんか?」
「まぁ大丈夫です。頭痛とかそういう身体的症状は出てないです。ただ、ナオキ"くん"に強引に飲まされたからドリンクが器官の方に入っちゃいましたけど」
「...?それは、すまん」
やはり違和感を感じる。
なんで春人は急にナオキ"さん"からナオキ"くん"に呼び方を変えたんやろか...。
それが普通の時の春人やったら全然問題ないのだが、謎の栄養ドリンク(?)を飲んだ後の春人や。不安要素が拭えない。
「なぁ、春人。お前───」
「それにしても....」
ふと、視線を戻した先には春人の顔が眼前いっぱいに広がっていた。
春人の目の中には嫌な予感と寒気で青ざめたおれの顔が映っている。
「ナオキくんの唇って、とてもツヤツヤしてますよね〜」
「っっ!!!??」
ガタタッ!ガタンッ!と温度が少し下がったような部室にその音が響く。それはおれが机と椅子にぶつかっても尚、後ずさりしなければならなかったからだ。
間違いない。薬の影響だ!
薬の影響で春人がこんな変態チックな発言をしたんや!じゃなきゃ純情でぴゅあぴゅあな春人が男×男の意味を持つアカン発言をするわけがないんや!!
「なんでそんなに怯えてるんですか?」
「そ、そんなん決まってるやろ。お前大丈夫か?」
「もちろん正常ですよ?」
じわり、じわりと迫りよってくる春人と一歩、また一歩と後ずさりするおれの図。遂には部室の片隅に追いやられ逃げ場を失ってしまう!!
どうする!?このままだと春人に男として奪われてはいけないものを奪われてしまいそうな気がするんやけど!!
「ねぇナオキくん......」
春人はその細い指でおれの顎を持ち上げる。
世間で今流行りの"顎くい"というものをされてしまった!よりにもよって男である春人に!!!ふっざけんなぁぁぁっ!!
こんなん気持ち悪いわっ!腐女子が湧き出てくるぞおい!!
という悲しみの叫びも口にしなきゃ意味が無いことくらい音ノ木坂に来てから痛いほど経験している。なのに口が上手く開かないのは震えて声が出ないからというのもおれは知っている。
つまり何が言いたいかと言うとやな。
「だ、誰か......たすけて....」
「ここには僕とナオキくんだけですよ?大丈夫です、痛くしませんから......」
さよなら、おれの青春...
さよなら、絵里...
おれは成す術なく、近寄る春人をただ眺めることしかできなかった。
〜☆★☆〜
そんな出来事があったなんて露知れず。
職員室に用事があって部室にやって来るのが遅れた小泉花陽と星空凛は普段の日常如く、一年教室前を歩いていた
「みんなもう部室にいるよね?」
「りんたち遅れちゃったからね〜」
そして、ガララと音を立てて出てきたのは2人の大切なお友達西木野真姫だ。
ふうっとため息をついてから彼女は背を向けて花陽達と同じ方向に歩を進める。
「真姫ちゃーん!待ってー!」
「え?あぁ、花陽、凛」
「なんで真姫ちゃん教室にいたのかにゃ?」
「なんでってそれは日直だったからに決まってるじゃないの。貴女たちこそ何してたの?」
宿題を忘れちゃったから、なんてとてもじゃないけど厳しい真姫には言えなかった。珍しく宿題を忘れてきた花陽は常習犯の凛と同じように怒られて気持ち的にちょっとしょんぼりしている。
「りんとかよちん宿題忘れてきちゃってさっきまで怒られてたにゃ!」
「凛ちゃん言っちゃうのぉっ!?」
「えぇ?凛はともかく、花陽まで宿題忘れたの?もーしっかりしなさいよ」
うー、真姫ちゃんにまで注意されちゃった。確かに昨日はぼーっとしてたんだよね。春人くんと夜ずっと電話しててそれが楽しくて、終わった後もその余韻に浸ってたから...。
今夜は気をつけなきゃ!
と、気合いを入れ直したところで、
「あれ?花陽ちゃん、凛ちゃん......それに真姫ちゃんも」
「あ、春人くん!」
「春くんだにゃー!」
向こう側から私達を呼ぶ、私の幼馴染みの声が聞こえてきた。
今日は何故かテンションが高いようでいつもより声のトーンが高い気がする。
それにまだ制服姿、まだ部室に行ってないのかな?
「あぁ、春人。あなた部室に行ったんじゃないの?」
「部室?あぁ、うんまだ行ってないよ。部室の鍵空いてなくてさっき海未ちゃんが警備員室に取りに行ったところなんだ。それより真姫ちゃんは何してたの?花陽ちゃん凛ちゃんも」
「だからなんで春人も同じ質問してくるの!?日直って言ったじゃないの!!」
「あ、あぁごめん」
───なにか違う。
花陽と凛は確信に近い"何か"を悟った。女の勘と真姫にはわからない長年の付き合いだからこそわかることという二つの感覚が2人に確信に近いもの与えたのだ。
だけどそれが何なのかはイマイチピンときていない。
だけど普段の春人では無い事に確信はあった。
「ねぇ春人く───」
「それにしてもさぁ3人とも」
遮断。
あの春人が人の言葉を遮って喋り出すということに、流石の真姫も眉を潜めた。
そして、やたら人を品定めするかのようなねちっこい視線。
そして次の発言。
「可愛いよね〜♪」
「「「っ!?」」」
唐突の言葉に赤面。
普段の春人なら言わな....くもないけど、含まれる意味やらタイミングがいつもと全く違う。それでも相手は高橋春人。
容姿も声も、なにもかもそのままだ。彼に想いを寄せていることを隠しているけど隠しきれずµ’sの全員にバレている花陽と凛は完全に赤面して『あわわあわあわ』と言葉を失い、僅かに好意を寄せる真姫は少し頬を染めて目を背けている。
「ホント、イミワカンナイ。どうしたのよ春人。なんかいつもと違う気がするけど」
「そうかな?僕はいつも通りだと思うけど」
「ねぇ真姫ちゃん」
いつの間にか春人は真姫の隣にいて、何気ない顔つきで真姫の腰に手を当てて自分の方に寄せていた。
更に赤くなった真姫はキッと春人を睨みつけて震えている。
「な、なにするのよ!」
「ん?いやぁ真姫ちゃん綺麗だなぁと思って。触りたくなったんだ」
「さ、触りたいって。離してよっ!」
明らかに嫌がっている真姫。絶対これはおかしい、いつもの春人くんじゃないと思った花陽は彼を止めようとして、
「は、春人くん?止め───」
「......(大丈夫だよ真姫、痛くしないから)」
「ひゃうっ!!」
春人が真姫の耳元で何かを囁いた後、ふうっと耳に軽く息を吹きかける。魂を抜かれたかのように彼女は膝から崩れ落ちて、ビクンビクンと痙攣していた。
瞳は開いたままでどこか遠くを見ているような気がした。
「春人...くん?」
「な、なにしたのかにゃ?」
「何をしたって、ちょっと真姫ちゃんとお話しただけだよ?」
ニタニタと薄ら笑いを浮かべる幼馴染みに花陽と凛は初めて恐怖を覚えた。
何故こうなったのか。
何が原因で春人はこうなってしまったのかはわかるわけない。ただ一つ思う事は、なんとかしないと他の人にも迷惑をかけてしまうんじゃないか、ただそれだけだ。
「春人くん具合悪いの?」
そんなわけない。
だけど聞いてもみないととてもじゃないが、受け入れられるような現状じゃなかった。
「んー?全然♪僕は元気だよ?」
相変わらず彼らしくない下品な笑みで花陽と凛を見つめる。
───どうしてこうなっちゃったの?
改めて花陽は思った。
今朝、学校に行って授業を受けて、昼食も私達4人で仲良く食べてまた午後の授業受けて....ここまでは一緒にずっと行動していた。
わかれたのはつい数十分前。
花陽と凛が職員室、そして春人が部室に向かうまでは彼におかしなところはなかったのだ。いつも通りののんびりマイペースで、彼らしさ満載だったのに。
「ねぇ花陽ちゃん、凛ちゃん」
「ひゃうっ!?な、なに?」
「は、春くん?」
「僕はずっと思ってたんだ...」
彼はゆっくりと2人に近づき、両手で2人をだき抱える。自ら2人に触れるのは良くあることだったが、こうしただき抱えるといった事はしてこなかった。
初めて、と言っても過言ではないだろう。そのせいか、いつも通りの彼ではない事は2人にはわかっているのに体が離れようと、拒絶しようとしてくれない。
(あれ?なんだか....あったかい....)
(春くんの体温にゃ〜)
頭ではダメだとわかっていても乙女としての本能が『このまま委ねたらいい』と反対の事を言っている。
なんせ、あの"高橋春人"だ。
飄々とした身体をしていて容姿も悪くない。
穏やかで笑顔を絶やさない彼を見て、惚れる女子学生も少なくはないだろう。
そんな彼から抱きしめられたりした時にはもう心も体も溶けてしまうのではないか?
仮令、少し変化してしまった彼だとしても。
「いつも思うけど、花陽ちゃんも凛ちゃんも小さくて可愛いな〜。ほんと腕の中におさまっちゃうくらい」
「やっ...は、春人くぅん」
「くすぐったいにゃ〜離すにゃ〜」
春人は更に強く抱きしめる。
「ちょっと3人とも?何してるのかしら?」
花陽と凛が別の世界に誘われそうになったその瞬間、横から透き通った声が聞こえ、ゆっくりと声がした方を向く。
「......絵里ちゃん」
「練習はどうしたのかしら春人くん?」
「海未ちゃんが部室の鍵を取りに行ってます」
「ふーん...それで、貴方は何してるのかしら?」
「何って、愛しの幼馴染みを愛でてるだけですよ?」
態度は平然としていて、元生徒会長の威厳をものともせずにさらりと軽く流す。
絵里は他生徒のクレームを聞いて春人を探していた。
『アイドル研究部の部室から男の叫び声が聞こえた』という。
最初聞いた時は自身の彼氏が春人に粗相をしたんじゃないかって疑ったけど、実際後を追ってきて春人が犯人だったということに内心驚いている。
何故なら"あの"春人だからだ。
巻き込まれる側とは思ってても自分が台風の目になってアクシデントを起こすとは一体誰が想像できただろうか。
表情には出てないけど、心臓の鼓動が早くなっているのがわかる。
「珍しいわね、面倒事を君が引き起こすなんて。気まぐれかしら?」
「それは違うよ」
また、さらりと即答した。しかも何故かネットリした口調で。
「僕は悪さしようだなんて思ってません。可愛い女の子と話するのが大好きで愛でるのが大好きなだけです。男は興味ありませんが、僕のやる事に邪魔するなら...そこは容赦なく、ね?」
「容赦なくって...まさか!!」
「そのまさかですよ絵里ちゃん。今頃ナオキくんは部室でいい夢を見てるんじゃないかな?」
叫び声の主はナオキだった。
瞬間怒りが沸き起こる。
絵里は春人に対して、2度目の怒りの感情を見せる。
自分の彼氏が何かされたんだ。彼女として黙ってるはずが無いだろう。
「春人くん!君は───」
「絵里ちゃんは、知ってますか?」
「な、何をよ」
「他校の男子生徒が貴女へ向ける視線の意味、ですよ」
話を逸らす。
あっち行ったりこっち行ったりとはぐらかしているような気がしてならないけど、とにかく耳を傾ける。
「尊敬、憧れ、興奮、欲望...思う事は人それぞれですが、圧倒的に多いのは性的欲望です」
「なっ!!な、何が言いたいの!?」
「わからないんですか?貴方にはそれだけの魅力があるということですよ。その映えた金髪ポニーテールからそこから見える首筋、整った顔立ち、バランスよく引き締まったボディライン、そしてすらっと細く長い足。全てにおいて貴方は完璧なのです。勿論、性格も、ですけど」
春人のイヤらしく品定めする目つきに悪寒を感じ、自身を隠すように縮こまる。
おかしい......今日の春人は本当におかしい。
こんな人間ではなかったはずだ。人が嫌がるようなこと、嫌われるような事を一切しない彼が、今はこうして逆のことをしている。
これが彼の本心だとでも言うのだろうか...
「だから」
しばらく視線を彷徨わせていたせいか、春人は絵里のすぐ目の前に立っていた。
だき抱えていた花陽と凛は廊下で惚けていて、真姫は自分の髪のように真っ赤になって倒れている。
ある意味惨劇後だ。
「僕だって貴方に発情したりするんですよ?」
「ひゃっ!!」
耳元で囁かれ、ずささっ!と後ろに下がる。
そしてそのまま壁まで追いやられ、ドンッ!と大きな音とともに絵里は壁ドンされた。
高身長な男からされると恐怖を覚えるかもしれないけど、そんなことは無かった。
春人は柔和な笑みを浮かべている。
以前ナオキから壁ドンされた事あって、その時は当然ドキドキした。その時の感覚が甦る。
「絵里ちゃん、壁ドンされるの好きなんでしょ?」
「な、なんでそれを...」
「だって、ナオキくんから壁ドンされてる時の絵里ちゃんが凄く幼く見えるから」
その一言に胸がきゅんと疼いた。
わかってる。この人は女の子を扱い方を熟知している。
「そ、そんなことは、ないわ」
「嘘つかないでよ。大丈夫、ナオキくんにはできないようなことを...僕がしてあげるから」
「あっ......」
徐々に顔が迫ってくる。
ふわんと、何故か優しい香りが鼻腔をくすぐる。
(ナオキ......助けて......私....!)
彼の唇が、3センチ、2センチ......
「やめろ!この!バカヤローーーーーーーーーー!!!!」
ズドドドドドッ!と、地響きの後に続く、男の声。
来た。絵里にとってのヒーローで王子たる存在の人間が。
「絵里に手を出すんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇーーーっ!!」
「なっ!?」
直後、ナオキの右ストレートが春人の右頬にぶち当たる───
〜epilogue〜
「......」
「おれが悪いんや。おれがコイツに飲ませたから」
「まったく!だから春人が壊れたんだわ!」
「すまん真姫」
部室。
学校の騒ぎとなる前に殴り飛ばされて気絶した春人を回収し、全員部室に集合した。未だに春人は気絶したままなので部室の隅で座らせ、とりあえずアイツに薬を飲ませたおれは説教を受けるハメに。
ここまで凄いものだとは思わなかったからおれにも非はあるけど、元はと言えばあの謎のドリンクを部室に置いた張本人が悪いんや。
「もとかく、一体この中身はなんやったろうなぁ」
「あ?それ希の発明品ちゃうの?」
「え?ウチこんなの作ってないで。というかなんでいつもウチが作ったーみたいな流れになっとるん?!」
だってそういうの作りそうなのお前しかいないから、などと口には出さずぐっと喉元に押し込む。
なんなら、このドリンクを作ったのは誰だ?
おれは空のビンをふりふりと持ちながら考える。だけど他に作れそうな人物をおれは知らない。
「う、ん...あ、れ?みんな、深刻そうな顔してどうしたの?」
「あ!春人君目覚めたよ!」
「やっと起きましたか...。大丈夫ですか?」
ゆっくりと意識を取り戻した春人にことり、海未が駆け寄りペットボトルを差し出す。
しばらくぼーっとどこか一点を眺めたと思うと急にびくんと跳ねて立ち上がる。
「そういえば、僕...ナオキ"さん"に変なドリンク無理矢理飲まされたんだ!」
「他には?」
「他には...目の前に花陽ちゃんと凛ちゃんと真姫ちゃんがいて......何か話してたってことは覚えてる」
どうやら自分自身何をしたのか覚えてないらしい。
確かに覚えてたら正気じゃいられないことをしてるしな。事実、何かをされた真姫や花陽、凛は春人が目覚めても尚真っ赤になったまま部室の端っこでそっぽ向いているし、絵里もやたらソワソワしてるし....なんか許せねぇ。
「まーええんやないの?忘れたまんまで。気にすることないで」
「そ、そうなのかな?僕、なんかみんなに悪いことしたような気がするんですよ」
「き、気の所為気の所為」
やべ。声が一瞬震えた
「あれ?花陽ちゃん?凛ちゃん?真姫ちゃんもなにしてるの?」
「ヴェェっ!?何でもないわよ!!話しかけてこないで!!」
「ちょっと今は話しかないで欲しいにゃ...りん、このままじゃまともにいられる気がしない」
「はわ....春人くんがっ。春人くんが〜」
「え?なに?なに?」
そのまま逃げるようにして1年生ガールズは部室をあとにした。
暫しの沈黙。しかもどんよりと曇りがかってるような重たい空気が部室内を襲う。
「アンタ、後で謝っておきなさいよ」
「にこちゃん...ほんとに僕何したんですか?」
「...そんなこと、知らないわよ(まったく...真姫ちゃんも自業自得よね)」
と、『知らないわよ』の後ににこが何かぽつりと呟いたのが聞こえた気がした。
......真姫が、なんだって?
「(花陽と凛ばかり見てるって嫉妬しちゃってさ...春人なんだから仕方ないじゃないの)」
「......あー」
なんや、そういうことやったのか。
「ん?どうしたん?」
「いや、まーすまんな。勝手に疑って」
「いやええんよ?」
「とりあえず、春人」
呆然としている春人におれは声をかける。
1日でも早くこの出来事を忘れることを願って。
あと、おれもこの出来事は忘れたい......!!
「一緒に飯食いに行くか?」
これは、おれと被害者達が封印したとある日常のお話。
こうした毎日をおれたちは送っている。
春人と知り合って2年しか経っていないのに、昔からずっと一緒に過ごしてきたかのような感覚は一体なんだろうか......
「っ!!はい!!行きます!」
それはきっと、春人がこうして満面の笑みでいてくれるからなんだろうな。確信は持てないけれど。
ただ、お前のキス顔だけは見たくなかったんや......
〜FIN♪〜
後書き
はいはい。
如何でしたでしょうか?
読んでいた読者の皆さんに"香川ナオキ"とはどんな人間か?と、思っていただけたのなら幸いです。
もし、興味が湧いてきましたらやぶーや、くーくる先生で"シベリア香川"と検索してみては如何ででしょうか。多分作品名やらシベリア香川さんのTwitterなどなど。出てくるかもしれませんよ(笑)
なお、この話が投稿された同時間にシベリア香川さんの方でもコラボ小説が投稿されたのでそちらにも足を運んでみてくださいな。
僕も拝読しましたが、テンポがよくてノリッノリの面白い物語になっていました。
流石春人くん!良いキャラしてるぜ!!花陽ちゃん!!さいこーーーーー!!!!
はいはい。と、いうことでここで締めくくらせていただきます。
読了ありがとうございました。
シベリア香川さん、今回はこのような機会に誘っていただきありがとうございました。
とても貴重な経験を得ることが出来ました。
ではでは次は戻って本編。できるだけ早いうちに投稿できるように善処します。
それでは
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