| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ五十六 関東攻めその三

「だから用意しておった」
「前以て」
「既にな、酒もな」
「そうですか、では」
「今宵は皆で心おきなく飲みな」
「そしてですな」
「明日は城にある程度の兵を残してじゃ」
 そのうえでというのだ。
「上杉殿、前田殿の軍勢に合流しに向かおう」
「父上もです」
「上田の軍勢を率いられてじゃな」
「北陸勢の方に向かっておられます」
「左様か、では尚更よいな」
「左様ですな」
「我等はこの上野から東国に入り」
 そしてというのだ。
「北条家の領地を攻めていく」
「そうなりますな」
「そして激しい戦いになる」
 こうも言う。
「関東でな」
「関東で戦があり」
 飲みつつだ、幸村はこうも言った。
「その後もじゃな」
「奥羽でなると思われますか」
「奥羽の伊達家とじゃな」
「兄上はどう思われますか」
「御主と同じ考えであろうな」 
 微笑んでだ、信之は幸村に答えた。
「そのことはな」
「左様ですか」
「それはない」
 これが信之の考えであり幸村の考えだった。
「奥羽での戦はな」
「伊達殿は冷静に天下を見ておられますな」
「どうもかなり野心の大きな方であるが」
「天下は見ておられる」
「だからな」
「最後の最後はですな」
「あの方は降られる」
 こう言い切った。
「関白様にですな」
「そうされますな」
「ただ、奥羽でまだ少し従わぬ者はおろう」
「そうした国人衆はですな」
「攻められるが」
「それでもですな」
「おおよその戦は終わる」
 そうなるというのだ。
「そして天下はな」
「遂に、ですな」
「泰平になる」
 秀吉の下にだ、そうなるというのだ。
「ようやくな」
「それは何よりですな」
「全くじゃ、天下が泰平になれば」
「民達が喜びまする」
「これ以上よいことはない」 
 信之も笑顔で語る。
「まさにな」
「その通りですな」
「うむ、ただ御主達はな」
 幸村だけでなく十勇士達も見ての言葉だ。
「戦がなければ後は修行か」
「はい、文武の」
 幸村は兄の言葉にはっきりと答えた。
「そうしていくつもりです」
「精進していくか」
「左様です」
「我等は学問はあまりですが」
「修行は好きです」 
 十勇士達も信之に言ってきた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧