とある英雄の逆行世界
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幼年期編
10章
アルトリアさんは幽霊で騎士王でアーサーです。凛さんは魔法使いで士郎くんはその旦那さまです
「なんでこんな事になったのかしら?」
「凛のせいだな」
「リンのせいです」
気絶した美琴と当麻を見ながらに凛はそんなつぶやきを漏らす。そこに間髪いれずに入る声があった。言わずもがな士郎とアルトリアである。
「目の前の光景の事じゃないわよ?なんであんな騒ぎの後にこんな和やかにご飯食べてるのかってとこにね…」
凛はなぜか疲れたようにそう言うと道場での出来事を思い返す。
あんな衝撃的な出来事があったのにもかかわらず平然と食事をとっているのもどうかというわけである。
少なくとも士郎と出会った当初の凛ならば少なくともあらかた事情を聞くまではしただろう。
「む、それは当麻のおなかが鳴ったからではないでしょうか?」
凛が考えていると騎士王さまがおっしゃるのだが事実は少し違う。
「…最初におなかの音が鳴ったのはアルトリアだったと思うのだけれど私の気のせいかしらね?」
正確には騎士王さまのおなかが鳴った後、当麻のお腹も鳴りなんだかんだで有耶無耶になって食事という流れだ。
まぁ凛も美琴と当麻に悪意や敵意といった物が無いと確信していたので早急に聞き出す必要性は薄いと感じていたのだがそれはそれ。この状態になった最初の原因は間違いなくアルトリアにあると思っている凛であった。
「まぁ、食事の後にでも聞けばいいから問題はないけど」
凛はそういうと気絶しながらも手を離さない当麻と美琴へ優しいほほ笑みを向けると食事の続きに取り掛かったのだった。
もちろん食事の後こそは事情聴取する事を心に誓って。
「さてどこまで話すかなんだよな」
昼食中のある事情によって美琴と当麻が寝て(気絶して)しまっているたので、むしろ都合がいいということで士郎、凛、アルトリアの3人は事情についてどこまで話すのか話し合っていた。
「?全部話すわよ。隠そうとしても無駄だろうし、例え記憶の操作をしたとしても近い将来同じ事が起きるのは目に見えてる。それに一緒に暮らすことになった以上は何らかの要因でアルトリアが当麻の右手に触れた事で現界できなくなるなんて事も十分に考えられる。それなら魔術だとかその辺の事情も全部話して取り込みにかかった方が手っ取り早いもの」
「俺は構わないと思うぞ。記憶の操作をしたとしても何らかの拍子に当麻の右手で無効化される可能性が残る。それに心情的にも懐いてくれてる子たちにそんな事をするのはな…」
「ええ、わたしとしてもその判断は好ましいです、リン」
凛の判断に全員が了承を告げる。基本的に凛の判断が問題ない場合は二人とも変に噛みついたりしないため話し合いは比較手に早く終わることが多いのだ。
「さて、そろそろ美琴と当麻をおこそうかしら。ご飯も冷めちゃうしね」
「ええ、冷めてもおいしい物ではありますが温かいうちが一番ですから」
「じゃ少しさめている物は温めなおしておくか」
そして美琴と当麻を起こしたあと、昼食の続きをとったのであった。
昼食後、5人は昼食前の出来事について話すために今に集まっていた。
「ま、お茶でも飲みながらな。紅茶は買ってきてなくて緑茶で悪いんだが」
そういって士郎がお茶を配った後、凛の隣りに腰を下ろす。
凛はそれを確認すると美琴と当麻に視線を向け美琴に向かって口を開いた。
「とりあえず美琴がどんなふうにアルトリアの事を感じているのか話してくれない?どこから話したらいのかもそれで変わってくるだろうし」
凛の言葉に美琴はどう話したもかという表情を見せるも、あるていどどう話すか固まったのかゆっくりと口を開き出した。
「…そうですね。私から見たアルトリアさんですけどAIM拡散力場の超密度の集合体、要は能力者の能力が自我と質量をもってその場に存在しているような物だと感じています。あえて言うなら人間より高度の存在…そうですね例えば天使だったり悪魔だったり神だったり、どちらかというとそういう存在に近いものだと思ってますね」
説明を聞き頬をひきつらせている凛には気がつかずに美琴は話を続ける。
「あ、力場が凛さんとアルトリアさん、士郎さんと凛さんの間で繋がっているみたいなので…科学的に言うのは難しいですけど、例えば魔術とか魔法みたいな概念の中で言う使い魔みたいなものかなぁとは思ってますよ。あ、後は陰陽師的な感じで式紙とかかな?そういうわけで当麻の右手に触れると消えちゃうんじゃないかなぁと思ったんですよ」
美琴はそこまで言うと凛と士郎、アルトリアがどんな反応をするのか気になり視線を向ける。ちなみに当麻は美琴の教育の成果か問題なく話についてきている。
士郎は美琴に感心したような目を向けており、アルトリアも似たようなものだ。凛はなんというか怖い。めちゃくちゃ笑顔なのだがその笑顔が美琴に悪寒を覚えさせるのだ。実際にそれを見た美琴と当麻、それに二人の顔を見てから凛に視線を移した士郎も引きつった顔をしていた。
凛はそんな周りの空気に気がついたのか真顔に戻り、深呼吸した後に溜息を吐くと、何か考えるようなしぐさを見せた。
空気が緩み、セイバーと凛を除く3人が安堵の溜息を吐くの感じると、ある程度考えがまとまったのか凛が口を開いた。
「美琴の考えている事で大体あっているわ。ちなみにわたしと士郎についてはどう感じているの?」
凛は美琴の考えを肯定するとさらに質問を投げかける。美琴は少し考えるそぶりを見せながらも口を開いた。
「…私の常識から言わせてもらえば能力者、それも最低でもレベル4クラスだと感じてます。でもアルトリアさんの事も加えて考えると教会の魔術関連の関係者って線も捨て切れてません。正直に言うと情報が足りなすぎます」
美琴は少し間要素掘りを見せながらもそう言い切る。正直に答えたのは言い逃れはできそうになかったこともあるが、純粋に凛や士郎、アルトリアは信頼できると感じていたからだ。凛たちもそれを感じたのか少しだけ表情が緩む。
「ふぅ、今ある情報の中じゃ完ぺきな答えじゃないの。本当に年不相応よね美琴は」
「…まぁ、自覚はあります」
「おれも美琴に勉強教わってるしなー。料理も掃除もなんでもござれだし、美琴にあってなかったらこんなに健康的かつ優等生な学校生活は送ってなかっただろうな」
「…そんなに褒めても何にも出ないんだからね当麻」
「へ?思ってる事言っただけだけなんだけど」
当麻とかけあいを始める美琴を見て、大人組3人は笑みを浮かべつつ思った事は重なっていた。
すなわち『美琴は当麻の前では年相応だよなー』ということである。
「ま、もともと説明するつもりだったから別にいいんだけど、ちゃんと話しておきましょうか。ほら、美琴、当麻、話の途中だからこっち向く」
凛がそう言うと二人は掛け合いをやめて話を聞く姿勢を取った。
それを確認すると凛は口を開き始める。
「アルトリアに関してはさっき美琴の言った通り、関係性としては主と使い魔ってところね。簡単にいえば実体を持った幽霊ってところかしら?アルトリアとはちょっとした折りに知り合って契約を結んで今に至るって感じかしらね。ま、基本的に友人関係でもあるからそんなに堅苦しい物でもないわよ」
凛の説明を予想はしていたもののおどろいた表情で聞く美琴と当麻に凛は頬を綻ばせ話を続ける。
「あ、ちなみに生きていた時の名前は騎士王 アーサー・ペンドラゴン。正確にはアルトリア・ペンドラゴンになるかしらね。エクスカリバーを抜いたあのアーサー王って言えばわかるかしら?」
「え?」
「??聞いたことはあるようなないような??」
正確に理解した美琴は驚きすげてポカーンとした顔をし、当麻はなかなかアーサー王がなんだったか思い出せないのか頭をひねっていた。
「ちなみに私は“魔法使い”で士郎は“へっぽこ魔法使い”で私の旦那様ってとこかしらね」
「へぇ~凛さん、すごいな」
当麻がなぜか感心したような声を出すなか、士郎は顔を赤く染め、アルトリアは「またですか」というように溜息をつき、美琴は「旦那さま…」と呟きながら当麻の方をみていた。
後日、この台詞を思い出した凛が真っ赤になって悶えたのは余談である。
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