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とある科学の捻くれ者

作者:おにゅー
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5話



早速風紀委員に帰り、手に入れた幻想御手についての話になった。

「佐天さんから教えてもらったサイトも閉鎖されるまででダウンロード数が5000を超えてますね」

佐天涙子がダウンロードした幻想御手のサイトだけでも相当な数が出回っており、すでに事態を完全に止めるのは不可能となっていた。

「一件一件確認して回るしかありませんわね...」

「この量をお前一人で回るのか...」

「何言ってますの?あなたも手伝うのですわよ?比企谷さん?」

「いや、俺ちょっとあれがあれであれなんで無理だわ」

「内臓に針を打ち込まれたいのならどうぞそうしてくださいな。」

「喜んで働かせていただきます。」

「ほら、早く行きますわよ。」

「いや待て、なら先に木山の見解を聞いていこう。初春。」

「あ、はいわかりました。」

***


木山の幻想御手の見解を聞き、初春が愚痴った。

「やっぱり何か見当違いな方向に行ってしまってるんでしょうか...」

「いや、間違ってはいない。」

「音だけで五感に働きかけるのは可能だ。ほらかき氷とかがいい例だな」

突如として告げられたその言葉に佐天 白井 初春が あっ となった。

「共感覚性ってやつですか?」

「確かに、それなら曲だけで、五感すべてに働きかけることも可能ですわね。」

「なら、この幻想御手をひとまず楽譜データにしてから木山先生に解析を依頼してみます!」

そう言い、初春は早速パソコンで作業を開始した。初春が作業を開始したのを見て、八幡はソファでくつろごうとして後ろから襟首を掴まれた。

「何をしようとしてますの?」

「あえて言うなら休もうとしてた。」

「は?」

「すいませんでした。」

速攻で土下座のフォームをとった八幡であった。

***



日がかわった。さて、今日もおなじみの風紀委員支部だ。昨日白井が途中で怪我の痛みで能力使えなくなったが、なんとか確認は終わった。

「おはよーなんか進んだ?」

そんな呑気な感じで御坂が入ってきた。つか、ナチュラルにドアハッキングしてあけんなよ。

「えぇ、進展はありましたわお姉様」

「あ、私は木山さんの所に行ってきますね」

「おう」

そう言って出て行く初春をチラリと見て、相も変わらず百合百合してビリビリされてる白井を見ると平和だと感じてしまう。末期だな。うん。

「ちわーす」

「あら?垣根さんではありませんの」

「おー昨日ぶりだな黒子ちゃん」

御坂は垣根を知らないので、誰?ってなってるな。

「俺は垣根帝督だ。よろしくな?超電磁砲」

自己紹介もしていないのに相手に素性を知られていることに少し驚いている御坂。

「御坂美琴よ。それよりなんで私のこと知ってんのよ。」

「いやいや、お前ほど有名なら誰だって知ってるだろうぜ」

御坂は学園都市の看板だからな。努力だけで成り上がった超能力者として。
まぁそんなことはどうでもいい。こいつがここに来たということは何か要件があって来たのだろう。

「で、要件はなんだ?垣根」

「いやー実はちょっと大事なもん落としちまってさ。一緒に探してもらおうかなって思ってきたんだよ。」

「捜索活動の依頼ですわね。でしたら私がーーー」

「と、いうわけでこの人借りていくわ」

ぐわし と襟首を掴まれる。つか、なんで白井といいお前といい襟首掴むの?

「わかりましたわ。思う存分こき使ってあげてくださいな」

「ほら、リーダーいくぞー」

そう言い、風紀委員を出て行く垣根を追うため、俺も立ち上がり外に出た。



***

垣根に連れられてきて、近くの公園のベンチに腰を下ろし、話は始まった。

「これがおれが暗部のつてで掴んだ情報だ。」

そういって垣根はおれに紙の資料を手渡してきた。それを受け取り、パラパラと見ていく。全て見終わり、資料を閉じた。

「まぁリーダーのことだから犯人に目星はついてたんだろ?」

「あぁ....木山...か」

資料を能力で燃やし、ベンチから立ち上がる。

「もう行くのか?リーダー」

「あぁ、初春が向こうに向かったからな。そう悠長にしてられない。」

「なら、話はここまでだな。」

「近い内に仕事が入ると思うから、それまでは休暇だ。」

「あぁわかった。がんばれよリーダー」

そう言って、おれは垣根と別れた。恐らく今頃白井と御坂もそろそろ犯人が誰か突き止める頃だろう。急がなければならない。物語はもう既に始まっているのだから。




○○○



木山と初春は木山のスポーツカーに乗り、高速道路を走っていた。だが、これはドライブをしているというわけではない。初春の張り詰めた表情を見れば一目瞭然である。

初春は思案していた。今現在幻想御手の製作者である木山に拘束されているので、どうやって逃げ出すかをだ。
まず、今の状況を整理してみよう。今現在車の中、隣には木山、そして凄いスピードで動く車。うん、これ無理だ。初春は諦めた。人生は諦めが肝心って誰か言ってたし。あーどうしよーとまた思案しようとしていると、急に車が止まった。何故?と思ったのだが、目の前を見ることによりその疑問は解消された。

「やはり君か。来ると思っていたよ。」

「....」







ーーー目の腐った男が現れた。







***

木山は初春を車の中に残したまま、車から降りて、八幡と相対した。

「とりえず言っとくぞ。警備員も呼んだ。投降しとけ現実見る前にな。」

吐き捨てるようにそういう。

「それは出来ない相談だな。私は目的を達成するまで止まることはできないのでね。君こそ、そこをどくことをお勧めするが。」

木山がそう言うと、八幡は頭をがしがしとかいた。

「なら、交渉決裂だな。力づくで取り押える。」

「やってみたまえ。君はどうにもキナ臭い。」

少し関心したように八幡は木山を見る。

「ほぅ。片足だけでも突っ込んでたのは伊達じゃないってことか。先生」

薄い三日月のように嗤う。

「ッ!!!?やはり君はッ...!!」

だが、八幡が能力者であるのに対し、木山はただの科学者だ。ならあっけなく取り押さえられて終わりなのに、と初春は考えていたが次の瞬間それまでの考えが吹き飛んだ。

木山が手のひらに何かを集めだしたのだ。

「そんな!?木山はただの科学者のハズなのに!!!」

木山の能力によって、八幡のいた場所が爆発した。

「ふむ、大見得切っただけのことはあるね。だが、君に一万の脳を統べる私を止められるかな?」

どうやら八幡はすんでのところで回避したようだ。だが、八幡には焦りという表情は全く見えなかった。

「あぁ、止めてやる。」


瞬間、二人が激突した。



***



「黒子っ何がおこってんの!?」

タクシーで付近まで来た御坂は走りながら白井にそう問いかけた。

「木山が能力を行使して交戦中ですの」

通信室から聞こえてきた白井の声には少し驚きが混じっていた。

「?彼女能力者だったの?」

「いえ、書庫には木山が能力開発を受けたという報告は記録はないのですが...しかしこれは明らかに能力。それも複数の能力を使ってるとしか...」

「それこそありえないわよ!?能力ってのは原則で一人に1つだけのはずでしょう!!?」

「そのはずなのですが...!?」

「?どうしたの?」

「木山と交戦しているのは比企谷さんですの!!」

「交戦してるのは警備員じゃないの!?」

「どうやら全滅したようですわ...」

警備員が全滅したような相手に、ただの風紀委員一人が立ち向かっているという事態に二人はより急いだ。

「ていうか、あいつはそんな何個も能力使うようなやつとやりあえるだけの力はあんの?」

「いえ、私も比企谷さんの能力は見たことはないんですの。無能力者という可能性さえあるぐらいに。状況は比企谷さんが防戦一方ですの」

「なら、余計急がないとッ...」

そう言って御坂はより速度を上げた。


***


ドォン、と爆発の音があたりに反響する。能力によって操作された鉄骨が八幡に向かって飛んでくる、がそれを八幡はバク転し後退することで回避するすぐさま銃を発砲した。

空薬莢が地面に落ちると同時に、木山が銃弾を能力で防ぐ。

「何故だかわからないな。」

木山はポケット手を突っ込んでたったままボロボロになった八幡を見る。

「何がだ?」

「何故能力を使わない?君は無能力者というわけではないだろう?」

能力があるのならなぜ使わないのかが木山には不思議で仕方がなかった。能力を使えばこの防戦一方の状況を打破できるきっかけになる可能性があるからだ。

「あぁ確かに俺は無能力者ではない。」

より一層木山の疑問が深まる。なら何故?と言おうとしたが、八幡の次の言葉でかき消された。

「俺の目的はお前を倒すことじゃない。あくまで最終的に拘束という状態にしておけばいいだけだ。」

「なんだと?...そうか御坂美琴か」

「あぁ天下無敵の超能力者様だぞ?流石のお前でも厳しいだろう」

つまり、八幡を御坂が到着する前に倒して先に行かなければゲームオーバーというわけだ。

「だが、勝てる勝てないはやってみないとわからないんじゃないのか?」

だが、たとえ超能力者だろうと今の木山には数の暴力で押し切れるだけの力はある。なにせ一万の能力だ。いかに強大な個であろうと大群にはかなわない。だが、それは超能力者が一騎当千の化け物じゃなかった場合だ。つまりは、試してみないとわからないということだ。

「あんた...研究者だな」

「ククッ無論だな。だが、それを聞いてなおさら君を相手にする必要は無くなった訳だ。」

木山の背後から大量のアルミ缶が空中へ浮かび上がった。姿形はなんの変哲もないアルミ缶だが、あれの正体は重力子を変化させ、アルミを起点に周囲に爆発を起こすという爆弾だ。しかもその威力も生半可なものではない。

「君には色々と聞くことができたのでね。殺しはしないさ。」


覆う。遮る。敷き詰める。まさにこれこそ数の暴力というわけだ。太陽も見る隙間もない。

だが、襲いかかるアルミ缶を横から飛来した紫電の雷撃が粉砕した。そして、直後に轟音が鳴り響く。

「待たせたわね!!」

御坂美琴の登場である。






 
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