川赤子
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第四章
「そういうことに詳しい人で」
「それで、ですか」
「このことを聞いて」
「川赤子の仕業って言ってね」
「そうした話になっている」
「そうなんですね」
「科学的に実証出来るか」
lこうも言った巡査だった。
「そうでない話も多いんだ」
「実際には」
「そうなんですね」
「うん、警察は科学的で実証出来る話には強いけれど」
しかしというのだ。
「科学から離れるとね」
「それが、ですか」
「難しいんですか」
「実は」
「そうなんですね」
「そう、どう考えてこのことはね」
この川辺での赤子の泣き声が行き来する、そのことはというのだ。
「普通じゃないからね」
「ですね、科学的に証明出来ないですね」
「赤ちゃんがあちこち移動するとか有り得ないですし」
「それを考えたら」
「普通に異常な話ですね」
「そう、科学的に実証出来ない」
巡査はまた科学の話を出した。
「そうした話だから」
「じゃあこのことは」
「どうなるんでしょうか」
「放っておいてね、署長の話だと」
ここでまた署長の話が出た。
「探していている人が川に落ちて濡れるのを笑うらしいから」
「その川赤子は」
「そんな妖怪だから」
「うん、若し君達が夜になっても探していたら」
その時はというのだ。
「川に落ちてね」
「暗い中で探して」
「そうして」
「妖怪に笑われていたね」
その川赤子にというのだ。
「そうならなくてよかったね」
「川に落ちるとか」
明は巡査のその話を聞いて眉を怒らせて言った。
「冗談じゃないですよ」
「そうだよね」
「俺もこいつも卓球部なんですよ」
ひかるも指差して言うのだった。
「水泳は嫌いじゃないですけれど」
「淀川でも泳げるけれどね」
「プールで泳ぐ主義ですから」
「それじゃあね」
「はい、遠慮します」
「私もです」
ひかるは川、淀川の方を見ながら巡査に答えた。
「川に落ちる趣味はないですから」
「だから赤ちゃんの泣き声がしたら捨て子とかかも知れないって探すのはいいけれど」
「泣き声が行き来する様なら」
「探さない方がいいよ」
「川赤子かも知れないからですね」
「そう、特にこうした川辺ではね」
「わかりました、けれどそんな妖怪もいるなんて」
淀川の静かな流れを見つつだ、ひかるはまた言った。岸の向こう側の北区の街並みはいつもと変わらない。
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