川赤子
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第三章
「見付からなかったな」
「何処を探しても」
「泣き声があちこちに移って」
「何、これ」
「赤ちゃんの声確かに聴こえるのに」
「あちこちに移って」
「そこに行ってもいないってな」
明はどうしてもわからないという顔になっていた、そのうえでの言葉だ。
「何だよこれ」
「赤ちゃんだから」
「行き来もな」
「出来る筈ないのに」
「訳がわからないにも程があるぞ」
「本当にね」
「けれどな」
明は周りを見回した、部活帰りの道はもうすっかり赤くなっていたがそれが真っ暗になっていた。そしてだった。
その中でだ、こうひかるに言った。
「暗いしな」
「帰らないとね」
「ああ、帰ろうな」
「そうしましょう」
こう二人で話してだ、そしてだった。
二人はそれぞれの家に帰った、二人共家で帰るのが遅いと親に少し言われた。そして次の日その川辺に行くと。
赤子の泣き声はしなかった、それでだった。
二人で首を傾げさせてだ、あらためて。
明の携帯で警察に連絡をして一人の巡査に来てもらって話をした。すると。
巡査は難しい顔でだ、二人にこう言った。
「またあいつか」
「あいつ?」
「あいつっていいますと」
「川赤子っていってね」
巡査は二人にこの名前を出した。
「妖怪がいるんだ」
「妖怪って」
「まさか」
「いやいや、そのまさかだよ」
巡査は自分の言葉にいぶかしむ顔になって二人にまた話した。
「ここには出るみたいなんだよ」
「その川何とかという妖怪が」
「何とか赤子っていう」
「君達以外にもね」
「ここで探した人いるんですか」
「赤ちゃんの泣き声を聴いて」
「そうなんだよ、まさにこうした時間にね」
夕方の、というのだ。
「出て来てね」
「それで、ですか」
「あちこちで泣いてですか」
「こっちに行ったらあっち、あっちに行ったらそっちで」
巡査もこの表現を使った。
「そうして人を探させているんだ」
「そうだったんですか」
「道理でおかしいと思いました」
「これはね」
まさにと言うのだった。
「最近ここでこうした話がよく警察に言われていてね」
「調べたら」
「妖怪なんですか」
「署長が言ったんだ」
巡査の署のというのだ。
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