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SAO--鼠と鴉と撫子と

作者:紅茶派
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9,第一次忍界大戦!?

 
前書き
内容がタイトルバレしてるのはスルー。
それではどうぞ。 

 
「ボス戦に行ったことがない……だと?クロウ君は最前線で活躍したと聞いていたのは間違いなのか」
「ああ、間違いないよ。俺は最前線でプレイしてた。だけど、ボス戦には一回しか参加してないんだ」
「矛盾しているだろう、それは」

ヤヨイは俺の顔をいまだに信じられないという顔で見ている。
まだ攻略組と対面していない彼女は恐らく俺の事をこう思っていたはずだ。

最強プレイヤーの一人、と。

だけど実際はそうじゃない。
俺が得意な分野は、根本的にボス戦とは相性が悪い。

「まあ、説明するのが難しいんだよ。俺の戦闘は--」

その瞬間、レストランのドアが乱暴に開かれた。逆光の中で入ってくるのは

「アルゴ殿!!!今日こそは逃さぬでござるよおぉぉぉ」



闖入者は恐るるべきスピードでコチラの退路を塞いだ。
アルゴの反応も見事なもので、一瞬のうちに立ち上がり、同じく立ち上がった俺の背中の後ろに隠れ、顔だけ覗かせている。
右手で背中に差しているシミターを握り、もう片方の腕は斜め後ろにすっと伸ばしてわずかに腰を下げている。

いわゆる、忍者走りというやつだ。

「今日こそは、エクストラスキルの在り処、聴かせてもらおうか?」
「だから、オイラはアレについては売らないっていってるだロ。しつこいにも程があるゾ」
「情報屋が情報を教えないとは前代未聞。金なら払うでござるよ」

シミターやパイレーツマスクで創意工夫ある忍者姿と、ゴザルという口調。
そう言えば、そんな奴らがいるとβテストの時にも聞いたことがある。
確か二人組のギルド名は「風魔忍軍」、まさかこの生命のかかった状況でも、信念を曲げずに趣味に走るとは。

こいつら……正真正銘のアホだ。

「だぁぁ、オイラは恨まれるのはゴメンだから嫌だって言ってんだナ。「体術」の情報を得らないのは金の問題じゃないんだナ」
「嘘を申すな。言わなければそれこそ恨み殺すでゴザル」

俺を挟んでエクストラスキルがどうとか言って興味がそそられたが、「体術」と聞いてテンションはガタ落ちした。
体術、か。そろそろ2層に取りに行くのもいいかもしれない。

しかし、俺を挟んで舌戦を繰り返されると、どうにも煩くて堪らない。
アルゴは隠れている手で必死に俺の革製のコートを掴み、ギュッと引っ張り続けている。

ヤヨイはヤヨイでこの珍客にどう接すればいいのかわからないらしい。右手が腰の剣に行ったり来たりを繰り返しているだけで、どうしようという感じだ。

しょうが無いなぁ、こいつらには日頃から思うところあったし。俺は助け舟を出すことにした。

「女娘一人に二人がかりとは忍びの名が廃る。スキルを得たくば、この俺を倒してからにしな」
「「おのれ、貴様伊賀者か!!!」」

「……まて、なぜそうなる?」

冷静に突っ込む俺の後ろで、アルゴがはぁ、と溜息をついて呟いた。

クロちゃんの、あほんだら。

かくして、エクストラスキルをかけた風魔忍者と伊賀者(俺)の決闘は表の広場で行うことになった。




風魔忍軍二人が勝てば、アルゴは潔く「体術」の情報を渡す。
俺が二人に勝てば、今後一切アルゴを追いかけまわさない。

二対一の変則的な決闘の開催に滞在していた多くのプレイヤーが顔を覗かせている。
単に、悪い意味で目立っている風魔忍軍を冷やかす目的もあるとは思うが。

「しかし、いいのでゴザルか?我ら二人のレベルは攻略組とほぼ同じでゴザルよ」
「良いハンデだから大丈夫だ」

ルールはいつもの初撃決着モード。スイッチされただけでも、俺は一環の終わりだろう。

普通なら、な。

気になって辺りを見回すと、レストランの入口に立っているアルゴとヤヨイは対照的な様子だ。
ヤヨイは今すぐにでも助太刀しようと曲刀に手をやって俺に眼で参戦を訴えでている。
アルゴはそんなヤヨイを抑え、少しでも遠くで待機しようとしていた。

まあ、百聞は一見に如かず。俺の戦闘は口で語るよりも見せたほうが何倍も分かりやすい。

カウントが目の前で減っていく。残り5秒のところで、俺は左右の手でナイフを抜いた。

「風魔のお前らには前々からムカツクことがあったんだよーー」

残り2秒。俺は頭を完全に戦闘に切り替えた。
「--AGI極振り型の印象、悪くしてんじゃねぇ」





開始の瞬間、俺は初っ端から投剣系引き撃ちスキル「ショットアウェイ」を放った。このスキルは攻撃の反動で後ろに退避でき、遠距離攻撃の投剣には非常に美味しいスキルだ。
予想通り、飛び込んできた風魔忍のコタローに轟音を響かせてナイフが突っ込むが、さすがに読まれていたのか思いっきりジャンプして躱された。流石にAGI壁、だけど、二人の行動をこれでバラバラに出来た。

吹っ飛んでいた空中で俺はさらなる追い打ちをかけるべく、体を大きく前に倒す。左手に残るナイフを地面に突き刺しながら勢いを殺し、地面を風の様に走るイスケに狙いを定めた。

短剣の突進スキル「ウインドダイブ」のシステムアシストが体を包んでいく。

「ォォォォオオオオオオ」
煌めく一迅の風となって、俺はイスケを強襲する。イスケはシミターを振って迎撃をするが、俺はその振るわれたシミターの方に狙いを定める。

ガッキイン、と金属のぶつかり合う激しい音と共に、2つの得物が空中へと舞い上がる。俺は勢いそのままにイスケへと肩口から体当たりを決める。「体術」はまだ習っていないのでダメージ計算は適用されないが、イスケの軽装な体がフワリと舞い上がり決定的なチャンスを作り上げた。

「ッナヌ!?」

新たな得物をオブジェクト化しようとしていたイスケの顔に驚愕の色が浮かぶ。
自分はまだストレージすら開けていないのに、俺の両手には既に日本のナイフがオブジェクト化しているんだ。そりゃあ焦るだろうな。

「--クイックチェンジだ。覚えとけ」

そのまま、「シングルシュート」を放つ。銀閃はシステムアシストの赤い光をユラユラと揺らし、目の前の得物へと襲いかかる。さっと体を縮こめてダメージを減らそうとするイスケの前にふっと影が横切った。

「イスケェェェ、助太刀するでゴザルゥゥ」

空中へとジャンプしていたコタローがぎりぎりのタイミングで入り込んで、俺のナイフを無理やりガードした。さすがにダメージ判定がついたようでコタローのHPゲージが目に見えて減少する。

「コタロー、すまぬ。不覚を取った」

二人同時に着地してお互いに遠い目で友情を確認しあう忍達。なにやら「熱い友情なんたら」でステータスアップのバフが付きそうなほどだ。

「さてと、準備運動は終わったな」

もう一度クイックチェンジでナイフをオブジェクト化し、すっと構え直す。
最近はヤヨイにあわせて戦闘していたから動きは訛っているが、こいつら程度なら問題無いだろう。

「--<旋風(せんぷう)>クロウ、推して参る!!」 
 

 
後書き
アルゴさんの宿敵、と言えばもう彼らしかいないでしょう。

レベルだけならトップクラス。笑いにMPKにと何でもこなす「風魔忍軍」初登場です(笑)

なんて書いていて楽しいんだこいつらは。

サクッとクロウが蹴散らして終わらせるつもりが、筆者の意図に逆らってコタローのやつ、ガードしちまいました。
これが俗に言うキャラが勝手に動くというやつなのか?

というわけで、続きます。


 
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