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魔法少女リリカルなのは -Second Transmigration-

作者:navi
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第6話 別離

 
前書き

第8話です
ではどうぞ~
 

 

8月のある日、父さんに一本の電話が入った。相手は父さんの仕事仲間らしいが……
父さんは電話を受け取ると、いつになく真剣な目で電話を聞いていた。数分の電話の後、父さんは部屋に戻って荷造りを始めていた。


「悠里、悪いけど仕事が入った。3日位は家に居ないから、桃子さんに言って泊めさせては貰ってくれ」


どうやら緊急の用事らしい。
……だが、今まで一度もそんな連絡は一度もなかった。
母さんが生きていた時だって、緊急が無いのがいいところだと自慢していたのに、なんで今更になって呼び出しなのか……
それだけが何故か引っかかっていた。


「……悠里?どうかしたか?」


考え事をしていると、父さんは覗き込むように俺を見てきた。それが父さんには不安な顔に見れたようで、父さんは頭を撫でてきた。


「心配すんなよ。3日後のお前の誕生日には帰って来るからさ、うまい飯、頼むぜ?」

「……それって逆じゃん」

「ハハハ、それもそうか」


父さんはワシワシと力を入れて撫でて手を離した。


「……じゃ、いつものやるか」


俺は頷くと、胸の目の前に両手を持って行き、剣を構えるような態勢になる。


「夢を抱きしめろ、そして……」

「どんな時でも、ソルジャーの誇りは手放すな」


いつも父さんが仕事の前に俺とやるおまじないみたいなものだ。
……そういえば、なんでソルジャーなんだろうか?この世界にはないはずだけどな……


「じゃあ、行ってくるな。いい子で待ってろよ?」


そう言って父さんは出た。
……これが、俺と父さんの最後の会話になったと知ったのはそれから数日後の事だった。
それから2日後の朝、朝食を食べ終えてから食器を片付けていると、


パキッ!

「っ!!」

パシッ!


片づけているうちにマグカップの一つの取っ手が外れ、床に落下した。慌ててキャッチしたので、落下して割れることはなかった。


「危なかった……」

「大丈夫?悠里くん」


なのはが心配そうにこちらを見てきた。怪我はないので、まずはなのはを安心させてマグカップをテーブルに置いた。


「これ、父さんのだったのか」

「取っ手が取れちゃったね。直せるかな?」

「多分、大丈夫だろうけど……」
「あとでお兄ちゃんに頼もうよ。琉聖さんが帰ってきたとき、無かったら大変だもん」

「そうだね」


そう言って俺となのはは恭也さんのところに行き、修理をお願いした。
……だが俺には、これが何か不吉なことを予言してるのではないかと、思えてならなかった……
そしてその夜、この予感は的中することになる。
もうすぐ日が変わろうとしていた時間にまた電話が掛かってきた。電話を取ったのは恭也さんで信じられない、という表情になった。


「悠里、すぐに俺と来い。琉聖さんのことだそうだ」


いつになく落ち着きの無い口調で恭也さんは俺に言った。俺はとりあえず頷くと、場所はどこか聞いたが、「行けばわかる」とだけ言って、入れ違いになった桃子さんになのはを任せ、俺は恭也の運転する自転車に乗って目的地へと向かった。
出発してから十数分、恭也さんは士郎さんが入院している病院に到着した。自転車を降りると、恭也さんは「こっちだ」と言って俺の手を引いて歩いた。やがて一つの部屋の前に着くと、部屋の前には士郎さんが待っていた。


「父さん」

「あぁ、来たか恭也。……悠里くんも」

「それよりも琉聖さんは?」

「中だ。……悠里くん、落ち着いて見るんだよ?」


俺は恭也さんと共にその部屋のドアを開いた。けど入る少し前、恭也さんで隠れて見えなかった部屋の名前が見えたとき、俺は全てを悟ったんだ。

だって

その部屋の名前は……





『霊安室』

だったのだから。





部屋の中央には1人の人が寝かされていた。俺と恭也さんは寝台に近づくと、その人物の顔に被された布を取る。現れた顔は……


「……父さん」


父さん、天城琉聖だった。
……わかっていたことだ。転生の際に、あの神様から一緒にいれるのは『原作開始の3年前』までと言われた。
ならばここまで生きれたのはすごいことだ。
わかっている。わかって……いるのに


「……なん、で」


なんで……涙が、止まらない?
頭ではわかっているのに……
こうなるって、わかっていたのに……なのに、何故……


「ぅ……ぁ…あ…」


いつしか、俺は声を出して泣いていた。恭也さんはそれを悟ってか、顔を手で隠しながら部屋を出て行った。


「う……う、ぅわああぁぁぁあぁあぁあぁぁぁん!!」


恭也さんが退室したのを確認すると、俺は大声で泣いていた。

想いの全てを、涙に変えて。

暫くすると、俺はヨロヨロと立ち上がり、父さんの顔と向き合う。

「……今までありがとう。そして……お休みなさい」


父さんに言って俺は霊安室を後にした。部屋を出ると、士郎さんと恭也さんも泣いていたようで目は赤くなっていた。
2人は心配そうに俺を見てきたが、中で泣いてきたせいか涙はもう流れてこなかった。





それから2日後、父さんの葬儀が行われた。葬儀自体は小さいもので、数人の知り合いとが集まって行われた。士郎さんはまだ入院してなければいけないのだが、無理をしてでも出たかったらしく、松葉杖を突いて出席した。
小さい葬式たが、近所の人達が何人も手伝いに来てくれたお陰で準備は順調に進めることができた。父さんの人望と人柄に感謝。





そして迎えた葬式当日、思いもよらぬ人物達が来た。
相手は天城の本家、父さんの兄妹なので俺の叔父叔母にあたる。
……だが、今まで父さんが絶対に会うことを拒んでいた親族が今になってなんで来たのだろうか?
……それはすぐにわかった。


「悠里を引き取る?」


葬式後、居間に叔父叔母、高町家の面々が集まっている中で最初に話したのは叔父だった。どうやら親を両親を亡くした俺を正式に本家へ迎え入れたいらしい。


「御当主が昨日になっていきなり言ったのでね。……こっちも驚いたよ。勘当した兄貴の息子を引き取るって言うんだからな」


叔父はハァ……と溜め息を吐きながら話していた。
俺はお茶を入れ直しに台所へ向かった。居間での話し合いの流れからすると、俺は天城の家に引き取られるだろうな。
親権とか色々問題あるし……とりあえずなのはとはここまでか……

ピンポーン

そう考えているところへ来客があった。他の人達は居間で話しているので、俺は玄関へと向かった。





恭也side

俺達は悠里の叔父叔母の話を聞いていた。悠里はどうやら、この後は天城の家に預けられるそうだ。当然と言えば当然か。それに、確か天城の家は川神流の本家だ。悠里の才能も考えると、それが一番いいだろうな。


「それにしても……父さんにも困ったものだわ」

「全くだ。勘当したのは自分の癖に、俺達に息子の向かいに行かせて……しかも、自分は明日に来ると言ってるんだからな」


俺達の前で2人ただ、それを命じた悠里の祖父の愚痴を零した。


「それに、兄さんは好きな女を追いかけて天城を出たのよ?どうせ碌でもない仕事しかしてないわよ」

「全くだな。天城を黙って継いでればいいものを……お陰でこっちは無理矢理に家を継がされていい迷惑だ」


どうやらこの2人は琉聖さんのことをよく思っていないらしい。さっきなの話し方から気付いていたが、本当にこの2人の下で悠里は大丈夫なのだろうか?


「ですが、悠里くんはいい子ですよ。武術にも熱心ですし、気配りもできる。本当にいい子です」

「どうだか。葬儀の最中に一度も泣いていなかったじゃないか。自分の親が死んだと言うのに」

「そうね、顔色一つ変えなかったわ。見てるこっちが薄気味悪いったらないわよ」

ギリッ……!


その言葉を聞いたとき、俺は奥歯を強く噛み締めた。
ようやくわかった。琉聖さんは親戚に合わせなかった理由はこれだったのか。


「まぁ、それでも兄貴の子供だからな。さっさと跡継ぎになるまでに成長したらそれまでだ」

ブチッ!!

「ふざけるな!!!」


俺は大声を上げて2人を見た。





悠里side

先程来たお客さんを居間に案内使用とした時、居間から恭也の怒声が聞こえてきた。俺はその様子を外から伺っていた。


「さっきから聞いていれば、アンタ達は悠里をなんだと思ってる!?アイツはアンタ達の道具じゃないんだぞ!?」

「ハッ、それがどうした?こっちは無理矢理兄貴の子供を押しつけられたんだ。それなりの報酬はしてもらってしかるべきだろう?」


報酬?……あぁ、父さんの遺産の事か。


「……まさか、最初からそのつもりで?」

「当たり前だろう?でなきゃ、いくら御当主の決定だからと言ってあんな子供を引き取る?」

「本当ね。自分の親の葬式にも泣かない、無愛想な薄気味悪い子供だもの。お金が無かったら引き取るものですか」


2人はしれっとした態度で言い放つ。それを聞いた恭也さんは顔をさらに強ばらせ、あの士郎さんですら目が完全に怒っていた。


「……腐ってるな。琉聖さんが近づけさせたくないわけだ」

「やめろ恭也」


士郎さんはそれ以上言わせまいと恭也さんの肩を掴み発言を止める。恭也さんはまだ納得してないようだったが渋々と座った。


「あなた方が琉聖のことをどう思おうが、どう言おうがあなた方の勝手です」


ですが……、と士郎さんは目を一度閉じて


「子供に罪はない。子供を利用して金を儲けるような考えの人間に、親になる資格は無い!!」


士郎さんは毅然とした態度で2人に言い放った。流石は父さんの友人でありライバルだ。今もその体から武人としてのオーラが溢れている。


「それに俺は悠里くんの小さい頃からずっと見てきた。家は違っても、あの子は俺の息子の1人だ。あなた達に悠里くんは渡さない」

「それは勝手過ぎないか?大体、あの子の親権は親族である我々の方が強いぞ」

「確かにそうでしょうね。俺もあなた方が今のような発言が無ければ、何も言いませんでした。だがあなた方の下で、悠里くんが幸せになれるとは思いません。あの子の事はウチの家族はよく知ってますから」

「どうだか。本当は遺産目当てなんじゃないの?」

ギリッ……!


叔母の発言に今度は俺が奥歯を噛み締めた。
士郎さん達の事を何も知らない癖に、この叔母は……!


ポンッ

「大丈夫よ悠里くん。あとは任せなさい」


一緒にいたお客さんは俺の頭を撫でてからそう言うと、居間の襖を開けた。


「その話、少し待って貰えますか?」


中にいた人達は少し驚いた顔になる。最初に口を開いたのは叔父だった。


「あんた誰だ?」

「私、天城琉聖さんの専属弁護士でして……こういう者です」


弁護士さんは名刺をそれぞれに渡す。渡された名刺を見て名前を確認した。


「弁護士……箕笠、え……?」

箕傘詠瑠(える)。変な名前でごめんなさいね」

「……で?その弁護士さんがなんの用だ?」


叔父は少し苛立ちながら箕笠先生を見る。先生はそれに臆することなく話し始める。


「すみませんが、今の会話は聞かせていただきました。この話、明日までに待ってくれないでしょうか?」

「何故そんな必要がある?」


この場で話を決めたいのだろう、叔父は語気を強めた。


「実は……生前に琉聖さんから悠里くん宛てに遺書を預かってまして……すぐにでも公表しなければと思い伺った次第です」


先生は爆弾発言をするのであった。……果たして、その内容は如何に?
 
 

 
後書き


というわけで、お父さんとの別れです。

なかなか難しい内容でしたが、いかがでしたでしょうか?

それでは次回でノシ 
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