黄鶴楼
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第二章
「それでもね」
「なら行かれてもいいです」
「気が晴れるなら」
「そうして気持ちを入れ替えたりしつつです」
「学問に励めば」
「よりいいと思います」
辛としてはというのだ。
「ですから」
「そうだね、ではね」
「黄鶴楼にもですね」
「行ってみるよ」
こう辛に答えてだ、劉は学問の合間に散策をする様になった。するとずっと家にいて書を読むよりもだった。
学問が進んで覚えられる様になった、これに気をよくしてだった。彼から辛に言った。
「よし、黄鶴楼にもね」
「行かれますか」
「明日行こう」
家に帰り夕食前に言った言葉だ。
「いよいよ」
「そうされますか」
「そしてね」
黄鶴楼に行き、というのだ。
「最上階まで登ろうか」
「そうされますか」
「うん、そしてね」
そうしてというのだ。
「そこから景色を楽しもうか」
「それでは明日は」
「辛さんが言った通り朝早く起きて」
普段よりもだ、もっと言うと劉はいつも日の出の時には起きてそうして書を読んでいる。その結果郷試にも及第しているのだ。
「そしてね」
「そして、ですね」
「学問をする前にね」
「黄鶴楼に行かれて」
「登って景色を観よう」
「それではお供します」
「悪いね」
こう笑顔で言ってだ、そしてだった。
彼はその日の夕食を食べて寝るまで学問に励み。次の日は。
まだ暗いうちに起きてだ、同じ頃に起きた辛と共に家を出て黄鶴楼に向かった。その道中に日は次第に登ってきていた。
その白くなっていく中でだ、彼は辛に問うた。
「黄鶴楼は昔からあるね」
「唐の頃にはよく詩で詠われていました」
「李白とかね」
「そうでした」
「その黄鶴楼に登る」
「感慨がありますか」
「ずっと意識していなかったけれど」
科挙のことばかり考えていてだ。
「それでもね」
「今はですね」
「うん、これから登ると思うとね」
「感慨がありますか」
「楽しみだよ」
その顔を微笑まさせての言葉だ。
「実にね」
「では」
「科挙のことも大事だけれどね」
「そういえば科挙ですが」
辛は劉のすぐ後ろを歩きつつ劉に言った。
「都が北に移り五十年、帝も代わられて」
「落ち着いたね」
「最初の頃は及第してもでしたね」
「ここだけの話だけれどね」
劉は辛の方を苦い顔で振り向いて言った。
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