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IS~夢を追い求める者~

作者:かやちゃ
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第2章:異分子の排除
  第31話「トーナメントに向けて」

 
前書き
トーナメントまでの場繋ぎな話です。若干展開が早いので少し間があります。
タッグトーナメントに変更されたのはちょっと早い時期に発表されてる設定です。
連携とかいろいろと考えないといけないのでそれで早めになっています。
...オリ展開どうしよう...。
 

 






       =秋十side=



「...桜さん、どうするつもりなんだ...?」
  
  朝のHR前、俺はポツリとそう呟いていた。
  あれ以来音沙汰なしの桜さん。
  学年トーナメントのペアはどうするつもりなんだ...?
  一応、決まらなかったらランダムで組み合わせられるらしいけど...。

「....あいつは一人だ。」

「っ、ちh..織斑先生、いつの間に...。」

  早めに来ていたのか、背後にいた千冬姉がそう言った。

「一人?...え、桜さんだけソロですか?」

「ああ。...あいつはそれで充分だ。幸い一年の人数も奇数だからな。」

  ...どこか“ざまぁみろ”的な意思が感じられる声で、千冬姉はそう言う。
  昨日の事、まだ恨みに持ってるんだな...。
  千冬姉は言いたい事は言ったのか、立ち去って教室の入り口でチャイムを待った。

「...まぁ、その方が俺たちとしても安心か...。」

  桜さんがどんなに弱い奴と組んでも、なぜか勝てる気がしない。
  それどころか、ペアの人が魔改造されていそうだ...。

「...って、俺もペアの人を探さないと...。」

  組むとすればそれなりに喋っている人との方がいいだろう。
  本音は簪と組むらしいから却下で、他にいるとすれば...。

「うーむ....。」

  ちょっと席を立ちあがり、目的の人物に近寄る。

「鷹月さん。」

「し、篠咲君!?」

  その人物は、青がかった黒髪のショートカットの両側にヘアピンをつけてる女子、鷹月静寐(たかつきしずね)さんだ。
  手元にはジョークが満載っぽい本がある。
  生真面目な性格だけど、こういう本も読んでるんだな。

「これ...できたらでいいんだけど...。」

「これって...トーナメントの....えっ!?私!?」

  トーナメントの紙を渡し、組んでくれるか聞くと、驚かれる。
  ...周りの女子が食い入るように見てくるんだが...。

「な、なんで私?」

「うーん...俺、不器用だからさ、連携とか上手くするにしても、一番相性がいいと思ったのが鷹月さんなんだ。普段は生真面目だからさ。」

「相性...そうなんだ。」

  なぜか顔を赤くして照れる鷹月さん。
  ...周りの様子からしてもこのタイミングで自分から声をかけるのは失敗だったか...。
  でも、今更後には引けないし、いいか。

「出来たらでいいからな?...っと、時間もあるし返事はいつでもいいから。」

「あ、うん。」

  これでダメなら素直にランダムで選ばれるのを待つか。
  とりあえず、もうすぐHRが始まるので席に戻る。

「...篠咲弟...お前、思い切ったな。」

「えっ?....あっ...。」

  千冬姉にそう言われ、周りを見渡すとどう考えても注目されていた。
  ...自分が世にも珍しい男性操縦者だってこと失念していた...。
  鷹月さんも俺が話しかけたから色々聞かれてるし。

「(やっちまった....。)」

  ..とりあえず、鷹月さんのためにもしっかりと弁解していかないと...。
  女子の噂の伝達速度は半端じゃないからな。...おまけに尾ひれ付くし。
  変に誤解されるかもだし、マドカ達にも協力してもらうか...。

「(ごめん。鷹月さん...。)」

  多分、いらぬ誤解で変に迷惑かけるだろうと、心の中で謝っておく。
  ...これじゃ、断られるだろうな。







「あ、篠咲君。今朝の事だけどね、いいよ。」

  昼休み、マドカやユーリと食事を取っていると、鷹月さんがそう言いに来た。

「いいのか?てっきりタイミングもあって断られると思ったが...。」

「そ、そんな事しないよ!?...いや、まぁ、皆に色々言われたけど...。」

  やっぱりいろいろ言われたみたいだ。申し訳ない。

「あー、やっぱりその事だったんだ。あの噂。」

「...マドカ、一応聞くけどその噂って...。」

  昼休みまで既に広まっているのに驚きつつ、どこまで尾ひれがついたか聞いてみる。

「...鷹月さんと、秋兄が付き合ってるって...。」

「どうしてそうなった!?」

  なんか変な方向に噂が歪んでる!?

「悪いけど、できるだけその噂を払拭しておいてくれないか?」

「んー...今度何か奢ってね?」

「....わかった。」

  ...協力を取り付ける事はできたが、財布の中身が寂しくなりそうだ...。

「それにしても、鷹月さんとかぁ...。...手加減してあげてね?」

「えっ、なんの?」

「連携の練習とか、トーナメントまでにしておくんでしょ?秋兄、自分に甘くないから厳しい練習になるかもだよ?」

「そ、そうなんだ...。」

  マドカが俺に忠告し、それを気にした鷹月さんにマドカは説明する。
  ...確かに努力を怠らないためにも自分を甘やかさないけど、そこまでひどくないぞ?

「秋十さん、素振り1000回とか普通にしますから...。」

「....えっ。」

「それは個人的な鍛錬だよ。連携の練習ではしないって。」

  ユーリの言葉に鷹月さんが“早まったかな...”なんて言ってるし...。
  別に他人にまで自分と同じ練習は課さないのに。

「ちなみに、鈴は同じ組の子と組むらしいよ。私も同じ組と。ユーリは...立候補した人がそれなりにいて、今日の放課後決定するみたい。」

「...なんか、誰がふさわしいかとか決めるらしいです。」

「...ユーリも大変だな...。」

  四組では完全にマスコット扱いらしいし、色々あるのだろう。
  この前上の学年(というか姉)に勝ったのもあって、人気も上昇しているみたいだし。

「セシリアはどうなの?」

「確か...同じイギリスの子と組むって言ってたな。」

「あー、やっぱそうなるのかぁ...。」

  そこから、鷹月さんも交えて楽しく昼食を過ごした。
  ...周りから鷹月さんが羨望の眼差しで見られてたけど。
  また変な噂とか出ないよな?







「...まずは何をするの?」

  放課後、俺たちはアリーナを借りてトーナメントに向けて特訓していた。

「あー...そうだな。模擬戦の許可も取ってあるし、ちょっと全力で来てくれ。」

「えっ?...戦うの?私と篠咲君で?」

「まぁな。実際に戦った方がお互いの実力がよくわかるだろ?」

「確かに...。」

  俺の言う事に納得がいったのか、鷹月さんはとりあえず構える。

「じゃあ...来い!」

「....行くよ!」

  鷹月さんの使うISは“ラファール・リヴァイヴ”。
  デュノア社が開発した第3世代にも劣らない量産機だ。

「っと!!」

  鷹月さんは俺から距離を取りながらライフルを展開し、それで撃ってくる。
  まだISを使いこなせていない節があり、展開のスピードも狙いも甘かった。
  俺は飛んでくるライフルの弾を、当たりそうなのは弾きつつ避ける。

「(...なるほど。接近戦とか、精密射撃はまだできないから数で攻めてきたか。)」

  俺に近づかれないようにしつつ、ライフルで乱射してくる。
  とにかく撃ちまくれば、どれだけ下手でも...それこそ本音並の命中率の低さでも当たるだろうしな。....いや、本音の場合それでも外しそうだ。

「(...っと、防いでるだけじゃダメだな。まずは...遠距離戦から!)」

  ライフルの攻撃を一度大きく避け、その間に俺もライフルを展開する。
  この戦いは鷹月さんの実力を見る戦い。遠距離近距離両方やらないとな!

「(セオリーな戦い方で、どんな動きか見極める!)」

  ライフル弾を避け、逆に俺が反撃として撃つ。
  それを鷹月さんは危なげながらもなんとか躱す。

「(言ってはあれだけど、射撃精度、回避技術共に並程度か...。まぁ、俺よりはマシだな。)」

  それを見て、俺はそんな判断を下す。
  少なくともISに慣れていない頃の俺よりはマシな動きだ。

「じゃ、次は近接戦!!」

「っ...!!」

  敢えて声を上げ、一応気づかせておく。
  甘いかもしれないけど、ちゃんとした実力が見たいからな。
  そう思いつつ、ブレードを展開して接近する。

「速っ...嘘!?」

「はぁあっ!」

  ライフルを迂回しながら回避し、回り込むように接近する。
  当たりそうなのは片っ端から弾いていたため、鷹月さんは少し驚いたようだ。

「っ....!」

「はっ!」

「きゃぁあっ!?」

  ライフルが牽制にもならないと悟った鷹月さんは、慌ててブレードを展開しようとする。
  しかし、立ち止まっているうえに、展開に少し時間がかかるため、その前に俺が接近して一閃する。...我ながら容赦ねぇな。

「く...ぅう...!」

「はぁっ!」

「っ...!」

  吹き飛ばされ、それでも立ち上がろうとした鷹月さんに再度接近する。
  俺が振りかぶり、咄嗟に展開しておいたブレードで防ごうとして...そこで寸止めする。

「...終わりだ。SE削り切ったら他が何もできなくなる。」

「ぁ...あ、うん...。」

  ブレードを仕舞い、鷹月さんにそういう。
  一瞬呆然とした鷹月さんだが、終わったと理解して立ち上がろうとする。

「っ、きゃっ...!」

「っと...。」

  しかし、模擬戦の緊張が解けたからか上手く立ち上がれずにこけそうになる。
  咄嗟に俺が支える事で事なきを得たが。

「し、篠咲君!?」

「悪い。ちょっと思いっきりやりすぎたか?」

「う、ううん...。...緊張しすぎちゃっただけ...。」

  とりあえず、しっかり立たせてから、一度ISを解除する。

「...あー..模擬戦の感想言っていいか?」

「あっ、うん。いいよ。」

  不安そうな顔で俺の言葉を待つ。...言い出しにくい...。

「...まず、判断はよかったと思う。自分の力量が分かったうえでの行動は合ってたし、ライフルが無理だと悟ってブレードに変えようとしたのも合ってた。」

「そ、そうなんだ...。」

  知識自体はあっても、実際操縦するには鷹月さんはまだ初心者だ。
  それに、剣道とかで接近戦の心得もないのなら、ISの授業の一環で特性を少し知っているライフルで攻撃するのは合っている。接近を避けるように後退しながらというのもいい判断だ。

「...だけど、細かい所が力不足かな...。まず展開速度。それと...ブレードを展開する時立ち止まっていた事。...このどちらかを解決していれば、俺の一閃は防げたかな。」

「うっ...。」

「生身に近い動きをしている俺が言えた事じゃないが...ISの機動性をしっかり利用すれば、もっといい動きができるだろうしな。」

  まぁ、鷹月さんは結構筋がいい方だと思うがな。
  ...一応、武術関係や銃関係の心得はないんだろ?その割には動きがいい。

「とりあえず、今日は展開速度の底上げと、ISによる動きに慣れようか。」

「了解。えっと具体的には...。」

「まず、展開速度を上げるには、イメージも必要かな。慣れればアニメとかみたいに手元に出現させるなんて事ができるけど、最初の内は何かの動きに合わせた方がやりやすい。」

  俺も最初は剣道で竹刀を構えるようなイメージだったな。

「ブレードだと居合い抜きとか、鞘から抜く感じがいいと思うな。」

「...ドラマとかアニメでやっている感じ?」

「そうそう。そういうイメージで展開してみればやりやすいぞ。」

  飽くまで例えの一つだから、これでダメなら他のを考えるが...。

「あっ。」

  ...どうやら、そこまで心配する必要はないみたいだ。すんなり展開できた。

「...ブレードはできたけど...ライフルってどんなイメージを...。」

「ハンドガンなら西部劇とかの早撃ちのイメージが使えるけど、ライフルはなぁ...。俺も背中に背負っているイメージだから、ブレードと違ってどうしても遅くなるんだよな...。」

  俺も銃を構えるイメージと慣れでだいぶ早くできたが、教えるのにはやりづらい。

「うーん...あ、そうだ。ライフルで狙いを定めるようなイメージで展開は?」

「えっと....あ、やりやすい...かな?」

  どうやら、いい感じのイメージだったようだ。

「じゃ、後は慣れも必要だから...次は動き回りながら展開の練習だ。」

「うん!」

  一つ一つを確実にやっていく。
  トーナメントまでまだ日にちがあるとはいえ、期間は知れてるからな。
  基礎を固めておいた方が効率はいいかもしれん。







「....ふぅ...。」

  あの後、鷹月さんは目に見える速度で上達し、余程なレベルの相手...それこそ代表候補性に匹敵するような腕前の人が相手じゃない限り、展開速度なら互角に迫る程になった。
  ISの動きにもだいぶ慣れたようで、明日からまた別の事ができそうだ。

「お疲れ。ほい。」

「あ、ありがとうございまs......えっ?」

  スポーツドリンクが差し出され、受け取ると同時に驚いて振り返る。

「桜さん!?いつの間に!?」

「いやー、一段落ついたから戻ってきたんだよ。またすぐに出かける事になるだろうけどな。」

  つまり様子を見に戻ってきたと...。

「千冬姉に謝っておいてくださいよ?でないとまた...。」

「まぁ、次出かける際の外出届を提出する時にでも謝っておくさ。」

  なんだろう。桜さん、全然反省してないような...。

「あ、そうだ。桜さん、トーナメントについてですけど...。」

「ん?ああ、俺だけソロなんだろ?わかってるわかってる。」

「いつの間に...。」

「大体予想してた。」

  ....あー、そういえば桜さんのソロ縛りは千冬姉の私怨もあったっけ?
  まさか、誘導してたのか...?...考えすぎか。

「それじゃ、トーナメントでは期待してるぞ。」

「あ、はい。」

  そういってすぐどこか行ってしまったので、俺の返事もどこか拍子抜けになった。
  ...相変わらず嵐のような人だな。

「...いちいち気にしてもしょうがないか。」

  桜さん、そういう人だし。









       =桜side=





「....おっ、いたいた。デュノアー!」

「え...?桜さん!?」

  秋十君たちの特訓でも見てたのか、アリーナからそう遠くない場所にいたデュノアに声をかけると、案の定驚かれた。

「えっと...会社の方は...。」

「あー、あれ?大体計画は立てたから実行するだけ。ちょっと間が空いたから報告にね。」

「そ、そうなんだ...。」

  ...っと、伝える事伝えておかないとな。またすぐに行かないといけないし。

「多分、トーナメント辺りで色々起こるから、デュノアはトーナメントに参加できないよ。」

「ええっ!?」

「いやぁ、時期をずらしてもよかったんだけどねぇ...。」

  束が取り返しがつかなくなる前にって急いだ結果、この時期になった。

「悪いね。せっかくの一大イベントなのに。」

「あ、いや、別にいいけど...あんまり悪びれてなくない?」

「あはっ、ばれたか。」

  デュノアもこの短期間でわかるようになったね。

「じゃ、俺はまた行かなきゃならんし。」

「あ、うん...。」

  パッと来てパッとどこかに行く感じになったけど、致し方ない。
  ...とりあえず、千冬の所にでも行っておくか。









       =一夏side=





「えっと...一夏、トーナメントは専用機持ち同士は組めないんだよ?」

「は?え...?」

  あいつらのせいで散々原作と違う状態だったので、せめてシャルとペアになっておこうと思い、誘ったのだが、なぜかそう言われた。

「...ルール見てないの?そう書いてあるんだけど...。」

「え、あ...み、見落としてたわ...すまん、すまん...。」

  原作と違う...どうなってんだよ...!

「それに、今年のトーナメントには僕、参加しないから。」

「は...?」

「会社の方で色々あるみたいだからね。棄権した方がいいみたい。」

  なんだそりゃ...?会社の事情?どういう事だよ...!

「そういう訳だから、他の人と組んでね?」

  そう言ってシャルは夕飯を食べに食堂へ向かっていった。

「....なんだよ...なんなんだよこれ...!」

  おかしい...おかしいおかしいおかしい!
  普通なら俺はシャルと組むはずだろう!?なんでルールが変わっているんだ!?
  考えてみれば、シャルが女だとばれる機会もなかった!

「...くそっ..!全部、あいつらの仕業か...!」

  原作と明らかに違う展開。どう考えてもあいつらがいるからだ!
  あいつらさえいなければ今頃俺は原作の一夏のように...いや、それ以上に女子から好かれていたはずだ!なのに、邪魔ばっかりしやがってぇ...!!

「トーナメントで当たったらぼっこぼこにしてやる...!」

  ルールが変わっているんだ。どうせ、相手も変わってるだろう。
  なら、あいつらと当たったら、徹底的にぶちのめせばいい...!

「くくく...ははは...!楽しみだぜぇ...!!」

  おっと、それまでにもっと上達しておかないとな...。
  あいつらをぶちのめすためでもあるが、なぜかセシリアと鈴が操作についてあまり教えてくれないんだよな...。





【.........。】



   ―――彼は気づかない。彼を味方する者は、ほとんど傍にはいないのを...。









 
 

 
後書き
今回はここまでです。これ以上やると中途半端or長すぎになってしまう...。
この後鷹月さん腕前はぐんぐんと伸びていきます。
...オリキャラ&モブキャラがペアになっているので、展開を書くのが難しい...。
だったら専用機持ち同士でも組めるようにすれば良かったって話ですが、どう考えてもパワーバランスがおかしくなるので...。
どの道、トーナメントは決勝までいかない予定です。(飽くまで予定)

そして何気に白式の謀反フラグ。元々束達の味方なんですけどね。 
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