IS~夢を追い求める者~
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第2章:異分子の排除
第30話「デュノア」
前書き
今更ですけどこの小説、処女作(同時進行中)より読んでいただいている人が多いんですよね...。
...作品の差か(なお五十歩百歩)。
=out side=
「....くそっ...どうなってやがんだ...!」
誰も居ない寮の一室。本来ならいるルームメイトもちょっとした野暮用で今はいない。
そんな部屋の中で、一夏は壁に拳を当て、唸っていた。
「シャルがあいつらと交流したのは特に問題ない。ルームメイトにもなったし、普通にまだ“転校生”として行動してるだけ...だが!」
歯軋りし、思い浮かべた人物を睨むように前を見据える。
「ラウラのアレはどういうことだ!?俺が殴られたのはまだいい。...なんであいつらと知り合いなんだよ!!」
吠える様にそう吐き捨てる。
「あいつらめ...!とことん俺の邪魔をしやがって...!」
自分の思い通りにならない事に一夏は憤る。
...尤も、桜たちの目的がそれだから仕方のない事なのだが。
「いつの間にか洗脳も使えなくなっちまってるし...。くそっ、なんなんだよ!!」
彼は思い出す。今までどんな事をやってきた..いや、どんな事が出来ていたのかを。
千冬や束を始めとした女性を洗脳し、好き勝手をしてきた。
しかし、この学園ではほぼ全てが自分の思い通りになっていなかったのだ。
「俺が主人公だ!俺が一夏なんだ!モブでもイレギュラーでも転生者でも!全部俺に従えよ!くそが!!」
喚き散らすように叫ぶ一夏。
...だが、現実は非情である、
元々、自分の欲望の赴くままに悪事をしてきたのだから、因果応報とも言える。
―――....だが、二人の復讐はその程度では終わらない。
=桜side=
「...いやはや、滑稽だねぇ。」
「..?なに見てるんですか?」
「いんや、何も。」
ちょいと仕掛けておいたカメラ&マイクで拾った織斑の映像と音声を聞いていたら、秋十君が話しかけてきた。
「(てめぇの思い通りなんざさせねぇよ。...地獄を味わえ...ゆっくりと...な。)」
俺の幼馴染や、秋十君の大事な友達、家族の“心”を惑わしたんだ。
...それ相応の覚悟はできているよな?...まぁ、出来ていなくても変わらないがな。
「(...しっかし、彼女には辛い役目押し付けてしまったなぁ...。“原作”通りだから彼女になるのは仕方ないが...また愚痴に付き合ってやるか...。)」
ま、本気で嫌がるなら俺も束も対策するけどな。
「さて...そろそろか。」
「...?なにがですか?」
「いや、ちょっとな。」
俺の呟きに聞いてくる秋十君だが、適当にはぐらかす。
.....来たか。
「えっと...入っていい?」
「おう。いいぞー。」
「へ?デュノア?」
ノックの音と共にデュノアの声が聞こえたので、ドアを開けて招き入れる。
「よっ。よく来たな。」
「あの...話ってなに?」
いきなり呼んだようなものだったので、デュノアは戸惑っている。
「ちょっとした事だ。ほら、そこでいるのもなんだから、こっち来て座れよ。」
とりあえず中の方に招き、ベッドに座らせる。
そして、俺は正面に椅子を置いてそこに座る。
秋十君もデュノアの隣に座った。
「なぁ、デュノア。同じ会社としてデュノア社について調べてみたんだけど、ちょっと経済危機に陥ってるらしいな。」
「えっ?あ、うん。第三世代開発のイグニッションプランから外されて、世界に遅れないようにしているんだけどね...。」
少し...それこそ俺達のような規格外な存在でなくとも、調べれば分かる事だった。
第二世代のラファールじゃ、会社を支えるのに限界が来ているからな。
「それで、物は相談なんだが...うちの会社に異動しないか?シャルロット。」
「えっ!?」
「.....?」
俺の言葉に、驚いたような声を上げるデュノア。
....っと、秋十君は気づいたみたいだな。
「そ、それはできないよ!そんなの、独断で決めれないし、会社を見捨てる真似なんて...。」
「....家族間のしがらみから解放されるとしてもか?」
否定しようとしたデュノアにそう言うと、彼女は固まった。
「シャルル・デュノア。フランスの代表候補生にして、四人目の男性操縦者。...そんな人物は存在しない。」
「な、なにを....。」
しらばっくれても無駄なのにな。
...秋十君が蚊帳の外になってるけど、まぁ後で説明しとくか。
「今の社会じゃ、華奢なままでも男装するだけでほとんど騙せるけど、一部はそうはいかないんだよ。...実際、千冬も生徒会長も気づいていた。他にも違和感を持ってる生徒ならそれなりにいたな。」
「.......。」
目が泳いでいる。おそらく、何か言い訳を考えているのだろう。
だがまぁ...。
「...さっき気づかなかったか?本名で呼ばれた事に。」
「っ....!?ぁ...!?」
思いだし、言葉を失うデュノア。
「男として入学し、俺達男性操縦者のデータを盗むよう、指示されたんだろ?」
「....そう、だよ...。」
諦めたようにデュノアは俺の言った事を認める。
「...どうやって、ボクの目的を知ったの?」
「俺一人でもすぐ分かる事だったが...教えて貰ったんだよ。お前の父親に。」
「....えっ?」
まさか親に真実を教えられていた事に驚きを隠せないデュノア。
...まぁ、当然だよな。指示した本人がばらしたも同然だし。
「....実質、デュノアが俺達のデータを盗んでも、意味がなくなるんだよな。...だって、ある程度ならいつでも...とまでは言わないが、必要なら見れるようになるし。」
「え....え?」
俺の言う事が理解できないのか、戸惑う。
「俺、情報を聞かされた時、なんて言われたと思う?“娘を頼む”だってさ。」
「ぁ....。」
ペラペラと喋っていく俺を余所に、ようやく合点が行ったのかデュノアも目尻に涙が溜まってくる。
「...ホント、不器用な父親だ。笑っちまうよ。....だが、だからこそ好感も持てた。」
「お父...さん....。」
感動してるとこ悪いけど、言う事言ってしまわないとな。
「それで、どうする?俺達の会社に入るか、父親の不器用な優しさを蹴ってまで独房に入るか。どっちを選ぶ?」
「...卑怯な聞き方だね。選ぶ余地なんて、ないよ...。」
そう言って俺の提案を飲むデュノア。
「...でも、それだとお父さんは...。」
「ああ。無事では済まないだろうな。」
元々、アウトな事を仕出かしたし、それを自分から暴露するつもりらしいからな。
「だから、こうする。」
「えっ?」
「あっ....。」
俺がスマホを取り出して連絡を取り始めた事にデュノアは疑問符を浮かべる。
...秋十君は察してしまったらしい。
「もすもすひねもす~?」
【ああっ!?それ束さんのセリフだよ!しかも態々声真似したー!】
束の声真似をしながら束に電話を掛ける。
電話の返事として聞こえてきた声に、デュノアは固まった。
「あー...やっぱり...。」
「あ、あああ、あれってもしかして...!?」
「...そうだぞ。世間で騒がれてるISの創作者、篠ノ之束さん。こっからさらに驚く事になるかもしれないから、落ち着けよ。」
「さ、さらに驚くって...。」
慌てるデュノアを落ち着かせようとする秋十君。
...なんか遠い目をしてるのは気のせいかな?
「頼んでいたのはできているか?」
【もちろんだよー。いつでも潰せるよ!】
「そうか。...っと、取り込む人材をリストアップしておいたから、送るぞ。」
【オッケー。】
片手で端末を操作して、束にデータを送る。
...ちなみにこれは、デュノア社内のまともな奴をまとめたリストだ。
「不穏...不穏だよ!?」
「あー...もしかしてこりゃ、デュノア社終わったかも...。」
外野がちょっとうるさいなぁ...。まぁ、普通に考えたら驚愕モノだけどさ。
「元凶はデュノア夫人なのは分かってるからな。そこから潰していく算段だ。」
「...あの...貴方は一体...?」
恐る恐るデュノアがそう聞いてくる。
...答えてやるか。
「俺は篠咲...いや、神咲桜。ちょっと訳ありだが...束とは幼馴染だ。」
「おさっ...!?」
「あ、見た目が似てるのは偶然だからな?」
敢えて本名を名乗っておく。これからの事を考えれば知っていても問題ないしな。
「....でも、どうして、わざわざこんな事を...。」
「んー?まぁ、理由なんてあってないものだけどさー。うちら天才ってのは気まぐれな奴が多いみたいなんだよ。俺や束もその一員。...今回は、その気まぐれで救われたとでも思ってくれや。」
実際、気まぐれみたいなものだ。デュノア社長の不器用さを気に入って、俺がそうしたいと思ったから、そうした。
「天災の恐ろしさ。しっかり味わってもらうぜ。...多分、知らないうちに話は進むだろうけど、気にすんなよ?三年間はここに居られる保証があるんだから。」
「あー、確かそんな規約がここにはありましたね。」
IS学園にはあらゆる企業による干渉が不可能だからな。
あってもなくても俺らにはそこまで影響はないが、せっかくだし利用させてもらおう。
「えっと...ありがとう...で、いいのかな...?」
「おう。遠慮なく施しを受けとけ。」
複雑そうな顔でお礼を言ってきたので、俺はそう返した。
「それじゃあ、秋十君。俺、今から束の所行って色々やってくるし、後よろしく!」
「え?...って、今から!?」
驚く秋十君や、引き攣った顔のままのデュノア。後、千冬への説明を全部放りだして、俺は束の所へ窓から飛び降りるようにして向かっていった。
=秋十side=
「...どうしてこうなった....。」
翌日、俺は食堂にて頭を抱えながらそう言った。
昨日は桜さんがどっかに行ってしまった後、とりあえずシャル(そう呼んでもいいと言われた)を帰して、千冬姉に桜さんが出て行った事を伝えた。
...で、その時千冬姉がだいぶ荒れてたので、今日のHRの先行きが不安すぎる...。
「....桜さんの奇行は今に始まった事じゃないよ。秋兄...。」
「そうだけどさ...。」
せめて、俺に丸投げはしてほしくなかったな...。
「それにしてもデュノア社に喧嘩を売りに行くだなんて....なんというか、桜さんらしいですね...。」
「そのせいで織斑先生が不機嫌なんだよ...。」
不機嫌なので、食堂でも先生として呼んでいる。
まぁ、千冬姉は依然にも桜さんや束さんに振り回されていたらしいし...。
「なんか...ごめんね?」
「いや、シャルは悪くないんだよ....。」
「それにしても、デュノア社がピンチですけど、シャルルさんはいいんですか?桜さんの事ですから、本当に潰されかねませんよ?」
ユーリやマドカには桜さんが束さんとデュノア社を潰しに行ったとしか伝えていないため、シャルの性別の事はもちろん、他の事情も知らないのでそう聞いてきた。
「あー、えっと、それについては大丈夫らしい。」
「そうなんですか?桜さんが言ったのならそうなんでしょうけど...。」
桜さんって、相変わらず存在だけで人を納得させてるな...。
まぁ、ユーリの場合はそれ以前に信頼を寄せているからしょうがないが。
「相変わらずユーリは桜さんの事が好きだよねー。」
「えぅ!?...あぅ.....。」
マドカがからかうように言うと、それだけでユーリは顔を真っ赤にして俯く。
「で、でも、束さんも桜さんが好きですから...私なんて...。」
「諦めないで!恋はライバルがいるからこそ燃えるんだよ!」
束さんがいる事により、諦めかけているユーリにマドカがそう励ます。
...なんか、やけに説得力のある言い方だな。
「世の中には、ライバルどころか血の繋がりという壁があっても諦めない人がいるんだから!」
「マドカさん....はい!頑張ってみます!」
そのまま意気投合して、ユーリとマドカは握手をする。
「....なにこれ?」
「奇遇だなシャル。俺も何か分からんと思っていた。」
なんというか...茶番?
「む、兄様。こんな所にいたのか。」
「あ、ラウラ。」
そしてラウラも俺達を見つけてやってきた。
手に持っている盆には和食系のメニューが乗っている。
多分、日本の料理を食べてみたいとでも思ったのだろう。
「そういえば、師匠はいないのか?」
「昨日、外出とかの手続きを俺に丸投げしてどっか行っちまったよ。」
「ふむ...誰かが師匠に喧嘩を売ったから、潰しにいったのか。」
...ある意味当たらずとも遠からずだな。喧嘩売られた訳ではないが、潰しに行ったし。
「まぁ、師匠の事だし無事に帰ってくるだろう。兄様、私もここで食べていいか?」
「ん?ああ、いいぞ。時間にはまだ余裕もあるし。」
実際は、桜さんの突然の行動でちゃんと寝れなかったから、早く食堂に来ていて時間があるだけなんだけどな。
「あれ?ラウラさん、それって和食...。」
「うむ。前から気になっていたのでな。せっかくだから食べてみる事にしたのだ。」
ユーリが気になって聞き、それにラウラが答える。
この後は、特に何事もなく、平穏な朝食となった。
「あー...では、HRを始める...。」
どこか疲れたようで、そして不機嫌な千冬姉の声に、教室は静まり返っていた。
千冬姉の熱狂的ファンもいるこの教室だが、さすがに気圧されているらしい。
「お、織斑先生。あいつ...篠咲桜は休みなんですか?」
「......。」
「ひっ!?」
あ、アイツが地雷踏んでる。滅茶苦茶睨まれてるし。
「...あいつは休みだ。重要な用事があるとの事でな...。」
「っ...!?」
そう言ってチラリとシャルの方を見る。
睨まれた訳でもないのに、それだけでシャルはビビっていた。
...というか千冬姉。公私を分けれてないぞ?桜さんの事“あいつ”って言ってるし。
「はぁ...すまない。連絡事項は頼む。」
「え、あ、はい!」
あ、頭を押さえながら山田先生に丸投げした。
「うーむ...なかなかに大変だった...。」
昼食。食堂にてそう呟いていた。
昼前には千冬姉はいつもの調子に戻ったが、それまでに何度あの不機嫌さに皆が気圧されたか...。
「...多分、桜さんがやる事やり終わったら、またああなると思うよ。」
「だろうなぁ...。」
なにせ、会社一つ潰すんだ。千冬姉なら、誰がやったか丸わかりだろうし。
「...むしろ、今朝よりひどくならないか?束さんもいるし。」
「あっ....。」
....胃薬と頭痛薬、差し入れに持っていこうかな。
「....何があったのよ。そんな暗い雰囲気出して。」
「鈴か...。」
鈴が俺達を見つけ、隣に座りながらそう聞いてくる。
「ずっと織斑先生が不機嫌だったからさ....主に桜さんが原因で。」
「...あの人、なにやらかしてんの...?」
鈴も桜さんの理不尽さは理解してるので、顔を引き攣らせていた。
「...それもあるけど、今度ある学年トーナメント、どうするつもりなの?」
「あー...確かタッグマッチだったっけ?」
主に桜さんの所為で忘れがちだが、もうすぐ学年トーナメントがある。
しかも今年はタッグトーナメントに変更になったらしい。
それについても考えて行かないとな...。
「そうよ。...で、専用機持ち同士はタッグを組めないから、どうするのか聞きたくてね。」
そう、パワーバランスを考えて専用機持ち同士ではタッグを組めないようになっている。
まぁ、そんな事になったら他の人の士気にも関わるからな。
例えば桜さんとマドカが組んでみろ。誰も勝てないぞ。
「....まぁ、誰かと適当に組むさ。」
「何も考えていなかったのね...。」
図星を突かれて顔を逸らしてしまう。
「...俺にもいろいろあったんだよ...。」
「....そんな疲れた表情されると、あたしも気になってしまうんだけど...。」
主に桜さんのせいだ。気にするな。
「タッグか....。....あれ?何気に俺、友人関係がほとんど専用機持ちだ...。」
ふと、自分の交友関係を振り返ってそう気づく。
「これを機に、もうちょっと友人増やすか...。」
「...ドンマイ、秋兄。」
なんだろう。無性に悲しくなってきた。
「いや...ある意味彼女の方が大変なんじゃない?...彼女、人見知りみたいだし。」
「え...?...あ...。」
今までの会話を黙って聞いていたユーリが、すっごいオロオロしていた。
...そういや、ユーリって交友関係は俺同様専用機持ちばかりだったな。
「ど、ど、どうしましょう...!?」
「落ち着いて!人見知りなのはわかるけど、動揺しすぎ!」
だからあれほど人見知りを治しておけと...ユーリに言っても酷か。
「...まぁ、ユーリの人柄ならペアを組んでくれる人は多いと思うわ。」
「そ、そうでしょうか...?」
というか、専用機持ちと組んだ方が強いしな。あぶれることはないだろう。
「さて、時間もいいところだし、そろそろ行くわ。」
「そうね。そろそろ移動した方が後が楽ね。」
時間を見れば授業まで15分程。準備や移動を含めればちょうどいい時間だ。
「じゃあ、また放課後でな。」
皆にそう言って、俺は自分のクラスへと戻っていった。
「模擬戦?」
放課後、アリーナを借りて練習していると、ラウラにそう言われた。
「ああ。久しぶりに一戦しないかと思ってな。以前の交流で知り合った代表候補生とは手の内をばらしたくないとの事でトーナメントまでお預けだが、秋十となら何度もやりあった事がある。今更だろう?」
「まぁ、そうだな。」
といっても、その戦いを見る人もいて、その人たちには手の内をばらす訳なんだが...。
...あ、ラウラは別にばらしてもいいのか。
「じゃあ、一戦...やるとするか。」
「ああ。」
一度距離を取り、ISを展開して対峙する。
「...互いに、腕を上げたな。」
「当たり前だ。進みは遅いが、立ち止まらないのが俺だからな。」
同時に動きだし、同時に武器をぶつけ合う。
すぐさま動きを変え、再び武器を振るい、またぶつかり合う。
「ふっ!!」
今度はぶつけ合った反動で間合いを取り、ブーメランのように反った剣を展開して投げる。
「むっ!」
「はぁあっ!!」
弧を描くようにそれはラウラに向かっていき、同時に俺もまた間合いを詰める。
「小賢しい!」
「っ、くっ...!」
だが、それは両手首から展開されるプラズマ手刀により叩き落される。
さらに、そのまま俺のブレードにぶつけることで、先ほどと同じ構図になる。
「相変わらずAICには引っかかってくれんなぁっ!」
「当たり前だ...!一対一で引っかかるのは致命的...だっ!!」
そう言って気合でラウラを吹き飛ばす。
...そう、先ほどの投擲はラウラのAICを封じるためだった。
複数の対象に向いていないAICの特性を使い、まず二振りの投擲用の剣を投げつける。
そして、同時に俺も攻撃することで、俺を止めれば剣で切り裂かれるようにしたのだ。
...まぁ、こんなのはちょっとした工夫なだけだけどな。
「その通りだ!...だが、やはり貴様とはAICなし...いや、接近戦のみでやりあう方が面白い!」
「そうか、そいつは嬉しいな!」
切り付け、防ぎ、相殺し、避ける。
ドイツにいた時も思ったけど、ラウラは戦闘狂の節がある。
だからか、桜さんみたいに様々な戦い方にコロコロ変える事もないみたいだ。
「(だからこそ...ラウラとの戦いは俺自身の強さがよくわかる!)」
純粋な接近戦による斬り合い。それは俺がどこまで強くなったかよくわかる戦いだ。
機転を利かせたり、相手の予想外な行動を取るのも実力の内ではあるけど、純粋な、俺そのものの実力はこういう相手じゃないと分かりづらい。
「..........。」
偶々俺たちの模擬戦を見学していた人たちは、ISらしからぬ剣戟に呆然としている。
まぁ、せっかくのISの機動性を使わない戦いだからな。
純粋な戦闘技術でのみ、俺たちは戦っている。
「はぁっ!!」
「むっ...!」
円を描くようにブレードを振るい、プラズマ手刀を二つとも弾く。
がら空きになった胴目がけてさらに振るおうとして...咄嗟に飛び退く。
瞬間、そこを蹴りが通り過ぎる。
「....ふっ、準備運動もこれくらいでいいだろう。」
「やっぱ本気じゃないよな。」
そう、ここからはISの機能も使った戦いだ。
ここからが本番。本気で行くか!
「...と、言いたいところだが本番のトーナメントまで取っておこう。」
「出鼻を挫くな...まぁ、賛成なんだが...。」
ラウラも本番まで取っておきたいらしい。
不完全燃焼になりそうだけど、それもトーナメントまで取っておくのだろう。
存分に闘いを愉しむ...ラウラらしい。
「ここからは兄様の特訓に付き合うつもりだ。」
「そうか。といっても、単調なものだぞ?」
「構わない。むしろその方がいいと思うがな。」
そういう訳で、俺とラウラはしばらく放課後のアリーナで特訓する事になった。
...そういえば、途中で視線を感じたけどあれは一体...?
後書き
知識があまりないからと、細かい設定を上回るチートっぷりでごり押ししていくスタイル。
デュノア社の末路は詳しく描写しません。そういう知識(会社関連)が皆無なので。
ちなみに秋十が感じた視線は模擬戦と聞いてやってきた一夏です。
“模擬戦”と聞いて鈴とセシリアVSラウラの戦いと勘違いした感じです。
なお、秋十とラウラの戦いに戦慄してた模様。
...サブタイ詐欺みたいになってしまった...。
おまけに中途半端な終わり方だし...。
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