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STARDUST∮FLAMEHAZE

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第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#11
  闇夜の血闘 紅の魔術師VS幽血の統世王Ⅲ ~World's End~

【1】

「はあああああああああッッ!!」
 掛け声に合わせ紅い双眸が一際強く煌めく。
 DIOは刀身を凍りつかせていた冷気を一時止め、再びシャナに視線を戻した。
 口元によりサディスティックな微笑を浮かべながら。
 悪足掻きをするならば、敢えてそれを実行させ粉々に踏み砕き、
そしてその苦悶と絶望の果てに地獄へと叩き堕とす。
 ソレが殺戮の快楽、狂気の愉悦。
 シャナはこれから払う「代償」の為に奥歯をギリッと噛みしめた。
「……ッッ!!」」
 身を掘削するような痛みと共に、シャナの全身から湧き出した
真紅の存在力。
 それがまるで、鮮血のように艶めかしく腕へと伝い前方に突き出された
贄殿遮那の刃の中へと呑み込まれていく。
 そして剣先から紅蓮の火の粉が一挙に捲いて、
一つの流れを形成していった。
 やがて火の粉は宙を舞い前へ前へと膨らんでいく。
膨らむにつれて火の粉の密度は薄れ、形造るモノの輪郭を立体的に巡った。
「!」
 突如、シャナとDIOの頭上に、全長5メートル以上はある巨大な腕が出現した。
 鉤爪を指先に尖らす、鎧とも生身ともつかないフォルムの手の中に
同じく巨大な火炎で出来た剣が握られている。
 しかしソレは、「剣」 と言うにはあまりに大き過ぎた。
 大きく、熱く、重く、そして凄絶に過ぎた。
 ソレはまさに “熱塊” だった。
「……」 
 DIOは呆気に取られたような表情で、巨大な炎で形造られたその腕と剣とを、
剣呑な瞳で興味深そうに見つめていた。
 その事により意識は完全にシャナから逸れた、
というより身を犠牲にして放ったシャナの炎絶儀の方に
興味が移ったという方が正しい。
 そし、て。
「そううううううりゃあああああああああああ――――――――――ッッッッ!!!!」
 シャナの激しい喊声と共に、その炎の巨腕が唸りを上げて動き、
紅蓮の大剣がDIOに向かって断頭台のように振り下ろされた。
 ガギャンンンッッッ!!! 
 その巨大なる炎刃により贄殿遮那を掴んでいたDIOの蒼く輝く右腕が、
鋼を斬り裂いたような音を立てて真っ二つに両断される。
 空間を紅蓮の軌跡が、渦を巻いて踊り狂った。
 ソレと同時に、その巨大な紅蓮腕も多量の火の粉を撒いて空間から掻き消える。 
『気化冷凍法』により体温が極度に低下している為、
炎が身体を廻ってはいかないが、ともあれシャナは冷気の呪縛からは完全に解放された。
「ほう……」
 DIOは苦痛の色を全く示さず、
斬られた腕の鏡のように滑らかな断面を見つめていた。
 高温で傷口が灼かれているので血は一滴も噴き出ない。
「だぁぁぁッッ!!」
 間髪入れず刀身に残った手を振り飛ばし、転がりながら
DIOの死角に回り込んでいたシャナは素早く刺突の構えを執り、
足裏を爆散させてその影からDIOに向けて突貫した。
 狙いは、正中線の最上部。
 眉間。
 いくら不死身の化け物で在っても、脳を破壊されて生きていられる道理はない。
 しかし。 
 その次の刹那、シャナは視ていた。
 眼前の変異を。 
『フレイムヘイズ』 “炎髪灼眼の討ち手”として驚異的に研ぎ澄まされた少女の動体視力は、
その様子をディスクのスローモーションのように精密に捉えていた。
 DIOの斬られた腕の切断面。 
 その中心、骨の部分がいきなり延び硬質な感覚を伴いながら一瞬で指先まで再生すると、
すぐにその周りに神経の束が絡みつきさらに血管と筋繊維とが後を追う。
その上を真新しい皮膚が覆うまで1秒も掛からなかった。
 秒速で完全再生されたDIOの濡れた右腕が、
空気を切り裂いて前方に突貫するシャナに向けて突き出される。
(何か、来るッ!)
「無駄ァァァァァッッ!!」 
 邪悪な笑みを浮かべ突き出されたDIOの、
掌の中心がバックリと裂け口の開いたソコから超高圧力で噴出された真紅の血が
一気にシャナへと襲い掛かった。
「!!」
 開いた疵痕がマズルフラッシュを放ち、反動でDIOの身体はマグナム弾でも
発射したかのように蠕動(ぜんどう)する。
 直感によって咄嗟に身体を左に捻り、廻転動作により間一髪避けたシャナの脇を
紅い液体がレーザーのように通り過ぎ余波が黒衣を引き裂く。
 その背後で爆音が轟いた。
「!?」
 シャナの後ろにあった鉄筋コンクリート製のビルが、
一階部分から斜めに切断され、まるで積み木崩しのように上階部分が滑り落ちていた。
 その(にわか)には信じがたい事実に唖然となったシャナは、
このとき一つのミスを犯していた事に気づいていなかった。
 闇夜の帝王、ヴァンパイアの超絶的な再生能力と攻撃能力とを
目の当たりにしては無理のない事だが、シャナはこれでDIOの攻撃が
終わったと思ってしまった。
 相手が並の“紅世の徒”や『スタンド使い』であったのなら、
その判断は正しかったのかもしれない。
 しかし現在(いま)目の前にいる相手は、紅世の王さえ下僕にする
この地上、否、 “史上” 最強の魔皇。
 幽血の統世王。
“そんな事が有り得るはずはなかった”
 DIOは両腕を交差してだらりと下げ前屈の構えを執ると、
その動作で舞い上がった美しい金色の髪がいきなり
爆発増殖するコンピューター・ウィルスのように伸び出した。
 煌めきを放ち生き物のように空間を踊り廻るその髪が、
シャナの腕に、足に、胸に、腰に、首筋に、そして大刀へと絡みつき
空間に小さな躰を拘束する。
「な!?」
 シャナが驚愕の声を上げる間もなくその髪から黄金に輝く光がバリバリと
音を立てながら発せられ、髪を通してシャナの身体に流し込まれた。

 

「WWWWWWWWWRYYYYYYYYYYYYYY――――――――ッッッッッッ!!!!!!」



 空間が爆砕するかのような狂声と共に、髪は強化セラミックに酷似した
滑らかな質感に代わり光の伝導率が増強される。
「くああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
 躰をバラバラに引き裂かれるような凄まじい衝撃がシャナの全身を隈無く駆け巡った。
 その間にも黄金の光は輝きを増し続ける。
 やがて光が発する高温に髪自体が耐えられなくなり、中部分から灼き切れ始めた。
 しかし千切れた髪にも光が滞留しており、美しく輝く黄金の欠片は
衝撃で空中に縛り付けられたシャナの躰を尚も執拗に蝕んだ。
 まるで高圧電流に感電したかのような凄まじい激痛を、
その素肌に感じながらシャナはビルの残骸の中へと弾き飛ばされた。
 交差した両腕を下げ、前屈の構えのまま星形の痣が刻まれた
首筋を剥き出しにしてアスファルトの上に屹立するDIO。
 身体の周りには、無数の黄金の火花がバチバチと音を立てながら爆ぜている。
 その 「火花」 の正体は、かつて己を追いつめた “ジョナサン・ジョースター” の
『波紋法』 から学習し、そしてソレを応用して得た新たな 「能力」 
 人間は、体内に微量ながらも 「電気」 を持つ特性がある。
 DIOはその特性を石仮面によって得た全ての人間を超越する能力で
爆発的に強化し、属性の違う体内電流を瞬時に生み出すと同時に
変質した髪を通してそれをシャナの躰に叩き込んだのだ。
 攻防一体。超絶の魔技。
 幽血の流法(モード)
邪 揮 深 劾 拷 雷 流(エレクチオン・デプス・オーヴァーロード)



「ぐ、う……」
 コンクリートの残骸の上で仰向けに倒れていたシャナは、
倒壊したビルの瓦礫の中からよろよろと力無い動作でその身を起こした。
 大刀を杖のように、瓦礫の上に突いてもたれかかる。
 戦慄の美を流す大太刀、 “贄殿遮那” を手に入れて以来初めての使い道だった。
「……」
 その少女の胸元で揺れるペンダント、紅世の王 “天壌の劫火” アラストールは、
道路を挟んで屹立する男の、その余りにも圧倒的な力に驚愕を禁じ得なかった。
 元は生身の人間でありながら、紅世の王さえも下僕に強いたという事実から
その力の強大さは理解していたつもりだったが、
本当に 「つもり」 に過ぎなかった事を思い知らされた。
 まさかここまで一方的な展開になるとは想像すらしていなかったのだ。
「ま……だ……まだ……」
 電流の高熱で焼き焦がされ無数の白い煙が音を立てながら昇る黒衣の中で、
シャナが譫言(うわごと)のように呟く。
 だがその瞳は闘志を失わずボロボロの身体とは相反して、
遠間で立つ幽鬼のように虚ろで堕天使のような壮絶な存在感の男を鋭く射抜いていた。
 その男、邪悪の化身DIOは両腕を組んだ余裕の表情のまま、
右手の指を哲学者のようにすっと顔前に持ち上げる。
「動かない方が良い。いま君の周りを私の 『スタンド』 が取り囲んでいる。
操作は 『遠隔自動追跡』 になっているから射程距離に入れば
私の意志に関わらず攻撃にかかる。命が惜しければジッとしていたまえ」
 思う様シャナに破壊欲求を吐き出し、一通り満足したのか
口調は貴公子のそれに戻っていた。
「!!」
 その男の言葉に、シャナは思わず意識を大刀から逸らし周囲を警戒する。
 最早完全にDIOのペースに呑み込まれていたが、
もうそこまで気を廻す精神的余裕は砂漠の砂一粒ほども残されていなかった。
 シャナは電流に灼かれた全神経を無理矢理フル稼働させて
周囲360度に向けて研ぎ澄ました。
 自分を取り囲む全ての存在を、五感を総動員して感じ取る。
 背後の瓦礫の質量。封絶の放つ火の香り。DIOの微かな衣擦れの音。
気流の流れ、空気の淀みまでも全て感じ取れた。 
 だが、それ以外何もない。
 音も聞こえない。気配すら感じない。
「ハッタリを!」
 一歩踏み出したシャナの脇を、背後を、正面を、足下を、頭上を、
煌めくナニカが通り過ぎた。

 

 ドグッッッッッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!! 



 何の脈絡もなく上がった破壊音。
 ソレが自分の躰から発せられたものだと察するまで、シャナは数秒要した。
 黒衣に覆われた華奢な身体に、巨大な拳型の刻印が無数に穿たれている。
 全方位から微塵の誤差もなく均等にダメージを与えられた為、
身体は一㎜も動かずその場に縫いつけられた。
「あ……」
 口元から血が細く伝い、足を支える力が抜けて膝が
アスファルトの上に崩れ落ちる。
「『WORLD21』……我がスタンドの 「原型(プロトタイプ)」 とも言える姿だ……
お気に召したかな……? 「亜光速」 のスタンドの動きは……」
 耳元で掠れるDIOの声を聞きながら、シャナはアスファルトの上に倒れた。
 何も、解らなかった。
 感じ取れなかった。
 どこから攻撃されたのか、何をされたのかすら。
 感じたのは、ただ痛みだけ。
 残ったのは、攻撃されたという 「結果」 だけ。
(はや)い……なんてもんじゃない……ッ! “見えないッッ!!”)
 絶望的な思考が頭の中で演算されながらもシャナの躰は、
その心を無視して立ち上がろうとしていた。
 戦いの申し子、フレイムヘイズの本能。
 そのシャナの様子を、DIOは悪魔の微笑を浮かべて満足気に見つめる。
「もう止めたまえ。私は君が気に入った。
どうだね? 私と 「友達」 にならないか?
君にも私と同じ “永遠の力” を与えてあげよう。
きっと今以上に強くなることが出来る」
「フザけるなッ!」
 シャナは鋭く叫び悪魔の誘惑を刎ねつけた。
「フザけてなどいない。本当の事さ。
“殺す気ならとっくにそうしていた”
今のスタンド攻撃、まさか本気で撃ったと思っているのか?
それが理解(わか)らない君じゃないだろう? マジシャンズ」
 宥めるように優しく、労るように甘い声、
先刻までと同一人物とはとても想えない。
「……く……ッ!」
 それは、解っていた。
 露骨に手を抜いていた。
 屈辱感に、怒りが燃え上がる。
「っこの、舐めるな……! 痛ッ!?」
 そのまま走ろうとしたが、体中を走る激痛に思わず膝をつく。
 穏やかなDIOの声が、再び優しく、子供に言い聞かせるように耳朶(じだ)を揺らす。 
「無理はよくない。これから私に仕える大切な躰だ。
それに君は何か勘違いをしている。
“私に敵わないからといって、それは決して君が弱いという事ではない”
寧ろ敬意を表したい位だ。
私の腕を斬り落とした人間は、ジョナサン・ジョースター以外では君が初めてだからな」
 女神さえも下僕に(かしず)かせるような甘い微笑を口元に浮かべると、
DIO澄んだ音を響かせながらを拍手をシャナに送った。
 追いつめられた精神に、魔薬のような声と魔皇の賛美が同時に響き
一片の容赦もなく心を蕩かす。 
「……誰……が……お……まえ……なん……かに……う……ぅ……」
 そんな自分自身を呪いながらもシャナは戦闘の思考を止めていなかった。
(アイツの『幽波紋(スタンド)』の動きは、悔しいけど見切れない。
今度攻撃されたら終わり。でも、なら、“使わせなければ良い”
アレだけ疾いならきっと、その 「操作」 も難しい筈。
接近すれば、近距離で使えば自分も攻撃に巻き込まれるから使えない)
 シャナは今までで最大の速度で、DIOの懐に飛び込もうと足裏に火の粉を集め始めた。
(アイツは今、私を格下だと思って油断してる。
構えも解いてる。やるなら今が好機(チャンス)
「ほう? 窮地にあっても闘志を失わないその瞳。
我が肉体、かつてのジョナサン・ジョースターにうり二つだ。
実に良い。ますます君が欲しくなった」
 DIOは拍手を止めると口元に笑みを浮かべたまま
ゆっくりと両手を前に差しだした。
「いいだろう。君には特別に見せてあげよう。我がスタンドの」
 DIOの悪魔の瞳がシャナの灼眼を真正面から鋭く射抜く。
「 “真の能力” を」
 その声と共に男の全身から闇夜のオーロラのように立ち昇る、
「無限」 とも想える莫大な量のスタンドパワー。
「あ……あ……!」
 その黄金の輝きに、シャナは戦闘中という事も忘れて呆然となった。
 自分を追いつめた先刻の「能力」は、本当に男の言葉通り「原型(プロトタイプ)
その一端にしか過ぎなかったらしい。
 剣技で言えば、実戦では使用しない演武のようなもの。
 今から見せるその力こそ、真の本質。
 だが。
 ソレを見た自分は。
 一体、どうなる?
 黄金に輝くスタンドパワーが、やがて意志を持ったように
DIOの両手の間に集束していく。
 もうここまでくると、考えるまでもなくバカでも解った。
 次に繰り出される攻撃は、今までのうちで最大の速度と最大の強さと
最大の流法(ワザ)で以て繰り出される。
 否。
 ソレはもう 「攻撃」 などという領域に留まるものではないかもしれない。 
 黄金に輝くスタンドパワーがやがて手の中に一つの(ヴィジョン)を創り出した。
 その中に映ったモノ。
 その(ヴィジョン)は。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!



 この世界の根源。
 全ての根源。
 数多の銀河と夥しい星雲から構成される。
『宇宙』




 DIOの背後に、一切の過程を消し飛ばして
巨大なスタンドのフォルムがいきなり現れた。
 そして。 
 その両腕が、高々と天空に向けて押し拡げられる。
「…………よ…………れ…………ザ……」
「逃げろオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ――――――――――――!!!!」
 アラストールの渾心の叫びに、そのDIOの言葉は掻き消された。
 そしてアラストールが叫ぶよりも「前」に、
シャナは足裏を爆散させて高速で宙に飛び去っていた。
 ビルの壁面を蹴り、眼下に輝くネオンを抜け、そして封絶を突き破る。 
 最早戦おう等とは考えなかった。
 ただただ逃げ切る事のみを考えていた。
 誇り高きフレイムヘイズにとって、
討滅すべき相手に背を向けて逃げる等という行為は
正しく死にも匹敵する 「屈辱」 だった。
 事実シャナは、己が使命を果たす為なら死をも厭わないという
高潔な覚悟をその身に秘めて今日まで戦ってきた。 
 しかし、今は、それを上回る感情がシャナの心を支配していた。



 太古より、全ての人間を蝕み続けてきた、心の深奥に巣喰う根治不能の病魔。
 誇りを、尊厳を、死すらも凌駕する精神の暗黒。
 その名は【恐怖】



 シャナは視界に存在する全てのものをがむしゃらに足場にしてDIOから距離を取る。
 その胸元でアラストールが、ようやく口を開いた。
「我は……我は今まで……「恐怖」 というものを感じた事がなかった……
これが……これが 「恐怖」 なのか……? これが……ッ!」
 紅世の王、天壌の劫火の胸の内に感嘆にも似た感情が走る。
「……彼の者の力……決して侮っていたわけではないが……
お前に討滅出来ぬわけでもないと思っていたのもまた事実だ……
まさか……まさかあれ程とは……
赦せ……あのような者の前にお前を立たせてしまうとは……
出会ってはならなかったのだ……
今は……まだ……」
 アラストールは悔恨を滲ませてシャナに言う。
「いいの……アラストールの所為じゃない……」
 寒いわけでもないのに震える全身を黒衣で抑えながら、シャナは言った。
「それに解った……今のままじゃ……アイツに勝てない……
それにアイツ……実力の1%も出してなかった……
猫が鼠を食べる前に甚振(いたぶ)るように……遊んでた……
今こうして生きてるのが……不思議な位……」
 勝てない。
 解らないけど、あの 『光』 の前では何をやっても全て通用しない。
 そう、何もかも。
天破壌砕(てんぱじょうさい)”さえも。
「あの 『光』 の本質が、何で在るのか想像もつかぬが……
力の是非などという些末なものでない事は確かであるようだ……
仮に我が “顕現” したとして果たして通用するか否か……
それだけの畏怖を感じた……」
 DIOのスタンド能力。
世界(ザ・ワールド)』 の本質を、この時二人はまだ理解していなかった。
 が、シャナ、アラストール両者の考えは、偶然かそれとも運命か、
その一面を正鵠に捉えていた。
 そして。
“解ったところでどうしようもない” という絶望も、また。
 生命(いのち)がいずれ尽きるように、どんな強大な力も、
喩え天を割り、地を引き裂く力だったしても、
“届かなければなんの意味もなさない” という事を。
「……」
 シャナの眼下で、ニューヨ-クの夜景が輝いていた。
 先刻数㎞先で起こった悪夢など、意に介さぬといったように。
 諦めたのか、それともいつでも捕らえる事が出来るという自信なのか、
DIOはシャナを追ってはこなかった。 
 ビルの壁面を足場にしながら天空を駆けるシャナの眼前に、
夜空を切り刻むようにしてそびえ立つ摩天楼が迫る。
 そのハレーションが全身を白く照らした。
 シャナはそこで、初めて後ろを振り返った。
「アラストール!」
「むぅっ……!」
 背後で。
 人間の目には見えない黄金の光が、紅い封絶から月に向かって立ち昇っていた。
 その圧倒的な存在感により、大地から月にかけて黄金の階段が出来たようだった。
 それを行っているのは言うまでもなく、アノ「男」だ。
 この世界全ての存在に、自分の力を誇示する為に。 



 世界の頂点に立つ者は、ただ一人。
 そして、ほんの僅かな恐怖をも持たぬ者。
『運命の半身』とも言うべき、この世で最も憎み、最も愛する者の肉体を手に入れ。
 この世ならざる力の中でも最強の能力を手中にした「男」に、最早不可能はない。
 そして、それを止める事が出来る者も、また。
 それが出来るのは。
 DIO自身か、或いは全くの同じ「次元」の存在だけだ。  




 シャナはエンパイアーステートビル最上部のアンテナを強く蹴りつけ、
紅蓮の火の粉を撒きながら、煌めく星空の海へと舞い上がった。
 紅いシルエットに、一迅の流星が折り重なる。
 その少女の背後で。
 黄金の光は。
 ただ、月へと向かって立ち昇っていた。
 静かに、音もなく。
 世界の終焉を告げる篝火(かがりび)のように。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッ!!!!





『DIO(幽血の統世王)』

幽波紋(スタンド)
●不明 

原型(プロトタイプ)
●WORLD21
破壊力-A スピード-A 射程距離-B
持続力-B 精密動作性-B 成長性-A
能力-DIOのスタンドの(ひな)型とも言える存在。射程距離は20~30メートル。
領域に入り込んだ異質な存在を亜光速で 「自動追跡」 し無差別に攻撃する。
弱点は命令に忠実過ぎる為、接近されると本体も攻撃に巻き込まれる事。

流法(モード)』-「幽血(吸血鬼のEXTRACT(エキス)によって変質した血液)」
●気化冷凍法
=己の肉体を自在に操れる吸血鬼の能力により、体表の水分を気化させ瞬時に凍らせる。
自分以外の生物も触れた状態なら気化させ凍りつかせる事が出来る。

空 烈 眼 刺 驚(スペース・リパー・スティンギー・アイズ)
=体液を圧縮し眼から高圧力で噴出する。厚さ30㎜の鋼板を貫通する威力がある。
融合したジョナサン・ジョースターの肉体の影響で、
手や足などの身体の末端部分からも射出する事が可能となった。

邪 揮 深 劾 拷 雷 流(エレクチオン・デプス・オーヴァーロード)
=体内で造り出した数十万ボルトの電流を、
変質させた髪などを通して相手の身体に流し込む。
 本来は波紋法と同じく打撃を介して撃ち込む技。
『気化冷凍法』 を使った状態で繰り出すと、“超電導状態” を引き起こす事が出来る為、
更に威力が爆発的に増大する。


 殺害討滅共に、現時点では不可能。
 完全無敵。
 君臨。


←To Be Continued……
 
 

 
後書き

はいどうもこんにちは。
戦闘(バトル)モノ作品の「鉄則」として『ラスボス』は
「一体どうヤって勝つンだ? こんなのに・・・・('A`)」
という位『強く』するというのを念頭に於いて描いてみました。
友人にも「1%はヤり過ぎだろ・・・・・せめて10(%)位・・・・」
と引かれましたが「DIOサマだからイイんだよ!!」
と逆ギレしてこの始末で御座います。
まぁスタンド使ってないし生身の状態、しかも遊んでたので
コレ位で丁度イイと個人的には想うのですがネ・・・・('A`)
(本気出したら『光速』なのであんなチ○ジャ○即粉微塵です)

ジョジョを読んでいる人なら解ると想いますが初めてDIOサマを見た時
「こいつメッチャクチャ悪いヤツだな。
ブッ飛ばしたいけど、でも一筋縄じゃいかなそう・・・・」
そう想わせるのが悪役に与えられた使命であり
また魅力で在るとも言えます。
(「悪の世界」は現実では忌厭されている分、
「ちょっと覗いてみたい」とも想わせる)
まぁあまり「善と悪」に分けるというのは時代的にもう古いので
ソレを『超越』したという立ち位置にしたいと想いますが。
(そういや神社で花火大会も古いなぁ~(小学生じゃあるまいし)
それと今日日の高校生はケータイくらい持ってるだろ・・・・('A`))
ソレでは。ノシ 
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