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龍が如く‐未来想う者たち‐

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冴島 大河
第三章 内部崩壊
  第三話 内部抗争

ミレニアムタワー前では、大混乱に陥っていた。
爆破されたタワーの入り口、その前で乱闘の騒ぎ。
冴島が駆けつけた頃には、既にそんな状態だった。

倒れる男の胸ぐらを掴み、気絶を無理矢理起こす。
目が覚めた男は冴島の剣幕に、思わず声をあげて驚いた。


「何が起こってんねや!?」
「か、幹部達で6代目捜してたら……屋良組に湯川組……それに足立組が総出で襲いかかってきて……」
「何やて?」


その言葉を伝えたと同時に、男は再び気絶する。
掴んでた手を放して解放すると、周りの勢いが更に強くなった。
ピリピリする張りつめた感覚に、肌が痛む。

止めるしか無い。
頭にそう浮かんだ時には、既に叫んでいた。


「やめんかいっ!!」


轟く声に、争う手を止め全員が冴島を見る。

何で冴島がここに……?
あれが冴島大河……。

声を潜め、冴島だと確認する男たち。
そんな事もお構いなしに、息を荒げた冴島がさらに言葉を続ける。


「何でこないな事なっとんねん?」
「あんたは関係無いだろ!?」


屋良組の代紋を付けた男が、冴島に向かって怒鳴った。
それと同時に足立組と湯川組の組員も、周りを囲むように集まってくる。
軽く見積もっても30人、明らかに分が悪い。


「何で東城会を潰す真似するんや」
「潰す?俺たちは潰すなんて事はしない。掃除してるだけですよ」


体格の良い冴島に負けない体の男が、歩み寄って冴島を睨む。


「世代交代ですよ。もうジジィの時代は終わり、これからは若い連中が東城会を築くんだ」


世代交代。
宮藤の言葉を思い出す。
今の東城会の上層部は、確かに歳のいった者が多い。
冴島自身もそうだ。
だからこそ、若い者に譲ればいい。
6代目を始めとするメンバーが1度に倒れてしまえば、それこそ東城会の終わり。

東城会が消えた未来。
居場所を失った先。
考えたくもない、想像したくない。

冴島は目の前にいた屋良組の組員を、無慈悲に拳で顔面を叩きつけた。
男が吹っ飛んで背中から地面に着地した瞬間、周りにいた人全員が一斉にどよめく。


「確かに、今の東城会は年寄りが多い。せやけどな……」


冴島が背負う、虎の刺青。
その刺青の如く鋭い眼差しに、全員がたじろいだ。


「何も知らん甘ちゃんが、東城会支えていけると思うんちゃうぞボケェ!!」


怒り、それが今の心境を表すのにピッタリな文字だった。
長い刑務所生活の中、東城会がどうなってきたのか冴島は知らない。
だが昔から世話になった東城会を、何も知らない若造に潰されるのは絶対に嫌だった。

止めるしか無い。
東城会の崩壊を止めるには、暴走している幹部を止めるしか無い。
覚悟を決めた瞬間、静かになった空間にトーンの高い声が響いた。


「何をしているのです?」


男たちは、声の主に道を譲るように道を開けていった。
開いたその先、また男が立っている。
華奢な体に、整った顔立ち。


「湯川さん……」


その男の名を把握するのに、時間はかからなかった。
湯川もまた、冴島という存在の理解に時間は必要無かった。


「いろいろ、訊きたそうな顔をしていますね?」
「せやなぁ……訊きたい事ぎょうさんあるわ」
「そうですか。でも、ゆっくり話している暇はなさそうですね」


湯川が向いた方向から、警察が走ってくるのが見えた。
警察だけではない、見た事のある顔がチラホラ見える。


「谷村……それに、伊達……やったか?」
「一先ずこちらはお暇します。また機会があればその時は……」


湯川の不気味な含み笑いの後、幹部以外の男たちはその場を去っていった。
また、何も出来ないまま……。
駆け寄ってきた谷村たちを他所に、冴島はどこか上の空だった。 
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