| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ四十九 立花宗茂その三

「それがし感無量です」
「左様ですか」
「はい、まことに」
「ですから」
「それがしがそれだけの方だと」
「思ったからです」
 それ故にというのだ。
「そうさせて頂きました」
「そうなのですか」
「それでこれからですか」
「はい、島津家の領地にも入ります」
 彼等の本来の領地にもというのだ。
「薩摩、大隅、日向に」
「その三国はです」
「非常にですな」
「警護が固いです」
「それ故に」
「忍が入りましても」
「調べるのは容易ではない」
「見知らぬ顔の者が少しでも怪しければ」
 その時はというのだ。
「切られまする」
「そうなりますな」
「ご存知なのですな」
「父上は信玄公のお言葉で、これは祖父殿の時ですが」
「あの武田信玄公ですか」
「あの方が天下を調べよと言われたので」
 それでというのだ。
「三国の地図も作りました」
「あえてあの国に入られ」
「そうしました」
「左様でしたか」
「古書を基に」
 古の本朝の地図をというのだ。
「今の状況を調べたのです」
「既に九州まで調べておられたとは」
 このことにだ、宗茂は唸って言った。
「流石は信玄公」
「そう言って頂けますか」
「天下の名将と言われただけはありますな」
 こう幸村に言うのだった。
「全く以て」
「それであの三国についてです」
「苦労されたのですか」
「当家でも腕利き達を送りました」
「そして調べられたのですか」
「どの者も何度も命を落としそうになったとのことです」
「さもありなんです」
 そのことを聞いて当然と返した宗茂だった。
「あの三国については」
「島津殿のご領地は」
「入ることも調べることも出ることもです」
「どれもですな」
「難しいです」
 実際にというのだ。
「そうした場所です、ですから」
「気をつけよと」
「くれぐれも、そして真田殿達が調べられたことが」
 それがというのだ。
「大友家を助けることになりますね」
「はい、何といいましても」
「敵を知ってこそです」
「まさにですな」
「戦になります」
 そうなるというのだ、宗茂は幸村に言った。
「そうなります、ですからそれがしからもです」
「お願いと言われますか」
「是非」
「それでは」
「はい、必ずやです」
 幸村も宗茂に約束した。
「島津家についても調べさせて頂きます」
「では」
「はい、それでは」
「真田殿にお任せします」
 宗茂は微笑み幸村に言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧