英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)
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第67話
~西通り~
「くっ、まさか今のはベルガード門の警備隊か!?」
裏口から出て西通りの入口まで来たロイドは表情を歪めて呟き
「ああ………!見知った顔がいたぜ!」
「まさかマフィアと同じように操られているというの………!?」
「その可能性は高そうです………!」
「でも、一体どうやって警備隊に”グノーシス”を………!?」
「まあ、それについては大体想像できるけどね……」
ロイドの言葉にランディは頷き、エリィの推測にティオが頷き、厳しい表情をしているルフィナの疑問にレンが疲れた表情で答えた。
「と、とにかく何とか警察本部まで………!」
そしてダドリーが提案したその時、ツァイトが素早い動きでロイド達の前に飛び込み
「ウォン!」
目の前を睨んで吠えた!ツァイトの行動に気付いたロイド達がツァイトが睨む方向を見つめたその時、なんと警備隊の装甲車が西通りに現れて停車し、そこから警備隊員が何人も出てきてロイド達に銃撃を放ち始めた!
「わわ、また来たよ~!?」
それを見たキーアは驚き
「くっ………あっちは無理か………!」
「いったん中央広場に出るぞ!」
ロイドは唸り、セルゲイは指示をした後、エリィとレン、ダドリーとルフィナと共に牽制攻撃を行った後、中央広場に向かい、ロイド達を追うかのように警備隊員も中央広場に向かった!
「な、なんだありゃ………!?」
「先生、これは………!?」
一方銃撃に気づいて建物から出てきてその様子を見ていた市民達が戸惑っている中、ハロルドは厳しい表情でイアンに尋ね
「ど、どうやらタダ事ではなさそうだ!―――ハロルドさん!あんたは家に戻りたまえ!他の人達も早く家の中に!」
「はい……!(今一瞬死んだ”あの娘”に似た女の子が支援課の方達と一緒にいたような気がしたが……私の見間違いだろうか……?)」
尋ねられたイアンは驚いた表情で呟いた後、すぐに我に返るとハロルドや市民達に指示をし、指示に頷いたハロルドは一瞬だけ見えたロイド達と一緒に撤退していったレンについて考え込んでいた。
~中央広場~
中央広場に到着したロイド達は支援課のビルへの道と空港や駅に続く南出口を塞いでいる装甲車や警備隊員を見て驚いた。
「あの様子では今から空港に向かって二人をリベールに逃がすのは無理ね……!」
「というかそれ以前に空港も操られた警備隊に抑えられているでしょうね。」
「クッ………どうすれば………!」
「警察本部に行くならこのまま行政区に………!」
その様子を見てキーアとシズクをリベールに逃がすことが不可能と悟ったルフィナとレンは厳しい表情で呟き、唇を噛みしめたロイドにエリィは提案したが
「だ、ダメです………!」
何かに気付いたティオが行政区に行く道を見つめて叫んだ。するとその時行政区へ行く道から何人もの警備隊員が走って来た!
「裏通りを抜けろ………!」
「はい………!」
そしてダドリーの指示の元、ロイド達は裏通りに入って行った。
~裏通り~
「なんや、お祭りか!?」
「ヘンな取り合わせね~。」
裏通りを走り抜けるロイド達を見ていた市民達は戸惑い
「なんの騒ぎだい?うるさいったらありゃしない。」
店から出てきた店主の老婦人が不思議そうな表情をしていたが、走って来る警備隊員達に気付いて固まり
「ひょえ~~っ……!」
走って来る警備隊員に吹っ飛ばされてその場で回転し
「な、なんやねん、一体!?」
走って行く警備隊員を市民は混乱した様子で見ていた。ロイド達を追撃していた警備隊員は待ち伏せしていたダドリーとセルゲイの銃撃、ルフィナのボウガンでの射撃を正面から受けて足止めされるとセルゲイ達との銃撃戦を開始した!
~歓楽街~
「はあはあ………」
「さすがにキツイな………」
歓楽街まで来たロイドとランディは息切れをし
「ロイド~、だいじょうぶ?」
「わ、わたし、おります………!」
2人の様子を見たキーアは心配し、シズクは決意の表情で申し出た。
「いや、大丈夫だ。」
「ハハ………こんくらい任せとけって。」
2人の心配や申し出を聞いたロイドとランディが平気である事を答えたその時
「あら、弟君じゃない。」
なんとイリアとリーシャがアルカンシェルの劇場方面からロイド達に近づいてきた。
「イリアさん、リーシャ!?」
「み、皆さん……」
自分達の登場にロイドが驚いている中リーシャは複雑そうな表情で視線を逸らし
「あ、リーシャとぐーすか寝てたヒトだー!」
一方キーアは呑気そうな様子でイリアを見つめていた。
「ぐーすか寝てた………?それはともかく可愛い子を連れてるわね。おっきな犬までいるし、楽しそうな組み合わせじゃない。」
キーアの言葉を聞いたイリアは首を傾げた後、ロイド達に微笑んだ。
「2人とも、急いで劇場内に避難してください!すぐに連中が―――」
そしてロイドがイリアとリーシャに警告をしたその時、警備隊の装甲車が住宅街方面から来て、装甲車から警備隊員が降りてきてロイド達に向かって来た!
「チッ………何台持ち出してんだっつーの!」
それを見たランディは舌打ちをし、エリィとティオ、レンは牽制攻撃を開始した!
「え、え………アトラクションか何か!?気合いが入ってるじゃない!?」
その様子を見ていたイリアは興奮し
「とにかく避難してください!」
「リーシャお姉さん!劇場の中にいる他の人達にも今夜は絶対に建物の中から出ないように言っておいて!」
エリィとレンはイリア達に警告した。するとその時裏通り方面で戦闘を繰り広げていたセルゲイ達がロイド達に追いついた。
「おい、何をしている!?」
「警察本部に急ぐぞ!」
「はい………!」
「そちらの二人はすぐに建物内に避難して!」
ロイド達と共に行政区方面に向かった。
「ワオ!凄いライブ感じゃないの!?よーし、こうなったらあたしも………!」
ロイド達の行動を見ていたイリアは状況がわからず興奮していたが
「イリアさんっ!いいから避難しましょう!」
「ちょ、リーシャ!引っ張らないでってば―――」
真剣な表情のリーシャに無理矢理引っ張られながら劇場の中に避難した。
~行政区~
「君達、どういうつもりだ!警備隊司令の命令かね!?事と次第ではタダでは済まんぞ!?」
一方その頃、市庁舎の入口付近で警備隊員に包囲されているマクダエル市長は警備隊員を睨んで警告したが
「「……………………………………」」
「くっ………(この生気のない目は………!?)」
何も言葉を口にせず虚ろな目で自分達を見つめる警備隊員の様子に戸惑った。するとその時、何かが叩き付けられる音が聞こえて、音が聞こえた方向にマクダエル市長達が視線を向けるとそこには警察本部のシャッターが降りた入口をスタンハルバードで攻撃している警備隊員達がいた。
(あ………)
(まさか本部が……!?)
(し、市庁舎も………!)
(あの様子じゃ本部に避難する事は無理ね……!)
(せめて一時的に潜伏できる場所がどこかにないのかしら……?)
その時、行政区にロイド達と共に到着したティオ、ダドリー、エリィは状況を見て驚き、レンは厳しい表情で警察本部を見つめ、ルフィナは不安そうな表情で考え込んでいた。
(………あのシャッターは簡単には破れん。しばらく持ちこたえられるだろう。追っ手が来る………噴水前を迂回して中央広場に戻るぞ!)
(アイサー!)
(フラン………みんな………無事でいてくれ………!)
そしてセルゲイの指示にランディは頷き、ロイドは厳しい表情で警察本部を見つめた後、警備隊員達の背後を駆け抜け、ロイド達に気付いた警備隊員はロイド達を追い始めた!
(おじいさま………ご無事で………!)
セルゲイ達と共に牽制攻撃を行っていたエリィは一瞬市庁舎の前にいるマクダエル市長に視線を向けた後、ロイド達の後を追って行き
「エ、エリィ………!?ええい、そこをどきたまえっ!私の孫娘達に一体何をするつもりかっ!」
その様子に気づいたヘンリーは警備隊員の前に一歩出て怒鳴った。
「し、市長……どうか落ち着いて!」
「危険です!お下がり下さい!」
マクダエル市長の行動に気づいた慌てはじめた職員達はマクダエル市長を諌め
「い、一体何があったんだ!?」
共和国派の議員は混乱していた。
「ぎ、議長……!ここは中に入った方が………」
「あ、ああ……(ば、馬鹿な………どうしてこんな事に………まさか………!?”彼”の仕業なのか!?)」
一方ハルトマン議長は帝国派議員の忠告に頷いた後心の中で現在の状況を起こした人物を思い浮かべ、信じられない表情をしていた。
~中央広場~
「はあはあ………」
「戻ってきたねー。」
中央広場に到着したロイドは息を切らせ、キーアは呑気に呟き
「でも、警備隊の姿は居なくなってるみたいです。」
「うまく撒けたって事か………」
「セルゲイさん………」
「……ああ。」
ティオとランディが安堵の溜息を吐いている中ある事を決めたダドリーと視線を交わして頷いたセルゲイはロイド達に驚愕の指示をした。
「―――よし。ここから先は別行動だ。お前達は東通りを抜けてクロスベル市から脱出しろ。」
「!?」
「セルゲイおじさん………」
「どうやら暴走してるのはベルガード門の警備隊のようだ。多分、ソーニャの部下達はアテに出来るだろう。街道に出たらタングラム門に連絡して車両で迎えに来てもらえ。」
「わ、わかりました……ですが課長たちは?」
「俺とダドリーは攪乱のためここに残る。連中の注意を引きつけてかき回してやるつもりだ。」
「そ、そんな………」
「おいおい、なに無茶言ってんだ!?」
セルゲイの話を聞いたロイドは信じられない表情をし、ランディは叫んだが
「フン、私達2人ならば攪乱してから撤退することなど造作もないことだ。グズグズするな!一刻の猶予もないのだぞ!」
「アーシア!俺達の代わりにロイド達の事を頼む!」
ダドリーは不敵な笑みを浮かべて説明した後、真剣な表情で指示をし、セルゲイはアーシアにロイド達の事を頼んだ。
「ダドリーさん………」
「―――わかりました。お二人とも女神の御加護を……!」
「………行きましょう!」
「かちょー!きをつけてねー!」
「ああ………!」
ロイド達は東通りに向かい、ロイド達と入れ違いに市庁舎方面以外から次々と装甲車が現れた後、装甲車の中から警備隊員達が現れ、セルゲイとダドリーを包囲した!
「―――ダドリー。一課のエースの実力、改めて見せてもらうぞ。」
「そちらこそ………かつてあの2人を率いていた伝説の班長の実力、見せてもらいましょうか!」
そしてセルゲイとダドリーは戦闘を開始した!
~東通り~
東通りを走っていたロイド達は襲撃跡の遊撃士協会の支部の前に立ち止まって、所々破壊されている支部を見つめた。
「これは………」
「襲撃された後か………」
「随分と派手にやられたわね……」
「………お、お父さん……」
エリィとランディ、レンの言葉を聞いたシズクが悲痛そうな表情でアリオスの無事を祈ったその時、支部の扉が開いてミシェルが出てきた。
「あら、あなたたち!?」
「ミシェルさん………!?」
ミシェルの声を聞いたシズクは驚き
「よかった……無事だったんですね!?」
ロイドは安堵の表情でミシェルを見つめた。
「ええ、あの後、何とか切り抜けて脱出したの。連中が居なくなってからこっそり戻ってきたんだけど………まだ連中、市内にいるみたいね?」
「ええ、行政区を中心に市内に展開しているみたいです。」
ロイド達はミシェルに今までの経緯を手短に説明した。
「………なるほど。市外にいた遊撃士達もそろそろ戻ってくる頃合いよ。戻り次第、フォローを回すからこのまま街道に逃げなさい!あと、シズクちゃんはこのまま頼んだわよ!それとアーシア!貴女はそのまま支援課の坊や達のフォローを続けて頂戴!」
「合点承知だ!」
「わかったわ!」
「任せてください!」
「ミシェルさん………どうかお気をつけて………!」
「ええ、そっちもね!」
そしてロイド達はミシェルに見送られて東出口に向かった――――――
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