STARDUST∮FLAMEHAZE
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第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#2
VOODOO KINGDOM
【1】
日当たりの良いカフェテリア。
ガラス張り吹き抜けの天井から、柔らかな陽光が店内全域に降り注いでいる。
上質な珈琲の香りが仄かに舞う洗練されたフロア、
全体の構図を考え適度に配置された異様に大きな観葉植物も
店の格を上げるのに一役買っていた。
そんな穏やかで暖かな空気の店内一角、
店名のロゴがプリントされた窓際で少女の怒声があがる。
「ちょっとおまえ! ちゃんと聞いてるのッ!」
目の前に置かれた、豪勢で色鮮やかなパフェとは対照的にシャナの顔は怒っていた。
「……」
空条 承太郎は、砂糖もミルクも入ってないエスプレッソをゆっくり口に含むと
剣呑な瞳で円卓上のテーブル、真向かいに座っている少女へと視線を向ける。
「シャナとか言ったな? お前、何者かしらんがガキのくせに態度がデカイな」
「な!? またガキって」
騒ぎ出す少女を無視して承太郎はジョセフに言った。
「それとジジイ……その百年以上も前に死んだ、
『DIO』 とかいう男が海底から甦っただと?
そんな突拍子もない話を、いきなり 「はいそーですか」 と信じろというのか?」
猜疑の視線をジョセフに向けた承太郎は、
学ラン内から煙草のパッケージを取り出して火を点ける。
「……ッ!」
シャナが露骨に抗議の視線を送ってきたが、
こちらも嫌いな甘ったるい匂いを我慢しているので文句を言われる筋合いはない。
そこに。
「だが、貴様のいう 「悪霊」 も、“超常” で在るという点では
共通の事象ではないのか……?」
「!」
不意に、そして唐突に、第三者の声があがった。
シャナの方向、しかし抗議の声(主に承太郎への罵声)をあげ続けている少女ではない。
荘厳な賢者の声。
遠雷のように重く低い響きを持った、「男」の声。
ソレはシャナの胸元で静かに光を称える、指先大の漆黒の球、
その周囲に金色のリングが二つ交叉する形で絡められた
ペンダントから発せられていた。
「この声、“さっきの”……! おい、テメー一体誰だッ!」
承太郎はライトグリーンの瞳を訝しく細め、
火の点いた煙草の穂先をその優美な「喋る」ペンダントに向ける。
「……」
承太郎の行為に内部で怒りのメーターが振り切れたのか、
シャナの黒髪が突如靡いて深紅の火の粉を撒き始めた。
そして髪と瞳とが先刻の牢獄内と同じように鮮やかな色彩を携える
“炎髪灼眼” へと変貌する前に、再びペンダントが声をあげた。
「よい」
「アラストール……」
鶴の一声。
鉄が冷えるように、シャナの髪と瞳が元の艶ある黒に戻っていく。
「……」
胸元のペンダントに諭された少女は、
しきりに口をもごもごさせながらも不承不承押し黙った。
「名乗るのが遅れたな。 我が名は 『アラストール』
紅世の王 “天壌の劫火” アラストール」
「……紅世……? 天壌……? 王……だと……?」
突拍子も無い話の上、更に累乗で不可思議な現実が加わり
怜悧な頭脳も過剰回転を引き起こした。
「紹介が遅れた。 こちらが最近知り合ったもう一人の“友人”じゃ」
「うむ」
ジョセフはそのアラストールと名乗った優美な芸術品、
或いは超精密機械のような喋るペンダントに向けて敬意の視線を送る。
「信じ難い事かもしれないが、彼の言ってる事は本当だ。
今の 「状態」 は世を忍ぶ仮の姿といった所か。
お前が先程牢内で体験したシャナの 『能力』
実はこの彼、アラストールの力に依る所が大きい」
「……」
紅世の王……
天壌の劫火……
牢屋の中で、 「悪霊」 の 「正体」 を解き明かすため悪霊本人に持ってこさせた
(と言っても頭の中でそう想っただけで、悪霊がどこからか勝手に持ってくるのだが)
オカルト関係の書物を読み漁っていた時に、確か似たような記述を目にした覚えがあった。
“紅世”とは、 『クレナイノセカイ』 の事。
「この世」、つまり「現世」に折り重なるようにして存在する、
『もうひとつの世界』
ソコに存在する、自らの実体を持たない真名の王達が、
この世の人間を 『依り代』 としてその強大なる力を現世に「顕現」させた事が、
後の世の 「神」 や 「天使」 の原型となった云々……
余りにもアホらし過ぎて途中で本をブン投げたが、
しかし現に、今、目の前で、ペンダントが自分に向かって喋っている。
録音や機械合成等というチャチな代物とは全く違う、紛れもない生の肉声。
ソレは紙の上の知識からだけでは決して得られない情報だった。
最も、ただの首飾りを王だのなんだのと鵜呑みにする気はサラサラないが。
「あらすとおるさん? 漢字でどう書くのかしら?」
そんな中、ホリィだけが妙にピントの外れた思索に耽っている。
「まぁ、 「彼」 については追々シャナが説明してくれるじゃろう。
何しろワシなどより遙かに長いつき合いじゃからな」
「なッ!? なんで私が! こんなヤツにッ!」
再び騒ぎ出そうとするシャナを、ジョセフは慣れた感じでケーキを追加注文し宥める。
「さて、話を戻すぞ。まぁ、お前がいきなり信じられないのも無理はない。
ワシも昔 『死んだ筈のアノ男が』 あのようなカタチで生きていると解った時、
どのような態度を取ればいいのか解らなかったからな。
そこでだ……有無をいわさず信じるようにしてやろう。
何故、このワシがDIOの 「存在」 を知り、ヤツの行方を追っているのか?
その理由を聞けばなッ!」
最後にそう叫んでジョセフは、カバンの中から「あるもの」を取り出した。
ソレは、精巧なデザインの一眼レフカメラ。
「理由をみせてやる、実はワシにも1年程前に、お前のいう悪霊、
つまり 『幽波紋』 の能力がなぜか突然発現している!」
「なんですって!? パパ!」
「ジジイ、今なんといった?」
ジョセフの口からでた予期しない言葉に、その娘と孫が同時に声をあげる。
「見せよう、ワシの幽波紋は……」
静かにそう言ってジョセフは自らの右手を手刀の形に構え、
頭上に高々と掲げる。
その刹那。
突如、ジョセフの手刀から深紫色をした、無数の棘が飛び出てきた。
ソレは周囲に同色のオーラを纏い、高圧電流に感電しているかのようにも見える。
「“コレ”じゃあ――――――――――ッッッッ!!!!」
鋭くそう叫び、ジョセフは紫の棘が生えた手刀を
テーブルの上に置かれたカメラに向けて思い切り叩きつけた。
グァッッッッシャアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!
爆音を伴ってレンズと金属片を飛び散らせ、
無惨な残骸と化したカメラから、やがて「写真」が一枚、
無機質な電子音と共に吐き出される。
ソレは瞬時に感光し、無数の像を表面に結び始めた。
「見たか? 今ワシの手から出た棘をッ!
コレがワシの幽波紋!
その名は 『隠者の紫』!!
能力は遠い地の映像をフィルムに写す “念写”!
ブッ叩いていちいち3万円もするカメラをブッ壊さなくちゃあならんがなッ!」
NYで最大規模を誇る不動産王の血がそうさせるのか、
ジョセフは使用コストの高い己の能力へ苦々しげに口元を軋ませ、
摘み上げた写真を振りながら言った。
「お客様? いかがなされました?」
「なんでもない。気にしなくていいわ。
それよりミルフィーユと小豆のシュークリーム持ってきて」
破壊音で駆けつけて来た中年のウェイターに、
シャナが背を向けたまま素っ気なく告げる。
「だがッ! これからこのポラロイドフィルムに浮き出てくる映像こそ!
承太郎ッ! おまえの 『運命』 を決定づけるのだッ!」
「なん、だと?」
ジョセフは写真を持ちながら更に続ける。
「ところで承太郎、ホリィ。
おまえたちは自分の、首の後ろをよくみたことがあるか?」
不意に放たれる、奇妙な質問。
「……? なんの、話だ?」
「注意深く見ることはあまりないだろうな。
実はワシの首の背中の付け根には、星形のような痣がある」
「は!」
突如驚きの声を上げるホリィ。
ジョセフの首筋にあった星形の痣、ソレは愛娘であるホリィ、
そして孫の承太郎の首筋にも確かに刻まれていた。
まるでその血統の「歴史」が象徴する、
数奇なる『運命』の「証」で在るかのように。
「だから、ソレが何の話かと訊いているんだぜ」
少々苛立った口調で、ジョセフに問い質す無頼の貴公子。
「ワシの母にも聞いたのだが……幼い頃事故で死んだワシの「父」にも……
在ったそうだ……どうやら……ジョースターの「血統」の者には……
みな首筋にこの星形の「痣」が刻まれているらしい……」
息を呑むジョセフのその顔に、いつのまにか汗が滲んでいた。
「そして……今まで気にもとめなかったこの「痣」こそが……
ワシ等のこれからの運命の「兆」なのじゃ……!」
「パパ!」
「テメー! いい加減に……ッ! 一体何が写ってるのか見せやがれ!!」
隣で腰掛けているホリィが怯えるような真似をする祖父に苛立った承太郎は、
鋭い声でそう叫びその「写真」を毟り取る。
「!!」
取り上げた、写真。
その中に、映ったモノ。
ソレ、は。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
一人の、人間。
背を向けたまま、鋭い視線でこちらを見る半裸の男。
剥き出しの上半身の前で、その両腕を背徳の鉤十字のように交差させ、
そして開いた右手の指先を艶めかしく折り曲げている。
そして片眼だけだが、射るなどという言葉ではとても足りない、
精神どころか魂までもバラバラに引き裂かれるような、
この世のどんな暗黒よりもドス黒い邪悪なる眼光!
そしてその瞳とは対照的に、長く美しい黄金の髪を背に携え、
まるで生きた芸術品のように輝きを放つ長身細身の躯は、
写真を持つ承太郎と同等かそれ以上に磨き抜かれている。
そしてその “星形の痣が刻まれた” 白い首筋には、
悠麗な外見とはまた対照的に凄惨なる夥しい数の縫合痕があった。
「『DIO』ッッ!! ワシの「念写」には!
いつもいつもいつもッ! こいつだけが写る!
そして! ヤツの首筋の後ろに在るモノは………………ッ!」
一瞬、頭の中が真っ白になり、ジョセフの声が遠くなる。
承太郎のライトグリーンの瞳は、ある一点だけを釘づけにされたように凝視していた。
DIOと呼ばれる男の首筋にある星形の 【痣】
そのコトが指し示す意味!
残酷なる「真実」が、同じ血統の者から煮え滾る怒りと共に噴出する。
「このクソッタレ野郎の首から下はッッ!!
ワシの祖父 『ジョナサン・ジョースター』 の肉体を
乗っ取ったものなのじゃあああああああああッッッッ!!!!」
「ッッ!!」
魂の慟哭。
突如告げられたその「真実」に、
承太郎は頭蓋をハンマーで殴られたような激しい衝撃を受ける。
「……」
放心状態に陥った孫を憂うように見据え、ジョセフは言葉を続ける。
「百年前の大西洋の「事件」は、
ワシが若い頃エリナお祖母さんから聞いた話の推測でしかないが、
とにかくDIOは、ワシの祖父の肉体を奪って生き延びた。
そして! これだけはいえる! ヤツは今!
この世界のどこかに潜んでナニカを策しているッ!
ヤツが甦ってから4年! ワシの「念写」も! お前の「悪霊」もッ!
ここ僅か1年以内に発現しているという事実……!
おそらく、イヤ確実にDIOが元凶ッ!」
「おまえの能力は、人間の世界でいう処のいわゆる超能力。
私のは違うけど、おまえとそのDIOとかいう男は、
乗っ取ったおまえの祖先の肉体と見えない因果の糸のようなもので結ばれている。
その存在がおまえの裡で眠っていた能力を呼び熾した。
今、解ってるのはそんな所よ」
ジョセフの説明をシャナが完璧に補足した。
しかし、ケーキがその小さな口元へ運ばれる度に
目元がにへっと年相応に緩むので恐ろしく説得力がない。
「……」
承太郎は写真にもう一度、DIOの姿を確認するため視線を落とした。
「ッッ!?」
驚愕に三度その両眼が見開かれる。
いつのまにか、“写真の中の人数が増えていた”
DIOを中心として、その周囲に無数の者達が群がっている。
承太郎がジョセフから写真を奪い取ったとき、
まだ 「念写」 の 「現像」 は終わっていなかったらしい。
そしてソレが完了した今、大小様々な人物が写真の中にいた。
が、しかし、その全てが邪教徒のような冥い色彩のローブを纏っており
フードを目深に被っている為、表情は疎か性別すらも判別できない。
冥き色彩を纏う者達は全て、
その中心部に屹立するDIOに向かって傅くように片膝を下ろし、
片腕を立てたもう一方の膝に携え、
全員が忠誠の誓いを示すように頭を垂れていた。
その様子から伺えるの両者の関係は、
【王】 とソレに仕える 『下僕』
一体何者なのかは当然、皆目見当もつかない。
ただ、彼等がその身に纏っているローブは、
目の前でシャナが着ているマントのような黒衣とよく似ていた。
寂びた色彩、そして異様な存在感。
「気がついた? 私が用があるのは、
そのDIOとかいう男よりも寧ろ “その周りのヤツら” 」
承太郎の反応から写真に何が映っているか察したのか、
口元をナプキンで綺麗に拭いながらシャナが言う。
「もちろんどう好意的にみても無関係とは想えないから、
当然その男も討滅するつもりだけど」
「……!」
少女の視線は、いつのまにか鋭くなっていた。
ケーキを口元に運んでいた先程とはまるで別人。
この少女にも、己が祖先の肉体を奪って現代に甦った男、
『DIO』 と何らかの 「因縁」 が在るのだろうか?
「アラストール? この写真から、こいつが今どこにいるか解る?」
「……」
承太郎の手から写真を引ったくり、シャナはアラスールに訊いた。
「……わからぬ、な。背後の空間がほぼ完全に闇で埋まっている。
“誰” の仕業かは、考えるまでもあるまい」
「そう」
シャナは短く呟いて写真を承太郎ではなくジョセフに手渡した。
「ホリィ、ワシ等はしばらく日本に滞在する。
すまぬがお前の家にやっかいになるぞ」
「不本意ながら、ね」
そう言って承太郎を一瞥するシャナ。
「とんでもない。家が賑やかになって嬉しいわ。
何か困った事があったなら遠慮なく言ってね?
シャナちゃん、今日からよろしく」
ホリィはそう言って、店内に降り注ぐ陽光よりも優しい笑顔を向けてくる。
「ふぇ? あ、ぁ、うん……」
ホリィの何気ない言葉と仕草に何故か顔が紅潮したシャナは、
その表情を気取られないように俯きスティック5本分の砂糖が入った
カプチーノを一気に飲み干して椅子から飛び降りた、
着地の反動で黒衣の裾がふわりと揺れる。
そのままジョセフと一緒に出口に向かおうとしたシャナを、
彼女の胸元からあがった声が引き止めた。
「待て。まだだ。話は終わっておらぬ」
唐突なアラストールの声に、
出口に向かおうとしたジョセフとシャナがテーブルに向き直る。
承太郎も椅子に座って煙草を銜えたまま、
シャナの胸元で光るアラストールに視線を向けた。
「空条 承太郎。貴様のその虚ろなる「器」の力。
『幽波紋』
我が察するにどうやらソレは、我ら紅世に近い領域に位置する能力で在るらしい。
そこで、此れより貴様の器に我が「名」を付けよう。
己が分身の存在をそうして「認識」する事により、
今までより繰るのが容易となる筈だ」
「なァッ!? ジョセフはともかく、なにもアラストールが……
こんなヤツにそこまでしなくても!」
本日、累計4度目の「な!?」の後、
シャナは躊躇いがちにもアラストールに抗議の声をあげる。
しかし、件の如く「よい」の一言であっさりと却下された。
我が孫も嫌われたものだなと、ジョセフは心の中で苦笑する。
「例の、物を」
アラストールの威厳に満ちた声に不承不承、
シャナの細くて可憐な指先が黒衣の内側へと潜る。
再び出てきた手には、一纏めにされたタロットカードの束が握られていた。
「紅世の 「宝具」 の一つだ。図柄を検ず、無造作に一枚を引いて決めよ。
ソレが貴様の運命の暗示と成り、能力の暗示と為る」
「あぁ……」
正直、【悪霊】に「名前」が無いのは不便だったので、
アラストールの提案は渡りに船だった。
何より形はどうあれ今日まで自分の身を護ってくれた「存在」を、
いつまでも「悪霊」と呼ぶのは気が引けた。
その承太郎の目の前で、シャナは一流ディーラー顔負けの鮮やかな手つきで
カードをショットガン・シャッフルし、滑らかな放射状に拡げて並べた。
相変わらずの技の冴えを見せつける、小さな魔術師。
「おまえには 【愚者】 か 【吊られた男】 がお似合いだわ」
口元に冷たい笑みを浮かべ、少女は殊更にいじわるな口調でそう告げる。
「……」
承太郎はその台詞を意に介さず伏せられたカードを一枚手に取り、
自分では図柄を検めずソレを指の隙間に挟んでアラストールへ開示する。
何故かシャナが横を向き小さく舌打ちした。
「名づけよう。貴様の器、『幽波紋』の名は……」
高々とその神聖なる運命の「真名」が、
深遠なる紅世の王 “天壌の劫火” の口から宣告される。
『星の白金』
本体名-空条 承太郎
能力-近距離パワー型。強靭な破壊力と超精密な動作とスピードとを互いに併せ持つ。
破壊力-A スピード-A 射程距離-C
持続力-C 精密動作性-A 成長性-A
……
…………
………………
空条 承太郎は、一人カフェの中に残っていた。
灰皿の中は煙草の吸い殻で溢れかえっている。
店内は学校帰りの学生や仕事終わりのサラリーマンやOLで込み合ってきた。
寡黙だがその風貌と存在感の為にどうしても目立つので、周囲の不躾な視線が煩わしい。
考える「時間」が欲しかった。
元来禁欲的な性格の彼だが、今は切実にソレを欲していた。
悪霊 幽波紋 炎 大太刀 念写 シャナ アラストール
今日目にした、あるいは体験したあらゆる出来事が、
心の裡で綯い交ぜになり混沌となる。
そし、て。
『DIO』
その男の姿を想い返すたびに、何故か全身の血が沸騰するほど熱く燃え滾る。
まるで溶解した灼熱のマグマの濁流が、己の裡で渦巻いているかのようだ。
頭に昇った血を冷ます為、承太郎は今日何本目かわからなくなった
煙草をその色素の薄い口唇に銜えた。
カキンッ!
澄んだ金属の着開音がしてスタンド、『星の白金』が
五芒星の刻印が刻まれた愛用のジッポライターを、
忠実な従者のように自分へと差し出して火を点ける。
しかし、その承太郎に火を捧げる屈強なる従者の姿は
何故か周囲の人間には見えていない。
「……」
深々と肺の奥まで吸い込み、そして細い紫煙が口唇の隙間から吐き出された。
「やれやれ、だぜ……」
煙草の濃いチャコールフィルターを噛み潰し、
無頼の貴公子は苦々しくそう呟いた。
これにて、ハードでヘヴィー過ぎる空条 承太郎の1日は、
ようやく終わりを告げた。
……はずだった。
←To Be Continued……
後書き
はいどうもこんにちは。
シャナ原作のファンの方からすれば(っつーかそーゆー人“コレ”読むか・・・・?('A`))
「DIOはこんなに強くねーよ!」←(「様」をつけろよ! デ○ス○ヤロー!)
と想われるかもしれませんが、「ラスボス」がいないとストーリーの「目的」が
ボケてしまうので敵のTOP、NO・1というのは絶対に必要な存在なのです。
まぁワタシは「時が止められる」「スタンドのスピードが光速(以上)」
「不死身の吸血鬼」「善悪関係なく人を惹きつけるカリスマ性」
「一部の主人公(の肉体)を支配している」
ざっとコレだけ考えただけでも十分「ラスボス」としての
条件は整ってると想いますが
(シャナに上の条件一つでも充たす者がいるなら連れてきてください)
でもまぁ逆に「何で紅世の徒がDIOに従ってるの?」という
「疑問」を設けると作品に対する興味を持って戴けるかなと
こんなカンジにした次第です。
まぁブッちゃけて言えば原作の紅世の徒は漏れなく
「ただの高校生(○タレ優柔不断の○○○○ー)」
にハメられてるわけで、その所為で負けてるわけですから
ソイツより「弱い」というコトになってしまい「そんなヤツら」は
DIOサマに「支配」されて当然と想うというのが本音の処です。
ソレでは。ノシ
PS ちなみにこの作品に於けるDIOサマのモデルは某ミュージシャンの
「ガ」がつくアノ方です。
なんか見た目が吸血鬼っぽいですし、冷静さと狂暴性を併せ持つというのも
なんかしっくりきた次第です。
まぁだからどーだこーだという話ではありませんが・・・・('A`)
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