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魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者

作者:niko_25p
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第八話 アスカとシャーリーのBLW

 
前書き
オリジナルのユル~回です。 

 
思えば、前日エリオに無理にでも整理運動をやらせておけばよかった。

と後にアスカは思うのであった。

まさか、あんな事になるなんて…

魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。





アスカside

発足式から三日経ち、日を追うごとに訓練は厳しくなっていった。

それでも何とか食らいついていくオレ達は、当然の事ながら訓練が終わるといつもヘロヘロになっていた。

その日も、訓練終了後の待機室でへたり込んでいた。

特に、今日はエリオの運動量がハンパなかった。

もう走る走る、切る切ると大立ち回りの大活躍。

おかげで夕方辺りは魂が抜けたようになってたね。

そんで、今エリオは床に突っ伏したまま動かないでいる。

「エ、エリオ~、生きてっかー」

かく言うオレも、結構息も絶え絶えだったりする。

「ひゃい……らいひょうぶれす……」

床から返事が……呂律が回ってないぞ、エリオ。

「ほら、仰向けになれって。これ、飲めるか?」

突っ伏したままのエリオを仰向けにして、ペットボトル渡そうとした。

「……!」

クタクタになっている筈のエリオがバッと起き上がり、奪うようにしてペットボトルを取ると、

ジュボッ!

一気に飲み干した。っていうか、蒸発した?!

一瞬にしてペットボトルの中身が消え、それと同時にエリオがバタリと倒れる。

「こりゃダメだ」

グルグル渦巻きになっているエリオの目を見て、オレはそう呟いた。

まあ、他のメンバーも似たようなものだけど。

スバルとキャロは背中合わせでウトウトしてるし、ティアナは机に突っ伏したまま、それでも訓練日誌を書こうとモソモソもがいている。

オレはオレで、ガクガクする膝を必死に押さえている有様だ。

「おい、エリオ。整理運動しとかないと、明日が辛いぞ」

ユッサユッサとエリオを揺らしてみるが、アーとかウーとか唸るような返事をするだけで、ピクリとも動かないエリオ。

こりゃ、明日が大変だ。

そう思ったけど、これ以上無理に起こすのも可哀想なので、そのまま寝かせておく事にした。

明日、キャロにヒーリングしてもらわないとダメかもな。

「はい、日誌終了~」

うずくまっていたティアナが、ノッソリと立ち上がる。

流石ティアナ。昨日のスバルみたいに、ヘバっているオレ達を叩き起こして助けて~、って事にはならなかったな。

もう少し書類仕事を鍛えろよ、スバル。

「お疲れさん。じゃあ、みんなを起こすか」

オレはガクガクする膝に気合いを入れてスバルを揺り起こす。

「ふぇ?」

パチッと目を開けるスバルが、目を擦りながらオレを見上げる。

「ム~、疲れたよ~」

スバルが誰となく文句を言う。

こいつ、一々行動が幼い時があるな。思わず和んで笑ってしまったオレ。

「これじゃあ、明日の朝、起きれるか分かんないな」

オレの言葉にティアナが同意してきた。

「まったくね。でも、まだまだこれからなんだから、しっかりしましょ」

「そりゃそうなんだけど……なあ、一つ提案があるんだけど」

明日寝坊しちゃマズイよな。オレは予防線を張ろうと考えてある提案をしようとした。

「え、なになに?」

なぜかスバルが食いついてきた。まあ、ティアナとスバルはセットだからいいか。

「明日の朝なんだけどさ、お互いに起こし合いをしないか?」

「起こし合い?」「なにそれ?」

話を聞いてくれそうな雰囲気になったので、オレは切り出す。

「明日、7時になったらお互いに起こし合うんだよ。オレ達が起きたら、二人の部屋のドアを叩きに行くから、そっちが目覚めたら。こっちのドアを叩きにきてくれよ」

どう?と聞いてみる。

「めんどくさいわねぇ……」

どうみても乗り気じゃなさそうなティアナ。スバルも、見た限りじゃめんどくさそうな顔をしている。

まあ、オレでもめんどうだとは思うけど……しょうがない、ぶっちゃけますか。

「正直に言うと、起きられそうにないから頼んでいるんだ。お願いします」

オレは深々と頭を下げる。視界に入る膝が、まあ面白い位に震えている。

いい加減収まって欲しい。

「しょうがないわねぇ。いいわ、今日はエリオが特に頑張ったから、頼まれてあげる」

やれやれと、ため息混じりだったが、ティアナが承諾してくれた。

よかった~。ふてくされた態度はとっていても、基本いいヤツだな、ティアナは。このツンデレさん。

と思っていたら、ティアナにほっぺたを引っ張られた。

「誰がツンデレか!」

やだ、人の心を読むのね、ティアナさん。

「じゃあ、明日はみんな一緒に朝ご飯だ!」

そんなオレ達にかまわずマイペースのスバル。

あまりにもスバルらしい言葉に、オレとティアナは苦笑した。

コンコン

その時、待機室のドアがノックされた。

誰だろ?隊長かな?

「はい、どうぞ。鍵はかかってないよ」

オレが言うと、ドアが開いてメカニック用のツナギを着た茶髪の女性が入ってきた。女性と言っても、オレらと歳は変わらないはず。

「アルトさん、どうしたんですか?」

中に入ってきた女性。

メカニック兼通信担当、ロングアーチスタッフのアルト・クラエッタさんだ。

「なのはさんに頼まれて、キャロを回収しにきましたー」

おどけたように敬礼すると、アルトさんはヤホー、とスバルとティアナに手を振る。

「あー、本当にダウンしてるね」

アルトさんはソファーでコックリコックリしているキャロをのぞき込んだ。

「なんでアルトさんが?」

ふと、そんな疑問が湧いたので聞いてみた。

「キャロと同室が私だからだよ。へへ、まあお姉さんを頼まれたんだよね」

ちょっと照れ笑いを浮かべながら、アルトさんはキャロを抱え上げた。

意外と力持ちさんだな。

「くきゅ?」

その様子を見ていたフリードが、フワリと飛び上がって……あろう事か、アルトさんの頭に止まりやがった。

「こら、フリード!失礼だろ!」

オレがフリードを叱ろうとすると、アルトさんがそれを止めてきた。

「いいよ、アスカ。フリードも疲れてるもんね」

ニコニコと笑いながらそう言ってくれた。

なにこの人。ただの女神か?優しすぎるぜ。

「すみません、アルトさん」

「気にしない、気にしない。キャロは責任もってお風呂いれてご飯食べさせるから、安心してね」

じゃあまたね、と言ってアルトさんはキャロとフリードを連れて行ってくれた。

「いい人だなあ」

シミジミと感じるね。しかも、サバサバしていて話しやすいし。

「じゃあ、アタシ達も退散しますか?」

ティアナがそう言い、その場は解散となった。

オレはエリオを担ぎ上げ、待機所を後にする。

「さて、と。明日の朝、筋肉痛で大変だぞ、エリオ」

たぶん聞こえてないだろうエリオに言う。

だが、想像の斜め上を行く騒動になろうとは、この時のオレは思ってもいなかった。





「うぅ……イタッ!」

頭上からの苦痛の声で、オレは目が覚めた。

時計を見ると、6時55分だった。スバル達が起こしに来るのに、あと15分くらいはかかるかな?

「エリオ、起きたのか?」

ベッドから抜け出して、二段ベッドの梯子を上って様子を見る。

「は、はい。でも、身体中痛くて」

苦しそうに呻くエリオ。

あー、やっぱそうなったか。

モゾモゾ動こうとするエリオだが、その度に顔を歪める。

こりゃ、キャロのヒーリングだけじゃ間に合わないかもな。

訓練が始まる前に、シャマル先生に診てもらった方がいいかも。

「昨日、整理運動してなかったからな。ホレ、掴まれるか?」

エリオを抱き抱えて梯子を降りたオレは、とりあえずイスに座らせる。

「すみません、ありがとうございます」

律儀にお礼を言うエリオ。真面目なヤツだな。

「いいって。でも、動けそうか?」

オレが聞くと、エリオは少し身体を動かしてみた。が、痛みが走ったのか、すぐに顔を歪める。

「ちょっと…無理そうです。どうしましょう」

困った、とエリオが眉を寄せる。こういう仕草って、腐っている人にはクルのだろうか?とちょっと考えてしまった。

「後でキャロにヒーリングを掛けてもらおう。でも、歩けるようにはしておくか」

オレはそう言ってエリオを見た。

「まあ、オレがいい事してやっから、リラックスしてな」





ティアナside

「ふぁ~あ」

隣を歩くスバルが大きなアクビをしてンーと伸びをする。

アタシも、まだ完全に起きているとは言い難い状態だ。

アタシ達は何とか目が覚めて、アスカの部屋に向かっている。

「身体は大丈夫?筋肉痛とかない?」

コキコキと首を鳴らしているスバルに聞いてみる。

大丈夫だとは思うけど、心配を掛けないようにって無理する子だから、ちゃんと見ていてあげないといけない。

「とりあえずは、かな?多分、エリオの方が大変な事になっていると思うよ」

「そうね、後でキャロを起こしに行った時にヒーリングを掛けてもらった方がいいかもね」

そんな話をしながら、アタシ達はアスカの部屋の前まできた。

余談だけど、機動六課は女子率が異常に高い。

寮も、女子側は空き部屋が無い状態であるのに対し、男子側はスカスカな状態だ。

だからと言って、無人ではないんだけどね。

男子側に入っているせいか、何となく新鮮な感覚を覚えてしまった。

「あれ?」

ドアの向こうから、何か話し声が聞こえてきた。スバルもそれに気づく。

「何だ、起きてるんじゃない」

起こす手間が省けたわ。アタシはノックをしようと手を上げた。

「ティア、ちょっと待った」

スバルはアタシを止めると、ドアに耳を押しつけた。何やってんのよ?

「やめなさいよ。盗み聞きなんてみっともない」

まったく、やる事が子供なんだから。よっぽどエリオやキャロの方が大人よ……まあ、あの子達は、もうちょっと子供してた方がいいけど。

「えー。でも気になるじゃん!男の子同士の会話ってどんなんだか」

ニヘラ、って笑ってスバルが聞き耳をたてる。

……まあ、アタシもスバルも彼氏なんて出来た事ないから、気になるって言えば…って違う!

危なくスバルのペースに乗せられる所だった。

プライバシーの侵害なんて、未来の執務官がしていい事じゃない。

スバルを止めようとしたら…

「?」

スバルの反応がおかしかった。

何か眉を寄せていたかと思ったら、急にボッと顔を赤らめたのだ。

「??」

思わずアタシもドアに耳を押し当てた。

…べ、別に盗み聞きしようと思った訳じゃないからね!スバルがおかしな反応したから、確かめるだけなんだから!

と自分に言い訳しながら聞き耳をたてると、中から聞こえてきたのは…

「ハアゥ…うっ…ん!あ…あぁ!!」

妖しく喘ぐようなエリオの声?

「どうだ?少しはよくなってきたか?」

アスカの声だ。

え?ええ?ええええええええ!

「ティ、ティ、ティ、ティア!アスカってばエリオにな、な、何してんの!」

思いっきり動揺しながらも、小声でスバルが聞いてきた。

「し、し、知らないわよ!な、な、何、ナニをしてんの、アイツ!」

アタシも思わず小声になる……ナニのイントネーションが若干おかしかったかな?

いや、そうじゃない、落ち着こう。

そう思っているアタシ達をかき乱すように、ドアの向こうの妖しい会話が続く。

「あ…アスカさん…ボク、こんなの初めてです。ん…あ、凄いドクドク脈打ってます…」

ド、ドクドク!?な、ナニが?

アタシもスバルも、顔が真っ赤になっている。

「慣れるともっと気持ちよくなるからな。もう少し解してから、さっきのヤツやるぞ」

「はい…ん、ハァ、ハァ」

自分でも分かるくらいに体温上昇している。

スバルは頭からモウモウと湯気を立ちこめさせている有様だ。

「ちょ…マズイよね?」

涙目でこっち見んな!ってそれどころじゃない。

「すぐに止めてやるわ!」

ドアから耳を離して、アタシは殴りつけようと拳を振り上げた。けど…

「落ち着きなさい」

ポン

だ、誰!?ムグッ!

驚いて叫び声を上げそうになるアタシとスバルの口を、突然の乱入者は押さえてきた。

「まだ、そうとは決まった訳じゃないわ」

キラン!とメガネを光らせているのは、シャーリーさんだ。

「シャ、シャーリーさん、いつの間に…」

アタシの問いかけには答えず、シャーリーさんは紙コップを渡してきた。

「とりあえず、状況確認よ」

そう言って、シャーリーさんも盗み聞きに加わる。

「「……」」

どうしたものかとスバルと顔を見合わせたけど、結局渡された紙コップをドアに押し当てて聞き耳をたてる事にする。

……あれ?いいのかなあ?

「ん、ん、あぁ…」

「痛くないか?」

「あ、大丈夫です…ふぅ…」

呼吸を整えるエリオの息づかいが分かる。

え?本当にいいの?このままで?

不安になってシャーリーさんを見ると、グッ!と拳を握ってる。大丈夫か、この人……

「じゃあ、さっきのヤツ、やるぞ。力抜けよ」

「は、はい。お願いします」

ちょ、ヤバイヤバイヤバイ!

スバルもあわあわしてるし、流石にこれ以上放っておけない。

それでもシャーリーさんは冷静……じゃなかった。

「よし、いけ!アスカ!」

鼻息荒く、聞き耳をたてている。

だ、ダメだこの人!完全に期待してる!

「よし、行くぞ」

「はい…ん…ンンッ…くぅ…あぁ…痛っ!」

まずい!手遅れか?

次の瞬間、アタシはスバルに命令していた。

「スバル、蹴破れ!」

「は、はい!」

バン!とドアを蹴破るスバル。同時にその場にへたり込んで両手で手を隠す。でも、指の隙間からシッカリと室内を凝視してる。

余裕あるわね……

一気に部屋になだれ込むアタシとシャーリーさん。

「なにやってんのよ!このド変態!!!!」

ガバッ!と拳を振り上げるアタシの前にあった光景とは……

イスに座って足を投げ出してるエリオと、その足の裏にグリグリと拳を押し当ててるアスカだった………あれ?





outside

いきなりドアが弾き飛び、室内の壁に突き刺さる!

「「…………」」

あまりに突然の事に、アスカとエリオは反応出来なかった。

ドアが蹴破られたと同時に部屋になだれ込んできたのは…

「なにやってんのよ!このド変態!!!!」

と叫び声を上げて拳を振り上げたティアナと、一眼レフデジカメを構えてシャッターを切ろうとしたシャーリーだった。

部屋の外では、ヘタリ込んだスバルが両手で顔を隠している。が、指の隙間からこちらを伺っている。

アスカとエリオは壁に突き刺さったドア見る。

そして、拳を振り上げたまま固まっているティアナに視線を移した。

「なにって、足つぼマッサージだけど?」

「「「……」」」

「「……」」

シーン……

妙な静けさが漂う。

「え?じゃ、じゃあ、ドクドク脈打つって??」

真っ赤な顔をしたスバルがアスカを見る。

「そりゃ、ツボを刺激して血行を良くすれば足の血管が脈打つのが分かるだろ。足は第二の心臓って言うくらいだから」

聞かれるがままに答えるアスカ。まだ状況を飲み込めてないのか、怒り出したりはしていない。

シーン……

再び微妙な静寂が辺りを支配する。

「あ、あは、あははは!そ、そうだよね!足つぼマッサージね!」

引きつった笑い声を出して、スバルが立ち上がる。

「……」

ティアナはまだ立ち直っていない。

「orz」

シャーリーは床に手を突き、うなだれている。

「あ、朝だよー、アスカ!起こしに来たから、朝ご飯たべようね!じゃ!」

そのまま回れ右をするスバル。

ポン

いつの間に間合いを詰めたのか、アスカがスバルの肩を掴む。

「待て」

ビクッと身体を振るわせるスバル。そのスバルをクルリとむき直させたアスカ。

「確かに、オレは朝になったら起こしてくれと頼んだ…が!ドアを壊せとは一言も言ってないぞ!」

当然の事ながら、ようやくアスカが怒り出す。

「う…ゴメン…でも、ティアが蹴破れって言うから…」

流石に罪悪感があるのか、スバルが落ち込んだように謝る。

それを聞いたアスカが、今度はティアナの方を向く。

「え?アタシ?」

話を振られたティアナがキョドる。

「どーいう事だ、ティアナ」

ピクピクと痙攣するこめかみを押さえて、アスカがティアナに詰め寄る。

「だ、だって、部屋の中から変な声が聞こえてきたからてっきり…」

そこまで言って、ティアナは更に赤くなる。

ティアナがナニを勘違いしていたのかを察したアスカ。

ビキッ!

「んな訳あるか!それとも期待していたのか!この腐女子が!」

額に青筋を立てて怒鳴るアスカ。

「な……誰が腐女子だ!誰が!」

ティアナが思わず言い返す。

「そうよ!腐女子の何がいけないの!」

腐女子、という言葉に反応したシャーリーが息を吹き返した。相当たちの悪い復活の仕方だ。

「ティアナ!腐るのは決して悪い事じゃないわ!胸を張って!」

ガシィッとティアナの両肩を掴み力説するシャーリー。

「え?えぇ??」

シャーリーの変貌に呆然とするティアナ。

それを見たアスカがあきれ顔で言った。

「……同志が見つかってよかったな、ティアナ」

「ちょっ、違いますよ、シャーリーさん!」

慌てて否定するティアナだったが、シャーリーは既にその矛先をアスカに向けていた。

「だいたい、アナタには失望したわ、アスカ」

「え?オレ?」

「そうよ!エリオみたいな美少年と同じ部屋にいるのに手を出さないってどういう事なの!」

「ちょ、ちょっとまってください!何を言ってるんですか、フィニーノ一士!」

話の雲行きが怪しくなってきた。

それを感じたアスカは素早くティアナをエリオの後ろに配置する。

「え?」「な、何?」

訳が分からず、エリオとティアナが顔を見合わせる。

次の瞬間、シャーリーが爆発した!

「普通押し倒すでしょ!」

「わー!何を叫んでんだ、アンタは!ティアナ!エリオの耳塞げ!」

「は、はいぃ?」

その声に、反射的にエリオの耳を両手で塞ぐティアナ。

その間もシャーリーは止まらない。

「押し倒して○○○を×××で、△△△するでしょ!」

「トンデモねー事でかい声で言ってんじゃねぇ!!」

アスカがブチ切れた。

ズドン!

神速でシャーリーにデコピンを食らわす。

デコピンとは思えないエゲツナい音と共に仰け反るシャーリー。

だが、グッと踏みとどまり体勢を立て直す。

「そして自分の□□□をエリオの☆☆☆に押し当て…」

「アホかあぁぁぁぁぁ!」

ずどどん!

再びデコピンが炸裂!再び仰け反るシャーリー!

が、またも踏みとどまる!

「そして一気に…」

「言わせねぇよ!?」

ずどどどどどおぉん!!

どんなやり方をすればそんな音が出るのか?三発目のデコピンでようやくシャーリーが後ろに倒れた。

「もうアンタに敬語なんか使わねぇからな!フィニーノ一士なんて呼んでやんねぇよ!シャーリーだ!」

ゼーゼーと肩で息をするアスカが声を荒げる。

耳が塞がれている為に聞こえてはいないが、アスカが怒っているのは分かるエリオは、どうしていいか分からずにオロオロとしている。

ティアナとスバルはポカンとしているしで、中々のカオス具合だ。

「ふ、フフフ、腐腐腐腐!」

床に伸びた筈のシャーリーが不気味に笑う。

その地の底からの響きにどん引きするアスカ。

「いいわ、アスカ。でもね、これだけは言っておいてあげる」

ゆらりと立ち上がったシャーリー。

その姿は、地獄は徘徊する幽鬼のようだ。

その迫力に気圧されるアスカ。

シャーリーはアスカを見据えると、力の限り叫んだ!

「BLの嫌いな女子はいません!アディオス!!」

ダッとその場から退散するシャーリー!

「「「「………」」」」

残された四人は、ただ呆然としてしまった。

「やれやれ、朝っぱらから18禁(腐向け)な声が聞こえてくると思ったら、あんた達か」

そこに、寝ぼけ眼のキャロの耳を塞ぎながらアルトさん登場。

カオスな現場に舞い降りた救世主だ。

「どうしたの、このドア?」

アルトの問いに、アスカが頭を抱えて答える。

「そこのBL大好き腐女子のせいです」

「どゆこと?」

「だから!腐女子じゃないしBL好きでもない!」

ティアナが割って入ってくる。誤解を解こうと必死だ。

そこに、スバルがティアナの手をチョンチョンと突っついてくる。

「ねえ、ティア。ちょっといい?」

「うっさいわねぇ!いま大事な事を……」

言い掛けたティアナだったが、次のスバルの一言で奈落の底に突き落とされる事になる。

「BLとか腐女子って、なに?」

ピシッ!

金縛りに合うティアナ。アスカの目がスッと細くなる。

「ほほーう。ティアナさんは、あの言葉の意味を理解しているとみえますねぇ」

「んな、な、な、なに、ななに、なにをい、い、言って……」

これでもかと言うくらい動揺しまくるティアナ。

側で笑いを堪えているアルトにも気づかない位に動揺している。

無自覚にティアナにとどめを刺したスバルは、容態急変したティアナをみてアワアワ慌ててる。

アスカはその隙に、事の次第をアルトに説明した。

その間、キャロはエリオにヒーリングを掛けていた。

動揺するティアナの周りで慌てているスバル。その側でヒーリングをしている10歳コンビ。

それを後目にアルトの説明するアスカ。

まだまだカオスだ。

「…と言う訳なんです」

まだ立ち直ってないティアナを余所に、ジト目でスバルを見るアスカ。

「うぅ…ごめんなさい…反省してます」

ガックリと肩を落とすスバル。

「これ、どうするんですか?」

エリオのヒーリングを終えたキャロがアスカに尋ねる。

「どうするって…直せるか、これ?」

アスカは壁に突き刺さっているドアに手をかける。そして、フン!と力を込めて引っ張った。

「あ、手伝います」

ヒーリングを受けて復活したエリオも加わり、なんとかめり込んでいたドアの救出に成功した。が、

「ダメだ、こりゃ。縦に潰れている」

半分くらいまでアコーディオン状になったドアを見て、アスカは諦めた。

「ヤバイよなあ……機修費で落としてもらおうかな?」

「うーん、はやてさんならOKくれるかもしれないけど、新設部隊でいきなり無駄使いって他の部署から何言われるかわからないよ?」

アルトの言葉に、アスカが唸る。

「ですよねぇ…廃棄都市に行ってドア拾ってくるかな?」

元々貧乏性のアスカ。とにかく金を掛けないで直そうと思案する。

元凶のスバル、ティアナに弁償させても良さそうなものだが、どうやらそういう事は思いつかなかったらしい。

「あっ!確か金属廃棄場のドアが同じ筈だったから、それ付けよっか?」

「いや、ダメでしょ?勝手に施設イジっちゃ」

アルトの提案を却下するアスカ。

「大丈夫だよ。だってあそこのドア、いつも開けっ放しだもん。はやてさんに言って許可もらってあげるよ」

「え…アルトさんにそこまでしてもらうのは、悪いですよ」

「いいから、いいから。それとも、アスカだけでちゃんとドア直せる?壁だって直さないとダメだよ?」

アルトにそう言われ、ウッと言葉に詰まるアスカ。

「困った時はお互い様だよ、アスカ。遠慮しない、しない!」

明るく笑うアルト。

散々悩んだあげく、アスカはアルトに甘える事にした。

ドアがないので、先にエリオ達を朝食に行かせ、自分は留守番する事にしたアスカ。

ただ、騒ぎを聞きつけたヴィータとシグナムに時間差で説教を食らってしまった。

エリオが帰ってくると、そこにはゲッソリとしたアスカが腹這いで泣いていた。

カオスは続いていた……





「はい、終了。できたよー!」

朝の騒動から90分が経った時点で、アルトはアスカの部屋の修理を終えた。

ドアの修理に立ち会う為に、アスカは遅れて訓練に合流するとなのはに伝えて了承を得てここにいる。

「お手数おかけしました、アルトさん」

お礼にと、アスカは冷蔵庫からペットボトルを取り出してアルトに手渡す。

「たいした事じゃないよ。あ、壁は乾くまでちょっと時間が掛かるからいじらないでね」

ペットボトルを一口飲むアルト。

「しかし、アルトさんは何でもできますね」

アスカは感心したようにアルトに言う。

「え?そうかな?」

アルトは突然そんな事を言われて驚く。

「そうですよ。オレなんかドアも直せないし、機械の整備も出来ない。それに比べてアルトさんは上通信士まで出来るんですから、凄いですよ」

本心なのだろう。飾り気の無い言葉だが、素直に響いてくる。

「えーと、そう言われると何だか照れるなあ」

えへへ、と照れ笑いを浮かべるアルト。手早く使っていた道具を片づける。

「じゃあ、ボクもう行くから、訓練がんばんなよ!」

誉められたからか、頬を赤くしたアルトが走り去って行った。

「はい!ありがとうございました!」

そのアルトに、深々と頭を下げるアスカ。

「……ん?」

何かが引っかかったのか、アスカは首を捻る。

が、特に気にも止めずに訓練に急ぐ事にした。
 
 

 
後書き
いつも読んでくださってありがとうございます。
今回はオリジナルのユル回でしたが、いかがだったでしょうか?

オリジナル設定として、シャーリーには腐ってもらいました。
シャーリーさん、ごめんなさいm(_ _)m
BLW(ボーイズラブウォーズ)
戦争と言っても、シャーリーが一方的に仕掛けてきただけでしたね(^_^;)

今回一番の被害者はティアナかな?スバルにトドメを刺されてしまいました。

アルトさん初登場で、何かフラグ落っことして行きましたけど、これを回収するのはずっと後になります。


 
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