ラブライブ!~夕陽に咲く花~
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第10話 叶えて欲しい
前書き
お待たせして申し訳
僕の幼馴染、小泉花陽の将来の夢は『アイドル』になること”だった”。
だけど彼女の夢は小学生の時、自らの意志で閉ざしてしまった。その時の彼女の姿を僕は見ている。
彼女がアイドルを好きな理由を知っている。
可愛いから、声が大きくて綺麗で、沢山の人に笑顔を振りまくことができて、その笑顔でみんなも笑顔にできて...そんな姿がとてもかっこよくて。
自分自身に自信がある彼女たちの姿が花陽にとって対極の位置にいる、花陽とは別の人達。
『私にはできない、私にはない輝きを持っている人たちを、応援したいから...好きなんだ』
花陽はそう言っていた。
『自分はああいう風にはできないし、なれないから』と自分を卑下にして言った。
花陽の”アイドル”が好きな理由と熱意を知った。
それと同時に僕は気が付いた。ほんとうは『アイドルになりたい』という夢があるんだと。
だけど花陽がそう言わないのは『私にはそういうの向いてないし、到底なれそうにないから』という心境があるから、一歩足を踏み出すことができないんだと思う。
だから。
だから今回高坂先輩達が始め出した”スクールアイドル”というのはとても大きなキーを握ってるんじゃないか。
少なからずとも何らかの影響を彼女に与えるかもしれないと期待している。一度は諦めた彼女の大切な夢。僕にはどうしようもできなかった彼女自身の希望が、きっと...
「.........かよちんの夢、叶えたいにゃ!!」
それともう一人、花陽の事をよくわかっている幼馴染がそう言って僕の膝の上にちょこんと座っている。高坂先輩の家に訪れてから二日が経過した。噂が広まりつつある先輩方の活動が、最近彼女たちの耳にも留まったらしい。花陽は先生に呼ばれて職員室に向かったみたいで僕の家に来るのが遅くなるらしいので、僕の膝の上に座っている凛が先にやって来た。
「無理強いはできないよ。これは花陽自身の夢だから」
「でもかよちんはずっとアイドルになりたいって思ってたんだよ?今日だってりんが帰ろうって誘った時にも大切そうにスクールアイドルのチラシを握りしめてたんだもん」
「そう、なんだ...」
「りんが聞いたら『そんなことないよ』って指を合わせながら言うから嘘だってわかったんだにゃ」
僕の上でもぞもぞ座り方を変えながらテーブル上のオレンジジュースに手を伸ばす。ついこの前まであんなに怒っていた彼女が、ここまで甘えてくるとは思わなかった。少しは気まずくなるかなと心配していたから、どうやってその雰囲気を作り出さないようにするか悩んでいたのに......
そんな僕のどうでもい悩みを知らない凛は『かよちん...やっぱりアイドルしたいんだよね』と独り言を呟く。
───第10話 叶えて欲しい ───
「かよちん、来るの遅いね~」
「そうだね~。凛ちゃんが来てから2時間以上は経つのに...そんなに大変な仕事を手伝っているのかな?」
「でも先生、そんなに時間かからないって言ってたよ?」
ということは、花陽が手間取っているか、思った以上に量があるか。花陽は僕と違ってマイペースだから時間がかかっているのかもしれない。
まぁ、それも彼女の魅力の一つなんだけどね。
「そうだ。今かよちんの夢が~って話してたけど、春くんの夢ってやっぱり”昔と変わらない”のかにゃ?」
「うん、何も変わってないよ。高校卒業したら専門学校で調理師免許取って、将来は食堂とか開いてみたいなぁ~っていう夢は相変わらずだよ」
「その時は毎日春くんのお店に行って無料でラーメン食べに行くにゃ!」
「はは♪その時は凛ちゃん専用のラーメン準備するからね」
無料で食べにくるとか僕の食堂を潰す気でいるな?
無料サービスを取り扱っている店は数々あるけど、実は大きな赤字になる覚悟故のサービスだ。それを知ってても無料にする店は元が他の方法で取れてるからできるのであって、個人営業の店の大半は無料なんてことはできない。
チェーン店は店のブランドと味が安定してるから安定したお客を呼び込むことが可能なのだ。
味を安定させるのはどの店も同じことだが、安定した客を呼び込むことは至難である。
「そうすればりんの財布からお金が減ることも無くなるし、お腹いっぱい春くんの作るラーメンが食べられるし、一石二鳥だにゃ!!」
凛は店の裏事情を知らないからとんでも発言ができるんだよね...
とりあえず、無料どうこうの話は僕が食堂を開かない限りどうもできない話なので今は置いておいて。
僕は凛の短くてサラサラな髪を撫でながら質問をする。
「そういう凛ちゃんこそ、将来やりたいことは決まったの?」
「う~ん......」
僕の質問に唸り声を上げながら首をかしげる。
そして何故かもぞもぞと膝の上で動いて正面に向き直って困り顔を見せてくる。
...そう、凛は今僕の膝でもぞもぞ動き出して、降りるのかと思ったら僕の方へ向き直る。目と目が合う対面した座り方...花陽ちゃんの家で読んだことのある恋愛漫画で読んだ彼氏彼女の座り方になっている。
(流石にこれは恥ずかしいなぁ...)
凛は何とも思ってないのか、それどころか、テーブルに置いてあるオレンジジュースを手に取ってストローで吸い上げながら僕の瞳をのぞき込むようにしてじっと見つめてくる。
「りんはまだよくわからない。りんは楽しければなんでもいいにゃ♪」
「確かに進路を決めるのは大変だもんねぇ......というか流石に凛ちゃん近くない?」
「にゃ?」
僕に指摘され、凛はきょろきょろとあたりを見渡す。
凛に自然と攻め寄られた僕は椅子の背もたれを後ろへ...後ろへ、と下げるもかなり限界が来ている。
それでも尚接近を止めないから僕と凛の顔はキスする目前まで来ている。
そして、ようやく凛はそのことに気づくとすっと顔を離す。
顔を赤らめているのはいつもの事だけど、違うところと言えば視線を逸らさないところ。
「ねぇ春くん」
いつにも増して甘い声で僕の名前を呼ぶから心臓の鼓動が早くなる。
あまりそういうことには鈍感だと二人に言われっぱなしだけど、その鈍感な僕でも流石に今の凛ちゃんの表情を見て鼓動を早めないほど、僕はバカではない...と思う。
「なに?」
「...ううん、なんでもないにゃ」
「なんでもないって...」
「ただ、今日はいつもより春くんに甘えたくなっちゃっただけ。この前喧嘩して、仲直りしたけどなんだけど、まだまだ寂しいんだ...なんでだろう」
じっと僕の顔(のどこか)を見つめているけど、心は彷徨っているような気がする。
この前の喧嘩とは当然僕が先輩方と仲良くお話ししていたせいで凛ちゃんに嫌な気持ちにさせてしまい、そのことに気づかずにいたこと。
「だから今はすごく...春くんに甘えたいにゃ。いつもはりんが春くんを引っ張って迷惑かけてばかりだけど、今はぎゅって抱きついて春くんの温もり感じていたい。りんの春くんはちゃんとここにいるって...りんの大切な人はずっと傍にいるんだって」
「僕はずっと凛ちゃんの傍にいるよ。喧嘩したってそれはできないし、つるすもりもないから」
まるで本物の子猫になったかのように僕の胸板にスリスリと顔をうずめる。その彼女の頭をゆっくり撫でると花陽とはまた違った新たな発見をする。
(そういえばあまり凛ちゃんとこうしてくっつくことなんてなかったなぁ......)
花陽とはよくあることなのだけど、凛は中々そういう感じにはならなかった。別に彼女との距離を置いているというわけではない。ただ、元気に走り回ってる凛ちゃんを追いかけて心配する父親のような感覚になっていたからなのかもしれない。
だからこそ、花陽と同じような事を凛とするとなんだかむずむずと胸がかゆくなってしまう。
「春くんあったかいにゃ〜」
「凛ちゃんは思ってたよりずっと小さいね」
「む?それはおっぱいの事を言ってるのかにゃ?」
「そ、そうじゃないよ!凛ちゃんの胸の話じゃなくて体の方。僕の腕にすっぽりハマる感じだから花陽ちゃんと比べるとずっと小さいな〜ってことだよ!」
「かよちんと大小比べられるとおっぱいの事言われてるような気がするにゃ.....」
そんなつもりは無いのに.....
ぷくっと膨らませる頬をつんと突っつくとぷしゅーっと空気が抜けるようにへこむ。
それがついつい可愛くて膨らませては突っついて、また膨らませては突っついて。
そうこうしてるうちに凛は
「もうやめるにゃ〜っ!」
「ごめんごめん!余りにも可愛いからつい」
ポカポカと頭を叩いてきた。
さっきも言ったけど、傍から僕たちのやり取りをみてると間違いなく激甘なカップルにしか見えないだろう.....
でも、これが僕と凛、花陽との距離感であり、僕達らしい関係なのだ。
「そ、そんなことよりも花陽ちゃんの夢がどうとかってさっき言ってたよね。具体的にはどういうこと?」
「あぁ、そのことなんだけどね」
話題転換。
僕の太ももから降りて、いつも学校に行く時に使っているスクールバッグから一枚のプリントアウトされた紙を取りだして僕に見せてきた。
「これなんだけど.....」
「なになに....ファーストライブ開催のお知らせ?」
紙には音ノ木坂学院スクールアイドル結成!ファーストライブ開催!っと女の子が書いたであろう丸い可愛らしい字ででかでかと書かれていた。それを見ながら凛は嬉しそうに、だけどなんとなく”羨望の眼差し”でポスターを眺めている。
紙の真ん中には三人の女子生徒が描かれ、間違いなく高坂先輩、園田先輩、南先輩の三人だということがわかる。
というかスクールアイドルをやろうなんて発想に至るのが高坂先輩率いるあの三人しかいないくらい僕にでもわかる。
「そうだにゃ。りんの通う高校にもスクールアイドルが誕生して、下の方にほら....”メンバー募集中!”って書かれているからかよちんもこのスクールアイドルに加入すれば諦めちゃった夢も叶うし、かよちんの魅力を沢山の人に伝えることができる!まさに一石二鳥にゃ!!」
「確かにそうだね...というか凛ちゃんの口から”一石二鳥”なんて言葉が出てくるとは思わなかった」
「む?りん、遠回しに馬鹿にされてる?りんは春くんより成績は上なんだけど~」
「そ、そうだね...ごめん」
頭がどうとかはさておき。
凛が言っていることは間違いではない。というか僕も少しは考えたところだ。
高坂先輩なら、花陽のことを一度は見ているしきっと勧誘しに行くに違いない。
引っ込み思案な彼女を何度も勧誘しに行くだろう。
....でも、そう上手くいかないのが現実だ。
勧誘されて『私にはできないから』『似合わないから』と、自身を卑下してせっかくのチャンスを無駄にしちゃうのが僕の幼馴染。
一筋縄ではいかないだろう。
「でも、強引にスクールアイドルさせて花陽ちゃんに辛い思いはをさせるのは嫌なんだよね~」
「そうだよね....りんもそれは嫌だ。かよちんにはスクールアイドルをやって欲しいけど.....やる気がないなら無理強いはできない」
凛のその発言に「いや、」と、僕は否定の言葉で返事をする。
「花陽ちゃんはやる気がないんじゃないよ。自分自身に自信が無いだけなんだ。自分はあんなにキラキラ輝けないから、歌もダンスも得意じゃないし秀でたものなんて何もないから、そんな私がスクールアイドルやっても周りのメンバーの足を引っ張るだけだから....きっと彼女はそんなことを考えてるんだよ」
「秀でたものが無いわけないにゃ!かよちんは───」
「って僕や凛ちゃんがそう言っても花陽ちゃん自身が納得しなきゃダメなんだよ。僕にはただ、花陽ちゃんの言葉を聞いて、彼女のやりたいことをやりたいようにやらせて、時には花陽ちゃんの背中をそっと押してあげることしかできないんだよ。もちろん花陽ちゃんが間違ってた道に進もうとしていたら僕は全力で止めに行くけど...まぁ、あの花陽ちゃんだ、そんなことは絶対ないよ」
当然、相談を受けたらアドバイスはする。
だけど、僕としては自分のやりたいことには自分の意志で、思ったことをそのままのように花陽ちゃんには」やって欲しい。
だから僕は花陽ちゃんから『スクールアイドルをやりたい』って言葉をしっかり聞くまでは何も行動を起こさないし、むしろ何も言ってないのに行動を起こして余計なお世話だなんて思われたくはない。
「...流石春くんだね、かよちんの事よくわかってる」
凛は心なしか、寂しそうにぽつりと呟く。
「花陽ちゃんだけじゃないよ?凛ちゃんのこともよくわかってるつもり、それに花陽ちゃんのすべてをわかってるつもりはないよ?いくら何でも完全に心の中までは読めないし...ただ、長い間あの子と一緒に過ごしてきたから考え方の癖だとか、こういう時どんなことを考えていそうだとかは、なんとなく想像が付くだけ。つまりはええと.....”漢の勘”ってやつかな?」
「そんな言葉初めて聞いたにゃ」
「そう?でも、”女の勘”って言葉があるからきっと”漢の勘”って言葉もあるよ、うん」
僕なりのおちゃらけた話で凛の寂しさを紛らわそうとする。
別に面白さなんて求めていない。少しでも凛の顔に笑顔が戻ればこの話は面白かったと捉えるんだ。
...うん、僕はユーモアあふれるギャグを言うなんてできないから、ね。
「なんかよくわからないけど.....まぁ、春くんだしいっか♪」
納得の仕方がちょっと引っかかるけど笑顔になったので言及せずに話を続ける。
「ところでさ、今さっき凛ちゃんが考えていたことを僕がそれっぽく当ててみてもいいかな?」
「え?りんの考えていたこと?」
何を考えていたのかとても興味ありげな笑顔でずいっと顔を寄せてくる。
むしろ”内容が内容なだけ”に表情を強張らせるのではないだろうかと予想していたけど。
まぁもしかすると外れてるかもしれないし、その時は素直に謝ろう。
僕は一呼吸おいて....なぜか少し緊張した胸を押さえながら言う。
「凛ちゃん、もしかしてスクールアイドルやってみたいなんて考えていたりしないかな?」
「.....え?な、なんでそんなことを?」
外れか、当たりか。
どちらにせよ、凛のこういった反応が来ることは予想していた。
『自分は女の子らしくない』と常日頃口癖のようにそれを連呼していた。当然女の子らしい....いや、完全に女の子女の子しているプロのアイドル然り、アマチュアのスクールアイドル然り、凛にとって船体縁のない世界だときっとそう考える。
だけど、
「憧れてるんでしょ?彼女たちに...」
「憧れてる?りんが?」
「うん。ステージ上できれいな声で歌ってフリフリの衣装着て踊る彼女たちの姿が」
さっきまでのキラッキラの笑顔とは反対に、申し訳なさそうに俯いて凛は首を左右に振って否定の意を表す。
くしゃりと音を立ててしわだらけになったポスターを握るその手は僅かに震えていた。
「そ、そんなことないよ?だってりん、胸も大きくないし髪だってこんなに短いんだよ?それにりんがこんな可愛い衣装着ても絶対似合わないよ?ほんとだよ?」
精一杯の否定は声が上擦っていたり震えていて、認めたくないけど認めなきゃいけないといった自分の気持ちを押し殺しているかのように、僕の胸に突き刺さった。
どうしてそこまで躍起にならなきゃいけないのかな?
と凛に言いたいところだけど、こうなってしまった原因を僕は知っているから下手に言葉にはしない。
他の誰かには理解できないことだろうけど、僕や花陽と凛。特に凛にとっては”今の彼女”を形成している大事なことだから。
「凛ちゃん.....」
「それにほら、仮にりんがアイドルなるとしてもアイドルに心から憧れているかよちんを差し置いて凛がなるなんて....できるわけないにゃ」
「そんなことはないよ。きっと花陽ちゃんは祝福してくれるし、差し置いてだなんて絶対思わないよ」
「....なんで凛、そんなこと言っちゃったんだろう。かよちんがそんなこと思うはずがないのに」
徐に凛は室内をうろつきはじめ、そのまま僕のベッドにぼすんと倒れこむ。
正直なところ、僕は花陽より凛の事の方がずっと心配だ。放っておいてでもしたら本当に彼女が壊れてしまうんじゃないかって思えてきたからだ。このままだと花陽が仮にスクールアイドルになったとしても凛は無意識に、自覚のない嫉妬心を潜めるんじゃないかと僕は無くはない可能性を考える。
凛に限ってそんなことはないだろう.....。
だけど、可能性の芽はつぶしておきたいところ。
凛と花陽の関係が悪化するなんて絶対見たくない。
そんな意味を込めてのあの話の持って行き方だったんだけど.....
「りんにもあのくらいおっぱいがあったらなぁ~たゆんたゆんに揺れるあの姿、羨ましいにゃ」
なんとも予想外で反応しづらい発言に思わずズッコケそうになった。
自分の胸を触りながら寄せてあげてみたり、揉んでみたり.....
(心配してるというのにこの子は....)
真面目に考えていた僕は馬鹿なんじゃないかと思い、なんだかどっと疲れが押し寄せてきた。
はぁ~っとため息を一つ。
「ん?どうしたの春くん?」
「...ううん、なんでもないよ」
「それにしてもかよちん遅いね~早くスクールアイドルになってるかよちんの姿見たいにゃ~♪」
「そうだねぇ~」
さっきまでの重苦しい話は終わり。
いつものようにベッドで転がる凛と、その姿を眺める僕という穏やかでいつも通りの風景が戻ってきた。
「僕としては凛ちゃんのフリフリ姿で歌って踊ってる様子も見てみたいんだけどね~!」
「えぇ!?それは.......は、春くんがどうしても見たいって、かわいいって思ってくれるならりんが着てあげてもいいかな~なんて」
恥ずかしそうに最後の方だけ小声で言って聞こえないようにしているけど...残念、僕、しっかり聞いてしまいました。
敢えて聞き返さないけど。
「二人がスクールアイドル....きっとすっごく可愛いんだろうなぁ~」
聞き返さないけど、遠回しにそれとなく伝える。
そんな時、玄関のチャイムが聞こえる。
「あ!きっとかよちんだ!!」といって慌ただしく凛は部屋を飛び出していった。
ふと、時計を見る。5時ちょっと前を指していた。
「か~よち~ん!会いたかったにゃぁ~!!」
「もう凛ちゃ~ん!いきなり飛び出してきたからびっくりしたよぉ~!」
なんてほのぼのした会話が下から聞こえてきて、僕は少しぬるくなったお茶をズズッとすする。
凛が置いていったくちゃくちゃのポスターに目をやる。
高坂穂乃果先輩、園田海未先輩、南ことり先輩。
僕の大して役に立たない勘だけど、きっと彼女たちについていけば何かが変わる気がする。
だからあの日、『手伝う』って伝えて正解だったと思う。
きっと今は二人がスクールアイドルになるタイミングじゃない。
先輩方がタイミングを教えてくれる。
曖昧で信憑性に欠けるけど、僕は先輩を信じて行動を起こす。
パカッと携帯を開く。
明日は神社で練習。
「待っててね、花陽ちゃん、凛ちゃん」
僕しかいないしんと静まり返った自室でぼやく。
後書き
凛ちゃんかわいい(確信)
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