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真田十勇士

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巻ノ四十五 故郷に戻りその六

「戦ですな」
「うむ、わかっておるな」
「戦わずして勝ち」
「そしてじゃ」
「知ることもですな」
「その通りじゃ、御主と家臣達はな」
 彼に十勇士達はというのだ。
「忍でもある、そういうことじゃ」
「さすれば」
「その忍として働くとならば」
「その時は」
「存分に働くのじゃ」
 その忍としてというのだ。
「わかったな」
「それでは」
 忍としてもだった、幸村は昌幸の言葉に頷いた。そして兄の信之が戻った時にだ。
 彼と共に来た凛々しいまでに整った顔と見事な黒髪を持つ長身の女を見てだった。幸村は兄に言った。
「奥方ですな」
「うむ、本田平八郎殿の娘御にして徳川家康殿の養女」
「その方がですな」
「わしの妻じゃ」
「はじめまして」
 声も強い、そこには見事な凛々しさがある。
「小松と申します」
「小松殿ですな」
「はい」
 やはり強い声での返事だった。
「左様です」
「わかりました、では」
「はい、これより真田家の妻として入ります」
「わしの妻としてな」
 信之も微笑んで言う。
「宜しく頼むぞ」
「畏まりました」
「それでじゃが」 
 信之は幸村にあらためて言った。
「越後でまた大きくなったな」
「人としてですか」
「うむ、感じる」
 その器をというのだ。
「よく修行を積んだな」
「怠らぬ様にしていました」
「それは何よりじゃ、さらに武士としてよくなったな」
「有り難きお言葉」
「それで御主もじゃな」
「父上がお話を進めて下さいまして」
 自身の婚姻の話もだ、幸村は応えた。
「それで、です」
「そうじゃな、よいことじゃ」
「兄上もそれがしもですな」
「共に妻を迎えるな」
「そうなりますな」
「わしも大谷殿のことは聞いておる」
 幸村の義父になる彼のことはというのだ。
「関白様の忠実な家臣であり非常に立派な方じゃな」
「お会いしましたが」
「その通りであったな」
「ですから」
「うむ、御主にとってよい婚姻となるな」
「兄上と同じく」
「よき妻を迎えた」
 信之は己の隣にいる小松を見た、見れば背の高い彼と比べても全く遜色ないまでに高い。姿勢も実にいい。
「そしてな」
「徳川殿も」
「実に素晴らしい方じゃ」
「そうなのですな」
「資質と人徳を兼ね備えたな」
 そうした者だというのだ、家康は。 
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