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本気で挑むダンジョン攻略記

作者:MARIE
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Chapter Ⅱ:Xenogenesis
  第06話:Unlucky Encounter

 
前書き
連日投稿?何それ(ry

2016/07/17 修正
 

 
 
 ベル・クラネルの朝は早い。
 日が昇るよりも早く起床し、身支度を整えて黒円卓の本拠地(ホーム)へと赴き、エレオノーレに前日のステイタスを申告。日の出と共にエレオノーレによる訓練を開始。
 まずは軽いストレッチの後準備運動(・・・・)としてオラリオを取り囲む外壁の上の通路を東から北への4分の1周をダッシュ(全力)で往復。その後10分の休憩を挟み筋力トレーニング1時間。
 そして一度朝食を挟む。
 朝食後30分後に再びトレーニング――かと思いきやエレオノーレによる戦闘理論の講義を受け、更にギルドにてベルを担当しているアドバイザー、エイナのダンジョンに関する座学授業。
 昼食を取って小一時間休憩を挟んだ後、再び本拠地(ホーム)へと戻りエレオノーレによる戦闘実践のレッスンを受け、夕方には終了。
 シャワーを浴びて身だしなみを整えたらエレオノーレとその時いる黒円卓の面子で『豊饒の女主人』へ。エレオノーレとリザによる徹底した栄養バランス管理に基づき二人が注文したメニューを食す。
 何気にベルにとってこの食事の時間が一番つらい。
 何せ一日中しごかれて疲れがピークに達している状態で無理矢理にでも胃袋に食事を納めなければいけないのだ。最初の頃など戻しては料理を追加されるという無限ループを味わった。
 そして『豊饒の女主人』にて解散した後ヘスティアの元へと帰宅。ステイタスを更新して即就寝となる。


 ☩☩☩


「これは...」

 ホームへと戻ってきたベルのステイタスを更新していたヘスティアは、思わず驚きの声を上げた。
 訓練に疲れ果て、ステイタスの更新中にも関わらず眠ってしまったベルであるが、まだ訓練を開始して2週間、つまりは冒険者になって2週間しかたっていない駆け出しの新人である。だというのに――

「(ステイタスの伸びが半端じゃない...!)」


 ベル・クラネル
 Lv.1
 力:G200→G225 耐久:G240→G260 器用:G268→F302 敏捷:G299→F328 魔力:I0
≪魔法≫

≪スキル≫

「(ステイタス上昇値トータル100オーバー…!!)」

 普通ならばここまで上昇させるのに早くて3ヶ月はかかる。それをたったの二週間。しかもダンジョンに潜らずにひたすら地上での訓練で。

「(ベル君、君はいったいどれだけ頑張ってるのさ...)」

 ホームに戻ってきて直ぐに倒れて寝てしまうような様子では、間違いなく限界まで体を苛め抜いている。それも、壊れないギリギリのラインでだ。
 そしてこのステイタス。ベルの相手は余程の強者に違いない。でなければここまで熟練度は上がらない筈だ。
 一瞬、ヘスティアの頭の中で、ベルに訓練をやめさせるべきだという考えがよぎり、ヘスティアは頭を振る。

「(これはベル君が決めたこと...ベル君が自分でギブアップと言うまで僕は応援するって決めたんだ!)」

 ヘスティアは更新を終えたステイタスを書き写すと、ベルの頭をそっと撫でる。

「応援してるよ、ベル君。頑張れ。」


 ☩☩☩


「ふむ。ある程度体力はついたな」
「体力、ですか?」

 翌日。早朝ダッシュを終え筋力トレーニングに励んでいるベルの横で、ベルのステイタスを見ながらエレオノーレは煙草を嗜んでいた。

「ああ。巷では冒険者共がやれ武器だ技術だと騒いでいるが、何をするにもまずは体力(スタミナ)だ。ダンジョンでは基本的に連戦だからな。」
「なるほど...イタッ!」
「スピードが落ちている。維持しろ。」
「ハイっ!」

 そして筋力トレーニングも終え朝食を食べた後、いつものように勉強部屋へ行こうとしたベルはエレオノーレに引き留められた。

「ベル。今日は講義は休みだ。」
「え、じゃあ何をするんですか?」
「武器と防具を揃えに行くぞ。」
「え?」
「ああ、先程は言っていなかったな。明日からはダンジョンに潜る。」
「え、ええ――!?」
「何をしている。早く付いて来い。」
「は、はい!」

 そしてエレオノーレの後をついていったベルは、ギルドへと辿り着いていた。

「あ、ベル君!」
「エイナさん!おはようございます!」
「うん、おはようベル君。...って其方の方は?」
「あ、えっと、僕の師匠?のエレオノーレさんです!」
「そうなの?あ、私はギルド職員でベル・クラネル氏のアドバイザーを務めさせてもらっています、エイナ・チュールと申します。」
「エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグだ。ベルから話は聞いている。」

 一瞬エレオノーレの焼け爛れた顔を見てエイナの顔が強張ったが、冒険者を見続けてきたエイナは片目を失った冒険者などを沢山見てきたため、直ぐにいつも通りの表情に切り替え挨拶をした。
 勿論、エレオノーレはそれに気づいていたが、エレオノーレ自身慣れている事なので気にする事もなかった。

「ふむ、アドバイザーの君もいるなら丁度良い。君は今暇かね?」
「あ、はい。大丈夫です。」

 そして三人は応接室へと入り、エレオノーレが早速本題に入った。

「ベルが冒険者になって二週間、一応地上で訓練はつけた。明日からでもベルをダンジョンに潜らせる予定だ。」
「ベル君、まだダンジョンに潜った事無かったの?」
「はい。この二週間ずっとトレーニングしてました。」
「へえ、エレオノーレさんがトレーニングメニューを?」
「ああ。とりあえず基礎は叩き込んだつもりだ。君にはベルがダンジョンに潜ることに対して何か意見はあるかね?」
「そうですね、エレオノーレさんはベル君を何階層まで行かせるおつもりでしょうか?」
「現状では3が精々といったところだろうな。」
「ならば私から言う事は特にありません。3階層までならば座学の授業でベル君に教えてますから。」
「基本的に私か私の仲間がベルに最低でも一人はつく予定だが、此方にも予定があってね。ベルがソロで潜る事もあるかもしれん。君にはその際のベルの監督役になってくれると助かる。」
「監督役、ですか?」
「ああ。勇気と蛮勇を間違えていそうならば説教をくれてやってくれ。」

 エレオノーレが提案したのは、ベルがソロの時は面倒を見て欲しいというもの。
 ギルド職員が特定の冒険者、ファミリアを贔屓するのは御法度だが、エレオノーレの指針がエイナと似通っていた事とベルを特に気にかけている事もあり、エイナは快く了承する事にした。

「分かりました。私で良ければ精一杯務めさせていただきます。ベル君もよろしくね。」
「はい、よろしくお願いします。」
「それと、ギルドで扱っているダンジョンについての本――モンスターの図鑑やダンジョンのマップなどは購入可能かね?」
「ギルドで取り扱っている本は持ちだし禁止なので販売は出来ませんが、バベルの中に本を扱っている商会が入っていた筈です。そこでなら購入可能かと。」
「そうか。情報提供感謝する。それでは、頼んだぞ。エイナ・チュール」
「はい。此方こそよろしくお願いします。エレオノーレさん」

 一通りの相談が終わり、応接室を出た三人。
 そしてエイナはベルにそっと話しかけた。

「ベル君。私安心したよ」
「え?何がですか?」
「ベル君のお師匠さん、エレオノーレさんがとてもしっかりした人だったからね。冒険者になって無茶する人って多いから...」
「大丈夫ですよ、エイナさん。エレオノーレさんから散々叩き込まれてますから」
「うんうん。それじゃあ明日から頑張ってね。」
「はい。」

 …二人は知ら無かったのだ。
 ラインハルトの指示でベルは殆どソロで活動させることが決まっており、尚且つ少しどころではない無茶をさせるつもりであった事を。
 この時2人はまだ、知ら無かったのだ。


 ☩☩☩


「せあっ!」

 翌日。エレオノーレと二人でダンジョンへと潜っていたベルは、2階層でコボルト3体を同時に相手していた。
 武器はナイフ。防具はベルの敏捷よりのステイタスを活かす為にライトアーマーだ。
 昨日武器を買いそろえた際に、ナイフ以外にも刀や剣、ボーガンといった一通りの武器は揃えたので、武器を変更しながら戦っていた。

「(遅い...動きが見える!)」

 そして、日頃からエレオノーレとの訓練に明け暮れていたベルにとってコボルトの動きは緩慢そのもの。ナイフという軽い武器を持っている事もあり、余裕を持って相手の攻撃を躱し、魔石が存在する部分を一突き。スマートに三体のコボルトを撃破した。

「相手が遅いからといって気を抜くな。常に最善の動きを意識しろ。」
「ハイ!」

 しかし、例え相手が雑魚であろうとエレオノーレの叱咤がとんでくるので一時も気が抜けない。
 相手の動きをただ躱すのではなく、死角に潜りこみ、次の自分の動きに合わせる。スタミナの消費は最小限に、無駄の一切を排除する。
 エレオノーレの理論重視の教育に従い、ベルはしっかりとその動きを自分に馴染ませていく。

「(ふむ。筋は良いな。多少自身のセンス頼りの部分もあるが、そこはむしろ残すべきか...)」

 エレオノーレとしても、自身の教え通りに動こうとするベルの姿勢は好ましい。軍属として規律を重んじるエレオノーレにしてみれば、教導においてはベルのような素直な部下が好ましい。

「(武器はナイフ、もしくは刀身が短めの剣だな...敏捷特化で足で敵を翻弄し手数で制するタイプだな)」

 ステイタスとベルの癖や戦い方から、ベルに最適な戦闘スタイルを構築していく。
 エレオノーレからしてみればこの程度簡単に出来てしまう事だが、普通ならばこんな事出来はしない。様々な軍人、犯罪者たちを見てきたエレオノーレだからこそ出来る芸当である。ラインハルトに次いで『万能』タイプの本領発揮である。

「(理論8、野性2の割合がベストだろうな。暫くしたらベイあたりにも相手をさせるか...)」

 モンスターだけではなく、野性的な勘と我流のスタイルで戦うベイのような相手とも経験を積ませ、出来るだけどのような状況下でも通用する判断力と観察力を身に付けさせる。
 ベルの頑張りもあり基礎もある程度できてきたので、これから先は本番(・・)に入ってもいいかもしれない。

「(ヒァ...なんだ今凄い寒気が...)」ゾクリ

 エレオノーレの不安しか残らない考えを察知したのか、その日は約6時間ほどダンジョンに潜っている間、ベルはずっと背筋に奔る謎の悪寒にさらされていた。


 ☩☩☩


「ハイドリヒ卿。ベル・クラネルですが、早くも目標値(・・・)に到達しました。」
「そうか。ご苦労だったな、エレオノーレよ。」

 ベルがダンジョンに潜りはじめて3日目の夜。
 エレオノーレはベルのステイタスを片手にラインハルトへ報告を行っていた。

「卿からみてどうだね。ベル・クラネルは」
「ハッキリと申し上げて、将来性はありますが現状ではそこらの凡夫と変わりません。」

 ラインハルトの問に即答するエレオノーレ。ラインハルトもそこは同意なのか、特に反応は示さなかった。

「ただ、私の訓練に弱音を吐かずにここまでやってきた。その根性だけは認めてやりましょう。」

 エレオノーレの訓練は己との戦いだ。自分の限界ギリギリのラインを正確に見極めて行われるそれは常に大きな疲労と苦痛を伴う。楽して強く成れないと分かっていても、なかなか続かない。それこそ軍人の屈強な男たちですら弱音を吐く。
 それに冒険者になったばかりの普通の少年が耐えていた。
 普段は褒める事を一切しないエレオノーレだが、褒めるべき事はちゃんと褒め、評価する。ベルの根性は彼女も高く評価していた。

「では、私もそろそろ動くとしよう。」
「他の団員たちは」
「ベイとリザ、ルサルカを呼べ。それとシュライバーは本拠地(ホーム)で待機を。」
「ハッ。直ぐに集めます。」
「それから分かっていると思うが、ギリギリまで手を出すな。良いな?」
「心得ています。ですが、時期尚早では?」
「何、卿の観察力を私は信頼しているのだよ。ベルはミノタウロスから逃げられる程度(・・・・・・・・・・・・・・・)には成長したのだろう?ならば問題はあるまい。」
「新兵に己の実力を実感させるというのは、いつになっても苦労します。」
「だが、それを分からぬ雑兵は必要ないのでな。それに、ベルは『英雄』になりたいと言ったのだ。ならば、分からせてやらねばなるまい。」

 自分が目指す領域の遠さ(・・・・・・・・・・・)をな。

 そう呟いたラインハルトが持つ書類には、現在ダンジョンで活動しているファミリアの詳細な情報が記されていた。

【ロキ・ファミリア】…遠征中。現在50階層にて野営(キャンプ)中。
【フレイヤ・ファミリア】…冒険者数名が探索中。
【ヘファイストス・ファミリア】…冒険者依頼(クエスト)発行中。探索中の冒険者無し。
【イシュタル・ファミリア】…戦闘娼婦(バーベラ)の集団が探索中。不審な『籠』を移送中の模様。
 ・
 ・
 ・


 ☩☩☩


「(えっと...どうしてこうなったんだっけ?)」

 ダンジョンの中を走る、走る、走る。
 常に周りの状況を確認しながら全力疾走をしながら、ベルはここまでの状況を振り返っていた。
 ダンジョンに潜りはじめて4日目の今日、エレオノーレが用事の為ベルがソロで活動する事になった。
 そしていつも通り3階層までの範囲でモンスターと戦っていると、目の前に4階層へと続く階段が出現。興味本位で階段を下りたのが運の尽きだった。
 4階層、5階層と戦う中で苦戦する事もなくモンスターを倒せたベルは調子に乗ってしまい、6階層まで下りたのだ。
 すると何故か目の前の通路から中層でしか出現しない筈のミノタウロスが出現。
 そのミノタウロスから必死になって逃げている途中なのだ。

「(ここまで来れば――!)」

 逃げおおせたと思って後ろを振り返ると、そこには自分を追いかけてくるミノタウロスの姿が。

「うわあああああああぁぁ―――――!!!!!!」

 なけなしのスタミナを振り絞り、加速、加速、加速――。
 そして後ろから追いかけてきていたミノタウロスを漸く振りきったと思った矢先に――。

「二体目ェ――!!!?」

 目の前のT字の前方から二体目のミノタウロスが出現。前と後ろを塞がれた。更に叫んでしまった事で前方のミノタウロスに気づかれてしまう。慌てて減速し、即左側へと進路変更。
 だが、後ろから追ってきていた最初のミノタウロスも追いつき背後には二体のミノタウロス。
 自分の浅はかさを悔いている場合じゃない。逃げ切ら無ければ。

「(過去を振りきり)ダッシュ!!」

 ペースを落とすな。追いつかれたらエレオノーレ(師匠)の叱咤どころの話では無い。
 逃げろ、逃げろ、逃げろ――!

 だが、ベルは知ら無い。極東にこんな諺があるのだ。
 曰く、『二度あることは三度ある』と。


「三体目ェ―――!!!!???」


 再び前方から現れるミノタウロス。
 依然として背後からは二体のミノタウロス。
 慌てて再減速し、左へ曲がって再加速。
 後ろから来るミノタウロスが三体になった。


 ベルは思った。


 ―― 本当、何でこうなった?




 ~~~ おまけ ~~~

「今後団員全員は名前呼びとし、『魔名』呼びは禁止とする」
「「「「「…は?」」」」」

 オラリオに来てはや8ヶ月。本拠地(ホーム)の建築も終わり、今後の方針の打ち合わせを行っている最中に突然発せられたラインハルトの発言にリザやルサルカはおろか、冷静沈着に定評があるエレオノーレすらポカンとしていた。
 そんな周りのリアクションなど気にもとめず、ラインハルトは続ける。

「そもそもこの世界における我々の目的は既視感(ゲットー)の破壊ではなくダンジョン制覇。カールもおらん。いつまでも魔名(その名)で呼び合う意味もあるまい」
「えっと...つまり?」
「我々は円卓。上も下も無い。団員は皆平等である。良いな?」

 心なしか輝いて見えるラインハルトに戸惑う団員たちは一斉に集まり、小声で話し合う。

『おい、どうしたってんだありゃあ。』
『何か悪いものでも食べたのかしら。』
オラリオ(こっち)来てから思ったけど、ハイドリヒ卿丸く成った?』
『それは僕も思った。この前なんかお菓子くれたし。』
『話を逸らすなシュライバー。とりあえず、どうする?』
『どうするって...団長命令よ?従うしかないでしょう?』

 エレオノーレの問に答えるリザ。ベイにルサルカ、シュライバーもうんうんと頷く。

『いや、しかし...』
『…あ、もしかして...』( ̄▽ ̄)ニヤリ

 しかし、そんな中一人だけ妙に様子がおかしいエレオノーレ。
 他の四人がどうしたのかと勘繰る中、リザが真相に辿り着きエレオノーレをニヤニヤとした目つきで見始めた。

『何だ、ブレンナー』
『いや~、乙女ね。エレオノーレ。』
『なっ...』
『ははーん、なるほどぉ。』

 そして、ルサルカもそれに気づきエレオノーレとラインハルトをここぞばかりに交互に見る。

『『乙女ね』』
『黙れ貴様らぁ!!』

 こういった方面(・・・・・・・)では急激に煽り耐性が低く成るエレオノーレはすぐさま沸点に到達するも、リザとルサルカは止まらない。

「ハイドリヒ卿。つまり今後は名前呼びをするという事でよろしいのですか?」
「ああ、そうなるなバビロ...いや、リザよ。」
「おおー!ハイドリヒ卿、私は?私は?」
「ふむ。ルサルカと呼ばせて貰おう」
「へえ。ハイドリヒ卿、俺は今まで通りベイと呼んでくだせえ」
「構わんぞベイ。」
「ハイドリヒ卿、僕もシュライバーが良いな」
「良かろう。今まで通りシュライバーと。」

 他の団員たちが着々とラインハルトから名前を呼ばれていき、遂にはエレオノーレを残すのみとなる。
 ラインハルトの背に隠れてニヤニヤとしているリザとルサルカに対して今まで一番の怒りが湧く。叶うならば、『灼熱世界・激痛の剣(ムスペルヘイム・レーヴァテイン)』をぶち込みたい程である。
 しかし、ラインハルトがいるため粗相は出来ない。
 羞恥心と自尊心の狭間で葛藤するエレオノーレを他所に――むしろ空気を読んだとも言える――ラインハルトはエレオノーレの側まで近づき、彼女の肩に手を乗せ――


「エレオノーレよ。卿の頑張りに今まで以上に期待しているぞ。」

「j、Jawohl(ヤヴォ―ル)!!」


 ラインハルトの部下となってから半世紀。
 初めてラインハルトから名前で呼ばれた今日この日が、エレオノーレの密かな記念日になったとかならなかったとか。


「そこになおれバカ共が!!」
「ちょっ、エレオノーレ!流石にシュマイザーは洒落にならな――」

 後日、本拠地(ホーム)に損壊を与えないレベルで(照れ隠しとして)キレたエレオノーレと、カインを出して応戦するリザ、そしてエレオノーレの指示で追いかけてきたシュライバーから必死に逃げるルサルカの姿が確認された。


「(俺だけ、ハイドリヒ卿としか呼ばれない件について...)」

 そして、結局団員たちからラインハルトと呼ばれない事に、ひっそりと落ち込むラインハルトの姿もあった。


 
 

 
後書き
原作ではフレイヤのちょっかいで度々災難に遭うベル君ですが、今作ではラインハルトの下にいるため、原作以上に災難に遭ってます。

ラインハルト「まあ、主人公だから死なないし大丈夫でしょ」
ベル「やめてください僕死んじゃう!」

最後のおまけに関しては、作中で魔名と名前を使い分けるのが面倒だという作者の都合と、Dies勢(特にエレオノーレさん)の都合が合致した結果完成したエクストラステージです。
※実は今回の話から本編は名前呼びになってます。
 
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