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真田十勇士

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巻ノ四十三 幸村の義その六

「そして真田殿はです」
「家を持つことになりますか」
「おそらくは」
「左様ですか」
「はい、そしてです」
「妻を迎え」
「それからです」
 まさにというのだった。
「真田殿はあらたな一歩を踏み出されます」
「人としてですな」
「そうなります」
「人は家を持ちですか」
「そうです、妻を迎えてです」
 そしてというのだ。
「そこからまた新たな一生がはじまります」
「一人から二人になり」
「そして子を迎え」
「そのうえであらたにです」
 まさにというのだ。
「人は一生をはじめるのです」
「そうなのですね」
「ですから是非です」
「妻を迎えて」
「新たな人生にも励まれて下さい」
「さすれば」 
 幸村も兼続のその言葉に頷く、そしてだった。
 彼もまた酒を飲みだ、こう言ったのだった。
「大谷殿にもお話しましたが」
「何とでしょうか」
「はい、妻を迎えるなぞ」
「信じられませぬか」
「とても」
 実際にという言葉だった。
「それがしが」
「むしろ真田殿は遅いかと」
「妻を迎えるには」
「もう家を持っている者も多いお歳です」
 今の幸村の歳でというのだ。
「ですから」
「女房を持つことも」
「特に思われることはありませぬ」
「修行中の身でもですか」
「人は生きている限り修行です」
 また笑ってだ、兼続は言った。
「それはです」
「だから修行中だからと言って妻を迎えぬのは」
「仏門ならともかくです」
「武士はですか」
「はい、その時が来ればです」
「妻を迎えるべきですか」
「それがしはそう思いまする」
 幸村に淡々として話した。
「武士は家によって成る一面もありますので」
「それは確かに」
「大谷殿は立派な方です」
 その娘の父親である彼のこともだ、兼続は話した。
「羽柴家の家臣の方々の中でも」
「石田殿と並んで」
「はい、それにです」
 兼続はさらに話した。
「娘殿は才色兼備とか」
「どちらもですか」
「備えている女御とのことなので」
「妻に迎えてよいと」
「是非共です」
 妻に迎えられるならばというのだ。
「あの方をお選び下さい」
「さすれば」
 幸村は兼続のその言葉に頷いた。
 そしてだ、共にいる十勇士達を見つつ兼続にこうも言った。
「そしてこの者達にもです」
「奥方をですか」
「そう考えていますが」
「よいことですな」
 兼続は幸村のその言葉にも笑って応えた。
「やはり武士ならばです」
「家をですな」
「持たねばなりませんから」
「それ故に」
「家臣の方々もです」
 その十勇士達もというのだ。 
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