IS~夢を追い求める者~
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第2章:異分子の排除
第26話「休日」
前書き
大体をアニメに沿って行くつもりなので、今回は休日での話です。
あの兄妹も出しとかなきゃね...。
=桜side=
「外出?」
「ああ。どうせなら皆で外出しようって訳だ。」
クラス対抗戦から数週間後の土曜日。
あの事件のほとぼりも冷めて、完全に元気を取り戻した鈴に、俺はそう言った。
「どうしてあたしに...それになんであんたが?」
「秋十君とはまだギクシャクしてるんだろう?せっかくだからこの機会で元に戻れたらなって思ってな。俺が鈴に伝えるのもそれがあるからだ。」
「ぅ...なるほどね...。」
あれから交流も何度かあり、俺も名前で呼ぶようになった。
しかし、鈴にも罪悪感があるのか、まだ少し秋十君との関係がギクシャクしている。
「残念ながら、簪ちゃんとセシリアは代表候補生の、ユーリちゃんは専用機の点検で来れないけどな。鈴は大丈夫なのか?」
「...ええ、明日は大丈夫よ。」
それならよかった。と、言う訳なので外出届を渡す。
「...準備いいわね。」
「再会した仲だからな。どうしても場を整えてやりたいんだ。」
「...まぁ、秋十とも、マドカとも久しぶりに会えた訳だしね。」
そういう事で話を締めくくり、俺は部屋へと戻る。
...あ、ちなみに反省文はしっかり書いておいたぞ。
「うーん....!学園の外は久しぶりだな。」
「そうですねー。」
翌日、俺たちは四人で外出していた。
「ところで、どこ行くのよ?」
「ん?そうだな....。」
正直、あまり決めていない。
まぁ、とりあえず...。
「この後もう一人合流するから、それから決めるか。」
「...決めてなかったのね。」
そういう訳なので、俺たちはしばらくそこで待ち続けた。
「ごめーん、お待たせ!」
しばらくして、その“もう一人”が合流する。
ピンクの可愛らしい車から降りてきたのは...。
「「っ!?」」
「篠咲有栖だよー。今日はよろしくね!」
「....えっ!?」
出てきた人物に秋十君とマドカちゃんが思わず噴き出す。
鈴も名前を聞いて相当驚いた。
なにせ、会社の社長がごく普通に降りてきたのだ。普通は驚くだろう。
....実際は束が変装しただけだと知ったら余計驚くだろうな。
「今日はオフだからね。あ、敬語とかも必要ないよ?」
「....あー、うん。正直、伝えてないのはダメだったか...。」
鈴が完全に固まっている。
...まぁ、“篠咲有栖”もそれなりに知られてきたからな...。
「ちょ、さ、さ、桜さん!?」
「いやぁ、今日はやる事ないって言ってたから...なぁ?」
「愛しの兄妹達に会いに来たのだー。」
あまりパッとしない感じの、長めの茶髪。
それが今の束...篠咲有栖としての恰好だ。(それでも十分美人だが。)
ちなみに、今言った理由は本当である。
「と、言う訳で今日はこの五人でエンジョイするぞ。」
「それじゃあ、レッツゴー!」
俺と束が先導して、俺たちは出発する。
「母さんも、会社での仕事頑張って。」
「ええ。皆、楽しんできてね。」
束を送ってくれた母さんは、そう言って車で会社へと戻っていった。
「さて...どこ行こうか...。」
「...あ、できれば...あの街に行ってみたいです。」
秋十君が徐にそう言う。
“あの街”とは...かつて秋十君達や俺が暮らしていた、故郷の事だ。
「....あたしも、行っておきたいわ。引っ越す前はそこに住んでいたんだから。」
「なら、決まりだな。」
「私も寄っておきたかったんだよねー。」
今更だが、皆あの街に縁があるんだな...。
皆が皆、元々は住んでいた訳だし。
「じゃ、目的地も決まった事だしさっさと行くか。」
そういう訳で、俺たちは目的地へと向かった。
そんなこんなで、あっさりと俺たちの元いた街へと着いた。
「...あまり、変わった訳じゃないな。」
「うーん...俺からしたら結構変わったかな。」
俺が鮮明に覚えている街並みは十年以上前だからな。
母さんを迎えに来た時にも少し見たけど、それだけだったし。
「...久しぶりだな...。」
「私の場合、もっと久しぶりだけどなぁ...。」
秋十君とマドカちゃんがそれぞれそう言う。
...二人共、自分から街を去った訳じゃないもんな。
「...あいつ、元気にしてるかな?」
「“あいつ”...?」
秋十君がふと呟いた言葉に、皆心当たりがないらしく首を傾げる。
「...あー、俺の、数少ない味方をしてくれた親友です。食堂を営んでいる家なので...。」
「...じゃあ、昼もそこにしようか。案内してくれるか?」
「任せてください。」
散々虐められていた秋十君にも味方がいた事に安堵し、俺たちはその食堂へと向かった。
「....五反田食堂...か。」
「...あー、準備中...来るの早すぎましたね。」
秋十君に案内されて辿り着いた食堂は、まだ準備中だった。
昼までまだまだあるし、どう考えても早すぎた。
「せっかくだから、その親友について教えてくれないか?時間も潰せるだろうし。」
「あ、そうですね。」
皆も気になっているみたいで、秋十君を凝視していた。
「親友...名前は五反田弾って言うんですけど、一言で言えばバカやって皆を楽しませてくれるような奴なんです。」
「ムードメーカーって奴か。」
「実際、バカな所もありましたけど。」
それは...まぁ、それでもいいか。ムードメーカーに変わりないし。
「弾と初めて会ったのは中学生になった時で、当初こそ俺を周りと同じような見方をしていました。....でも、単純な所もあったあいつは直接俺に会って貶してきて、その度に俺が否定してたからか、いつの間にか俺の理解者になっていたんですよ。」
「...単純故に、秋十君の本質を感じ取ったのかもな。」
「さぁ?今となっては分かりません。」
...まぁ、少なくとも、表面上しか見ない奴ではないと分かったな。
「...本当に、弾には助けられましたよ。アイツの言葉に対しても、正面から否定して、俺のために身を張った事もあったんですから。」
「...そりゃあ...俺たちからもお礼しないとな...。」
そこまで秋十君を助けてくれたんだからな。
束も、そうしようと思っているみたいだし、相応のお礼をいつかしてあげよう。
「...あたし達にとってはちょっと胸に来るわね...。」
「...でも、秋兄の味方でいてくれた事は本当にありがたいよ。」
かつて洗脳されていたとはいえ、秋十君にひどい事していた鈴とマドカちゃんは、ちょっと申し訳なさそうな顔をしていた。
「弾のおかげで、数は少ないものの、何人か俺の事を理解してくれました。」
「...いい親友だな。」
....よし、何か困った事があったら無償で協力してあげよう。
「ねーねー、あっ君。」
「なんですか?たb...有栖さん。」
そこで何かに気付いた束が秋十君を呼ぶ。
「...その弾君って、もしかして彼?」
「え?」
ふと、束が指差した方向...五反田食堂の二階を見ると、部屋の窓から赤い髪の青年がこっちを見て窓から離れるのが見えた。
「あ、どっか行っちゃった。」
「...すぐ来るだろうよ。」
離れるとき、随分と慌てていた。多分、確かめに降りてくるはず。
「おい弾!いきなりどこ行くつもりだ!!」
「至急確かめたい事があるんだ!見逃してくれ!」
ドタバタと店の中から聞こえ、裏口辺りから誰かが出てくる。
「秋十っ!?」
「...久しぶりだな。弾。」
焦ったような様子で出てきた弾なる人物は、秋十君が本人であると分かると、凄い勢いで秋十君の肩を掴んできた。
「お前、無事だったんだな!?行方不明になったって聞いたが...。」
「色々あって助けてくれたんだよ。」
そこで気づいたかのように弾は俺たちを見回す。
...そして、鈴で目に留まる。
「てめっ....鈴!どうしててめぇがここにいる!!」
「っ.....。」
彼は鈴がいる事がおかしいと思っているらしく、鈴に対してそう言う。
...そうか。当時は洗脳されていたから、彼にとっては悪印象なのか。
「落ち着け。鈴はもう、前とは違う。」
「っ....秋十がそう言うなら...だが、変なマネしたらただじゃおかねぇぞ。」
「...分かってるわ。」
鈴も、特に言い訳をすることもなく、大人しく従った。
....あー、まだ関係に溝はあるんだな...。
「...それと、そちらのお二人はどなた様で?」
さすがに気になったのか、俺と束に向かって彼はそう言う。
...マドカちゃんは知っているからスルーか。よく見れば鈴と同じように警戒してるし。
「俺は篠咲桜だ。」
「私は篠咲有栖。聞いた事はあるんじゃないかな?」
とりあえず自己紹介すると、弾君の顔が驚愕に染まる。
「まさか、ワールド・レボリューションの...!」
「イエース!アイアム社長!」
驚く弾君に対し、砕けた態度で言う束。
「な、なんでそんな大物人物がここに!?」
「お礼をしに来たんだよ!」
「お、お礼...?」
無駄に明るい束にタジタジだな、弾君...。
「....実際は秋十君の紹介で来たんだ。お礼はまた別の機会にするよ。」
「お、お礼って一体何の...。」
「...君が、秋十君を信じていてくれた。だからさ。」
一応訂正をし、何のお礼なのかも伝えておく。
...まぁ、ただの感謝の押し付けでもあるけどな。
「おい弾!結局店の前にいるんじゃねぇか!!そんな暇があったら手伝え!!」
「げっ...。」
さっきも聞こえてきた男性の声が中から聞こえる。
「わ、分かった!...そ、そういう訳だから秋十!また後でな!」
そう言って弾君は店の準備に戻っていった。
...と、そこでシャッターが開く。
「...ったく、一体どこのどいつだ?喋ってた奴は...。」
「厳さん!」
出てきたのはだいぶ年を取っているが、相当若々しい様子の男性。
どうやら、秋十君も知っているらしい。
「って、秋十の坊主か!?お前さん、戻ってきたのか!」
「はい!...色々ありましたけど、今は元気です!」
“厳”と呼ばれた男性は、秋十君の肩を叩きつつ、そう言う。
「...ってぇなると...そっちのお二人さんが色々やってくれたのか?」
「...まぁ、そうなりますかね。...ただ、負んぶに抱っこって程じゃないですが。」
「ったりめぇだ。んな根性なしなら今ここにいねぇだろうが。」
俺が彼の言葉に答えると、中々に厳しい言葉が返ってきた。
「...っと、秋十、おめぇ、ここで昼食っていくか?他の奴もよ。」
「元々そのつもりで来ましたから。....久しぶりですしね。」
そうと決まれば、俺たちは店の中に入れて貰えた。
まだ、開店した訳じゃないので、俺たちも準備を手伝う。
「...お、そうだ。秋十、おめぇは蘭に会っておけ。一番ショックを受けてたからな。」
「.....そうですね。行ってきます。」
厳さんの言葉に秋十君は従い、二階へと昇って行った。
「さて、準備しながらで悪いけどよ....どういう了見だ?二人共。」
「「っ.....。」」
厳さんのその凄みを込めた言葉に反応したのは、マドカちゃんと鈴。
....事情、話すべきか?
「忘れたとは言わせねぇぞ。どんな事情があったにせよ、秋十の坊主を散々虐めていたようだからな....。」
「っ、それは...。」
「ごめんなさい!!」
鈴に代わるように、マドカちゃんが頭を下げて厳さんに向けて謝罪する。
「言い訳なんてしないし、できません。...ただ、もう秋兄を虐めるような...ひどい事は、もうしません!!」
「.......。」
マドカちゃんの言葉を聞いても、まだ不機嫌そうな厳さん。
「...少し、事情を聞いてくれますか?」
「...一応、聞いてやろう。」
「では...かなり荒唐無稽な話ですが....。」
俺が厳さんに事情を話す。
元凶が織斑一夏だという事、二人は洗脳されていた事。
それらを話しておいた。
「信じられねぇような話だが...少なくとも二人は以前とは違うようだな...。」
全て信じて貰えた訳じゃないが、二人に関しては納得してもらえたみたいだ。
「...まぁいい。秋十の奴と同行してるって事は、許されたって事だろ。あいつが許したのなら、俺はとやかく言わねぇよ。」
「....二人共、だいぶ後悔してますからね...。秋十君も、洗脳される前の二人の事はむしろ好きでしたから。だから許したんでしょう。」
そんな会話をする俺の傍らで、鈴とマドカちゃんは厳さんに頭を下げていた。
「...と、そろそろ客が出入りするようになる。今回は特別に弾の部屋を借りて時間を潰しててくれ。...だが、無闇に騒ぐなよ?」
「分かりました。」
「って、俺の部屋!?...この人数だと狭いような...。」
昼食まで時間はあり、厳さんが弾君の部屋を貸してくれた。
...なお、弾君の意見は無視のようだ。
「(...そういえば、秋十君の方はどうなってるかな?蘭って子の様子見に行って、その子の泣き声が聞こえてきたまでは分かるけど...。)」
まぁ、秋十君の事だ。慰めてたりするだろう。
=秋十side=
「(....なんて言って会えばいいのだろうか...?)」
厳さんに促されるまま、弾の妹である蘭の部屋の前まで来た。
けど、一度は行方不明になった身だ。なんて言って会えばいいのか分からん。
「(...とにかく、ノックしてみるか。)」
考えてるだけでは埒が明かないので、とりあえず四回ノックする。
「.....お祖父ちゃん?それともお兄?」
若干棘というか、暗い声色で返事が来る。
「...久しぶりだな、蘭。...入っていいか?」
「.....ぇ...秋十...さん....?」
俺の声に気付いたのか、蘭が戸惑う。
「ああ。俺だよ。」
「...嘘...だって、秋十さんは....でも....。」
戸惑い、混乱する気配が、扉越しに伝わってくる。
「....入って、いいか?」
「ま...待って!」
少し、中でドタバタと物音がする。
そして、しばらくして...。
「...どうぞ。」
「ああ。」
許可が降りたので、俺は蘭の部屋に入る。
中に入ると、清楚な服に身を包んだ蘭が緊張した面持ちで佇んでいた。
...さっきのは着替えてたのか。
「秋...十...さん...!ホントに、秋十さん....!」
「..っと。...心配、してくれてたんだな。俺の事。」
泣きながら俺に縋ってくる蘭。
どれだけ心配で、どれだけ悲しんでいたのかが、よく分かる様子だった。
「秋十さんが行方不明って聞いた時、もう、どうしたらいいか、わかんなくなって...!」
「....ごめんな。今まで、諸事情で俺の事を隠しておかなきゃならんかったんだ。」
今だって、“織斑秋十”ではなく“篠咲秋十”としてここにいる。
未だに、“織斑秋十”は行方不明扱いなのだ。
「...いいんです。秋十さんが、ちゃんと生きてるって分かりましたから...。」
「...そうか...。」
少し、落ち着かせるためにも俺の経緯を軽く話す。
桜さんに助けられた事、今は“篠咲秋十”として会社の一員でもある事など。
一応、ニュースで男性操縦者関連の事は知っていたらしく、途中からはIS学園関連について会話するようになっていた。
「....良かったです。秋十さんが、ようやく幸せな暮らしができるようになってて...。」
「...蘭のおかげもあったからさ。」
かつて、蘭と初めて会ったのは弾の紹介からだった。
最初は訝しまれたけど、成り行きで不良に絡まれた所を助けたら懐かれた。
それからは、弾共々支えて貰ったりして、本当に助かっていた。
「支えてくれる人がいたから、俺はまだ生きていられる。...一人だったら、きっと自殺していただろうな...。」
洗脳される前の束さんや千冬姉にも色んな事を教えて貰ってたしな。
...でなけりゃ、挫けずにはいられなかったからな。
「...ありがとうな。蘭。」
「う...ううぅう...!」
慰めるように、俺は蘭を撫でる。
今まで心配させてきたんだ。少しぐらい、好きに泣かせておこう....。
「落ち着いたか?」
「は、はい。...恥ずかしい所を見せちゃいました..。」
しばらくして落ち着いたのか、蘭は俺から少し離れて顔を赤くしていた。
...まぁ、泣いている所を見られるのは恥ずかしいしな。
「あっくーん、皆弾君の部屋に集まってるからあっ君も......来なよって思ったけどお邪魔だったみたいだねー。」
「「.....あ。」」
そこで束さん(便宜上は有栖さん)が入ってきて、そのまま流れるように退散していった。
...って、なんか勘違いされた!?
「ちょ、ま、待ってください!」
少しの硬直の後、俺は急いで束さんを追いかける。
「(確か弾の部屋に集まってるって言っていた...なら!)」
弾の部屋に行き、扉を開け放つ。
そこに広がっていたのは...!
「く、くそ...!」
「ほい、必殺技っと。」
「あ、また弾が負けた。」
「桜さん、RTAさんになれるから...。」
...なんか、皆で楽しくゲームで対戦してた。
「って、たb..有栖さん!さっきのは...!」
「あははー、分かってるよー。あっ君はあっ君だからそう言う事は滅多にないもんね。」
「...どういう意味ですか。」
思わず束さんと呼んでしまいそうになったが、一応誤解はしてなかったらしい。
...どこか、訂正したい言葉があったような...。
「...ところでなにやってるんだ?」
「弾君の持ってるゲームで対戦だよ。ISを使った格闘ゲームみたいな?」
画面を見れば、見たことがある機体が戦っていた。
...色々あるな。有名どころの機体は当然で、専用機も結構あるみたいだ。
「...すごく上手いですね。桜さんやった事あるんですか?」
「ん?いや、今日が初めてだ。」
「...えっ?」
桜さんの言葉に俺は一瞬固まる。
...あー、でも、桜さんなら...。
「なぁ、秋十、この人マジで何モンだ?説明書読んで一、二戦したら勝てなくなったんだが。」
「...ゲームも天才か...。」
「よーっし、じゃあ、私もやってみようかなー!」
俺が改めて桜さんに驚いていると、束さんがやろうと言い出した。
もちろん、束さんも初プレイらしく、最初は弾が相手するらしい。
「...なんか嫌な予感がするから本気で行っていいですか?」
「えー?私初心者だよー?」
そう言う束さんは、どこか余裕だ。
...多分、説明書を読んで桜さんのプレイからシミュレーションしまくったな...。
弾の嫌な予感は当たりだ。本気でいかなきゃ負けるだろうな...。
「(...って、そんな事より蘭を置いてきてしまった...。)」
始まった束さんVS弾のプレイを横目に、俺は蘭の所へ戻る。
「....燃え尽きたぜ...。」
「...お疲れ様だな...。」
その後、蘭も元気を取り戻したので戻ってみると、弾が燃え尽きていた。
...惨敗、したんだな...。
「そろそろ昼だからどうせなら食べて行けって厳さんが。」
「そうかっ!すまん、この戦いが終わったら!」
「すぐ行くよっ!」
途中で厳さんから言われた事を伝えるが、桜さんと束さんは手が離せないようだ。
「....で、なんだこのプレイ。」
「神々の読み合い...みたいな?」
「ツールなしでここまでできるのね。」
なんというか...どこぞのTASさんみたいなプレイになっていた。
...あ、決着ついた。...引き分けか。
「よし、行こうか。」
「ハードのスペックが足りなかったなぁ...。」
ゲームが終わった所で、あっさりと切り上げ、二人は下へと降りて行く。
...って、スペック足りなくてアレですか...。
「...そういや秋十よ、IS学園にいるってこたぁ、イイ思いしてんのか?」
「...はぁ?」
厳さんに昼食を御馳走になってる時、唐突に弾はそう言った。
「イイ思いってあのな...。周りが全員女子って精神的にきついぞ?」
「そうか?俺にとっちゃ楽園だが。」
弾...相変わらずだな...。蘭と鈴とマドカが引いてるぞ...。
「例えるなら...会話できる程度の英語力でアメリカとかに放り込まれるようなもんだ。...常識が男とは違う所が多々あるからな。」
「...微妙な例えだな...。」
「...まぁ、一筋縄ではいかないんだよ...。」
そこまで言って納得する弾。...お前のような気楽さがあれば楽なんだがな...。
「桜さんがいるのにか?」
「桜さんは容姿が...な。」
「「「「あー...。」」」」
「ちょ、なぜそこで皆同意する!?自覚あるけどさ!」
自覚あるならできるだけ直してください(切実)。
「(一応、容姿も男らしい奴はいるが...アイツだけには頼らん。)」
「...なぁ、秋十。」
「なんだ?」
ふと、弾が俺に聞いてくる。
「...お前今、幸せか?」
「....断言するにはまだ早いけどさ...以前よりはずっと幸せなのは、間違いないぜ。」
「....そうか。」
“だったらいいんだ”と言って、弾は昼食を食べ始めた。
「(...俺、本当にいい友人に恵まれたんだな...。)」
少し涙腺が緩くなったが、きっと皆にはばれなかったはず。
...あ、でも桜さんと束さんにはばれたかも。
結局、その日は弾の家で店を手伝ったり、弾のゲームで遊んだりした。
...鈴との仲も、ギクシャクしなくなった...と思う。
...今度は、数馬の家に行ってみてもいいかもな...。
後書き
五反田兄妹は秋十が行方不明のショックで碌にテレビも見ていませんでした。
なので、“秋十”とと言う人物がIS学園に入学してる事を知らなかったという事です。
オチなんてない中途半端な終わりになってしまった...。
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