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真田十勇士

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巻ノ四十一 石田三成その十

「ですから大阪はです」
「我等だけで、ですか」
「お楽しみ下さい」
「わかり申した」
「そして大坂には関白様もおられますが」
 さらに幸村に言うのだった。
「弟君であられる羽柴秀長様もおられます」
「関白様の片腕と言われる」
「非常に素晴らしい方です」
「天下の宰相ですな」
「はい、まさに」
 その秀長はというのだ。
「そこまでの方です」
「そしてその羽柴秀長殿とですか」
「そしてです」
 さらに言う石田だった。
「それがしの無二の友でもありますが」
「無二のですか」
「はい、左近は家臣であり友ですが」
「その方はですか」
「無二の友です」
 こうまで言うのだった。
「その者も大坂にいますので」
「拙者にですな」
「会って頂きたいのです」
「その方は」
 幸村は石田を見てそのうえで答えた。
「大谷吉継殿で」
「そうです、あの者とお会い下さい」
 是非にという言葉だった。
「真田殿に必ずや大きなものとなりますので」
「はい、それでは」
「大坂でも楽しまれて下さい」
「わかり申した」
「さて、お話が終わりましたな」
 双方の間にいた兼続がここで言った。
「それではです」
「はい、これよりですな」
「茶を楽しみましょうぞ」
 話が終わったのでというのだ。
「そうしましょうぞ」
「それではです」
 石田が穏やかな笑みで幸村に言って来た。
「それがしが淹れさせて頂きます」
「石田殿がですか」
「一つ茶を淹れ」
 そしてというのだ。
「それをこの場にいる者達で回し飲みしませぬか」
「共に同じ碗の茶を飲むのですな」
「近頃こうした飲み方が都や大坂で流行っていまして」
 それでというのである。
「この場ではです」
「そうしてですか」
「飲みませぬか」
 こう幸村に提案するのだった。
「如何でしょうか」
「そうした飲み方があるとは」
 根津が石田の言葉に目を丸くさせて応えた。
「それはまた」
「絆を深める為の飲み方ですな」
 伊佐は何故そうした飲み方をするのかを察した。
「それで、ですな」
「確かに。同じ碗で回し飲みをすればな」
 由利は伊佐のその言葉に頷いた。
「仲間意識が出来るな」
「我等も殿と共によくそうしておる」
 望月は自分達のことを思い出した。
「酒や水であるがな」
「しかし茶でも同じこと」 
 穴山はこの辺りは割り切っていた。 
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