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真田十勇士

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巻ノ四十 加賀の道その十二

「それは」
「御主も小竹もな」
「そしてですな」
「特に佐吉じゃ、今はここにはおらぬが」 
 仕事でだ、石田三成は今は大坂にはいないのだ。
「あ奴はわしでもずけずけと言う」
「それが佐吉です」
「そうじゃな、誰にも媚びずにな」
「正しいと思えば一本です」
「その一本気さ故にな」
「関白様にも言われるのです」
「わかっておる、あ奴の腹は常に白い」
 そうした者だというのだ。
「だからわしもあ奴に言うことは許しておる」
「どの様な言葉も」
「謹言じゃからな」 
 秀吉を思っての言葉、それがよくわかっているからというのだ。
「わしも言わぬ」
「聞かれますな」
「そうする、ではな」
「これからもですな」
「うむ、あ奴はそれでよい」
 こう言ったのだった、大谷に。
 それからだ、秀吉は彼にあらためて言った。
「しかしその真田の次男はな」
「羽柴家にですか」
「迎え入れたいのう」
「武将としてですな」
「使いたい、既に武は虎之助達がおるが」
「それでもですな」
「より欲しい」
 こう思うからこそというのだ。
「だからこそ是非な」
「迎え入れられますか」
「そうする、ではな」
「大坂で、ですな」
「あ奴も待つか」
「そして直江殿も」
「無論じゃ、あの者もまだ諦めておらぬ」 
 欲を出してそのうえでの言葉だ。
「人は幾らでも欲しいからな」
「ではあの方も来られれば」
「また声をかける、二人共当家に迎えるとしよう」 
 無論それだけのものを用意してだ、そしてだった。
 秀吉は上洛してくる彼等を楽しみに待っていた、大谷にこうしたことも言って。
「して御主の娘にもな」
「そろそろですな」
「婿を用意するぞ」
「では」 
 大谷は主の言葉に確かな顔で頷いた、こうした話もするのだった。


巻ノ四十   完


                    2016・1・6 
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