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真田十勇士

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巻ノ四十 加賀の道その七

「騒動にならぬ様にしていても」
「それでもですな」
「緊張していますな」
「こうして陣を組んで休んでいますし」
「どうにも」
「うむ、我等も軽はずみな行動はせぬことじゃな」
 飲みつつの言葉だ。
「ここはな」
「ですな、何かすれば」
「その時はですな」
「上杉家の方に迷惑をかける」
「そうなってしまいますな」
「だからな」
 それ故にというのだ。
「迂闊なことはするな」
「わかっております」
「我等が戦うのはああした相手ではありませぬ」
「石位しか投げられぬ相手なぞ」
「相手にしませぬ」
「御主達の相手は小さな者達ではない」
 幸村は低いがこれ以上はないまでに強い声で言った。
「大きな者達じゃ」
「そうした石を投げるだけの者ではなく」
「より大きな者達ですか」
「我等はそうした者達と戦うべきですな」
「我等は」
「だからですな」
「そうじゃ、拙者もそうした者達は何もせぬ」
 幸村自身もというのだ。
「しっかりとした武器を持った武士と戦う」
「ではまたああした一揆が起こりです」
「もう一向宗が一揆を起こすことはないにしても」
「それでもです」
「ああした一揆が起これば」
「どうされますか」
「その時は戦うしかない」
 戦いが避けられないのならというのだ。
「やはりな、しかしじゃ」
「殿が相手にされるのはですか」
「武士ですか」
「その手に武具を持ち戦う」
「そうした者達ですか」
「そうじゃ、拙者はそうした者達と戦いたいし戦う」
 武士と、というのだ。
「確かなな」
「仕方ない場合はあれど」
「それでもですな」
「賊やならず者は放ってはおかぬ」 
 そうした者達はどうかというと。
「成敗する、しかしそれは成敗でじゃ」
「戦ではありませぬか」
「それではなく」
「戦は武士と行う」
「それは我等もですな」
「そういうことじゃ、ではな」
 ここまで話してだった、幸村は十勇士達に告げた。
「加賀、そして越前にも一向宗の者は多いが」
「軽挙妄動は慎み」
「そのうえで、ですな」
「大人しく通り過ぎる」
「そうしますな」
「そうじゃ、このまま行くぞ」 
 こう話してだ、そしてだった。
 幸村と十勇士の面々を含めた上杉家の者達は加賀を通り過ぎていった、日中はほぼ立ち止まることなくだ。
 ただひたすら進んでだ、そして。
 加賀を通り抜けてもだった、兼続は上杉家の重臣達その殆どが彼よりも年上の者達を集めそのうえで言った。
「いや、まずはです」
「加賀ですな」
「通りましたな」
「しかしまだです」
「越前がありますな」
「はい、ですから」 
 今入った越前もだ、一向宗が多いからというのだ。
「まだ用心して行きましょう」
「ですな、一向宗の者達には」
「まだあの者達とは因縁があります故」
「細心の注意を払い」
「越前も進んでいきましょう」
「一向宗は我等にとっても敵でした」
 それに他ならないとだ、兼続は警戒する顔で言った。
「ですから」
「それで、ですな」
「確かに一向宗は大人しくなりました」
「織田信長公との戦の結果戦は捨てたと約束しました」
「そして刀狩りで刀も鉄砲も捨てました」
「槍も弓矢も」
「後は精々石位です」
 彼等が武器として使いそうなものはというのだ。 
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