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英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)

作者:sorano
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第105話

その後エステル達はナイアルやユリアを探したが、出会えず、クルツ達を探してギルドに集まるよう伝えた。クルツに伝えた時、クルツの様子がおかしくなったがジンのお陰で元通りになり、事情を聞くとなんとクルツがカシウスの頼みで情報部を調べていた事や『ゴスペル』の送り主―Kであり、送り相手であるRがラッセル博士である事が判明したが、何故かゴスペルを送った直後のクルツの記憶がなくなっているという謎だけ残った。そしてエステル達はギルドに向かった。



~遊撃士協会・グランセル支部~



「他の遊撃士は全員集合したようですね。記者さんと、親衛隊の方には何とか連絡はつきましたか?」

ギルドに戻って来たエステル達を見て、エルナンは尋ねた。

「残念だけど……両方とも連絡がつかなかったの。」

「ですが、必要な情報はだいたい集まったと思います。」

エステルとヨシュアはリベール通信社ではクロ―ディア姫がエルベ離宮に”保護”されている事とナイアルがさらに情報を手に入れるためにエルベ離宮に向かったまま消息不明になった事、大聖堂ではユリアが出て行った事を説明した。

「なるほど……。クローディア姫がエルベ離宮にいるのは間違いなさそうですね。親衛隊の方は残念ですが、捕まっていない事が判っただけでも良しとしましょう。」

「それじゃあ、早速始めるかい?」

「ええ……。そういえばリフィア殿下達の姿が見当たりませんが……」

「リフィア達には別の用事を頼んでいるわ。多分、もうすぐ帰って来ると思うわ。」

「別の用事?一体それはなんなんですか?」

エステルの答えを聞いたエルナンは首を傾げて尋ねた。

「後で説明するわ!」

そしてエステル達はエルナンと共にクルツ達が集まっている部屋に上がった。



「……以上が、現在進行している情報部のクーデター計画の詳細です。それを踏まえた上で王都支部は、女王陛下の依頼をお受けしたいと思っています。」

エルナンは詳しい事情や経緯をクルツ達に説明した。

「まさか、そこまで大それた陰謀が進行していたとは……。見抜けなかった自分の不甲斐なさが腹立たしい限りだ。」

「確かに、あの特務兵って連中うさん臭そうだったけど……。リシャール大佐が格好良かったからつい信じちゃってたみたい……」

「しかも、空賊事件やダルモア市長までも裏から操っていたとはねえ……。ずいぶんと遊撃士(あたしら)を舐めてくれるじゃないか……」

「こりゃあ、落とし前を付けないとどうにも収まりがつかねえな……」

エルナンから事情を聞いたクルツは自分を責め立て、アネラスはリシャールを信用していた事を後悔し、カルナやグラッツは怒りを抑えきれないでいた。

「それでは皆さんも、協力して下さるということで構いませんか?」

「もちろんだぜ!」

「遠慮なくコキ使っておくれ。」

「借りは……返させてもらう。」

「あたしも喜んで!」

エルナンの確認にクルツ達は力強く頷いた。

「うわ~……。凄いことになってきたわね!」

「うん……さすがに頼もしい限りだね。」

「これなら、絶対お姫様を助けられるね!」

腕利きの正遊撃士達が参加する事にエステルやヨシュアは心強く感じ、ミントは救出作戦が上手くいくと思った。

「それでは具体的な救出作戦を練ることにしましょう。人質の命がかかっている以上、あまり悠長な作戦にはできません。多少、力押しになりますが拠点攻略の形を取りたいと思います。」

「侵入ルートを探す時間はないし、確かにそれしか方法はなさそうだな。」

「しかし、離宮を攻略するとしたら役割分担はどうするつもりだい?」

エルナンの作戦にグラッツは頷き、カルナは疑問に思った事を尋ねた。

「……陽動班と突入班の二手に分けるのが確実だろう。何らかの騒ぎを起こして離宮にいる戦力を引き付けてからそのスキに別動隊が突入する……」

「しかし、相手は王国軍の中でも精鋭にあたる情報部の特務部隊だ。欲を言えば、陽動時の要撃班と突入時の攪乱(かくらん)班も欲しいところだな。」

カルナの疑問にクルツは自分なりの作戦を提案した。またジンは戦力が足りない事を指摘した。



「えっと……それってどういうこと?」

「陽動して追いかけてきた敵を待ち伏せして叩くのが要撃班……。敵を混乱させて、突入をやりやすくするのが攪乱(かくらん)班だね。」

理解できていない様子のエステルにヨシュアは説明した。

「なるほど……。でも、この人数じゃあそんな役割分担は無理じゃない?」

「ええ……残念ながら。他の支部にも連絡したのですが、発着場と関所が封鎖されているため遊撃士がこちらに来れない状況です。」

エステルの指摘にエルナンは頷き、現状の戦力では厳しい事を説明した。

「そっか……。こういう時に、シェラ姉やアガットがいてくれたらな……」

「……ジンさんの言う通り、陽動と突入の2班だけではあまりにも危険が大きすぎます。何か別の案を検討した方がいいかもしれません。」

エルナンが別の作戦を考えようとした時、下の階から声が聞こえて来た。

「いや、足りない戦力は我々が補わせていただこう。」

声の主――シスター姿のユリアが下の階から上がって来て、エステル達の前に姿を現した。

「あ……!」

「ユリアさん……!」

「おお、周遊道で会ったあの時のシスターじゃないか。」

「こんにちは、シスターさん!」

ユリアの登場にエステルやヨシュアは明るい表情をし、ジンは驚き、ミントは挨拶をした。

「お初にお目にかかる。王室親衛隊、中隊長。ユリア・シュバルツ中尉だ。あなた方の作戦に親衛隊(われわれ)も協力させてほしい。」

そしてユリアはエルナンに親衛隊の現状を説明した。



「なるほど……。お話はわかりました。あなたを含めた9人の隊士が協力してくださるわけですね。」

「皆、それぞれの方法で王都に潜伏している最中だ。だが、1時間以内に全員を集結させることができるだろう。」

「そ、それはいいんだけど……。ユリアさん、どうしてあたしたちが人質を救出しようとしてるって分かったの?」

「僕たち、それを伝えようとして大聖堂に行ったんですけどユリアさんには会えなかったんです。」

遊撃士協会の行動を最初からわかっていたユリアに驚いたエステルとヨシュアは尋ねた。

「そうか……済まなかったね。ただ、君たちが陛下から依頼を請けたことは知っていた。それも昨日の夜のうちにね。」

「昨日の夜!?それって、あたしたちが女王様と会ったすぐ後ってこと?」

ユリアが昨夜の時点でエステル達が依頼を受けた事を知っていた事にエステルは驚いた。

「ねえねえ。ユリアさんはどうやってママ達が女王様に依頼された事を知ったの?」

「うーん。何と言ったらいいのか……」

ミントに尋ねられたユリアは言葉を濁した。

「まあ、そいつはいいだろう。大事なのは、要撃班と攪乱班が何とか確保できるってことだ。」

「ええ、これで作戦の成功率が跳ね上がりました。早速、役割分担を決めてしまいましょう。」

ジンの言葉に頷いたエルナンが具体的な役割分担を説明しようとした時



「余達を忘れてもらっては困るぞ!」

リフィア達が下の階から上がって来て姿を現した。

「リフィア!」

リフィア達の登場にエステルは表情を明るくした。

「あ、貴女はリフィア殿下!?どうしてここに……!」

一方リフィア達の登場にユリアは驚いた。

「お前が名高いリベールの若き将、ユリア中尉か。僭越ながら余達も救出作戦に参加する事になったから、よろしくな。」

「え!?よ、よろしいのでしょうか?これは我々リベールの問題なのに………」

リフィアの申し出にユリアは驚いて尋ねた。

「私達が参加するのは一個人として、貴女達リベールに協力したいという意思なので気にしないで下さい。」

「貴女は……?」

プリネの正体がわからなかったユリアは尋ねた。

「申し遅れました。……私はメンフィル皇女、プリネ・マーシルンです。父は”覇王”リウイ、母は”闇の聖女”ペテレーネです。」

「あ、貴女があの”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”……!無礼をしてしまい、申し訳ありません!自分は王室親衛隊、中隊長、ユリア・シュバルツと申します!”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”と名高い貴女に会えて光栄です!」

プリネの正体を聞いたユリアは驚いた後、敬礼をした。

「えーーー!!プリネちゃんって、皇女様だったの!?それもあの”剣皇”と”闇の聖女”の娘だなんて………!」

「これは驚いたね……!ただ者ではないと思ったけど……!」

一方プリネの正体を知ったアネラスやカルナは驚いた。

「ん?そう言えばそこの隊長さんがリフィアの事を”殿下”って呼んだけど、まさか……」

そしてグラッツはユリアのリフィアに対しての呼び方に気付き、恐る恐るリフィアを見た。

「フム。これから共に戦う戦友となるのだ。余達の事も知っておいたほうがいいな。……余の名はリフィア!リフィア・イリーナ・マーシルン!!現メンフィル皇帝シルヴァンの娘にして、メンフィルの未来の皇帝!」

「………メンフィル客将、エヴリーヌ。よろしく。」

「………ツーヤと申します。プリネ様に仕えております。」

リフィアは胸を張って答え、エヴリーヌやツーヤは軽く自己紹介をした。



「なんと……!」

「おいおい、マジかよ!?貴族どころか、皇族じゃねえか!それもメンフィル皇帝の跡継ぎとかとんでもねえ人物じゃねえか!!」

リフィア達の自己紹介を聞いたクルツやグラッツは目を見開いて驚いた。

「ねえ、プリネ。”あの人”には声をかけてくれた?」

一方エステルはリフィア達を見て、ある人物がいないのを見て、尋ねた。

「ええ。」

「あの、エステルさん?”あの人”とは一体………?」

プリネとエステルの会話に首を傾げたエルナンは尋ねた時

「フフ………それは私の事よ♪」

下の階から上がって来た人物――カーリアンがエルナン達の前に姿を現し、口元に笑みを浮かべて言った。

「えーーーー!!あ、貴女は!!」

「”戦妃”カーリアン殿………!!」

カーリアンの登場にアネラスやユリアは信じられない表情で驚いた。また、クルツ達も信じられない様子で驚いていた。

「来てくれてありがとう、カーリアン!」

「フフ……言ったでしょ。声をかけてくれたら力を貸すって。」

お礼を言うエステルにカーリアンは口元に笑みを浮かべて答えた。

「あ、貴女も力を貸して下さるんですか……!?」

一方エルナンはカーリアンまで救出作戦に参加する気でいる事に驚き、尋ねた。

「ええ。目の前に”戦”があると知ってて、ただの見物人でいるなんて”戦妃”の名が泣くわ。これは私個人の我儘だから、国としての思惑は一切からんでいないから、安心していいわよ♪ま、リフィア達が世話になったお礼代わりだと思ってもらえばいいわ♪」

「そうですか……ありがとうございます。”大陸最強”と名高いメンフィル軍の中でも指折りの強さを持ち、カシウスさんを破るほどの貴女の武……頼りにさせて頂きます。」

「ま、お姉さんに任せなさい♪」

エルナンの感謝の言葉にカーリアンはウインクをして答えた。



「まさかあの”戦妃”やメンフィルのお姫様達と肩を並べて戦う日が来るなんて思ってもみませんでした……!」

「ああ。だが、これなら作戦の成功率は飛躍的に上がるな………!」

カーリアン達が味方になった事にアネラスは興奮し、クルツは救出作戦の成功の確率が飛躍的に上がる事に気付き、明るい表情をした。

「それとエルナンさん。戦力ならさらに増やせますよ?」

「え?それはどういう事ですか?」

プリネの申し出にエルナンは驚き、尋ねた。

「………ペルル、マーリオン、フィニリィ!!」

そしてプリネはペルル達を召喚した。

「あ、なるほど!その手があったわね!パズモ、サエラブ、テトリ、ニル!みんな、出て来て!!」

プリネの行動を見てエステルも自分が契約している精霊や使い魔達を召喚した。

「「「「「「なっ!?」」」」」」

使い魔や精霊、天使の召喚にエルナンやユリア達は驚いた。

「みんな!人質になっている人達を助けるためにみんなの力を貸してちょうだい!」

「戦いが苛烈になる今こそ、みなさんの力を私達に貸して下さい。」

(ええ!)

「ボクに任せて!それにこの国はボク達”闇夜の眷属”を受け入れてくれているんだから、恩は返さないとね!」

「お任せ……下さい……」

「フフ、国の平和のためにこの力を使う日が来るとは思いませんでした。私の力でよければ、存分にお使い下さい。」

「どうやら早速ニルの力が必要になりそうね。一杯活躍するから、期待して!」

(フッ……人間、幻獣、精霊、天使、闇夜の眷属の協力……ウィル達と共に戦った時を思い出すな……)

「あら、奇遇ですわね。(わたくし)も同じ事を考えましたわ。」

エステルやプリネの頼みに使い魔達は力強く頷いた。また、サエラブとフィニリィはかつての仲間達と戦った時を懐かしそうに思い出していた。

「これで戦力は7人増えました。これなら別グループに分けての陽動や考えていた陽動グループの援護が可能だと思います。」

「え、ええ。とにかくこれで作戦の成功率がさらに跳ね上がりました。……成功率は恐らくほぼ100%に近くなったと思います。先ほど話が途切れましたが、役割分担を決めてしまいましょう。」

プリネの答えにエルナンは頷いた後、ユリアを見た。



「了解した。まずは陽動だが……。これは我々親衛隊のうちの5人のメンバーが担当しよう。」

「確かに、指名手配中のあんたたちが現れたとなれば敵も引っかかる可能性が高いな。」

「ああ、そういうことだ。具体的には周遊道の外れに停泊している情報部の特務飛行艇を狙うつもりだ。」

ジンの予想に頷いたユリアは説明を続けた。

「特務飛行艇って……。特務兵たちが乗ってたアレ!?」

「周遊道の外れに停めてあったんですか……」

「そういや、封鎖されて入れなかった場所があったな……」

「だからあの人達、いつも以上に怖い雰囲気を出していたんだ……」

ユリアの情報にエステルやヨシュアは驚き、ジンやミントは納得した。

「私の調査だと、数名の特務兵が常に見張りをしているようだ。これを叩いて、離宮に連絡させて応援部隊をそちらに向かわせる。」

「あ、なるほど……。その応援部隊を、要撃班が返り討ちにするってことね?」

ユリアの説明を聞いたエステルは次にする事を言葉に出した。

「ならば、要撃班は私たちが引き受けた方がよさそうだな。」

「たしかに、森での戦闘は魔獣退治で慣れっこだからな!」

「銃使いもここにいるし……。うってつけじゃないかねぇ。」

「まさに適材適所だと思います。」

エステルの言葉を聞いたクルツ達は要撃班のメンバーになる事を申し出た。

「じゃあ私は要撃班に入るわ。そっちの方が敵が一杯来そうだしね♪」

「ならば余、エヴリーヌ、プリネ、ツーヤも要撃班に加勢する!カーリアンばかりに活躍させる訳にもいかぬしな!3人共、よいな?」

「エヴリーヌは一杯遊べるならなんでもいいよ。キャハッ♪」

「要撃班に敵の戦力が最も集中しますからね。わかりました。ツーヤ、私から離れないでね?」

「はい。絶対にご主人様のお傍を離れません。」

そしてカーリアンやリフィア達が要撃班に参加する事を申し出た。

「ペルル、マーリオン、フィニリィは私達を含めての要撃班の援護をお願いします。」

「任せて!」

「……後方からの援護は……お任せ……下さい……」

「我が槍と魔術の力を持って、あの無礼者達を一掃してやりますわ!」

プリネの指示にペルル達は力強く頷いた。



「では、攪乱班と突入班ですが……」

「攪乱班は、陽動班と同じく親衛隊のメンバーが務めよう。その方が、特務兵たちの注意を引きつけられるはずだ。」

作戦内容の続きを考えようとしたエルナンにユリアは答えた。

「……ということは……」

「僕達が突入班として人質を解放するわけですね。」

ユリアの答えを聞き、エステルとヨシュアは自分達が何をするか察しがついた。

「じゃあ、パズモ達は撹乱班の人達の援護をしてあげて。4人共期待しているわよ!」

(援護は私の得意分野よ!任せて!)

(フッ………撹乱は我にとっても得意分野の内に入るな……クク、”獣”の真の恐ろしさ……敵に刻みこんでくれる!)

「わかりました。エステルさんも気をつけて下さい。」

「治癒魔術ができるニルとテトリは状況に応じて攻撃と回復に移るわ。その方が効率がいいでしょう。」

エステルの指示を聞いたパズモ達はそれぞれ力強く頷いた。

「突入班はみんなのお膳立てがあって初めて成立する大切な役割だ。気合いを入れる必要があるぜ。」

「そ、そう言われるとちょっとプレッシャーかも……」

ジンに言われたエステルは緊張を感じた。

「フフ……。そう心配することはないさ。」

「何といっても武術大会の優勝メンバーだからねぇ。」

「敵の大部分は私たちが何とかしよう。君たちは人質救出だけを考えてくれればそれでいい。」

「ミント、ママ達のために一杯頑張るね!だから一緒に頑張ろう、ママ!」

緊張しているエステルにクルツやアネラス、ユリアにミントが励ましの言葉をかけた。



「ユリアさん……先輩たち……ミント………」

「僕たちだけで人質を救うわけじゃない。力を合わせればきっと大丈夫さ。」

「うん……!よし!やるっきゃないわよね!」

ヨシュアの言葉に頷いたエステルは気合を入れ直した。

「おっと、いい気合いだな。」

「これで作戦会議は終了ですね。作戦決行は夜……。闇に紛れてが望ましいでしょう。一度作戦が始まってしまえば市街地に戻る余裕はありません。今のうちに、足りないものを揃えてきてはいかがですか?」

「あ、それもそうね。」

「私は、王都に潜伏している部下たちに連絡を取ってこよう。」

「それじゃあ、一旦ここで解散ですね。」

こうして救出作戦の会議は終わり、エステル達は一端解散して、決行の時を待った。



一方エステル達が救出作戦を開始する前に、歴史の裏に隠れた知られざる戦いの時が迫っていた……… 
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