英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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第104話
翌日エステル達は女王からの依頼を説明するためにジンと合流した後ギルドに向かった。
~遊撃士協会・グランセル支部~
「状況は理解できました……。エステルさん、ヨシュアさん。本当によくやってくれました。まさか、女王陛下直々の依頼を請けてきてくださるとは……」
エステルとヨシュアから全てを聞き終えたエルナンはエステルとヨシュアを労った。
「あはは、運が良かっただけよ。でも、ここから先は運じゃ乗り切れないかも……」
「うん……。気を引き締めてかからないとね。」
「それが判っているのであれば私から言うことは何もありません。ともかく、これでラッセル博士の依頼は達成ということになりますね。今後も何かとご入用でしょうし、ここで報酬をお渡ししておきます。」
そしてエルナンは2人に報酬であるミラを渡した。
「さて、それから……ジンさん。あなたがカシウスさんに招かれて来てくれたというのは僥倖でした。A級遊撃士としての力をどうか私たちに貸してください。」
「ああ、そのつもりだ。旦那への借りを返す以前にこんな事件は放っておけんよ。最後まで手伝わせてもらうぜ。」
エルナンに頼まれたジンは力強く頷いた。
「さすがジンさん、太っ腹!ところで……A級ってナニ?」
「正遊撃士の実力を表すランクのことだよ。一番下のGからAまでの7段階に分かれているんだ。」
「そ、それじゃあA級って最高のランクってことじゃない!ジンさんって……そんな凄い遊撃士だったんだ。」
ジンのランクについての説明をヨシュアから聞いたエステルは驚いて、ジンを見た。
「ほう。お主、A級だったのか。道理で強い訳だ。」
リフィアは感心した様子でジンを見た。
(ねえねえ、プリネ。A級の正遊撃士ってのはそんなに凄いの?)
(ええ。ゼムリア大陸全土で20人ほどしかいないと聞きます。)
(凄いです!そんな人があたし達の目の前にいるんですね……!)
一方エヴリーヌは小声でプリネに正遊撃士のランクを聞き、プリネの答えを横で聞いていたツーヤは尊敬の眼差しでジンを見た。
「はは、俺なんざA級の中でも下っ端の方さ。それにA級は、大陸全土で20人くらいはいるんだが……。その上に、実は非公式でS級というランクがあってな。
これは国家的な事件を解決した遊撃士にしか贈られない称号なんだ。大陸全土でも4人しかいない。」
「ど、どれだけ凄いのか想像もできないんですけど……」
A級のさらに上の級がある事を知ったエステルはどれだけ強いか想像すらできなかった。
「ハァ、どうやらお前さん、何も知らないみたいだな……。その1人ってのがカシウスの旦那のことだぞ。」
エステルの答えに呆れたジンはカシウスの驚くべき事実を説明した。
「ええーーーっ!?ま、まさかヨシュアもしってたんじゃないわよね?」
「ゴメン、実は知ってた。5年前に、共和国での事件を解決してそうなったみたいだね。」
「リフィア達は?」
「余達はファーミシルスが集めている情報で知っていた。あ奴は大陸全土で名のある軍人や遊撃士の情報を全て集めたからな。級までは覚えてなかったが、お前の名があった事は思い出したぞ。”不動”のジン。」
「ハッハッハ。”大陸最強”と名高いメンフィルに名を知られているなんて、光栄な事だな。」
不敵な笑みを浮かべて言ったリフィアの言葉を聞いたジンは笑って答えた。
「はあ、もう……。いいかげん怒る気もしないわ。王国軍大佐だの、陰の英雄だの剣聖だの、S級遊撃士だの……。そんなに凄かったんだったらとっとと帰って、
今回の事件も解決してくれりゃあいいのに……」
「わあ……お祖父ちゃんって凄いんだ!早く会いたいな!」
一方エステルはさらに知ったカシウスの事実に呆れて溜息を吐いた後、この場にいないカシウスへの恨みごとを呟いた。一方ミントはカシウスに早く会いたくなった。
「はは、その通りかもしれんな。そもそも、あの旦那がいたらここまで事件が大きくなる前にクーデターを潰していたのかもしれん。」
「………………………………」
「ヨシュア、どうしたの?」
ジンの言葉を聞き目を伏せているヨシュアに首を傾げたエステルは尋ねた。
「……少し妙だと思ってね。一連の事件は、全部父さんが旅立ってから起こったことだ。まるで、父さんの留守中を狙ってクーデターを起こしたような……そんな印象すら感じるんだ。」
「あ……」
「ふむ、旦那が帝国に向かったのもクーデター計画の一環だった……。つまり、そう言いたいわけか?」
ヨシュアの推測を聞いたジンは尋ねた。
「……いえ。さすがに考えすぎでしょうね。あの父さんを、気付かせないように誘導するなんて可能とは思えない……。よほど、父さんの動きを把握してその裏をかける人物じゃない限り……」
「まあ。旦那の裏をかけるなんて例の大佐にも無理だろうよ。多分、2つの事件が偶然に重なっただけだろうな。」
「いずれにせよ、頼みの柱たるカシウスさんの力は借りられません。ですから、私も覚悟を決めました。これより遊撃士協会・王都支部は緊急体制に入りたいと思います。」
「き、緊急体制って……」
エルナンから出た言葉を聞いたエステルは何をするかわからなかった。
「何と言っても、女王陛下直々のご依頼です。規約第三項、『国家権力に対する不干渉』の枷はこの時点で無くなったわけですが……。それでも軍とギルドでは根本的な戦力が違いすぎます。ジンさんはもちろん、王都にいる他の遊撃士全員にも協力していただきましょう。」
「なるほど……。確かに、情報部とケンカするくらいならそのくらいの戦力は欲しいわね。」
そしてエルナンの説明を聞いたエステルは納得した。
「できれば、他の国内支部にも協力してもらいたいのですが……。今日になって、関所や発着場が軍によって完全に封鎖されました。テロリスト対策という名目です。」
エルナンは真剣な表情で現状を説明した。
「ええっ!?」
「実質上の戒厳令ですね……」
「いよいよ、敵さんの動きも本格化してきたってことだな。」
グランセルの現状を知ったエステルは驚き、ヨシュアやジンは真剣な表情になった。
「おそらく、潜伏中の親衛隊や我々の動きを封じるつもりでしょう。人質救出は、手持ちの戦力だけで行うしかありません。……そうだ。貴女達は今後どうするのですか、リフィア殿下。」
自分の推測をエステル達に話したエルナンはリフィア達を見て、尋ねた。
(おい、今”殿下”って言わなかったか?)
(うん……今まで黙ってたんだけど、リフィアとプリネってメンフィルの皇女様なんだ。)
(そうだったのか!?……道理で”戦妃”と親しい訳だ………)
リフィアの事を小声でエステルに尋ねたジンは驚いた。
「もちろん、余達も参加するに決まっているだろう!善政を敷いているアリシア女王に剣を向ける愚か者達は余が裁きの鉄槌を与えてやろう!それにリベール王家は余達メンフィルにとっても恩がある相手だ。見過ごす事はできん!」
「よろしいのですか?メンフィルは静観するのでは?」
「それはあくまで”国”として動かない事だ。一個人が動く事に関してはリウイは何も言ってなかったしな!」
念を押すように尋ねるエルナンにリフィアは胸を張って答えた。
「ま、ここまで関わったんだし、付き合って上げるよ。それに遊べるしね♪……キャハッ♪」
「微力ながら私の力もお使い下さい。」
「もちろんあたしも協力させて下さい。……それにあたしとミントちゃんだって、戦う理由はあります。」
「そうだよ!孤児院を火事にして、先生を襲った人達……ミント、絶対許さない!」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて頼りにさせて頂きます。」
遊撃士でないリフィア達の申し出にエルナンは表情を明るくしてお礼を言った。
「ところで、人質が捕まってるのは具体的にどこか見当がつきそう?」
「そうですね、先程から色々と考えてみたのですが……。やはり一番怪しいのは『エルベ離宮』だと思います。」
エステルの疑問にエルナンは少しの間考えた後、推測を答えた。
「『エルベ離宮』……。森の中にある王家の建物ね。」
「可能性は高そうですね。テロ対策という名目で特務兵たちが使っていたし……。それに、王族の女性をレイストン要塞のような場所に監禁はできないと思います。」
「ただ、相手が軍なだけに確実な情報が欲しいところだな。間違いでしたで済む相手じゃない。」
「ええ……その通りです。どちらにせよ、王都にいる他の遊撃士たちをここに集めなくてはなりません。そこで、彼らに声をかけながら情報を集めていただけませんか?たしか、エステルさんたちは雑誌社の記者さんとお知り合いだったはずですね?」
エステル達の言葉に頷いたエルナンはエステルに尋ねた。
「あ、ナイアルのことね。」
「確かに、何か情報がないか聞いてみた方がよさそうだね。それと、潜伏中の親衛隊にもできれば協力を要請したい所です。こちらの線も当たっていただけると助かります。」
「ということは……シスターになりすましているユリアさんに連絡を取るのね。」
「紹介状の件で助けてもらったし、一度報告した方がよさそうだね。じゃあ、大聖堂も訪ねてみようか。」
「王都にいる他の遊撃士はクルツさん、グラッツさん、カルナさん、アネラスさんの4名です。酒場や、普段使うお店、あとホテルなどにいると思います。見かけたら、ここに集まるよう伝えてくださ。」
「うん、オッケー!」
「それでは早速、出かけてきます。」
そしてエステル達はギルドを出た。
~王都グランセル・南街区~
「あっと、そうだわ。リフィア達に頼みたい事があったわ。」
「ん?なんだ?」
ギルドを出てすぐに立ち止まったエステルはリフィア達に頼みごとがある事を思い出した。
「ちょっと、耳を貸してくれない?」
「ふむ?」
そしてエステルはリフィアに小声である頼みごとを耳打ちした。
「本当に奴はそう言ったのか?」
「うん!いつでも声をかけてくれって!」
「全く……相変わらずそういう事に関しては鼻が利くのだな、あの戦闘狂は。」
(?エステルさん、何をリフィアさんに頼んだのでしょう?)
(まさか………)
(ん~……エヴリーヌの遊び相手が取られなきゃいいんだけどな………)
呆れて溜息を吐いているリフィアを見てツーヤは首を傾げ、プリネやエヴリーヌは察しがついた。
「じゃあ、お願いね!」
「うむ!プリネ、エヴリーヌ、ツーヤ!行くぞ!」
「「はい。」」
「はいはい。」
そしてリフィア達はどこかに行った。
「ねえ、ママ。リフィアさん達、何をしにどこかに行ったの?」
「すぐにわかるわ♪じゃあ、行きましょうか!」
「はーい!」
「(なるほど……”あの人”か。確かに”あの人”の協力があれば、心強いな……)了解。」
「おう。」
そしてエステル達もクルツ達やユリアへの協力、ナイアルから情報をもらうために行動を開始した…………
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