英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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第77話
その後装置を見つけたエステル達はギルドに戻って来た。
~遊撃士協会・ツァイス支部~
「キリカさん。装置、取ってきたよ!」
「こちらも準備はできている。ちなみに、これから見せる物は他言無用にお願いするわ。」
キリカはエステル達に何かの地図を渡した。
「ヘッ、なかなか良いものを持っているじゃねーか。」
アガットはその図面に書いてある場所の名前――レイストン要塞の図面である事をを見て、笑みを浮かべた。
「これは……レイストン要塞の概略図ですか。」
「うわぁ……。すごく広いんですね。このどこかにおじいちゃんが……」
レイストン要塞の図面がある事にヨシュアは驚き、ティータは真剣な表情で図面を見た。
「でも、こういうのって軍事機密なんじゃないの。どうしてギルドにあるわけ?」
エステルはレイストン要塞を怪しいものを見るような目で見て、尋ねた。
「蛇の道は蛇ってね。とあるルートから入手したの。遊撃士協会には、こういう面もあることを覚えておきなさい。」
「う、うん……」
キリカの答えにエステルは戸惑いながら頷いた。
「言うまでもないけど今回のケースはかなり特殊よ。本来、王国軍とギルドの関係は他国のそれと比べても友好的なの。遺恨を残さないためにも兵士との交戦は極力避けること。特にアガット……いいわね?」
「フン、仕方ねえな。だが、あの黒装束の連中は立ち塞がったら容赦しねえぞ。軍人だろうがなんだろうが犯罪者には違いないんだからな。」
キリカに念を押されたアガットは鼻をならして、答えた。
「好きにしなさい。ただし死なない程度でね。……後、できればリフィア達は今回の潜入に参加してほしくないのだけど……」
「フム、仕方ないか。」
「え、なんで??エヴリーヌの転移魔術を使ったらここにいる全員を連れていけるのに。」
キリカの言葉にリフィアは納得し、エステルは首を傾げた。
「万が一王国軍に私達の姿を見られて、私達の正体がバレてしまえば国際問題に発展してしまう事をキリカさんは恐れているんです。私やエヴリーヌお姉様の顔はほとんど知られていませんが、リフィアお姉様はお父様に着いて行ってリベールとメンフィルのいろんな会談に参加しましたからリフィアお姉様の顔は軍の上層部の方達はほとんど知っていると思いますから。」
「そうだね。後、今回は潜入作戦だからあまり人は連れていけないよ。」
「ん。じゃあ、今回はエヴリーヌ達はお留守番していたほうがいいね。」
プリネの説明にヨシュアは頷きながら言った言葉にエヴリーヌは頷いた。
「ねえ、ママ。ミントやツーヤちゃんもついて行ったら駄目?」
ミントは懇願するような表情でエステルを見て、尋ねた。
「う~ん……ヨシュアも言ったけど、今回は軍の人達にあたし達が潜入している事がばれないためにもあまり人は連れて行けないから、悪いけどミント達は連れていけないわ。」
「そっか………」
「ミントちゃん……」
エステルの答えを聞いたミントは残念そうな表情で顔を下に向け、その様子を見たツーヤは同じ”パートナー”を持つ竜としてミントの気持ちが痛いほどわかった。
「ミント…………………」
俯いているミントを見てエステルは少しの間考えた後、しゃがんでミントを抱きしめた。
「マ、ママ?嬉しいけど、どうしたの?」
抱きしめられたミントは戸惑いながら尋ねた。
「いいから聞いて。あたしはミントが子供だからって理由もあるけど……一番の理由はあなたの事が大事だから連れて行かないの。今回相手する人達は平気で人を殺そうとしたりする危険な人達なの。そんな所に大事なミントを連れていけないわ………」
「ママ…………うん、わかった!でも、絶対無事に戻って来てね!約束だよ!」
「ええ!」
「エステルさん、ミントちゃんの事、凄く大切にしていますね。エステルさんがミントちゃんの”パートナー”になって、本当によかったです。」
「あら、もしかして羨ましいの?よければ、抱きしめたり撫でてあげてもいいけど。」
「い、いえ……そ、その………」
笑顔に戻ったミントにエステルは頭を撫でた。その様子を見てツーヤは思わずプリネに言い、プリネの言葉にツーヤは顔を真っ赤にして、照れながら言い淀んだ。そしてミントの頭を撫でた後、エステルは立ってキリカからの言葉を待った。
「エステル、ヨシュア。本来ならば準遊撃士のあなたたちにこんな仕事は任せたくないけど……」
「ちょ、ちょっと!そんなのってないわよ!」
「乗りかかった船です。どうかやらせてください。」
キリカの言葉にエステルは反論し、ヨシュアも真剣な表情で懇願した。
「……というと思ったから反対するのは止めにするわ。ちなみに、あなたたちはツァイス支部の監督下にある。万が一のことがあってもわたしが責任を取るから安心なさい。」
「キ、キリカさん……」
「すみません……。ご迷惑をおかけします。」
「それから……ティータ。遊撃士でないあなたにこう聞くのもなんだけど……。決心は変わらないのね?」
「あ……。……はい!」
キリカに話を振られたティータは一瞬何の事かわからなかったが、すぐにわかって力強く頷いた。
「え、え?それってどういうこと?」
「もしかして……」
キリカとティータの会話の意味がわからなかったエステルは首を傾げたが、ヨシュアは察しがついた。そしてティータはエステル達に振り向いて説明した。
「あ、あのね……。この装置を動かせるのはたぶんわたしだけだと思うの。だから……わたしもお姉ちゃんたちと一緒に行くよ。」
「ええっ!?」
「たしかに、複雑そうなオーブメントだったけど……」
ティータが同行する事にエステルは驚き、ヨシュアは複雑そうな表情をした。
「ごめんなさい……。わたし、迷惑にならないようちゃんと付いていくから……」
エステル達の様子を見てティータは申し訳なさそうな表情で謝り、答えた。
「……ふざけんな。こら、チビスケ……。そんな話は聞いてねえぞ……。こんなヤバイ仕事にガキを連れて行けるわけねえだろうが!」
しかしアガットは納得できず、真っ先に反対した。
「で、でもでも……。わたしがやらなかったら装置が動かせないですし……」
「だったらそんな方法はハナッから却下だ、却下!別の潜入方法を見つけるぞ!」
「………………………………。あんたねぇ。いいかげんにしなさいよ。なに、意地を張ってるわけ?」
何が何でもティータの同行を認めようとしないアガットにエステルは溜息を吐いた後、尋ねた。
「なにぃ……?」
「ティータも覚悟して協力するって言ってるでしょ。それに協力してくれたらあたしたちも潜入しやすくなる。それって、博士を助け出す可能性も上がるってことよね?この期に及んで反対する余地がどこにあるってゆーのよ?」
「てめえ……。民間人を、しかもガキを危険にさらせると思ってんのか?」
エステルに尋ねられたアガットは威圧感を持って、エステルを睨んだ。
「そうならないようにあたしたちが守ればいいじゃない。それが遊撃士の仕事でしょ?」
「クッ……。たかが新米ごときが偉そうなことを抜かしやがって……」
「……新米、ベテランはこの際、関係ないと思います。大切なものを守りたいという気持ちも遊撃士だけのものじゃありません。むしろ、そういう気持ちを支えるのが僕たちの仕事じゃないんですか?」
「………………………………」
エステルとヨシュアの言葉にアガットはエステル達を睨んだ。
「私からも言わせてもらいますが、ティータさんは連れて行くべきです。」
「ご主人様……?」
「ああん?なんで遊撃士でもないテメェがそんな事を言える?」
エステル達の意見を賛成するプリネの意見にツーヤは首を傾げ、アガットはプリネを睨んだ。
「その前に一つお聞きしたいのですが………今回博士を助けた後、博士達の今後はどうなさるおつもりですか?」
「それは……………………チッ、わかったよ。」
「へ……?プリネ、今の言葉ってどういう意味??」
プリネの言葉にあっさり折れたアガットにエステルは首を傾げた後、尋ねた。
「プリネが言いたいのは恐らく、リベール軍内で暗躍している者達が捕まらない限り博士は狙われ続けるという事だ。それで博士の孫であるティータは隠れている博士をあぶり出すために、人質として誘拐される可能性も高いから博士を助けた出したと同時にティータも保護するべきと言いたいのだ。………そうだろう、プリネ?」
「はい。」
「あ、そっか。」
「なるほど……助け出す事ばかりに目が行って、その後の事を考えていなかったな……」
プリネの代わりに説明したリフィアの言葉にプリネは頷き、エステルやヨシュアは納得した。
「お姉ちゃん、お兄ちゃん……。あ、あの、アガットさん。ごめんなさい、困らせちゃって……。でも、わたし、おじいちゃんが大切だから……。ぜったいに助かってほしいから……。だから、自分ができることがあればできる限りのことがしたいんです。」
「………………………………」
自分の存在がアガットを困らせている事に気付いたティータは申し訳なさそうな表情で答え、アガットは黙って聞いていた。
「それに、アガットさんがわたしを助けてくれたように……。わたしも、お姉ちゃんや、お兄ちゃんや、アガットさんの力になりたいんです……。ぜったいに無理はしません……。ちゃんという事も聞きますから……。だから……どうかお願いしますっ!」
「ティータ……」
「そうか……。そこまで考えてくれたんだね。」
弱々しくも決意の表情で嘆願するティータの言葉にエステルやヨシュアは感心した。
「………………………………。フン、判っちゃいねえな。力になる以上に足手まといになりそうだから付いてくるなと言ってるんだ。」
「あうっ……」
「だがまあ、他に潜入方法がなさそうな上今後の事も考えたら確かだからな……。気は進まねえが……。本当に気は進まねえが、今回だけは特別に認めてやるよ。」
「あ……。ありがとう、アガットさん!」
「礼を言われる筋合いはねえ。足手まといになったりしたら容赦なく見捨ててやるからな。覚悟しとけよ。」
「は、はいっ!」
アガットに認められ、ティータは笑顔で答えた。笑顔でお礼を言われたアガットはぶっきらぼうに答えた。
「ティータちゃん、よかったね!」
「がんばって、ティータちゃん。あたし達はついていけないけど、博士を無事助け出せるよう、祈っているよ。」
「えへへ……ありがとう、ミントちゃん、ツーヤちゃん!」
「まったくもう……いちいち偉そうな男ねぇ。素直に認めてあげなさいよね。」
「まあまあ、エステル。アガットさん、照れ隠しに憎まれ口を言ってるだけだから。」
「プックククク………つっぱている割には中々可愛いところがあるではないか。」
「う、うるせえぞ、てめえら!」
エステルやヨシュア、リフィアにからかわれたアガットは声を上げた。
「クスクス……そうだ!………フィニリィ!」
「私に何の用かしら?」
エステル達とアガットの様子にプリネは笑った後、フィニリィを召喚した。
「私に代わって、エステルさん達に助力してあげて下さい。」
「しょうがありませんわね………ま、この私が助力するのですから、大船に乗った気持ちでいなさい。」
プリネに頼まれたフィニリィは溜息を吐いた後胸を張って、答えた。
「と言う訳で、フィニリィも連れて行って下さい。フィニリィは体も小さいですから、コンテナの中に入る時もそんなに邪魔にならないと思いますし。」
「ありがとう、プリネ!」
「助かるよ。ありがとう、プリネ。」
戦力の補充をしてくれたプリネにエステルやヨシュアはお礼を言った。
「フフ……。話がまとまって何より。そろそろ工房船の準備が済んでいる頃でしょう。準備が済み次第、飛行場に向かうといいわ。」
「うん、わかった!」
「じゃあな、キリカ。軍への対応は任せたぜ。」
「ええ、問い合わせが来ても適当にあしらっておく。女神達の加護を。くれぐれも気を付けて。」
アガットの言葉にキリカは頷いた後、作戦の成功を祈った。
「ミントちゃん、ツーヤちゃん………」
「?どうしたの、ティータちゃん??」
「あたし達に何か言いたい事があるの?」
ティータの言葉にミントやツーヤは首を傾げた。
「あのあの……多分しばらくミントちゃん達には会えないと思うけど……その………それでも、友達でいてくれる?」
「あったり前だよ!ミント達はいつまでも友達だよ!」
「うん、いつかまた会える日を楽しみにしているから、がんばって!」
「えへへ……ありがとう、2人とも!」
ミントとツーヤの応援の言葉にティータは笑顔で答えた。
「よし……話も纏まった事だし、みんな、行くわよ!」
「了解!」
「おう!」
「はいっ!」
「フフ、精霊王女であるこの私の力を存分に見せて差し上げますわ!」
「みなさん、がんばって下さい!」
「必ず博士の奪還を成功して、博士を攫った不届き者達に一泡吹かせてやれ!」
「ん。まあ、エステル達ならやれると思うけどね。」
「みんな、がんばってね!」
「みなさんの無事をご主人様といっしょに祈っています!」
エステルの言葉にヨシュア達は力強く頷いた後、プリネ達の応援の言葉を背中に受けて、潜入するための工房船が停まっている飛行場へ向かった…………
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