英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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第48話
~マノリア村宿酒場・白の木蓮亭~
「あ、クラム!」
「「先生!」」
宿屋の部屋に姿を現したクラムとテレサにティアやプリネ達と談笑していたマリィ達はクラムやテレサに駆け寄った。
「クラム!こんな状況でなんで、先生を困らせているのよ!」
「……ぐ……」
マリィの言葉にクラムは言葉が詰まった。
「いつもいつもツーヤお姉ちゃんといっしょに言ってるじゃない!もっと大人しくしなさいって……大体、あんたは……」
「そこまでにしておきなさい、マリィ。」
さらにたたみかけるように口を開いたマリィをテレサは諭した。
「先生……でも……」
「今回の件はクラムも反省しています。だから許してあげてくれないかしら?」
「………はーい。」
テレサの言葉にマリィはまだ納得のいかない表情で答えた。そしてツーヤといっしょにプリネ達と会話していたミントはエステルに気付いた。
「……ママ!」
「へ!?」
ミントはエステルを見ると嬉しそうな表情でエステルに駆け寄り、抱きついた。抱きついたミントをエステルは受け止めて驚いた。
「ようやく会えたね、ママ!ミント、いつかママがミントを迎えに来てくれると信じてたよ!」
「………え~っと、ミントちゃんだっけ。一つ聞いていいかな?」
「何?」
「そのママっていうのは一体どういう事かな?」
「?ママはママだよ?」
エステルの言葉にミントは可愛らしく首を傾げて答えた。
「でもあたしとミントちゃんは初対面だよね。ミントちゃんはどうして、あたしをママだと思ったのかな?」
「それはママから、ママの優しい香りがするからだよ!」
「いや、全くわかんないですけど……」
ミントの説明にエステルは苦笑した後、どうするべきか迷った。そこにプリネが話しかけた。
「エステルさん、ちょっといいですか?」
「あ、プリネ。どうしたの?」
「ミントさんがエステルさんの事をお母さんと呼んでいる件ですが……」
「え、何かわかったの?」
プリネの言葉にエステルは以外そうな表情で聞き返した。
「はい。……ツーヤちゃん。」
「……はい、ご主人様。」
プリネに呼ばれたツーヤは静かにエステルの前に来た。
「え~っと……あなたは確かツーヤちゃんだっけ?」
「はい、私とミントちゃんは初めて出会ってから10年間ずっといっしょにいる親友です。」
「そっか。それでミントちゃんがあたしをママって呼ぶ事なんだけど……」
「その事も含めて、先生やクロ―ゼさんやみんなに私とミントちゃんの事を話します。」
「ツーヤちゃん?もしかして記憶が戻ったんですか!?」
ツーヤの言葉にクロ―ゼは驚いて尋ねた。
「………いえ。ただ、私とミントちゃんの正体は何なのかを思い出せました。」
「2人の正体……?あなた達は”闇夜の眷属”ではなかったのですか……?」
「……ごめんなさい先生……いつかご主人様が現れるまでは黙っておこうと思ったんです。」
テレサの質問にツーヤは気不味そうな表情で答えた。
「ご主人様?ツーヤ、あなたはもしかして誰かに仕えていたのですか?」
「いいえ。……私達の正体ですが……私とミントちゃんはドラゴンです。」
「ド、ドラゴン!?ミントちゃんとツーヤちゃんが!?……全然そうには見えないんですけど……」
ツーヤの言葉にエステルはミントとツーヤの容姿を見てヴァレリア湖で会った水竜の事を思い出しながら、驚いた。
「事実です。……最も私やミントちゃんは今まで”パートナー”がいませんでしたから成長もせず、竜化もできなかったんです。」
「”パートナー”って?」
「私達ドラゴンには生まれつき、共に生きるべき存在がいます。それが”パートナー”です。ドラゴンにとって”パートナー”の存在は不可欠で、”パートナー”がいないと魔力の供給もできない上満足に戦えないんです。誰が”パートナー”かは私達が直感的に感じられるのです。
いつもミントちゃんは私に自分にとっての”パートナー”とは何か嬉しそうに話してくれたんですが……”パートナー”とは自分と最も親しい存在……つまりミントちゃんにとっては親だったのです。」
「………そうだったんだ……あれ、そう言えばツーヤちゃんはプリネの事を”ご主人様”って言ってたよね?それって……」
ツーヤの説明に驚きつつ納得したエステルは先ほどのツーヤがプリネに対してどう言ってたかを思い出して尋ねた。
「はい、こちらの方が私にとっての”パートナー”……つまりご主人様です。」
「……私も最初、ツーヤちゃんの説明を聞いて驚きました。まさか、このような”竜”がいるとは思いませんでした。」
「うむ、世界は広いな。余もプリネのように自分の竜を見つけたいものだ!」
「エヴリーヌは友達でカファルーがいるから別にいいけどね。」
プリネの言葉にリフィアは頷き、エヴリーヌは興味なさげに言った。
「…………それで2人とも。”パートナー”を見つけたあなた達はこれからどうするのですか?」
テレサは静かにミントとツーヤに尋ねた。
「そんなのもちろん、ママといっしょにいるに決まっているよ!今まで甘えられなかった分、い~っぱい、甘えていいよね?ママ!」
「え!?え~っと………」
「私もミントちゃんと同じ答えです、先生。ようやくご主人様に会えたのですから、もちろんご主人様と共に生きていきます。……今までこの日をどんなに待ち侘びたことか………」
「ツーヤちゃん………」
ミントとツーヤの言葉にエステルは戸惑い、プリネはどうするべきか迷っていた。
「何を迷っている、プリネ。ツーヤはお前を慕い、共にいたいと言っているのだから受け入れてやればいいではないか。」
「お姉様。ですが………」
「……リフィアさん、あなたの言う事は最もですがもう少し周りを見てから言ったらどうですか?」
「む………?」
ティアに言われたリフィアは周りを見ると、ミントとツーヤを孤児院に住む子供達やクロ―ゼが不安げに見ていた。
「ミント姉ちゃんにツーヤ姉ちゃん……どっか行っちゃうの……?」
「……………………」
「クラム。…………」
「マリィ。………みんな。」
「「………グス………お姉ちゃん達、どっか行っちゃやだよ………」」
クラムは今にも泣きそうな表情でミントやツーヤを見て、マリィは何も言わず悲しげに黙って2人を見て、ポーリィやダニエルは泣きべそをかきはじめた。子供達の表情に明るかったミントもツーヤと同じように気不味そうな表情をした。
「……………すまなかった。テレサ殿達の気持も考えず余はなんという自分勝手な事を……」
「……いえ、いいのです。リフィアさんと仰いましたね?私もあなたと同じ考えですから気にしないで下さい。」
「先生!?どうしてそんなことを……!」
テレサの言葉にクロ―ゼは信じられない表情になり、テレサに詰め寄った。
「……子はいずれ巣立つものです。2人はそれが少し早かっただけです。……いつかクラム達も巣立つ時が来ることはあなたも理解していますね?ミントとツーヤは今がその時だと私は思うのです。それにクロ―ゼ、あなたが小さい頃から知っているこの子達は
もう、エステルさん達やあなたと同じくらいの年である事はあなたもわかっているはずです。」
「………それは…………」
テレサの言葉にクロ―ゼは何も言えず黙った。
「エステルさん、プリネさん。」
「は、はい。」
「何でしょうか。」
テレサに呼ばれた2人は姿勢を正した。
「………2人のこれからの未来をあなた達に託してもよろしいでしょうか……?」
「そ、それは………」
「……………」
「ママ……」
「………ご主人様………」
テレサの問いにエステルやプリネは即答できず黙り、その様子を見たミントやツーヤは不安げな表情をした。
「…………あの、少しだけ考える時間を貰ってもよろしいでしょうか?答えは近い内、必ず出しますので。」
「……あたしもプリネといっしょで時間を貰ってもいいですか?遅くてもルーアンを発つまでには必ず答えは出します。」
「………わかりました。ミント、ツーヤ。あなた達もいいですね?」
「………はい。」
「……わかりました、先生。」
そしてエステル達はルーアンに戻るついでに戦えないティアをルーアンまで護衛しながら、ルーアンに向かった………
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