英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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第34話
プリネ達に人質の安全を任せたエステル達はさらに奥へと進み、終点らしき部屋を見つけ、そこから聞き覚えのある声が聞こえてきたので足を止めた。
~空賊団アジト内~
「ここは……」
「うん……ここが首領の部屋みたいだね。」
エステルの言葉を続けるようにヨシュアは言った後、エステル達は様子を見てから踏み込むことにした。
「ぐふふ……女王が身代金を出しやがるか。これで貧乏暮らしともオサラバだな。」
空賊団の首領3兄妹の一番上の兄、ドルン・カプアがこれからのことを考え、危険な瞳で笑っていた。
「兄貴、油断は禁物だぜ。身代金が入るのはこれからだ。」
「うん、まずは人質解放の段取りを決めなくちゃね。」
すでに勝利気分の兄にキールとジョゼットがそれぞれの意見を言った。
「人質解放?おいおい、どうしてそんな面倒くさいことをしなくちゃならねえんだ?」
「え……」
しかし不思議そうに言うドルンの言葉にジョゼットは呆けた。
「そんなもん、ミラだけ頂いて皆殺しにすりゃ済む話じゃねえか。生かしておく必要はねえだろう。」
「ド、ドルン兄……?」
「じょ、冗談キツイぜ……」
ドルンの予想外の言葉にキールやジョゼットは信じられない表情をして焦った。
「連中には俺たちの顔をしっかり覚えられてるんだぜ?リベールから高飛びしても足がつくかもしれねえだろうが。」
「だ、だって年寄りとか小さな子供だっているんだよ?本当に殺しちゃうつもりなの!?」
人質達を殺す気でいるドルンにジョゼットは必死で反論して、引き止めた。
「まったく、おめぇときたらいつまで経っても甘ちゃんだな。ママゴトやってんじゃねえんだぞ?」
「そ、そんな……ボク……」
しかしドルンは妹の言葉に全く耳を貸さず、それがわかったジョゼットは愕然として項垂れた。
「兄貴……悪いが俺もそれだけは反対だ。そこまでやっちゃあ混沌の女神はわからないが、空の女神や癒しの女神だって許しちゃくれん。それに……血塗れのミラで故郷を取り戻したくないんだよ。」
キールも必死でドルンを真剣な表情で引き止めた。
「…………………………………………キールよ、おめぇ……いつからそんな偉くなったんだ?」
「えっ……」
静かに怒りを抑えるようなドルンの言葉にキールは呆けた。
「なめた口叩くんじゃねえ!」
そしてドルンは手元にあった瓶をキールに投げつけた。
「がっ!」
「キール兄!?」
瓶に当たったキールは呻き声を上げてうずくまり、ジョゼットはキールの元に駆け寄った。
「がはは、なにが故郷だ!せっかく大金が入るのに今更あんなしみったれた土地を取り戻してどうするつもりだよ?ハッ、南のリゾートあたりで豪遊するに決まってるだろうが!」
「なん……だって……?」
高笑いで言うドルンの言葉にキールはうずくまったまま、信じられない表情でドルンを見た。
「それでミラが無くなったら、また飛行船を強奪すりゃあいい。それが、これからの『カプア空賊団』ってやつだぜ。ぐわーっはっはっはっ!!」
「ドルン兄……どうしちゃったの……?本当にどうしちゃったのさぁ!」
あまりにも変貌した兄にジョゼットは叫んだ。
「お取り込み中のところを悪いんだけどさぁ……兄妹ゲンカは後にしてくんない?」
そこにエステル達が武器を持って突入した。
「あ、あんたたち!?」
「遊撃士どもっ!?ど、どうしてこの場所に……」
エステル達の姿を見たジョゼットとキールは信じられない表情をした。
「フッ……薄情なこと言わないでくれ。キミたちがあの船で運んでくれたんじゃないか。」
「バ、バカな……何をふざけたこと言ってる……………………まさか。」
オリビエの言葉に最初は理解できなかったキールだったがある考えが浮かび、その考えを肯定するようにエステルが笑いながら続けた。
「琥珀の塔の前に飛行艇を泊めてたでしょ?スキを見て忍び込んで船倉に隠れてたってわけ。いわゆる密航ってやつね♪」
「ず、ずっこいぞ!この脳天気オンナっ!!」
「だ、誰が脳天気よ!この生意気ボクっ子!!」
ジョゼットの言葉にムッとしたエステルは言い返した。
「な、なんだと~っ!?単純オンナ、暴力オンナ!」
言い返されたジョゼットも黙っていられず、言い返した。
「あ、あんですって~!?」
「はいはい。口ゲンカはそのくらいで。……人質は解放したし他のメンバーも倒しました。残るは、あなたたちだけです。」
程度の低い口喧嘩に呆れたヨシュアは仲裁した後、遊撃士として宣言した。
「遊撃士協会の規定に基づき、あなたたちを逮捕・拘束するわ。逆らわない方が身のためよ。」
「うう……」
「くっ、くそー……」
シェラザードの言葉にキールとジョゼットは呻いた。
「キール、ジョゼット……。てめぇら、何やってやがる?」
「す、すまねぇ兄貴……」
「ゴメンなさい……」
ドルンの責めるような言葉に2人はすまなさそうな表情で謝った。
「ぐふふ、まあいい。大目に見といてやるよ。こいつらをブッ殺せば、それで済むわけだからなぁ。」
「あ、あんですって~っ!?」
ドルンの物騒な発言にエステルは怒って叫んだ。
「がはは、馬鹿な連中だぜ!その程度の人数でこのドルン・カプアを捕まえようとするとはなぁ!」
ドルンは高笑いをしながら机に飛び乗って、大砲のような物を取り出しエステル達に向けて撃った!
ズガーーーン!!
「きゃあ!?」
「導力砲を軽々と……!」
ドルンの攻撃にエステル達は驚いて回避した。
「がはは!逃げ惑え!!」
ドルンは高笑いをしながら狭い室内の周囲に導力砲を乱射しまくった!砲弾は爆発し、爆発によってできた煙は室内を充満してエステル達の視界を奪った。
「くっ……!」
「まずい……!これじゃあ、近づけない!」
導力砲の攻撃を回避しながら、シェラザードは悔しそうな表情をし、ヨシュアはどうするか迷った。
「ちょっ……兄貴!!」
「やりすぎだよ!ボク達まで巻き添えになっちゃうよ!!」
一方、我を忘れて味方をも巻き添えにする攻撃にキールとジョゼットは悲鳴を上げて、諌めようとしたがドルンは聞く耳を持たなかった。
「くっ……こんの……」
現状を打破するためにエステルは魔術を使おうとしたが
「がはは!隙だらけだぜ!!」
「!!」
「エステル!!」
動きが止まったエステルを逃さなかったドルンが導力砲をエステルに向け、それを見たエステルは驚いて硬直した。ヨシュアは叫んで警告したが、警告は空しく硬直した状態のエステルに向かってドルンは導力砲を撃った!
「喰らえ!!」
「やばっ……!キャッ!?」
ドルンの砲撃を避けようと動いたエステルだったが、足が縺れてその場で転んだ。迫りくる砲弾にエステルは目をつむった。その時、エステルの後ろから砲弾と同じくらいの火の玉が何個も飛んできて、砲弾にぶつかり火の玉が砲弾を押し返した後、引火した砲弾がドルンの目の前で爆発した!
ドガーーーーーン!!
「ぐわぁ!?」
目の前で起こった爆発にドルンは怯んだ。ようやく収まったドルンの砲撃に部屋内は静かになり、煙が晴れた。そして煙が晴れると、なんと今までエステルを観察した狐らしき生物がエステルを守るように、そして戦闘ができるように飛び掛かる態勢でエステルの前にいた。
「…………………………………」
「え……!?」
突如目の前に現れた狐らしき生物にエステルは驚いた。
「ほう……見事な毛並みな狐だね。」
「いや、狐にしては体があまりにも大きすぎます!それに尾が……!」
いつの間にか現れた狐らしき生物にオリビエは感嘆の声を上げたが、ヨシュアは体の大きさや何本もある尾を見て狐であることを否定した。
「考えるのは後にしなさい!首領達を拘束するわよ!!」
「う、うん!!」
「わかりました!」
「フッ……それでは反撃開始だ!」
状況を見て好機と判断したシェラザードの言葉にエステル達は再び武器を構えた。
「グッ……獣ごときがなめた真似をしてくれたじゃねえか!?キール、ジョゼット!さっさと得物を取りやがれ!遊撃士共々血祭りにあげるぞ!!」
「う、うん!」
「ほどほどにしてくれよ、兄貴!」
ドルンの言葉にジョゼットは導力銃を、キールは長剣のように長い短剣を構え、エステル達に襲いかかった!
ついに始まった空賊――カプア一家との対決はエステル達の優勢だった。導力砲を軽々と使う唯一やっかいなドルンには狐らしき生物が周囲を素早く駆け回り、時には懐に飛び込んで鋭い爪で攻撃し、さらには火の球を口から吐き撹乱したのでエステル達はそれぞれ首領達の相手をできた。
「くっ……こんのぉっ!」
「ふっ、甘いよ!」
「いたっ!?」
シェラザードに銃で攻撃しようとしたジョゼットだったが、オリビエの精密な射撃のクラフト――スナイプショットに銃を持っている手を打たれ、導力エネルギーの弾を受けたジョゼットは痛みで銃を落とした。
「戦闘中に武器を落とすなんてまだまだね!喰らいなさい!」
「あう!?」
オリビエの攻撃によってできた隙を逃さずシェラザードは鞭による鋭い一閃の攻撃をするクラフト――シルフェンウィップで攻撃した。鞭による攻撃にジョゼットはさらに呻いて後退した。
「ちっ……これでも喰らえ!」
「遅い!絶影!」
一方キールはヨシュアに小型の爆弾を投げたが、回避されいつの間にかキールの横を駆け抜け、駆け抜ける際に攻撃をされた。
「ぐっ!?」
ヨシュアの神速の攻撃にキールは呻いた。そこに後退したジョゼットがキールの背にぶつかった。
「キール兄、どうしよう!こいつら……強すぎだよ!」
「泣き言を言うな!今はこいつらをなんとかして振り切るぞ!」
泣き言を言うジョゼットにキールは渇を入れたが、キール自身勝てる気がしなかった。キールとジョゼットが2人揃って纏まっているのを見たオリビエは特殊な銃弾に口づけをした後、それを銃に込めて撃った!
「お見せしよう!美の真髄を!!ハウリングバレット!!!」
「きゃぁぁぁぁ!!??」
「ぐわぁぁぁぁぁ!!??」
オリビエの放った特殊な銃弾によるエネルギーは普通の導力銃が放つエネルギーの数倍の大きさはあり、キール達に命中した後エネルギーが爆発した!そしてオリビエの強力な攻撃にキールとジョゼットは膝をついて、立ち上がれなかった。
「お休み、子猫ちゃん達♪」
キールとジョゼットを2人纏めて倒したオリビエは明後日の方向を見て、勝利のセリフを言った。
「チッ……役に立たねえ奴らだぜ。」
一方弟と妹の敗北を横目で見たドルンは舌打ちをした。
「ちょっと!あいつら、アンタの兄妹でしょ!?なんでそんなことが言えるの!?」
キール達のことを酷く言うドルンにエステルは怒って叫んだ。そしてエステルの怒りにドルンは嘲笑して、さらにエステルが怒るようなことを言った。
「ハッ!あんな甘ちゃん共はカプア一家の恥だ!本当のことを言って何が悪い!」
「なっ!?こ、こんのぉ~!」
さらに怒ったエステルは体を震わした。そこに狐らしき生物がエステルの横に並んだ。エステルはドルンを撹乱していた狐らしき生物の動きや、火の玉を吐いたことを思い出し、なんとか協力をしてもらおうと話しかけた。
「狐さん!あいつをブッ飛ばすために力を貸してちょうだい!お願い!」
(………”我が友”に似る少女よ。……我は狐ではない。)
「え!?」
突如頭に響いた聞き覚えのない声にエステルは驚いて、狐らしき生物を見た。
「今のは………もしかしてあなた!?狐じゃないとしたら、一体何?」
(我はサエラブ!”焔の仙狐”様の使いにして誇り高き”狐炎獣”!少女よ。本来なら我は我自身が認めた者にしか力を貸さぬが、お前はどことなく”我が友”に似ている……
我の頼みを後で聞くならば、今はお前の指示に従おう……)
「わかったわ!あたしでできることならなんでもするわ!だから今は力を貸して!」
(……よかろう。)
エステルの言葉にレスぺレント地方の遥か南――セテトリ地方のある火山に住み、近くの町――ユイドラに住む人々からは聖獣扱いされている焔の幻獣サエラブは口元を僅かに笑みに変えて、エステルに協力することを伝えた。
「あ、それとあたしの名前はエステルよ!これからはちゃんと名前で呼んでよね、サエラブ!」
(フッ……いいだろう。我があの正気でない人間の動きを止めている間に、お前が勝負を決めるがいい……行くぞ!)
「オッケー!」
「さっきから一人でごちゃごちゃと何を言っている!死ねぇ!」
エステルとサエラブの念話がわからず、エステルの独り言と思い業を煮やしたドルンは再び導力砲を構えたが
(”我が友”の妻が放つ”魔導砲”と比べれば砲撃の瞬間、速さが遅すぎる上威力もなさすぎる!自らの武器で傷つくがよい!)
ドルンの動作を見て、サエラブは口を開き再び火の玉を吐いた。火の玉はドルンの持つ導力砲の砲口に入り、砲弾に引火させて、引火した砲弾は導力砲の中で小規模な爆発をした!
「ぐわぁ!?」
自らの武器による爆発によってドルンは怯み、傷ついた。
(今だ、行け!)
「うん!」
ドルンが怯んでいる隙を逃さず、サエラブの念話に頷いたエステルは棒を構えて強烈なクラフトを放った!
「これで決める……ハァァァァァァ!烈波!無双撃!」
「ぐわぁぁぁぁぁ!!??……グハッ!?」
エステルの強烈なクラフトを受けたドルンは吹っ飛ばされて、壁にぶつかり項垂れて立ちあがらなかった。
「よーし!上出来!」
立ち上がらなくなり、気絶したドルンを見て、エステルは棒を自分の前で回転させた後、勝利のピースをした。
「つ、強い……。これが遊撃士か……」
「く、くっそ~……こんな奴らに負けるなんて~……」
ドルンをも倒し、自分達を完膚なきまでに敗北させたエステル達にキールは膝をつきながら諦め、ジョゼットは悔しがった。
「ふふん、思い知ったか♪」
自分を何度もバカにしたジョゼットが悔しがっているのを見て、溜飲が下がったエステルは胸をはって答えた。
「それにしても驚いたよ、エステル。意思の疎通ができない相手と連携するなんて……」
ヨシュアはエステルがサエラブと連携してドルンを倒したことを思い出し、感心した。
(……我をそこらの獣といっしょにするな、人間。)
「え……」
「ん?」
「なっ……今の声は!?」
サエラブの念話にヨシュア達は驚いて周囲を見回した。
「あれ?みんなもサエラブの声が聞こえるんだ。」
一方唯一サエラブの声を知っているエステルは不思議そうな表情をした。
「誰よ、そのサエラブって。」
知らない名前にシェラザードは首を傾げてエステルに聞き返した。
「さっきからシェラ姉達の目の前にいるじゃん。」
「え………ってまさか今の声って……!」
エステルの言葉から謎の声の正体がわかり、驚いたヨシュアはサエラブを見た。
(ふん。我は悠久の時を生きる誇り高き”狐炎獣”。契約をしなくとも念話をお前達に送ることなど容易いわ。)
驚きの表情のヨシュア達に見られたサエラブは気にしないようにした。
「……そんな誇り高く知恵がある存在が力を貸してくれるなんて本当にあんたには驚かされるわね……(ヴァレリア湖でも噂の水竜にも懐かれたらしいし、数年前に言ってたレナさんの冗談が現実になりそうね……)……まあいいわ。決着もついたし、大人しく降伏してもらうわよ。抵抗したりしたら……わかってるでしょうね?」
サエラブの事を一先ず置いて優先すべき事をするために、シェラザードは鞭をしごいてジョゼット達に微笑んだ。
「ひっ……やだ、勘弁してくださいっ!」
「トホホ……こんな終わり方ありかよ……」
シェラザードの微笑みにジョゼットは怖がって後ずさりをし、キールは悲壮な表情をした。その時気絶していたドルンが目を覚ました。
「……うーん……………あいたた……どうなってやがる。身体のあちこちが痛ぇぞ……なんで俺……導力砲なんざ持ってるんだ?…………はて?」
目を覚ましたドルンは壊れた導力砲を見て、首を傾げた。
「兄貴?」
「ドルン兄?」
理解できないことを言う兄にキールとジョゼットは不思議そうな表情でドルンを見た。
「おお、ジョゼット!ロレントから帰ってきたのか?こんな早く帰ってきたって事は、やっぱ上手くいかなかったんだな。」
「ふぇっ……?」
一方状況を理解していないドルンはジョゼットを見ると笑いだした。笑い出したドルンにジョゼットは驚いた。
「がっはっは、ごまかすな。まあ、これに懲りたら荒事は俺たちに任せておけよ。ちまちました稼ぎだが、なあに、気長にやりゃあいい。」
「ド、ドルン兄、何言ってるの?」
「あ、兄貴、しっかりしろよ。ジョゼットはとっくにロレントから戻ってきただろう。定期船を襲った直後に俺が迎えに行ったじゃないか?」
戦闘前と明らかに様子が変で、昔の事を言いだしたドルンに2人は焦り、笑っているドルンにキールが説明した。
「はあ?定期船を襲うだとぉ?なに夢みたいな話をしてやがる。そんな危ない橋、渡れるわけないだろうが。」
「………………………………」
「………………………………」
以前と言っていることが全然違うドルンに兄妹達は口が開いたまま言葉が出なかった。
(何言ってんの、コイツ?)
(うん……言い逃れじゃなさそうだけど……)
(……傀儡の術が解けて正気に戻ったか……)
一方エステルも訳がわからずヨシュアに聞いたが、ヨシュアもわからなかった。ドルンの状況をわかっていたサエラブは納得した。
「さっきから気になっていたんだが、この奇妙な連中は何者なんだよ?まさか新入りじゃねえだろうな?」
そしてドルンはエステル達を見て、キール達に尋ねた。
「残念ながら違うわね。あたしたちは遊撃士協会の者よ。」
「はあ!?な、何でこんな所に遊撃士がいやがるんだ!?」
シェラザードの言葉に驚いたドルンは大きな声で叫び、信じられない表情をした。
「ダメだこりゃ……ホントに忘れてるみたいね。」
「ハッハッハッ。面白い展開になってきたねぇ。」
ドルンの様子にエステルは呆れて溜息をつき、オリビエは楽しそうに笑った。
「忘れていようといまいと、逮捕することに変わりないわ。定期船強奪、人質監禁、身代金要求など諸々の容疑でね。」
「定期船強奪……人質監禁、身代金要求だと!?キール!ジョゼット!こ、こりゃあ何の冗談だっ!」
シェラザードに睨まれたドルンは顔を青褪めさせて、兄妹に真実かどうか聞いた。
「ドルン兄ぃ……」
焦っているドルンにジョゼットは呆れた。
「聞きたいのはこっちだよ……だが、兄貴のおかげで……チャンスができたぜ!」
キールも呆れたが、いつのまにか隠し持っていた発煙筒を床に叩きつけた。叩きつけられた発煙筒は部屋中の視界を奪った。
「ああっ!」
「しまった!2度も同じ手に……」
「お、おい……!」
「キール兄!?」
「話は後だっ!とにかくここを脱出するぞ!」
視界を奪われている間になんとキールが2人の手を引いて、部屋から脱出した。
「ごほごほ……け、煙がノドに……」
(不覚……!我としたことがこんな手に引っ掛かるとは……)
発煙筒の煙にオリビエは咳こみ、サエラブは自分の不甲斐なさを呪った。
「早く部屋から出ましょう!」
ヨシュアの言葉に全員が部屋から出た。
(くっ……あの戦いが終わって数年……しばしの平和で危険を感じる感覚が鈍ったか……!)
「あいつら~。どこにいったの!?」
「上だ……飛行艇で逃げるつもりだよ!」
あたりを見回してドルン達を探すエステルにヨシュアは答えを言った。
「あ……!」
「ここまで追い詰めて取り逃がすわけにはいかないわ!全力で追いかけるわよ!」
「うん!!」
「了解です!」
シェラザードの言葉にエステルとヨシュアは頷いた。そこにオリビエが咳込みながら部屋から出て来た。
「ごほごほ……た、助かった……ああ、何たる悲劇!ボクのデリケートな鼻腔が……」
「ほら、オリビエも!急がないと置いていくわよ!」
「あわわ……ま、待ってくれたまえ!」
咳込んだ後わざとらしく悲観をくれていたオリビエだったが、エステルに急がされ慌ててエステル達と共に走って行った………
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