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英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)

作者:sorano
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第21話

~ボース市長邸~



メイベル市長にモルガンから得た情報を報告しに来たエステル達だったが、市長邸の前でリラとエステル達が以前護衛した新聞記者とカメラマン――ナイアルとドロシーがいた。



「なあ、お譲ちゃん。頼むからそこを通してくれよ。市長から一言、コメントをもらうだけでいいんだからさ。」

「そうそう、ついでに写真も撮っちゃいますけど~」

「そう仰られましても……市長は多忙を極めておりまして。アポイントメントのない方はお引き取り願っているところです。どうかご了承ください。」

2人は市長との面会を希望していたがリラはあっさり断った。

「そこを何とか!これほどの大事件なのに判ってることがロクにねぇ……。読者に何か伝えてやりたいんだ!」

「ですが……」

断っても食い下がらないナイアルにリラは困った表情をして、内心どうするべきか迷っていた。



「そうそう、そうですよー。噂の美人市長が表紙を飾れば部数倍増も間違いナシですし~」

「………………………………」

しかしドロシーの言葉を聞いて何かあると思ってリラは黙った。

「こ、こらドロシー!なに失礼なこと言ってやがる!」

ドロシーの言葉にナイアルは慌てた。

「え、ナイアル先輩が言ったんじゃないですかぁ?ネタがないんだったらメンフィル大使館の美女達を取材できなかった代わりに、美人市長を客寄せのアイドルに仕立てて紙面を稼いじまえーって。」

しかしドロシーは場を悪化させるかのように市長邸に来る前にドロシーにしか言っていないことを言った。

「わ、バカッ!」

「………………………………………………………………………………………………」

ナイアルはドロシーを制したが時既に遅く、リラは無言でナイアル達を見ていた。



「あ、あの、メイドさん?」

リラの様子をおかしいと思ったナイアルは恐る恐る尋ねた。

「ずいぶん面白いお客様ですね……。お2人の話は、出来るだけ詳細にメイベル市長に伝えておきますので。今日のところはお帰りください。」

「ま、待ってくれ!これはちょっとした誤解なん、」

完全に追い返すつもりのリラになんとか誤解を解こうとしたナイアルだったが

「お・帰・り・下・さ・い」

「はい……」

リラが有無を言わさず言ったのでナイアルは肩を落として諦めた。

「あれ、美人市長の写真、撮らなくていいんですかぁ?」

さらにドロシーは空気を読まないかのごとく、ナイアルに質問した。

「頼む……頼むから……これ以上喋らないでくれ……」

「セ、センパーイ!待ってくださいよ~!」

ドロシーの言葉にナイアルはさらに疲れすごすごと市長邸から離れ、ドロシーもナイアルを追うかのように市長邸を離れて行った。



「ふう………………あら?」

ナイアル達を追い返したリラは安堵の溜息を吐いた後、エステル達に気付いた。

「こんにちは、リラさん。」

6人を代表してエステルはリラに挨拶をした。

「まあ、ブレイサーの皆さん。ハーケン門からお戻りになったのですか?」

「うん、まーね。ところで今の人たちって……」

ナイアル達がなぜ市長に会いに来たのか気になりリラに聞いたエステルだったが、

「不届き者です。」

「へ……」

リラの言葉に目を丸くした。



「お嬢様を利用しようとする不逞(ふてい)の輩だと申し上げたのです。私の目の黒いうちは指一本たりとも触れさせません。」

「あ、あはは……そう」

「し、仕事熱心なんですね……」

リラの仕事ぶりにエステル達は苦笑した。一方リフィア達はリラの仕事っぷりを小声で評価していた。

(ほう……あのリラとやら中々の手際じゃな。)

(フフ、そうですね。……そう言えば今の方達、イリーナさんに追い返されてた人達じゃありませんでしたっけ?)

(言われてみればそうじゃな?エヴリーヌも覚えておるか?)

(………お、思い出したくない。)

(エヴリーヌお姉様?)

微妙に震えているエヴリーヌにプリネは首を傾げた。



実はエステル達に護衛されたナイアル達はその後メイベル市長と同じように客寄せ用にペテレーネやメンフィルの武官達に真面目な記事を書く代わりに、ペテレーネ達に直接取材をさせてもらおうと大使館を訪ねたのだが、イリーナが対応したのだ。最初はナイアル達の言い分を真面目に聞きどうやって断ろうかと思案していたイリーナだったのだが、ドロシーが言った「そうそう、美人で永遠に年をとらないと言われる噂の闇の聖女様や美女揃いのメンフィルの武官の方達を表紙に飾れば部数が数十倍増間違いナシですよ~」と言う余計な言葉でイリーナは固まり無表情になったのだ。それに慌てて弁明したナイアルだったがさらにドロシーが闇の聖女の娘や次期皇帝も容姿淡麗という噂でペテレーネやカーリアン達と同時に載せればさらに売上が上がるなどと場を悪化させる言葉を言い、それを横で聞いていた門番の兵達もナイアルとドロシーを睨み、それに気付いたナイアルは誤解を解こうとしたが時すでに遅く、命の恩人であるプリネや自分を励ましてくれたリフィア達に強い感謝と高い忠誠心を持つイリーナは彼女達を下らない紙面に載せまいと笑顔で断ったのだ。なんとか食い下がろうとしたナイアルだったのだが、誰もが見惚れるような笑顔でありながら迫力のあるイリーナの笑顔に負けすごすごと引き下がったのだ。それを隠れて見ていたプリネ達はイリーナが戻って来た後誉めて感謝したのだが、エヴリーヌは自分に向けられていないにも関わらずイリーナの迫力に恐怖感を覚え、人知れずイリーナを怒らせないようにしようと誓ったのだ。ちなみに同じようにナイアル達とイリーナのやり取りを隠れて見守っていたリウイは「そういう所まで受け継がれなくていいだろう……」と呟き冷や汗をかくと同時にやはり転生したイリーナだと感じ、新たに見せたかつてのイリーナの片鱗を見て複雑な思いになったのだ。



「それが私の務めですから。さ、皆さんはどうぞ中へ。市長がお待ちになっています」

そんなリフィア達の様子に特に気にも止めずリラはメイベルの執務室に案内した。





~ボース市長邸・執務室~



「市民からの苦情の処理……ボース上空の飛行制限によるマーケット商品の納入遅れ……下水道設備の修理について……女王陛下への贈答品の選定……アンセル新道での魔獣被害……一時的な陸路でのメンフィルとの取引の詳細………」

メイベルは次々に問題になっていることが書かれてある書類を読み上げていってどうするか考えた。

「もう~、いつになったら書類の処理が終わるんですのー!」

しかし、あまりの多さに悲鳴を上げた。

「あのー……」

そこにリラに案内されたエステル達が入って来て、エステルが恐る恐る話しかけた。

「あ、あら……?オホホ、皆さん。戻っていらしたんですか?」

それに気付いたメイベルは気不味そうな表情をして答えた。

「お忙しそうですけど……お邪魔してもよろしいですか?」

「コホン、もちろんですわ。モルガン将軍からの情報ですね?早速、伺わせていただきます」

ヨシュアの言葉にメイベルは一度咳払いをすると、報告を聞く姿勢になった。そしてエステル達はモルガンから得た情報を報告した。



「……ご苦労様です。大体の状況は飲み込めました。空賊団によるハイジャック。そして身代金の要求ですか……。思った以上に深刻な事態ですわね。」

「遊撃士だってバレなければ、他にも掴めたと思うんだけど……」

メイベルが話を聞いて言った後、エステルは申し訳なさそうな表情で肩を落として呟いた。

「いえ、墜落事故でないことが判明しただけでも助かりましたわ。これでボース市としても対策が立てられるというものです。早速、市民へのアナウンスと乗客の家族への対応を考えないと……」

メイベルはそんなエステルを励ますようにお礼を言った。

「大変ですね……ただでさえお忙しそうなのに。」

「ふふ、それが市長の責務ですわ。ところで、犯人の正体は明らかになったわけですが……。引き続き、事件の調査と解決をお願いしてもよろしいでしょうか?」

ヨシュアの労いにメイベルは笑って答え、調査の続行を嘆願した。



「もちろん、そのつもりよ。あたしたちも例の空賊団とは一度やり合った因縁があるからね。遊撃士協会のメンツに賭けて、王国軍だけに任せてはおけないわ。」

「うん、そうだよね!父さんのこともあるし、今度こそ決着をつけなくちゃ!」

「………………………………」

シェラザードとエステルは意気込んだがヨシュアだけは黙っていた。

「ん、どうしたの?難しいカオしちゃって……」

ヨシュアの様子に気付いたエステルはヨシュアに尋ねた。

「うん……色々と考えてみたんだけど。どう考えても信じられなくてさ。」

「信じられない?」

ヨシュアの言った言葉に理解できないエステルは聞き返した。

「あの父さんが空賊に遅れを取ったことだよ。ロレントに現れた連中だけで実力を判断するのも何だけど……」

「確かにそれは言えるわね。あの程度の集団だったら、先生なら軽くあしらえるはずよ。」

ヨシュアの言葉にシェラザードも頷いて同意した。

「もー、ヨシュアもシェラ姉も父さんを買いかぶりすぎだって。確かに、けっこう腕は立つけど、集団相手じゃキツイと思うし……」

2人の様子にカシウスの実力を知らないエステルは笑って否定した。



(リフィアお姉様、確かエステルさんのお父様って……)

(うむ、かの「剣聖」だ。他者の強さに厳しいファーミシルスも評価していた男が賊ごときで遅れをとるとは確かに思えんな……)

一方プリネとリフィアは3人の会話から疑問に思ったことを小声で会話した。



「あの、ちょっと宜しいかしら?エステルさんたちのお父様も例の船に乗っていらっしゃったの?」

「あ、話してなかったっけ……。恥ずかしながらそうなの。しかも遊撃士っだったりして。カシウス・ブライトっていうんだけど……」

メイベルの疑問にエステルは恥ずかしそうに答えた。

「カシウス・ブライト……今、そうおっしゃいまして!?」

「え……うん??ひょっとして知り合いとか?」

カシウスの名を聞いてメイベルは驚いて立ち上がり、それに驚いたエステルはたじろいだ。

「直接の面識はありません。ですが、お話は伺っていますわ。そう……そうだったのですか……。これはひょっとして軍との交渉に使えるかも……」

「市長さん?」

独り言を言いだしたメイベルにエステルは首をかしげて言った。

「……失礼しました。皆さんの胸中、お察ししますわ。事件の解決に役立つのなら、どのような協力でも惜しみません。何かご入用になった時には遠慮なく申しつけてくださいませ。」

エステルの言葉にハッとしたメイベルは気を取り直して全面的な協力の言葉をエステル達に言った。



その後市長邸を出たエステル達は今後の方針を話しあい、エステルの提案で新聞記者であるナイアル達が何か情報を持っていないか聞くため、

エステル達は事件の手掛かりのためにナイアル達を探し始めた………… 
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