英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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第20話
一方リフィア達と別行動にしたエステル達はハーケン門に向かい、モルガン将軍からブレイサーであることを隠して情報をある程度、引き出せたのだがエステルがうっかり口を滑らせてしまったせいで、エステル達がブレイサーと分かるとモルガンは激昂し、エステル達を攻め、そのことに反応したシェラザードも未だに事件の解決への道を見つけていないことと、異国の軍、メンフィルのほうが優秀で協力的であることを持ちだし、そのことでモルガンをさらに怒らせ、今にも喧嘩をしそうな雰囲気であったが、ハーケン門の食堂で出会ったエレボニア帝国人の旅行者、オリビエ・レンハイムの突拍子のない演奏でそれぞれ拍子がぬけ、モルガンは取り巻きの兵を連れて持ち場に戻った。そしエステル達はギルドや市長に報告するため、モルガンとの仲裁をしてくれたオリビエをついでに護衛しながらボース市へ向かった。そしてボース市でオリビエと別れ、エステル達は一端ギルドに報告し、リフィア達と合流するためにギルドに向かった。
~遊撃士協会・ボース支部~
「ただいま~」
「おお、戻ってきたか。」
ルグランは戻ってきたエステル達に気づいた。
「あれ?リフィア達は?」
ギルドで待っているはずのリフィア達の姿がなくそれを不思議に思ったエステルはルグランに聞いた。
「あの3人なら今は上で休憩しとる。……実はお主たちにも伝えることがあっての。」
「なんでしょうか?」
ルグランの言葉が気になりヨシュアは聞き返した。そしてルグランはプリネ達にした説明をエステル達にもした。
「……ということじゃ。2人ともあまりあの3人を頼りにするんじゃないぞ?」
「……確かにその通りね。あの3人の強さは私達とは次元が違うわ。アイナの考え通りずっとプリネさん達に頼っていたらあんた達が成長しなくなってしまうわね。特にエステル、わかってるわね?ただでさえあんたにはパズモや魔術という反則技があるんだから、自分がどれだけ恵まれているかわかっているでしょう?」
ルグランの説明にシェラザードは頷き、エステルに念を押した。
「それぐらいわかっているわよ、シェラ姉。……でもリフィア達と仕事が毎回できないのはちょっと残念だけど、ルグラン爺さんの言う通りだわ!ヨシュアもいい?」
「了解。……というか基本的に気をつけるのは依頼を受けたエステルなんだけどね……」
エステルの言葉にヨシュアは苦笑して答えた。
「……それにしても、猛者だらけの闇夜の眷属達を束ねる王族の血は伊達ではなかったようじゃの……」
「……というと?」
リフィア達の強さに驚きを隠していないルグランにヨシュアは気になって聞いた。
「うむ……遊撃士として必要な最低限の戦闘能力を確かめるために、アネラスにはエヴリーヌ嬢ちゃんと。グラッツにはリフィア嬢ちゃんと、アガットはプリネ嬢ちゃんと手配魔獣を倒しに行ってもらったんじゃが、結果を聞いて驚いたわい……まず、エヴリーヌ嬢ちゃんは弓矢で目にも止まらぬ速さで次々と手配魔獣や配下の魔獣を倒し、帰り道で出会った魔獣も魔術で一撃だったそうじゃぞ……」
「………僕も彼女の戦いをボースに向かっている途中の魔獣との戦闘で少しだけ見ましたが、魔術も当然のことながら彼女の弓技は誰にも真似はできないでしょうね。」
「そりゃあ、そうでしょう。彼女は”魔神”なんだから私達とは体の創りからして違うし、あの外見で騙されてしまうけど私達の何千倍も生きているんだから実力も豊富なんでしょうね。」
ルグランとヨシュアの言葉にシェラザードは自分達とはあまりにもかけ離れている存在であるエヴリーヌに畏怖を持ちつつ答えた。
「あはは……ほかの2人はどうだったの、ルグラン爺さん?」
シェラザードの言葉にエステルは引きつった笑顔で笑った後気になるほかの2人のことを聞いた。
「うむ……リフィア嬢ちゃんに至ってはたった数秒で手配魔獣を含めて周囲の魔獣達を魔術で全滅させたそうじゃ……」
「例えアーツの数倍は勝っていると言われている魔術でも豊富な体力を持つ手配魔獣を一撃なんて私やエステルでは絶対にできないわ。とんでもない魔力がある証拠よ……プリネさんでさえ私達より上なんだから。やっぱりあのメンフィルの姫殿下達と私達は格が違うわね………」
シェラザードは改めてリフィアの凄さを知り溜息を吐いた。
「何を言っておる、魔術が使えるお主達も十分凄いではないか。魔術は基本的にメンフィルの出身者、あるいはアーライナやイーリュンの一部の信者達しか使えないのは2人とも知っているじゃろ?」
ルグランはシェラザードの溜息が贅沢な溜息に聞こえ指摘した。
「………まあね。私は幸運にも師匠――――闇の聖女様に師事をお願いする機会があったから恵まれているとは思っているわよ……(最もこの娘ほどではないけどね)……」
そう言ってシェラザードは横目でエステルをチラリと見た。
(??なんで、あたしを一瞬だけ見たんだろう、シェラ姉……)
(この様子だとわかっていないみたいだね………まあ、エステルらしいか。)
ペテレーネを含めてメンフィルから特別扱いされ、精霊の協力を得ている自分のことだとわかっていないエステルをヨシュアはエステルらしいと思った。
「……プリネ嬢ちゃんに関してなんじゃが……アガットの奴、手配魔獣はプリネ嬢ちゃんが信用できないと言って自分で倒した後、試験と言ってプリネ嬢ちゃんにいきなり模擬戦を仕掛けたそうなんじゃよ……」
「はあ!?あのバカ……何考えてんのよ!?下手したらよくて牢屋行き、悪くて死刑になっててもおかしくないわよ!?それどころか最悪ギルドが潰される可能性があってもおかしくないわよ!」
アガットがプリネを襲ったと聞いたシェラザードは声を上げた。
「全くじゃ……アガットの報告を聞いて正直、寿命が縮まると思ったわい……まあ、肝心の本人は笑って「気にしないで下さい。いい訓練になりました。」と言ってたからよかったのじゃがな……」
「ねえねえ、シェラ姉。そのアガットっていう人、シェラ姉知っているの?」
アガットを知っている風に話しているシェラザードに疑問を思ったエステルは聞いた。
「まあ、同じ先生に関わった者同士ある程度はね……言っておくけど、かなりの凄腕よ。」
「ふ~ん………あれ?それだけ強いにも関わらずプリネに負けたってルグラン爺さん、言わなかった?」
「うむ。リベールの正遊撃士の中でも高レベルのアガットが負けたと聞いて、一瞬耳を疑ったぞい。」
「………まあ、プリネさんは大使館にいた頃は常日頃先生以上の達人達と手合わせをしてたからね……アガットじゃ荷が重いと思うわ。」
「へぇ~………シェラさん、まるでプリネの修行を見て来たかのように言ってますけど、やっぱり闇の聖女さん繋がりですか?」
プリネの強さにあまり驚いていないシェラザードを見てヨシュアは疑問に思っていたことを口に出した。
「ええ。プリネさんは師匠の娘だけあってアーライナの信者達から御子扱いされてたからプリネさんの姿を拝見したいっていう信者達が多くてね……それに答えるためかよく親子揃って仕事をしていてね、自然と話す機会も増えてね……第三者の視点での意見も欲しいからってファーミシルス大将軍や異母のカーリアン様との修行も見せてもらったのよ。」
「え!?プリネってアーライナの信者の人達からはそんな凄い扱いをされていたんだ!!」
アーライナ教でのプリネの立場を知ったエステルは驚いて声を出した。
「母親があれだけ信者の人達に慕われていたら特別扱いされるのは仕方ないと思うよ?………それで実際プリネの修行ってどうだったんですか、シェラさん。」
驚いているエステルとは逆にプリネの立場を理解し納得しているヨシュアは肝心なことを聞いた。
「………プリネさんが本気を出した時の手合わせを見せて貰ったんだけど……私達とは次元が違いすぎるとしかいいようがないわ。」
「へ?プリネって今まで本気を出していなかったの!?」
エステルは短期間ながらもプリネの実力は自分より確実に上とわかり、それが本気でないと知り驚いた。
「ええ。あんた達が知っているプリネさんの姿は父親から受け継いでいる力――”魔神”の力は一切使っていないわよ?」
「………その”魔神”としての力を使ったプリネの姿は違うんでしょうか?」
ヨシュアの疑問にシェラザードは頷いて答えた。
「何も容姿や体が変わる訳ではないわ。”魔神”としての力を解放した時、唯一違うのは髪の色が銀髪になるぐらいよ。」
「銀髪…………シェラ姉見たいな?」
「いえ、プリネさんの銀髪は私のと比べたらもっと美しいわよ。」
「ふえ~………いつか、見てみたいな………」
エステルは自分の髪に自慢を持っているシェラザードが誉めたプリネの銀髪に一目見たいと思った。
「まあ、そんな訳じゃから3人共文句なしの合格じゃからな。お主達も彼女達に負けないよう精進するのじゃぞ?」
「うん!」
「はい。」
「ええ。」
ルグランの言葉に3人は頷いた。
「それより肝心の事件の事は何かわかったかね?」
「うん、そのことだけど……重大な情報を手に入れたよ!」
ルグランの言葉にエステルは嬉しそうな表情で答えた。
「おお、そうか!じゃあ、上にいる3人も呼んで話して来てくれ!」
「じゃあ、僕が3人を呼んでくるね。」
そしてリフィア達も交えてエステル達はモルガンから引き出した情報を話した。
「空賊団の『カプア一家』……それは確かに重大な情報じゃな!これで遊撃士協会としても方針が決められるというものじゃ。しかし、モルガン将軍というのも噂以上に遊撃士嫌いらしいのう……」
エステル達の情報に驚いたルグランはモルガンの予想以上の遊撃士嫌いに溜息をついた。
「うん、ビックリしちゃった。遊撃士って、ロレントじゃみんなに親しまれてる職業だから、あそこまで嫌われてるなんて……」
エステルは肩を落として答えた。
「エステルさん……元気を出して下さい。私達も民のために精一杯がんばらせていただくつもりですから!」
「うむ!当然だ!エヴリーヌもよいな?」
「はーい。エヴリーヌ達がその空賊捕まえてその人間を驚かせよう?」
「プリネ、リフィア、エヴリーヌ……3人共、ありがとう!」
3人の励ましを受けたエステルは笑顔でお礼を言い、気を取り直した。
「まあ、モルガン将軍は例外じゃ。普段は王国軍とギルドも、それなりに協力関係を保っておる。ただ、今回ばかりはお前さんたちに余計な苦労をかけることになりそうじゃのう。」
ルグランはエステル達のやり取りを微笑ましげに見た後、エステル達にかかる負担を考えそれを呟き肩を落とした。
「ま、こちらが出来ることを地道にやっていくしかないわね。とりあえず市長にもこのことを報告してこれからの捜査方針を考えてみるわ。」
シェラザードの言葉にエステルやリフィア達、5人が頷き市長にモルガンから得た情報を報告するため市長邸に向かった…………
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