英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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第14話(序章終了)
~遊撃士協会・ロレント支部~
エステル達は準遊撃士になって、さまざまな依頼を達成した後起こった強盗事件に関わった。事件は犯人を逃がしたが、幸いにも奪われた物は取り返せた。また、カシウスが行方不明になるという信じられない情報が来て、最初はそれに驚いたエステルだったが気を取り直し母と同じく父の無事を信じた。そして今までの地道な功績を評価された2人は各地のギルドで貰える正遊撃士資格の推薦状を貰い、2人がそれぞれ喜んでいた所通信機が鳴った。
「あら、誰かしら。ちょっと待ってね。」
そう言うとアイナは通信機を手に取った。
「はい。こちら遊撃士協会・ロレント支部です。」
そしてアイナは相手が名乗り出ると驚いた。
「ご丁寧な連絡、わざわざありがとうございます。今、本人に推薦状を渡したのでそちらにご連絡を差し上げようとした所です。………あの、本当に指定した遊撃士でないとダメなのでしょうか?よければもっと実力のある遊撃士を用意できますが……」
「へ……今推薦状を貰ったのってあたし達の事だよね?」
会話を聞いていたエステルは自分達の事だと気付き目を丸くした。
「恐らくそうだよね……話を聞く限り依頼で僕かエステルを指名しているみたいだけど一体誰が……?」
「誰でもいいじゃない!あたし達は遊撃士なんだから依頼を達成するだけよ!」
「エステルは呑気だなあ……」
準遊撃士に成り立ての自分達を指名して依頼を出すことをヨシュアは怪しく思ったが、エステルは全く気にせず答えたことに
思わず苦笑いをした。
「………わかりました。それではお待ちしております。」
アイナは諦めの表情で通信機を切った。
「アイナ、誰だったの今のは?依頼のようだけど、エステル達のことを言ってなかった?」
会話を聞いてある事に疑問に思ったシェラザードはアイナに聞いた。
「ええ……実はエステル達が準遊撃士になった翌日にある方から依頼が来たの。しかも、エステルを指名で。」
「へ………あたし??」
自分の事を言われたエステルは思わず目を丸くし驚いた。
「アイナさん、そのある方という人は誰なんですか?」
ヨシュアは警戒するように真剣な顔をして依頼した人物の正体を聞いた。
「それは………」
依頼者の正体を聞かれたアイナは戸惑った顔をして言い淀んだ。
「あんたが困惑するなんて珍しいこともあるものね。ちなみにどういう依頼なの?」
アイナの様子を珍しく思ったシェラザードはこのまま聞いても埒があかないと思い、肝心の依頼内容を聞いた。
「………その方の縁者3人とエステルが共に行動すること。期間はエステルが正遊撃士になるまでよ。後、遊撃士の仕事をサポートさせること。それが依頼内容よ。」
「えっと、それってどういうこと??」
依頼内容の意味がわからなかったエステルは質問した。
「要するに僕達の修行の旅に同行者が3人増えるってことだよ。後、その人達が僕達の仕事を手伝ってくれるってことだね。でも、いいいんですかアイナさん?
僕達はまだ準遊撃士に成り立てですよ?それに一般の人達に僕達の仕事を手伝わせるのは無理なんじゃあ……遊撃士の仕事は荒事もありますし、正直僕達2人で
3人も守るなんて難しいことだと思いますよ。」
エステルに判り易く説明したヨシュアはアイナに依頼の難しさを訴えた。
「私だって最初は断ろうと思ったけど相手が相手だしね……本部にも一応聞いたけど、今回は特例よ。後、護衛に関しては一切心配しなくていいと思うわよ。多分、あなた達より実力があると思うし。」
「あたし達より実力があるってどんな人達なの?」
同行者の3人が気になったエステルは質問した。
「………会えばわかると思うわ。ちなみに提示された報酬の金額はこんなにあるわ。」
3人はアイナから見せられた依頼書に書かれてある報酬の金額を見て驚愕した。
「いち、じゅう、ひゃく………じ、10万ミラ~~~~~!!!!!????な、何よこの金額!!??」
「信じられない金額ですね………相手は貴族か商人ですか?」
「何よ、このバカげた金額は!?先生でもこんな報酬の仕事、滅多にないわよ!?準遊撃士の報酬で10万ミラなんてありえないわ!?」
エステルとシェラザードは提示されてある金額に目を大きく見開き思わず叫び、ヨシュアは依頼者の正体を推理した。
「私も本当なら受けるにしてもカシウスさんか最低でもB級と思ったんだけど、カシウスさんは行方不明だし、何より相手がエステルでないとダメって言い張るのよ……」
「………どうして、その依頼者はエステルを指名したんでしょうね?僕達はまだ準遊撃士の成り立てで父さんやシェラさんと違って知名度はないのに。」
ヨシュアは最大限に警戒し、相手の思考を考えたがわからずアイナに聞いた。
「それはあんまり詳しく教えてくれなかったけど、唯一教えてくれたのはエステル。あなたが”闇夜の眷属”と仲がいいからよ。」
「へ……?なんでそれが関係するの??」
アイナに言われたことが理解できなかったエステルは目を丸くした。
「……ちょっと待ってアイナ。”闇夜の眷属”が関係してあんたが断れない相手でこんな金額を出せる人物ってもしかして……」
アイナから出たある言葉から依頼者を推理したシェラザードは信じられない人物が浮かび上がりそれを聞こうとした時、ギルドの扉が開かれた。
「ほう!ここがギルドというものか!!」
入ってきた人物の一人―――リフィアはギルドに入って興味深そうに周りを見て、初めて見る光景に喜びの声を上げ
「……ん、ここ、エヴリーヌの部屋より狭いね………」
「エ、エヴリーヌお姉様!そういう失礼な事は控えた方が……!」
ギルドの広さを見て思わず呟いたエヴリーヌをプリネは慌てて咎めた。3人の登場に驚いた4人の中でシェラザードがプリネの姿を見て驚いた。
「あ、あなたはプリネさん!?」
「あ、シェラザードさん。お久しぶりです。あなたの活躍はファーミシルス様から聞いていますよ。時間があればお母様に会いに行って下さい。お母様もあなたと話したがっていましたし。」
「ど、どうも……時間があれば窺わせてもらいます。」
プリネの言葉にシェラザードは恐縮しながら答えた。
「シェラ姉、一体どうしたの?この人あたし達と同じくらいの年に見えるけど?」
シェラザードの様子をおかしく思ったエステルは聞いた。
「バ、バカ!口を慎みなさい!この方を誰だと思っているのよ!?」
エステルの言い方にシェラザードは思わず慌てた。そしてその様子を見たプリネは上品に笑って答えた。
「クス……構いませんよ、シェラザードさん。これから、共に旅をする仲間となるんですから2人には気軽に接してもらって構いません。」
「っ!?じゃあ、やっぱり依頼者は……!」
「うむ!シェラザードとやら、お前の思う通りじゃ!……それでギルドの受付よ、余達と共にする者はそこの2人か?」
シェラザードに答えたリフィアはアイナに自分達の同行者が、目を丸くして見ている2人かと聞いた。
「……はい、そうです。…………あなた方3人が同行者ですか?」
「うむ!」
アイナの言葉にリフィアは頷いた。
「ふ~ん、あなた達がこれからいっしょに旅をする仲間か……ま、いいわ。あたし、エステル・ブライト!よろしくね!」
「……ヨシュア・ブライトです。僕もエステルといっしょに旅をするのでよろしくお願いします。」
あまり気にせず自己紹介をしたエステルと違い、3人を警戒しながらヨシュアは自己紹介をした。
「プリネ・マーシルンです。気軽に呼び捨てにしてもらって構いませんよ。」
「私、エヴリーヌ……よろしくね……」
「そして余の名は!リフィア・イリーナ・マーシルンじゃ!プリネが言ってるように余やエヴリーヌのことを呼び捨てにするのを特別に許してやるから、気軽に呼ぶがいい!」
「あはは、なんか偉そうな子ね……ま、いいわ。よろしくね、プリネ、エヴリーヌ、リフィア!」
エステルは3人の名前を聞いても特に何の反応もせず気軽に話しかけた。逆にプリネとリフィアのフルネームを聞いてヨシュアは顔を青くして、エステルの言動を諌めた。
「エ、エステル!この人達、そんな気軽に呼んでいい人達じゃないよ!?」
「ほえ、なんで?」
「………それはこの人達が王族の人達だからだよ。」
「へ……?でも、確か女王様の名前ってアウスレーゼだよね??」
ヨシュアが慌てていることに気付かないエステルは思わず聞き返した。その様子を見てシェラザードは呆れながらエステルに話した。
「……それはリベール王家の名よ。マーシルンはメンフィル皇帝の名よ………」
「え………じゃあ、あなた達ってもしかしてメンフィルの皇女様!?」
シェラザードからマーシルンの名がどれほどの名前か理解したエステルは驚愕に満ちた表情で3人を見た。
「付け加えておくとプリネさんは師匠……つまり”闇の聖女”の娘でもあるわ。」
「聖女様の………!?そう言われてみれば聖女様によく似ているかも………!」
エステルは憧れている人の娘だとわかりさらに驚いた。
「でも、どうしてメンフィル王家の人達がエステルに直接依頼を出したんですか?」
「うむ!それは余が答えてやろう!一つはお主たち、ブレイサーの仕事を手伝うことで、余達の見聞を広めることじゃ!民の暮らしを知ることも王族の務めじゃからな!
そしてもう一つはエステル、お主がどのような人物かを余達、メンフィルは知りたいのじゃ!」
ヨシュアの疑問にリフィアは堂々と答え、それを聞いたエステルは目を丸くした。
「へ……あたしを知りたいってどういうこと??」
「それはエステルさん。あなたの考えが我々メンフィル帝国が掲げる理想にとてもよく似ているのです。ですから、お父様――リウイ陛下があなたのことをよく知りたいため
あなたに依頼を出し、私達があなたと行動を共にすることになったんです。」
「メンフィルの理想って何??」
プリネが答えたことが理解できなかったエステルは聞き返した。
「私達メンフィル帝国が掲げる理想とは”人間”と”闇夜の眷属”の共存です。私達、”闇夜の眷属”は人間の方とは色々違うのであなた達ゼムリア大陸に住んでいる人達にとって初めてみる私達は距離を取られて当然なのですが、あなたはそんなことを気にせず自ら進んで友達になってくれましたよね?」
「あたしはただ、会話ができればどんな人でも仲好くできると思っただけだよ?………というか、皇女様があたしの友達で”闇夜の眷属”の人がいるってどうして知っているの??」
「フフ……それはこの子が教えてくれたんですよ………マーリオン!!」
プリネが指輪に呼びかけると指輪から光が走り、その場にマーリオンが現れた。
「え……マーリオン!?どうしてあなたがここに!?」
「お久ぶり……です……エステル……さんに……ヨシュア……さん……あなたの……こと………ご主人様に………話しました……あなた…なら……ご主人様……と…きっと……仲好く……なって…くれる……と……思った……から……」
「そうなんだ……でも、マーリオンの主ってこの人?」
突然現れたマーリオンに驚いたエステルだったが理由がわかり、ずっと気になっていたマーリオンの主の正体を聞いた。
「いえ、私は一時的にマーリオンを使役しているだけです。マーリオンの本当の主はお父様――メンフィル初代皇帝、リウイ・マーシルンです。」
「あ、あんですって~~~!?マーリオン、そんな凄い人の使い魔だったの!?」
主の正体を知ったエステルは思わず叫んだ。
「ちなみにリスティもリウイに仕えておるぞ。」
「嘘……あの呑気なリスティが……?信じられない……」
自分の友人達がメンフィル王家と深い繋がりがあることを知ったエステルは信じられない思いだった。
「………それで、エステル。どうするのこの依頼?」
アイナは心配そうな顔でエステルに依頼を受けるか聞いた。
「当然、受けるに決まっているじゃない!あたしは遊撃士よ!指名されたからにはどんな難しい依頼だって、成功させてみるわ!!」
「うむ、よく言った!これから頼むぞ、エステル、それとヨシュアとやら!」
「ええ!」
「ハハ……さすがエステル……相手が王族とわかっても普通に接するんだ……」
(お父様、お母様……この人は私達の初めての友達にもなってくれそうです……)
エステルとリフィアはお互い、笑顔で握手した。その光景をヨシュアは苦笑しプリネは微笑ましそうに見ていた。
「ヨシュア、厳しいとは思うけどエステルをサポートして上げて。この依頼の報酬はエステルと半分にしといてあげるわ。」
エステルが依頼を受けたことに諦めの表情だったアイナは頼みの綱のヨシュアにエステルのことを頼んだ。
「ハハ……言われなくてもそうするつもりでしたよ。下手したらそれこそ国際問題に発展するかもしれませんしね……」
アイナの頼みをヨシュアは苦笑しながら引き受けた。そして一連の流れを見たシェラザードは自分もついて行くためにアイナに名乗りあげた。
「アイナ、空賊の件もあるからボースの修行と空賊の件が解決するまで私もエステル達について行くわ。」
「ええ、お願い。」
そしてヨシュアはある事が気になった。
「……あの、3人共戦闘は大丈夫でしょうか?ブレイサーの仕事の中には戦闘が避けられない場合もありますし。」
「ヨシュアさんでしたっけ?あなたもエステルさんと同じように気軽に接してもらって構いませんよ。私達はしばらく寝食を共にするのですから。」
「………わかった。それで、どうなのプリネ?」
「その点は大丈夫です。私はお父様からは剣術、お母様やお姉様方からは魔術を教えて貰っていましたから。実戦もファーミシルス様やカーリアン様にも鍛えて頂いたので
足手まといにはなりません。接近戦、攻撃魔術、回復、補助、どれでもできますのでお任せ下さい。」
「ふえ~……凄いわね……そっちの2人はどうなの?」
エステルはプリネの万能さに感心しながら2人の戦闘スタイルを聞いた。
「ん……エヴリーヌの武器はこれ……」
エヴリーヌは虚空から弓を出した。
「わ……!一体どうやったのそれ??」
何もない空間から突如出て来た弓にエステルは驚いた。
「これ……?出したいから出しただけだよ……?」
「いや、それだけじゃわかんないだけど……」
「余が特別に説明してやろう!エヴリーヌは弓を魔力で微粒子状にして利き腕に収納しているのじゃ。だから、いつでも武器が出せるのじゃ。」
「びりゅうしじょう……??さっぱりわかんないわ~……ヨシュア、シェラ姉。わかる?」
リフィアの説明でさらに理解できなかったエステルは2人に聞いた。
「ごめん……僕も全然わかんない。」
「わたしもよ………」
「要するにエヴリーヌお姉さまは普段武器を持ち歩く必要がなく、いざ戦闘が起こった際にはいつでも武器を出せることです。」
唸っていた3人を見兼ねたプリネは簡単な説明をした。
「な~んだ、そういうことね……なんとなくわかったわ!」
「本当にわかってるのかいエステル……でも、弓を使うということは当然矢があるはずだけど、見た所矢筒を背負ってないけど矢はどうしているんだい?」
プリネの説明で理解しているエステルを怪しんだヨシュアは、弓を使うエヴリーヌが矢筒を背負ってないことに気付き聞いた。
「矢はエヴリーヌお姉様の魔力で構成されているので、普通の矢は必要ないのです。」
「それって魔力がある限り矢は無制限ってこと!?凄いといえば凄いけど、それだったら魔力がすぐ尽きるんじゃ……」
普通の矢が必要ないことに驚いたシェラザードだったが、ある事に気付きそれも聞いた。それを聞いたプリネは上品に笑って否定した。
「フフ、その心配は無用ですよ。エヴリーヌお姉様は”魔神”ですから。」
「嘘!?この娘が”魔神”!?信じられない……!」
「シェラさん、なんなんですかその”魔神”っていうのは?」
エヴリーヌが魔神ということを教えられたシェラザードは驚愕し、その様子を不思議に思ったヨシュアは聞いた。
「………師匠から教えて貰ったんだけど”魔神”っていうのは”闇夜の眷属”の中でも全てにおいて最強を誇る種族よ……その力は神にも匹敵すると言われるし魔力も無限のようにあると言われているわ……正に魔王と言われてもおかしくない強さだそうよ……ちなみにメンフィル皇帝も半分、魔神の血を引いているそうよ。多分、この娘が本気になったらリベールは焼け野原になるんじゃないかしら……?」
「え”!?それなら戦闘なんてことしたら不味いんじゃあ……」
魔神のことを知ったエステルは思わず心配そうに言った。
「大丈夫だよ……エヴリーヌ、人間が好きだし、そんなことしたら疲れるしリウイお兄ちゃん達に嫌われるからそんなことしないよ……」
「そう願いたいわ……魔神だったら魔術も使えるのよね?」
エヴリーヌはエステルの心配を無邪気に笑って否定した。その様子を見たシェラザードは思わず溜息を吐いてエヴリーヌが本気になって暴れないことを祈った。
「ええ、エヴリーヌお姉様は弓の技に加えて強力な風と暗黒の魔術が使えます。」
「あはは……それは心強いわね……リフィアはどうなの?」
エステルは明らかに自分達と実力が違うエヴリーヌを知り、冷や汗を垂らし、渇いた声で笑った後、最後の一人であるリフィアに聞いた。
「うむ、よくぞ聞いた!余は神聖、暗黒に加えて無属性である純粋魔術も使えるから後方からの攻撃や回復は余に任せるがよい!」
「へえ……以外ね。リフィアって攻撃あるのみ!っていう印象があるけど回復魔術もできるんだ……」
リフィアが傷の治療もできることを知ったエステルは意外そうな顔でリフィアを見た。
「傷ついた民を治療するのも王族としての義務じゃからな!それに余はこれでも”百日戦役”のエレボニアによるロレント襲撃の際、瓦礫に埋もれて瀕死であった一人の女性の命をペテレーネと
共に救ったのじゃぞ。」
「………え………………」
リフィアの言葉を聞いたエステルは、かつて母の命を救った際に見た憧れの女性であるペテレーネの優しげな笑顔と、自信満々な笑顔で絶望していた自分に母は助かると希望を持たせてくれ、ペテレーネと共に母の傷を癒した少女の顔を完全に思い出した。
「あなたがあの時、お母さんを助けてくれたもう一人だったんだ……やっと……会えた………!」
リフィアを思い出し、母の命を救った人物に再会し感激したエステルは嬉し涙を流した。
「エステル……!?どうしたんだい!?」
ヨシュアはエステルが涙を流していることに慌ててエステルに何があったかを聞いた。
「うん………この人、聖女様といっしょにお母さんを助けてくれた人だったの……」
「え………それってレナさんが言ってた命の恩人!?」
シェラザードはリフィアがレナの命を救ったことに驚いた。そしてエステルは涙を腕で力一杯拭き太陽のような笑顔でリフィアにお礼を言った。
「お礼が遅くなったけど………リフィア、あの時、瓦礫に埋もれて瀕死だったお母さんを助けてくれてありがとう!!」
「ほう、お主があの時の少女だったのか………何、余は王族として、また一人の人として義務を果たしたまでじゃ!あの時から余とエステルは出会うべき運命だったのじゃな!」
「ふふ、本当にその笑顔はあの時から変わらないわね。……友達としてもこれからよろしくね!」
「うむ!」
リフィアとエステルのやり取りを周囲の者達はしばらく微笑ましく見ていた。
「フフ、エステルさんとリフィアお姉様。お二人とも似た者同士だから本当に微笑ましいですね。」
「えっと……プリネ?似た者同士ってどういう意味かな……?」
思わず呟いた言葉に反応したヨシュアは嫌な予感がして自分の予感が当たらないようエイドスに願いつつ聞いた。そしてプリネはそんなヨシュアの願いを知らず見事に打ち砕いた。
「あの眩しい笑顔もそうですけど、何より性格だと思います。お姉様は基本的に、人の話を聞かず思い立ったら即実行してしまう……その、いわゆる暴走してしまう部分がありますから。
エステルさんもそんな風に見えたのですが、間違っていたでしょうか?」
「…………いや、君の言う通りだよ………はぁ~…………(エステルだけでも手一杯なのにそれがもう一人増えるのか………大丈夫かな、僕……)」
リフィアの性格を知ったヨシュアはこれからの旅に起こるであろうことを考え大きな溜息を吐き肩を落とした。
(ヨシュア………準遊撃士になったばかりなのにきつい事を押しつけてごめんね………せめて報酬は交渉して、もう少し多めに貰えるよう後で交渉してあげるわ……)
(がんばりなさい、ヨシュア………プリネさんはまだまともだから、いざとなったら2人で協力してあの暴走コンビを抑えなさい………)
ヨシュアの様子を見てシェラザードとアイナはそれぞれ哀れに思った。そしてプリネはある事を思い出し、エステル達にそれを言った。
「そうだ………私達の姓ですけど、”マーシルン”を名乗らず旅の間は”ルーハンス”を名乗りますのでその点を注意して下さい。」
「さすがに王家の姓を名乗ったら色々問題が起こるだろうしね。後でエステルにも言い聞かせておくよ。」
「ありがとうございます。そこの受付の方もお願いしますね。」
「ええ、ほかの支部の受付達にもそのことは伝えておきます。」
アイナはプリネの言葉に頷き、ヨシュアはプリネの言葉に納得した後、プリネ達の正体をエステルがばらさないよう細心の注意を払うよう心の中で誓った。
「さて………こうしちゃいられないわ!みんな、早くボースに向かうわよ!」
「了解。」
「はいはい……」
「うむ!」
「ん……」
「フフ、しばらくの間お姉様共々よろしくお願いしますね。」
そしてリフィア一行とシェラザードを加えたエステル、ヨシュアは次の推薦状を貰うためにボース市へ向かった。
次世代の闇の英雄達と英雄への道を辿り始める遊撃士達の旅の幕が今、開いた………!
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