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【仮題】黒翼騎士の英雄譚

作者:MARIE
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第00話:プロローグ

 
前書き
落第騎士の英雄譚が好きすぎて、またまたDiesとコラボさせてしまいました。
今回はプロローグという事で短めです。

H28/04/26 誤字修正 

 
 
 ―― 夢を、見ている。

 これは現実では無く夢である。そう、黒鉄一輝は判断する。

 彼が破軍学園に入学してから2週間。
 晴れて抜刀者(ブレイザー)の育成機関である学園に入学したのも束の間、実家の方からの圧力で魔力制限により授業を受けさせて貰えなくなったのが一週間前。
 それから彼は、毎日同じ夢を見続けているのだ。

 夢の内容はいつも同じ。
 黒い塊がただ、同じことを自分に向かって話し、自分がそれを聞き続ける。それだけの夢だ。

 しかし、今日は違った。
 いつも見えていた黒い塊が影法師のような輪郭のぼやけた人型となり、声がハッキリと聞こえるようになったのだ。
 そして、また――


『例えば、己の一生がすべて定められていたとしたらどうだろう』

『人生におけるあらゆる選択、些細なものから大事なものまで、選んでいるのではなく、選ばされているとしたらどうだろう。』

『無限の可能性などというものは幻想であり、人はどれだけ足掻こうとも、定められた道の上から降りられない。』

『富める者は富めるように。貧しき者は飢えるように。善人は善人として、悪人は悪人として。美しき者醜き者、強き者弱き者、幸福な者不幸な者――――そして、勝つ者負ける者。』

『すべて初めからそうなるように・・・・・それ以外のモノにはなれぬように定められていたとしたらどうだろう。』

『ならばどのような咎人にも罪はなく、聖人にも徳などない。』

『何事も己の意思で決めたのではなく、そうさせられているのだとしたら?』

『ただ流されているだけだとしたら?』

『問うが、諸君らそれで良しとするのか?』

『持てる者らは、ただ与えられただけにすぎない虚構の玉座に満足か?』

『持たざる者らは、一片の罪咎なしに虐げられて許せるか?』


 ああ...確かにそれは...嫌だな。
 自分の魔力(才能)が微々たるものであるのも、そんな自分が黒鉄家に生まれたことも、そしてこれまでの境遇も。
 全てが運命で決まっていたことで仕方がないなどと言われて、一輝は納得できる筈も無かった。
 そして、まるで一輝の心象を見透かすように、影法師は演説を続ける。


『否、断じて否。』


『それを知った上で笑えるものなど、生きるということの意味を忘れた劣等種。人とは呼べぬ奴隷だろう。』

『気の抜けた勝利の酒ほど、興の削げるものはない。運命とやらに舐めさせられる敗北ほど、耐え難い苦汁はない。』

『このような屈辱を、このような茶番劇を、ただ繰り返し続けるのが人生なら、よろしい、私は足掻き抜こう。』

『どこまでも、どこまでも、道が終わるまで歩き続ける。遥か果てに至った場所で、私は私だけのオペラを作る。ゆえに、諸君らの力を借りたい。』

『虐げられ、踏み潰され、今まさに殺されんとしている君ら、一時同胞だった者たちよ。』

『諸君らは敗北者として生まれ、敗北者として死に続ける。その運命を呪うのならば、私のもとに来るがいい。』


 才能だけが全てじゃないと証明する。僕の憧れた存在に、僕が届くと証明する。
 もし、それが出来たならば――

 それは、なんて素晴らしいことなんだろうか。

 努力もしてきた。一刀修羅という裏技の様なものも身に付けた。
 だけど、それでも世の中の理不尽を前にしては意味が無かったのだ。


『百度繰り返して勝てぬのならば、千度繰り返し戦えばよい。千度繰り返して勝てぬのならば、万度繰り返し戦えばよい。』

『未来永劫、永遠に、勝つまで戦い続けることを誓えばよい。』

『それが出来るというのならば、諸君らが"術"の一部となることを許可しよう。』

『永劫に勝つために。』

『獣のたてがみ――その一本一本が、諸君らの血肉で編まれることを祝福しよう。』


 勝ちたい。
 運命などというものに縛られず、世の中の不条理に屈せず、真に己の才能と努力の結果()で勝ちたい。

「僕は...」


『今はまだ私も君らも、そして彼も・・・忌々しい環の内ではあるものの。これから先、ここでの"選択"が真に意味あるものであったと思えるように』

『いつかまたこの無限に続く環を壊せるように』

『さあ、どうする。諸君ら、この時代の敗北者たちよ。』

『私に答えを聞かせてくれ。』



「僕は...勝ちたいっ!!」



『よろしい。黒鉄一輝、君の願い、確かに聞き届けた。』


 一輝が最後に見た影法師は、まるで蛇の様な男だった。




 そして、この日を境に黒鉄一輝は一年間の休学届けを提出し、行方不明となった。


 そして、一年後。
 学園に戻ってきた彼を中心に、世界は動きだす。

 
 

 
後書き
さて、皆さんこう思った事でしょう。
「短えェ...」と。
『ダンジョン攻略記』の方では平均字数10000字の癖して此方では2000字...うん、短いww
ただ、この続きを書くと今度は滅茶苦茶長くなるんですね。多分更新が後3日は遅く成ったであろう事は間違いない。
というわけで、まあプロローグという事もあり、プロローグらしいところで終わらせていただきました。

そしてやっぱり黒幕敵ポジやらせるならメルクリウス。うぜえキャラはメルクリウス。プロローグで出てくるのはメルクリウス。
というわけでメルクリウスによって一輝強化であります。当然、Diesと絡めるので一輝はアレも使えます。
ただ、一輝を強くした分他(ラスボスポジ)も強化されます。一体何ハルトさんなんや...(すっとぼけ)

タイトルが【仮題】となっている理由はいろいろあります。
まず最初に考えたタイトルが「黒騎士たちの英雄譚」だったんですね。黒円卓も出るし結構自信ありました。
しかし、なんと最新10巻で「黒騎士」と呼ばれるプロ騎士登場により没に...orz
現在もぱっとしたタイトルが浮かばず、黒翼騎士か黒翼修羅かで悩んでます。それ以外にも良い感じのタイトルがありそうです。
読者の方で「これだッ(( ー`дー´)キリッ」というタイトルがある方は是非教えてください。

それではまた次の更新で。 
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