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IS~夢を追い求める者~

作者:かやちゃ
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第2章:異分子の排除
  第24話「あの時と同じ」

 
前書き
自分の小説を書いて他の人の小説を読んで、文章力の差に落ち込むこの頃...
...まず知識を蓄えるべきですね。
 

 


       =out side=



「ぅ...ぁああああああ!!」

  迫りくるISに向けて、我武者羅にブレードを振う一夏。
  本来ならもっと真っ直ぐな剣筋だが、恐怖によってそれはぶれていた。

「っぁ...!?」

     ―――ギィイイイン!!

「...ったく!世話焼かせるな!」

  攻撃が届きそうになった時、瞬時に桜が割って入り、攻撃を防ぐ。

「(っ...!?コイツ...パワーが桁外れ!?)」

  しかし、出力で押されている事に桜は気づく。

「ぐっ....!」

  一夏を後ろに庇いながらも、抑える桜にもう一機が襲い掛かる。

「ちぃっ....!」

     ―――ギャリィ...ッ!ギィイイン!

  桜は後ろに一夏がまだいるのを把握しながら、目の前のISの攻撃を一夏に当たらないように受け流し、もう一機の攻撃を受け止めた。

「(こっちはさっきよりも弱い...あの一機だけか?)」

  同じ見た目だが、一機だけ出力が段違いだという事に桜は気づく。

「なら....!」

  それならやりようはあると、桜は銃も展開して二機を牽制する。

「織斑!怯えてる暇があったら避難しとけ!ぶっちゃけ邪魔だ!!」

「な、なんだと...!」

  敵視してる桜にそう言われ、さすがの一夏も言い返す。
  だが、それとは裏腹に体は震えていた。

「くそ...!こいつ...!」

  強い方の機体が桜を抑え、もう一機が一夏に襲い掛かろうとする。
  それを桜は何とか凌ぐが、一夏が動かない以上、ジリ貧だった。

「【セシリア!悪いがコイツの護衛を!】」

【わ、分かりましたわ!】

  一機を桜が抑え、もう一機はセシリアに任せる桜。

「.....っ!?」

  しかしその瞬間、桜を相手しているISから高エネルギー反応を感知する。

「っ、避けろぉおおおおお!!!」

「なっ...!?」

  瞬間、敵ISから超高出力のビームが撃たれた。
  運悪く、射線上に桜だけでなく一夏も入っていたので、一夏を庇うために桜が一夏を吹き飛ばし、代わりにビームが掠る。

「ぐぅっ...!?」

【桜さん!?】

  高出力なので、掠っただけでSEが大きく削られ、飛行制御も狂う。

「しまっ...!一体逃した...!」

【私が足止めを...っ、この...!】

  弱い方の機体が秋十や鈴のいる方向へ飛んでいく。
  それをセシリアは止めようとしたが、もう一機に妨害される。

「くっ....!」

  目の前の敵を倒すのが優先だと、桜は思考を切り替える。
  ...秋十が、なんとかすると信じて...。







「ぐっ....!」

     ―――ギィイイン!!

  敵ISの腕を、秋十はなんとかブレードで弾く。

「(その身に...土を宿す...!)」

  まさに大地とも思える鋼の防御力と力を生み出す“土”の力。
  それを使ってようやく互角に打ち合える力だった。

「(落ち着け、慌てるな!今は、目の前の敵を...!)」

  学園が襲われ、鈴と分断されている今、秋十の心は平常ではなかった。
  早くなんとかしなければならない...そんな焦燥感が彼の動きを乱していた。

「くっ...!」

  ギリギリ身に土を宿す事で凌いでいるが、それだけでは出力差を埋めるだけだった。
  徐々に減らされるSEを尻目に、彼の焦りは加速する。

「っ....なっ!?」

  目の前に背後からの接近があるという警告が映し出され、咄嗟に秋十は身を躱す。
  相手をしていたISの攻撃と背後からの攻撃も、ギリギリで躱す事に成功した。

「(もう一機...!?桜さんの方で一体なにが!?)」

  下の方で桜が強化機体と戦っているのが見える。
  相手のISに何かがあるのだと思い、二機に増えたISと対峙する。

「(落ち着け...!落ち着け...!心に水を宿せば、この程度...!)」

  二機に増え、ますます焦りが加速した秋十の動きが乱れる。
  ...瞬間、ついに攻撃を躱しきれずに被弾してしまった。

「がぁあああっ!?」

  地面へと吹き飛ばされ、何とか体勢を立て直す。

「(やばい...!けど、今ので落ち着いた...!)」

  攻撃を喰らった瞬間、一瞬だけ頭が真っ白になり、焦りがリセットされたのか、秋十はなんとか平常心を取り戻す事ができた。

  ....しかし。

「っ、鈴!!」

  秋十を攻撃していた二機は鈴の方へと向かって行ってしまった。

「きゃぁあああっ!?」

  ただでさえ一機だけでも苦戦するのに、同じ機体が三機に増えてしまった。
  よって、鈴は凌ぐことすらできずにあっという間に追い詰められてしまった。

「っ...!間に合え!」

  それを遠くから見えた秋十は、動きに風を宿して一気に空を駆けた。





「(いや...!ここで、終わりなの...?こんな...こんなあっさりと...?)」

  三機に押され、地面に叩き付けられた鈴は、降り立ったIS達を目の前にそう思った。

  ...その瞬間。

「(.....ぁ....なんだろう....この光景....。)」

  走馬灯...それに似た感覚で過去の記憶が蘇る。

「(...そっか、あの時と...あたしが虐められてた時と似てるんだ...。)」

  中国人だからと、特に深い理由もなくいじめられていた時。
  ...そして、助けられた時の光景に、それは似ていた。

「(あの時も三人で虐めてきてたっけ?...それで....それで.....。)」

  そこまで思考して、思い出せなくなる。

「(....あれ?一夏が助けてくれたんじゃ....?)」

  そんな鈴の思考を余所に、目の前の三機はビームの発射口を鈴に向ける。

「....ぁ....。」

  SEもほぼなく、満身創痍だった鈴はそれを見ても動く事が出来なかった。

「(....ごめんね....()()...。)」

  なぜ一夏ではなく秋十の名を思い浮かべたのか疑問に思う事もなく、やってくるであろう衝撃に鈴は目を瞑った。









「させ、るかぁああああああああ!!!」

   ―――“疾風迅雷”

  ...刹那、背後からの斬撃に、三機のISはよろめく。

「え....?」

  死ぬと思っていた矢先に助けられ、呆けた声を出す鈴。

「(...感情は昂ぶっているのに、心は妙に落ち着いている....。...当たり前だ。こんな命の関わる状況で、心を落ち着かせなくては死ぬだけだ....!)」

  秋十はそこまで考え、IS達に目を向ける。
  ...三機のISは、今まさにビームを放とうとしていた。

「(...なによりも...護るために、慌ててられるか!)」

  ...鈴を抱えて避けるには、時間がない。
  よって、秋十は鈴を庇うようにブレードを構える。

「護りたいもののため...全てを断ち切る!」

   ―――“明鏡止水”

  ビームが放たれた瞬間、心に水を宿した動きで秋十はブレードを三度振るう。

  ...刹那、三筋のビームが断ち切られた。

「っ...ふぅ.....!」

  鈴は驚いているが、秋十はそれを気にする間もなく、息を吐く。
  心に水を宿したまま強力な技を放った反動で、集中力が切れたらしい。

「(...まだだ!)」

  集中力が切れたのを基点に、動きを切り替え、一気に敵ISの一機の懐に入り込む。

「吹き飛べ!」

  腕をかち上げ、無防備になった胴体に後ろ回し蹴りを決め、吹き飛ばす。

「喰らえ!」

  さらに回し蹴りをした体勢からライフルを二つ展開し、もう二機に向けて撃つ。
  間髪入れずに片方に接近し、さっきと同じように吹き飛ばす。
  最後の一機には連続でライフルを放ち、怯ませて飛び蹴りで吹き飛ばした。

「....大丈夫か?」

「あ......。」

  一旦とはいえ、安全を確保した秋十は、鈴にそう声を掛ける。
  その姿が、鈴のかつての記憶を甦らせた。

「(...あの時と同じ...あの時も...彼は助けてくれた...!)」

  日本人らしい名前じゃないからと、どうでもいいような小さな事で虐められていた鈴。
  そんな彼女を助けたのは、秋十だったのだ。

「っ、ぁぐ....!?」

「大丈夫か!?」

  突然、激しい頭痛に見舞われる。
  洗脳によって改竄されていた記憶が蘇った際の拒絶反応である。

「っ、待ってろ...!」

  心配する秋十だが、駆け寄る暇もなくさっきの三機が戻ってくる。

   ―――...自分だって虐められてるのに、どうして...?

「(...どうして、そんなに頑張れるの...?)」

  必死に三機の攻撃を凌ぐ秋十を見て、鈴は思わずかつての時と重ねてそう考える。

「ぐっ....!」

  SEが切れ、さらに頭痛で動けない鈴を庇い続ける秋十だが、限界が訪れた。
  元々、秋十は庇いながら戦う事に慣れていないため、必然的にSEは削られ、鈴の盾となるしかなかった。

「断ち切れ...!」

  飛んできたレーザーを切り裂く秋十。
  しかし、その直後に飛んできたISの攻撃を受けてしまう。

「ぐ、ぅう....!」

  気合で耐え、鈴を庇い続ける秋十。
  ...しかし、まともに攻撃を受けてしまった今、秋十は隙だらけだった。

「(しまっ....!?)」

「秋..十....!」

  両サイドからビームで狙われる秋十。
  その様子を見た鈴が、頭痛による痛みを顧みずに悲痛な叫びを上げる。

  ...秋十がこれまでかと、目を瞑ったその時...。





「秋兄を...やらせるかぁああああああ!!!」

  飛んできたブレードとISによる攻撃で、ビームを撃とうとしていた二機は吹き飛んだ。

「秋兄!」

「マドカ...か...!」

  助けに入ったマドカに対し、秋十は喜び半分、攻撃を受け止めている際の苦悶半分の声で答える。

「....秋兄、ここは一端私とセシリアに任せて、一度彼女を避難させて!」

「...分かった。気を付けろよ!」

  単純な実力差と状況を考え、マドカの言葉に大人しく従う秋十。
  今だ頭痛に見舞われている鈴を抱え、秋十は離脱した。

「...さーって...私の大好きなお兄ちゃんを怪我させた罪...その身を以って後悔しろ!」

「(....怖すぎて援護しにくいですわ...。)」

  やはり妹なだけあって、千冬並の殺気を出すマドカに、遠くから狙撃を狙っているセシリアは怯えていた。







「(...なんだよ、これ...なんなんだよこれは...!)」

  強化機体の敵ISと、桜の戦いを少し離れた所で見ながら、一夏は動揺していた。
  自分の知っている“原作”との違い。あまりにも活躍する場が少なすぎるこの状況。
  ...それらが、彼から冷静な判断を奪っていった。

「っ...!はっ...!...なかなかやるな...。」

  一方、一夏を庇いながら強化ISと戦う桜はまだ余裕があった。
  出力が想起よりも上とはいえ、圧倒的な戦闘センスにより、桜が有利だった。

「(...秋十君の方は、セシリアとマドカちゃんが向かったから大丈夫だな。ユーリちゃんはロックを解除するのに体力と気力を使い果たしたのか...。...ロックが解除されたのなら、教師陣が来るまで持ちこたえればいいが...。)」

  戦いながら桜は状況を解析する。
  そして、懸念事項である一夏の方を見る。

「(...何か、しでかすかもな。)...っと、ふっ!」

  思考を中断し、迫ってきた攻撃を逸らす。

「...っと、いい加減、避難しとけ織斑!もうすぐ教師たちが止めに来る!そうなるとお前は邪魔になるだけだ!」

  優勢とはいえ、邪魔には変わりないので、桜は一夏に対してそう言う。

「...る..せぇ...。」

  冷静でいられなくなり、まともな判断ができなくなっていた一夏は桜の言葉に反応する。

「うるせぇうるせぇうるせぇ!!俺は主人公なんだ!こんな見せ場で...じっとしてるかよ!!」

「っ!?おい待て!!」

  さっきまでの恐怖はどこへ行ったのか。
  一夏は雪片二型を構え、桜と戦っているISへと斬りかかった。

「てめぇなんかに俺の活躍を奪われてたまるかよ!」

  無論、その行動は恐怖からではなく、自分の欲望のためだった。

「はぁああああああ!!」

「あっのバカ!!」

  無人機である故に出されるその強大な力を前に、無謀にも斬りかかっていく一夏。
  それを止めようとする桜だったが、ほんの少し遅かった。

「がぁああっ!?」

「っ、ちっ...!」

  叩き落される一夏。それを追撃しようとする敵IS。
  なんとかそれを止める桜。

「(止めれなかったが...幸い、絶対防御のおかげで助かっている。...これで懲りただろう。)」

  邪魔は入らず、一度吹き飛ばされたからか敵ISが桜をロックオンする。
  つまり、庇う必要はなくなった訳で、桜も全力を出せるという事だ。

「...さて、反撃開始と行きますか!」

  そう意気込み、攻撃を迎え撃とうとする桜。
  ...しかし。

【一夏ぁあっ!!】

「なっ...!?」

  アリーナに響き渡る声。
  肉声ではなく、通信を通したその声に敵ISの動きが止まる。

【男なら...!男ならそのくらいの敵に勝てなくてなんとする!?】

「っ...!こんな時に...!」

  桜は声の発信源を探し当てる。
  ...見れば、アリーナを見渡せる放送室に箒がいた。

「篠ノ之!こんな時に何やっている!!早く逃げろ!」

  桜が声を張り上げ、そう言うが、既に敵ISがロックオンしていた。

「ちっ...!」

  瞬時に桜は辺りを見渡す。

「(織斑はさっきので動けない。マドカちゃんの方は...よし、押しているから三機とも放っておいてもいいな。...なら...!)」

  放送室を狙っているのは目の前の一機だけ。
  そうと分かった桜はビーム兵器を付けている腕目掛けて接近する。

「動きに風を...心に水を!」

   ―――“風水・二閃”

  速く、研ぎ澄まされた二つの斬撃が、敵ISの両腕を切りつけると同時にかちあげる。
  狙いが逸らされたビームは空の彼方へと飛んでいく。

「...咲き誇れ!」

   ―――“乱れ桜”

  腕が弾かれ、隙だらけとなった敵ISの胴体に、桜は高速の連撃を放つ。

「...終わりだ。」

  ISが後退し、間合いが離れた所で桜はライフルを展開し、撃ち抜く。
  既に斬撃でボロボロだった敵ISはそれによって沈黙した。

「....ま、出力で上回っても技術が足りんな。...言っても意味ないか。」

  沈黙した敵ISに向かって桜はそう呟くが、返事はない。
  尤も、桜はそれが分かってた...いや、()()()()()が。

「...っと!?」

   ―――ギィイイン!!

  咄嗟に飛来した物相手に桜はブレードを振い、叩き落す。

「...って、こいつ、マドカちゃんの方にいたんじゃ...。」

  飛来したものはマドカとセシリアが相手をしている三機の内一機だった。

「....あぁ、そう言う事...ってか、容赦ねぇな...。」

  見れば、セシリアが動きを制限し、マドカが容赦なく吹き飛ばしていた。
  ...それこそ、悪鬼羅刹を彷彿させるような苛烈さで。

「あはははは!!遅い遅い!!」

「(....目を合わせたくありませんわ....。)」

  笑いながら一機を追い詰め、蹂躙しているマドカに、一度吹き飛ばされた機体を相手しているセシリアは、そう思わずにはいられなかった。

「..っと、まだ生きていたか。」

  それを見ながら、桜は先程弾いた機体相手にライフルを撃ち、黙らせておく。

「...このままなら、教師の部隊が来る前に終わるかもな。」

  マドカ達の方を見ながら、桜はそう思い、視線を横に向ける。

「...だからよ、無理して行こうとするな。織斑。」

「うるせぇ...!主人公は俺なんだ...!てめぇらが活躍してんじゃねぇ!!」

  桜は一夏にそう言うが、一夏はその言葉を一蹴してマドカ達の方へ行こうとする。

「...機体がその状態でなにができる?それではISを傷つけるだけだぞ?」

「うるせぇ!....いいぜ、邪魔するのならてめぇから倒してやる!」

「(頭に血が上ってやがる...。)」

  冷静ではないと即座に判断した桜は、一夏を無力化させようと構える。

「....っ!?」

「がっ!?」

  突然、桜は咄嗟に身を躱す。
  すると、倒したはずの強化機体が桜と一夏を狙っていた。
  なお、一夏は今の攻撃(弱め)で吹き飛んでいた。

「っ、こいつ...!」

  先程桜が吹き飛ばしてしまったせいか、距離が離れすぎていた。
  既に桜と一夏はロックオンされており、桜自身はどうとでもなるが、一夏はさっきの攻撃で吹き飛ばされ、絶体絶命になっていた。

「(間に合わない...!)」

  見殺しにするか。そう考え、放たれたビームを桜は凌ごうとする。
  その瞬間...。

「風水を、剣に宿す...!」

   ―――“瞬刃・一閃”

  一夏を狙っていたビームが、切り裂かれる。

「...!秋十君、戻ってきたのか。」

「はい!...【鈴が記憶が戻る際の頭痛に苛まれています。だから、早く戦いを終わらせようと。】」

「【...なるほど。分かった。】」

  プライベートチャンネルで秋十は桜にそう伝える。
  拒絶反応による頭痛は、放置するとどうなるかは桜にも分かっていないので、早急に片を付ける事にするらしい。

「【...俺が斬りこむ。そこをすかさずライフルで狙え。...俺の動きを何度も見た秋十君ならできるだろう?】」

「【...当然です!】」

  秋十のきっぱりとした返事に、桜は笑みを漏らし、敵ISに斬りかかる。

「凛として舞え....“円水斬”!」

  ビームの銃口が向けられるのもお構いなしに、桜は接近し、そのまま円を描くような軌道と剣の軌跡で切り裂く。

「...喰らえっ!」

「おまけだ!」

  切り裂かれた瞬間、秋十はライフルを撃ち、弾かれるように吹き飛んだ所をさらに桜がライフルで追撃した。

「...敵機、沈黙。...念のため、トドメ刺しておくか。」

  さすがに動かないだろうと思う桜だが、念には念を入れて、ブレードで頭に突き刺した。

「えっ、桜さん!?」

「...あー、大丈夫大丈夫。こいつ、無人機だから。」

  躊躇なく殺したのを見て、驚きの声を上げる秋十に桜はそう言う。

「無人機...?あ、ホントですね。」

  秋十は近づいて確認する。

「いつ気づいたんですか?」

「最初にブレードをぶつけた時。人の気配がなかったからな。」

「...ISでも読めない“気配”を読める桜さんェ...。...いや、心に水を宿せば俺もできそうですけど....。」

「やったな秋十君。君も人間卒業に一歩近づいたぞ。」

「あまり嬉しくありません。」

  軽いやり取りをしつつ、二人はマドカ達の方を見る。
  すると、あちら側も終わったようだ。

「教師陣も来たようだし、後は事情聴取ってとこか?」

「でしょうね。」

  戦闘よりもそっちのが面倒そうだなと愚痴る桜。

「...って、桜さん!早く鈴を...!」

「っと、分かった分かった。」

  すぐさま鈴の下へ向かい、桜は鈴に手を翳した。
  すると頭痛で苦しんでいた鈴は、痛みから解放されたのか、そのまま気絶する。

「...これでいいが...今までで一番長く放置していた。後遺症が残る可能性がある。」

「そんな...!?」

  神によって与えられた力による記憶の改竄。
  それに自力で抗った場合、何が起こるのかは誰にも分かっていなかった。
  だからこそ、いつも桜はすぐさま洗脳を解除するのだ。

「...まぁ、多少の後遺症なら俺でも治せる。...安心しろ。」

「....わかりました。」

  断言した桜に、とりあえずは大丈夫だろうと思う秋十。

「ところで秋十君。」

「なんですか?」

  ふと、思い出したように桜は秋十に問いかける。

「...どうして織斑を助けた?」

「....えっ?」

「あいつはお前にとって報いを受けさせるべき相手で、今回の戦闘では足を引っ張っていた。...俺も見捨てようとしていた。なのに、どうして助けたんだ?」

「......。」

  桜の言葉に秋十は沈黙する。
  どうして助けたのかという理由からではない。
  まるで“死んで当然”かのように語る桜の目に、少しばかり背筋の凍る思いをしたからだ。

「....俺は、案外都合のいい考えをしてますからね。....ただ、目の前で人が死ぬのが見たくなかっただけ。...例えそれが、恨みのある相手だとしても。」

「それは、人を殺した事がないからか?」

「多分そうだと思います。...死体を見慣れたくはありませんから。」

  今まで、何度か秋十は桜と共に違法研究所を破壊してきた。
  しかし、人を殺した事はなく、研究の破壊に留めていた。

「誰もが死なずにすむ...そんな甘い考えを、俺はまだ持っているんでしょう。」

  元々、秋十はかつての皆と仲良く暮らせる生活に戻りたいと願っていた。
  そんな、“誰もが幸せで済む”ような考えが、先程の結果に繋がったのだろう。

「...そうか...。」

「っ.....!」

  スッと、冷たくなる桜の瞳に、秋十は恐怖した。

「...早めに、その考えは諦めとけよ。...後悔するだろうから。」

「...分かってます。」

  ただ、上手く行かないのを知識として知っていたから、冷たい瞳になった。
  そういう風に、普通の人は先程の桜の冷たい瞳を解釈するだろう。
  だが、秋十はその“先”を感じ取ってしまった。

   ―――あんな“クズ”、死ねばよかったんだよ。

「(....桜、さん....?)」

  天才が故に理解されない。
  なるほど、的を射ている。そう、秋十は思った。
  どこか狂気染みた思考を感じ取ってしまった秋十は、そう思わざるを得なかった。

  天才であるが故に理解されないから、周りを鬱陶しく思う。
  そして、無駄に反発する者には、一切の容赦を与えない。
  ...そんな残酷さを持つ桜の本性を、秋十は垣間見た。

「(....気のせい...だよな?)」

  教師たちが来るまで、秋十は呆然と桜を見つめていた。











 
 

 
後書き
束は飽くまで一夏を追い詰めるためにISを嗾けているので、桜でも少々苦戦する方がいいと判断し、一機だけ超強化されてます。さらには桜が相手でもお構いなしに襲い掛かります。

桜は本当に敵対した場合、容赦なんて存在しません。
元々、10年以上眠っていたので、“心”が子供のままな部分があり、原作とかの束さんっぽい残酷さを持っています。 
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