戦姫絶唱シンフォギア~装者が紡ぐ破壊者の心~
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1話「2翼のライブと破壊者」
前書き
今回の話は戦闘描写がとても少ないです。
~士Said~
「ふぅ~。久しぶりの日本か。翼からの手紙がなかったら、戻らなかっただろうな」
そう呟いた俺は、マシンディケイダー(以後、ディケイダー)から下りて、カバンから手紙を取り出す。
その手紙には翼のパートナーである天羽奏のことなどが、書かれている。
そしてもう一枚、手紙ではなくとあるチケットが封入されていた。
「………翼と会うのも、7年ぶりになるのか」
俺は自分の記憶を探すために、風鳴家に養子に入った2年後に、一人で旅に出た。
その道中で色々あったが、今はいいだろう。
「さて、ここから会場までは二時間ぐらいか。……よし、開演までには間に合うな」
俺はそう呟くとディケイダーに乗って、会場へと向かう。
~翼Said~
「……来てくれるかな、士義兄さん」
「それって、翼がよく話してた翼の義兄さんのことか?」
誰にも聞こえないくらいの声で呟いたつもりが、近くにいた奏には聞こえてしまったらしい。
「うん。7年前に自分の記憶を探しに旅に出てから、会ってなかったんだ」
「でも、あのチケットを送ったんだろ?」
「うん。だから今日のライブが終わったら、少し話したいなって思ってる」
「じゃあ、そのときはアタシのことも紹介してくれよ。翼」
「うん。私も奏のことを、士義兄さんに紹介したいから」
「奏、翼、ここにいたのか」
「………っ、指令」
「こりゃまた、弦十郎の旦那」
そう言って現れたのは私の叔父にあたる風鳴弦十郎だった。
「わかってると思うが、今日は「大事だって言いたいんだろ?わかってるから、大丈夫だって」ーーーふっ、わかっているならそれでいい。今日のライブの結果が人類の未来をかけてるってことにな」
指令は奏に言葉を被せられながらもそう言った。
指令に電話が掛かってきた直後にこう言った。
「わかった。直ぐに向かおう」
私はそれで電話の相手は櫻井女史だと確信した。
「ステージの上は任せてくれ」
「っん。……そうだ、翼。士君と会ったら、伝えてくれ。久しぶりに家にも来いってな」
「はい。そう伝えておきます」
私がそう言うと、指令はこの場を後にした。
「さて、難しいことは旦那と了子さんに任せてさ、アタシらはパァーっと………ん?」
私が少し緊張していると、奏が後ろから抱きついて言った。
「真面目が過ぎるぞ?翼。あんまりガチガチすぎると、そのうちポックリいきそうだ」
「………奏」
「アタシの相棒は翼なんだから。翼がそんな顔してると、アタシまで楽しめない」
「…………うん。私達が楽しんでないと、ライブに来てくれた皆も、楽しめないよね」
「わかってんじゃねぇか」
「奏と一緒ならなんとかできそうな気がする」
「うん」
「行こう、奏」
私はそう言って立ち上がる。
「あぁ、アタシとアンタ。両翼揃ったツヴァイウィングはどこまでも遠くへ翔んでいける」
「どんなものでも越えてみせる」
「それに、翼の義兄さんも見てるんだ。気合いれろよ?」
「うん」
そして、私達はライブのステージへと向かった。
ライブが始まって私と奏は観客の皆の声援を受けながら歌っていた。
そして、次の曲に移ろうとした時だった。
ドガァァァァンッ!
観客席の一部が爆発した。
「………ノイズが来る!」
「きゃぁぁぁぁぁあっ!」
奏がそう言った瞬間、誰かが悲鳴をあげた。
そして、会場にノイズが現れた。
「ノイズだ!逃げろ!」
会場にいた皆はノイズが現れたことに混乱するなか、次々に逃げていく。
「助けてくれぇぇぇぇッ!」
「死にたくない、死にたくない!」
次々にノイズに触れられ、炭化していく人達。
「翔ぶぞ、翼。この場に槍と剣を携えているのはアタシ達だけだ」
「で、でも、指令からはなにも!って、奏!」
「♪Croitzal ronzell Gungnir zizzl ♪」
奏は聖詠を歌いながら、ノイズのもとへと走っていく。
その身に聖遺物である、ガングニールを纏いながら。
「 ♪Imyuteus amenohabakiri tron ♪」
私も奏を援護するために聖遺物、アメノハバキリを纏った。
奏は次々とアムードギアである槍を使ってノイズを倒していく。
私もアムードギアである剣を使ってノイズを倒していく。
すると、今まで順調にノイズを倒していた奏に異変が起きた。
「っ!時限式もここまでか」
その言葉は、奏がギアを纏える時間が切れかけの状態になったことを意味している。
ドゴオオオオオオオンッ!
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
スタンド席が崩れ、一人の少女がそれに巻き込まれて落ちた。
そして、その少女に向けて突撃するノイズ。
それを防ぎに行った奏。
「駆け出せ!」
ノイズの猛攻を防ぐ奏だったが、ギアの所々にヒビが入っていく。
「奏!」
私は奏の所に向かおうとするものの、その道をノイズに塞がれる。
「奏!」
大型ノイズ2体の攻撃を槍で受け止める奏。
だが、その攻撃を防ぎきると同時に纏っていたギアが少し弾け飛んだ。
そして、その弾け飛んだギアの欠片が、先程逃げた少女に当たってしまう。
「おい、死ぬな!目を開けてくれ!生きるのを諦めるな!」
奏が倒れた少女に近づきそう叫ぶ。
「フハハハハハハッ!聖遺物を纏う者もこの程度か」
そんな中、私の近くから男の声が聞こえた。
「誰だ!」
「小娘どもに名乗るつもりはないが、冥土の土産に教えてやろう。我々は大ショッカー!いずれ、この世界を支配するものだ!」
そう言って姿を見せたのは、異形の怪物だった。
その怪物は灰色の牛のような姿をしていた。
そして、その怪物の後ろには同じような怪物が数十体存在していた。
私はふと、奏の方を見る。
だが、次の瞬間に私は奏が何をしようとしているのかを理解してしまった。
「だめよ、奏!それを歌ってはいけない!」
「っ!?まさか、絶唱を歌うのか!?くっ!お前ら、あの小娘を殺せ!」
目の前の怪物がそう言うと、その後ろにいた怪物2体が奏のもとに向かって走り出した。
「奏!逃げて!」
私がそう言うも、奏は逃げようとはしない。
「生きることを諦めるなと言ったお前が、生きることから逃げるのか?」
様々な爆音などが響く中で、そんなことを言う人の声が聞こえた。
「それに、ノイズといい、お前ら大ショッカーといい、7年ぶりに義妹と会う邪魔をするんじゃねぇよ!」
ガン!ガン!
その声と共に、奏に向かって走っていた2体の怪物が吹き飛んだ。
そして、私はその声に懐かしさを感じていた。
「士義兄さん?」
~士Said~
「こういうときに限って渋滞に引っ掛かるなんて最悪だったな」
ライブの時間に30分遅れて会場についた俺。
だが、そんなことを言っている場合ではなかった。
会場の入口から大勢の人が走って逃げているからだ。
それに、会場の方から微かに爆音が聞こえる。
「……ノイズか。それとも、アイツ等か」
俺はそう呟くと、あるものくるんだ風呂敷を持って、逃げ出してくる人混みを会場の中を目指して突き抜けていく。
会場の中に到着した俺が見たものは、大量のノイズとそれと戦っている二人の少女だった。
「翼とあれは、天羽奏か?」
「おい、死ぬな!目を開けてくれ!生きるのを諦めるな!」
俺がそんなことを呟いていると、天羽奏が倒れている少女に向けてそう叫んだ。
「フハハハハハハッ!聖遺物を纏うものもこの程度か」
俺の耳にある声が聞こえた。
その声が聞こえた先には、灰色の怪物ーーーーーオルフェノクがいた。
「小娘どもに名乗るつもりはないが、冥土の土産に教えてやろう。我々は大ショッカー!いずれ、この世界を支配するものだ!」
それも、ざっと数えて15体はいる。
「っ!?まさか、絶唱を歌うのか!?くっ!お前ら、あの小娘を殺せ!」
オルフェノクの恐らくはリーダー的な位置にいる奴がそう言うと、2体のオルフェノクが天羽奏のもとに走ってきた。
俺は懐から、ライドブッカーを取りだし、それをガンモードにし、天羽奏に近づいていく。
「生きることを諦めるなと言ったお前が、生きることから逃げるのか?」
天羽奏に近づく途中で俺はそう言う。
「それに、ノイズといい、お前ら大ショッカーといい、7年ぶりに義妹と会う邪魔をするんじゃねぇよ!」
ガン!ガン!
俺はノイズとオルフェノクに向けてそう言うと、天羽奏に向かって走っていた2体のオルフェノクに向けてガンモードのライドブッカーで、エネルギ弾を撃った。
「士義兄さん?」
翼のそんな声が聞こえるが、今はそれどころじゃない。
「お、おい、アンタ。ここは危険なんだ、できればあの子を連れて逃げてくれ!」
「そいつは無理な相談だ。俺は用があってここに来たんでな」
俺はそう言って天羽奏の隣に立つ。
「俺よりもお前があの子を連れて逃げた方がいいんじゃないか?そのギアも限界なんだろ?」
「なっ!?なんで、アンタがギアのことを知ってるんだ!?」
「そんなことは、後で話す!今は、あの子をーーーー」
俺がその先のことを言おうとしたとき、手に持っていた風呂敷から光が漏れた。
「……なるほど、お前が探していた適合者って奴はこいつのことだったのか」
俺はその風呂敷を取り、その中にある一振りの剣を手に取った。
「天羽奏。そのギアを解除して、こいつを使え」
俺はその剣を天羽奏に渡す。
「それは、完全聖遺物エクスカリバー。もう覚醒済みだ」
「………今はありがたく使わせて貰う。だが、話は後でちゃんと聞くからな!」
「ふっ……。なら、さっさとこの化物どもを倒さないとな」
俺はそう言って懐から、バックルを取り出した。
「倒すって、アンタには無理だろ」
「いいから、黙ってその子を守ってろ」
俺が取り出したバックルには中心部に赤い結晶玉のような物が埋め込まれている。
俺はそのバックルを腹部に当てる。
すると、バックルからベルトが伸びて、腹部に装着される。
俺は装着されたバックルの両側にあるハンドルを外に引く。
そして、手に持ったライドブッカーをブックモードにして、その中から一枚のカードを取り出す。
「貴様!我々の邪魔をするとは、ただの人間ではないな?何者だ!」
「通りすがりの仮面ライダーだ!別に覚える必要はない!」
「変身!」
俺は取り出したカードをバックルに装填する。
そして、今度はハンドルを内側に押した。
『 KAMEN RIDE・DECADE 』
そんな効果音の様なものと共に、俺の姿は変わった。
全てを破壊する破壊者へと。
その姿は大半をマゼンタが占め、所々に白と黒が入り、そして複眼が緑の姿。
「なに!?ディケイドだと!」
「生憎と今はお前らと遊んでる暇はないからな。さっさと終わらせてもらうぞ」
俺はそう言ってライドブッカーから新たにカードを一枚取り出す。
そして、先程と同じようにそのカードをベルトへと装填する。
『 KAMEN RIDE・FAIZ AXEL 』
その効果音と共に俺の姿が再び変わる。
全体を黒が占め、胸にできたフルメタルラングが持ち上がり、複眼は赤色の姿へと。
「お前らに付き合うのは十秒間だけだ」
俺はそう言うと、左腕に装着されたファイズアクセルを起動させた。
『 Start Up 』
その効果音と共に俺は姿を消した。
いや、光の速さで動いていた。
手始めに全てのノイズを蹴りで消滅させる。
そして、15体のオルフェノクに蹴りをいれて、今度はカードの枠が金色のカードを取りだして、それをベルトへと装填する。
『 FINAL ATTACK RIDE・FA・FA・FA・FAIZ !! 』
その効果音と共に、15体のオルフェノクに向けてアクセルクリムゾンスマシュッを連続で叩き込んだ。
その後、俺の姿は最初のディケイドの状態に戻る。
そして、背後には灰へと変わっていくオルフェノクとすでに消えて灰となったノイズがいた。
それを見た俺は変身を解除し、唖然としている妹のもとへと歩いていく。
「久しぶりだな、翼。元気にしてたか?」
「……士義兄さん。あの姿はいったいなんなの?それに、大ショッカーとかいう奴等は何をしに来たの?」
次々と質問をしてくる翼。
「そのことについては、弦十郎のおっちゃんのところで話すさ」
オルフェノクとノイズを倒してから約二時間が経過した。
俺は現在、私立リディアン音楽院の地下にある、とある施設に来ていた。
「では、士君は旅をしながら大ショッカーという連中と、戦っていたのか」
「あぁ。その時にアイツ等から奪ったのが、このエクスカリバーだ」
俺はそう言って手に持ったエクスカリバーを、俺の義理の叔父にあたる、弦十郎のおっちゃんに見せる。
「………では、大ショッカーの目的は何だというんだ?」
「アイツ等の目的は世界を支配することだろうな。その為に、今日のような怪人に人を無条件で殺させる」
俺がそう言うと、その場にいた人達の表情が強張った。
「まぁ、俺が大ショッカーを潰せば問題がないんどけどな」
「っ!でも、それだと士義兄さんが!」
俺の発言に翼が反論する。
「なら、誰が奴等を倒す?奴等に対抗できるものが俺達にあるか?」
「それなら、聖遺物を持つ私達も戦えば!」
「そいつは無理だ。奴等には到底及ばない」
「なら、エクスカリバーはどうなの?君が言うには、もう覚醒済みなんでしょ?それなら常時、フルパワーで扱える筈よ」
白衣を着た女性ーーー櫻井了子女史がそう言う。
「エクスカリバーは所有者を自身で選ぶ。そして、それに選ばれたのは天羽奏だ」
俺がそう言うと、全員が天羽奏の方に視線を向ける。
「だが、奏は今はまだ万全の状態ではない。それに、もしギアを纏えば、今度は本当にーーーー「その心配はいらない」なに?」
弦十郎のおっちゃんが言いきる前に、俺が話に横やりを入れる。
「エクスカリバーには所有者の治療を行う能力がある。だから、天羽奏がエクスカリバーを持っていれば治る筈だ。………リンカー投与による体の侵食もな」
「士義兄さん、それは本当なの?」
「本当だ。実際に、俺もその能力に救われたこともある」
「……士君。先程から気になっていたんだが、いったい誰からここのーーー特異災害対策機動部二課を聞いたんだ?」
弦十郎のおっちゃんが、このタイミングでもっともなことを言う。
「義親父に聞いたんだよ。手短にだが、大体の事を聞いた。翼が戦ってることも、ここがどういう組織なのかもな」
「やっぱりか………」
弦十郎のおっちゃんが溜め息混じりにそう言った。
「弦十郎のおっちゃん、俺を二課に入れてくれ。俺はしばらく日本にいるつもりだから、丁度いいだろ?」
「……それは、大ショッカーと関係があるのか?」
「……アイツ等は今まで目立って行動したことは少なかった。だが、今回は日本で目立つような事件を起こしやがった。なら、少なからずとも、アイツ等は日本で何かをする筈だ」
「それを防ぐために、士君を二課に入れろというのか?」
「それだけじゃない」
俺はそう言って翼を見た。
「アイツ等に、翼の夢の邪魔をさせないためだ」
俺がそう言うと、弦十郎のおっちゃんが目を丸くする。
「ふ、ふははははっ!そういうところは、相変わらずだな!よし、士君の二課への入隊を認めよう!」
笑いながらそう言った弦十郎のおっちゃん。
「士義兄さん。そ、その、私のためと言ってくれて、ありがとう」
翼が俺の前に来てそう言った。
「気にするな。翼は俺の義妹なんだからな」
「うん。あ、そうだ、士義兄さん。遅くなったけど、紹介するね。奏」
翼に呼ばれ、天羽奏が俺達の近くに来た。
「士義兄さんも知ってると思うけど、彼女は天羽奏。私の大切な相棒なんだ」
「翼に言われたけど、改めて、天羽奏だ。よろしくな、士」
そう言って、手を差し出してくる天羽奏。
「いきなり呼び捨てかよ。……まあ、いい。翼の義兄の風鳴士だ。よろしくな、天羽」
俺はそう言って天羽と同じように、手を差し出して握手する。
「天羽じゃなくて、奏でいいよ。私も士って呼んでるんだし」
「………わかった。奏。これでいいだろ?」
「あぁ。………それと、あの時の言葉ちゃんと覚えておくよ」
奏がそう言った。
俺が言ったことといえば、「生きることから逃げるのか?」と問いかけたぐらいだ。
「なら、次からは言わせないでくれ。そのために、こいつも渡しておくんだからな」
そう言って、俺が差し出したのはエクスカリバーだった。
「でも、これは………」
「さっきも言ったが、そいつに選ばれたのは奏だ。なら、そいつは奏が持つべきだ。その体を治すためにもな」
俺はそう言って無理矢理エクスカリバーを奏に渡した。
「そいつで早く体を治して、翼と一緒に歌を俺に聴かせてくれ」
「うん(あぁ)!」
そして、物語は二年後に移る。
後書き
次回、2話「目覚める欠片の鼓動」
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