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『夢の中の現実』

作者:零那
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『最期』



零那は夢中で刺し続けた。
今迄の過去の人生、コイツを恨み、憎み、どれだけの殺意を抑え込んで来たか。

すべての憎悪をぶつけるかのように刺し続けた。

零那を無理矢理オンナにした汚いコイツの性器もギッタギタに切り刻むかのように刺し続けた。

コイツのせいで、
コイツのせいで零那は...

コイツのせいで...っ!!!!!

どれだけ、どれだけ苦しんできたかっ!!!!!

当時の悔しさやら何やら抑え込んだ闇が心を支配して手が止まらん。
涙も止まらん。

泣き叫んだ。

殺意に狂った...

狂気に満ち溢れてた...

こんな姿、父さんに見られてしまったら生きていけん...

むしろ生きてたらあかんやん...
こんなことしといて...

ホンマは、このまま出頭するつもりやったけど...

コイツもう死んでしもたみたいやし、零那も死のう。

でも、一瞬冷静になった。

コイツの血が付いたモノを、この躰に入れたく無かった。

最後に、心臓に突き刺したままにした。

父さんが持ってきてたモノを鞄から取り出す。

この時、多数の人だかりに気付くこともなかった零那。

『父さん、こんな娘でごめんなさい...一生許さんでええから』

自殺するのは何回目やろな。
今回はもうホンマ死なしてな。
最後にしたい。

勢いつけたら失敗しそぉやから刃先を直接心臓に当てた。
グッ!!とチカラいっぱい刺し込んだ。

...痛くない。

???

目を開けたら、警察官に囲まれてた。
両脇、腕...ガッツリ抑えられた。

零那は泣き叫んだ。

『死なせぇやぁっ!!
放っとけやっ!!放せっ!!
肝心なときは助けんくせにっ!!
警察ホンマむかつくわっ!!』

なんでいっつもいっつも本気で死にたいときに邪魔ばっか...

ひと暴れして体力は尽きた。
そう見せかけた。

普通なら自分よりデカイ男1人殺せば体力無いやろうな。
今の零那は体力無いどころか体中からチカラがみなぎってる。

『もう疲れたから殺してや』

『たとえどんな事情があっても罪は償いなさい』

うわ。
吐きそう。
今の零那に、そんな当たり前の綺麗事は要らんねや。

隣にいる警官の銃なら取れそう。
ごめんなさい...
次こそ終わりにします。

警官の殆どはアイツの死体の傍。
後ろはガラ空き。
サイレンは聞こえる。

いちかばちか。
チャンスは1回きり。
一瞬だけ。

銃を抜いて後ろに距離を取る。

あのときも、銃を自分に当てた。
其れを阻止した組長は、今はもう居らん。
誰も零那を止めれん。

あのとき死ねんかった。
でも今は死ねる。

あのとき死なんかったからこそ、父さんと夢の時間を過ごせれた。

組長、あのとき、助けてくれてありがとぉ。
零那もソッチ逝くね。
やっと逢えるねっ。
説教はたっぷり聞くから...

―――――っ!!!

終わった。
何もかも...。

ごくごく、ありふれた復讐劇。

父さんを守ることは出来ただろうか...
無事に家に向かってるだろうか...

こんな間違ったことしか出来ん娘を馬鹿やと罵って。

父さんは父さんの人生を、チャント前に歩んでいって下さい。

いっぱいいっぱい、零那に父親の愛をくれて、ありがとぉ...

ほんまにほんまにありがとぉ...!!

こんな風にしか出来んくてごめんなさい...

何回も死のうとして失敗してきたけど、生きてて良かったと、心底思うことができたよ。

ありがとぉ...

ばいばい、父さん...


-END-


 
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