ぶそうぐらし!
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第15話「そろそろ」
前書き
やばい....!原作の話がほとんど出来なくなったから話が思いつかない...!
...自業自得ですね。
=遼side=
「....遼先輩。」
「ん?なんだ?」
屋上から戻り、昼も過ぎ再び暇になって来た時、美紀が俺を呼んだ。
「...ちょっと気になった事があって...席、外せますか?」
「いいぞ。基本的に暇だし。」
「私ら、やる事なんて定期的な見回りぐらいだしな。」
その見回りも既に終わっている。
どうやら俺と美紀だけで話したいらしいので、廊下に出て、校長室に入る。
「....私、ずっと由紀先輩が気になってこの本を読んでいたんですけど...。」
手に持っているのは、昨日取ってきた二重人格に関する本。
「何か気になる事が?」
「はい。...もしかして、由紀先輩は本当は現実逃避してないんじゃないかと思うんです。」
「....なに?」
由紀が本当は現実逃避していない?
「二重人格から調べましたけど、都合の悪いものだけ見えなくなって、その矛盾に気づきもしない。そんな都合のいい病気なんてないんです。」
「そうなのか。知らなかったな。」
「...それに、現実逃避をしているにしても、どう考えてもこの状況で逃避出来る訳がない。していたとしても、確実に心が破綻してしまいます。」
元々現実逃避は、その状況が認められない時にする事だ。
つまり、否が応でも認めざるを得ないこの状況だと、現実逃避はできない...?
「....現実逃避をした振りをする事で、皆さんの心の安定を図り、そしてそれを本気にした皆さんを見て後に引けなくなって...そんな感じかもしれません。」
「なるほど....。」
俺はパンデミックが起きる前の由紀を知らないからな...。何とも言えないが...。
「...先生から聞いた事があるな。」
「....?」
「以前...パンデミックが起きた直後辺り、まだ由紀がおかしくなっていなかった時期にな。先生はいつも泣いている由紀を何度も励ましていたんだ。」
これは先生が由紀の精神状態を気にして調べた事を、偶々俺に言った時についでに教えてもらった事だ。“もしかしたら”..そう思ってしまった仮説らしい。
「由紀はずっと思い詰めていたらしい。胡桃や悠里が追い詰められた状況でも頑張って先生と協力して、バリケードを作っていた時も自分は全然役に立ててないって。」
「......。」
「....で、そんな時先生は由紀にこういったそうなんだ。」
―――この先何があっても、その笑顔を忘れないで。
先生は完全に善意で言っていた。だけどそれは....。
「先生は由紀の笑顔で皆も助かってると励ました。だからそう言ったんだけど...。」
「逆にそれが足枷...由紀先輩がああなった原因かもしれないと...。」
「先生もそう思って、少し後悔していたよ...。」
自分が由紀をああいう状態にしてしまったのではないか...ってな。
だから先生はいつも由紀に付き合ってあげている。
「...まぁ、それでも助け合っている関係には変わりない。由紀のあの状態が素であろうと演技であろうと、今は重要視する必要はない。」
「で、でも...それだといざというとき...。」
「なに、あれが演技であるなら、頃合いを見て元に戻るくらいの技量は持ち合わせてるだろう。」
俺も気づけない程のあれが演技だったらそれはそれで驚きだけどな...。
「....それに。」
「それに?」
「.....矢面に立つのは、俺の役目だ。」
囮になるのも、殿を務めるのも、“殺す”事を最も担うのも、俺の役目だ。
「っ.....。」
「銃を武装して、戦えるのは俺だけだ。胡桃もシャベルで戦えるが、あれは保険でしかない。...実際にまともに戦えるのは、俺だけなんだ。」
「遼先輩....。」
正直、もっと武闘派の奴らは生き残っていると思っていた。柔道部とか、剣道部の奴らは、戦えたはずだったし。
....でも、生き残っていたのは、女性だけ。運動部なのは一人だけだった。
ずっと日本で平和に暮らしていた皆に“殺し”の経験を積んでほしくない。だから、少しでも耐性のある俺が戦わなくてはいけないんだ...。
....俺だって、人殺しはした事がないがな...。
「...わりぃ、変な事言っちまったな。」
「い、いえ....。」
「話はこれで終わりか?」
「はい。...戻りましょう。」
校長室を出て、生徒会室に再び入る。
「お、戻って来たか。」
「まぁ、大した事ではないからな。」
この後は特に何かある訳でもなく、一日が過ぎて行った。
翌朝、曜日で言えば土曜日であるため、由紀も授業に行くこともなく、朝食後は皆で暇していた。
「こっちが食料の欄でこっちが小物。太陽電池はこれね。」
「はい。」
美紀は自分のやる事を見つける過程で、悠里が付けている家計簿の見直しを手伝っていた。
「数え直した方がよさそうですね。」
「そうね。後で倉庫に案内するわ。」
「今でもいいですよ。」
「そう?それじゃあ―――」
悠里が倉庫に案内しようとした瞬間、由紀が立ちあがり、
「体育祭やろうよ!体育祭!」
「....はい?」
そう言い切った。...思わず間の抜けた声が出ちまったよ。
「なんでいきなり体育祭?今読んでた本は?」
「飽きた!」
「おい。」
由紀にとっちゃあまり馴染みない事だけど、読書は重要だぞ。読書は。
「...で、なんで体育祭?」
「みんなで体動かすと楽しくなるよ!つらい悩みもすっきり!」
「...お前、悩みないじゃん。」
胡桃の言う事は尤もだ。悩みなさそうにしか見えん。
「それが...遠足から帰ってごはんがおいしくって...。」
「ダイエットじゃねぇか!?」
あー、男の俺はあまり会話に入るべきではない話題だな。これ。
「....あの...。」
「ん?なんだ美紀。」
こっそりと美紀が俺に話しかけてくる。
「体育祭って...そんな事する余裕があるんですか?」
「あー、一応部活として活動もするからな。」
「部活....ですか?」
あ、美紀はまだ知らなかったな。一応入部してないし。
「学園生活部として、いくつか心得があるんだ。それの第五条に“部員は折々の学園の行事を大切にすべし”ってのがある。だからこれも部活の内に入る。」
「は、はぁ...?」
俺もノリに乗れないんだがな。一応、合わせてはいる。
「由紀の言う通り、一度この状況での悩みを忘れて楽しめば、少しは楽になるだろうって俺は思っている。...由紀はいつもいいタイミングで何か提案してくれるからな。」
「そうなんですか...。」
...と、そうこうしている内に体育祭の準備をする事になったようだ。
「....これでよし、と。」
テニスボールに赤色と白色のガムテープをそれぞれに巻きつける。
学校内でできる競技は徒競走と二人三脚、玉入れ、後は綱引きぐらいだ。
悠里と先生がポスターとかを用意して、俺たちは競技の準備をするという役割に分けている。
「他に張ってない奴は....。」
「わふっ!」
「お、サンキュ太郎丸。」
今まで太郎丸は放送室で飼っていたが、それではストレスも溜まるとの事なので、今日から俺たちと一緒に活動する事が多くなった。
....美紀は相変わらず嫌われているようだが...。美紀もそれについては落ち込んでたし。
「これで全部だな。」
「...もっと他にやるべき事があると思うんですが...。」
「ははは、そう言うなって。」
美紀はまだここでの雰囲気に慣れていないからそう思うのも仕方ない。
「何言ってるのみーくん!やるべき事よりやりたい事だよ!」
「それ、思い切りダメ人間のセリフですよね。」
「それなんてニーt...いや、なんでもない。」
親父だってやるべき事よりもやりたい事だし。
そんなこんなで体育祭(校内)が始まった。
「体育祭と言えば徒競走だよ!」
「さっぱりわかりません。」
まず最初の種目は徒競走。廊下の端から端までが範囲だ。
参加者は俺と胡桃と美紀。...さすがに体力差があるからハンデ付きだ。
「一勝負どうだい?」
「お?陸上部相手でも負けんぞ?」
「...あの、そのシャベルと武装は?」
俺はアサルトライフルと弾倉をいくつか。胡桃はシャベルを背負っている。
「もちろん。」
「ハンデ。」
「....なるほど。」
元々いつもこれぐらいで走ってるからな。むしろないと身軽すぎて走りづらい。
「めぐねえの所までだよ。位置に着いて、よーい....ドン!」
「「「っ...!」」」
由紀の合図に一斉に走り出す。
「一位工藤君、二位恵飛須沢さん、三位直樹さんです!」
先生の所まで走り抜け、結果が発表される。
「は、はえぇ....!」
「ハンデ付きでも負けるとは...。」
....正直言うと、ワクチンで感染を防いでから、身体能力がいくらか上がってるんだよな...。...これってドーピング?
この後も玉入れや綱引きなどをしていった。
...種目をやる度に由紀の先輩としての威厳(元からない)が崩れて行ったけどな。
意外なのは悠里が綱引きに異様に強かった事か...。胡桃にも勝ってたし。
「楽しかったか?」
「...ええ、まぁ...。」
全ての種目を終わり、玉入れの片づけの途中、俺は美紀にそう聞いた。
「少しは慣れただろ?」
「まぁ、少しは...。」
まだ慣れていない所もあるんだろう。歯切れの悪い返事だ。
「...“こんな事をやってていいのか”って所か?」
「っ....。」
「...まぁ、そう思うだろうけど、心を休めるにはちょうど良かっただろう?」
これは余計な事をしているというより、由紀の言った通り“悩み”をすっきりさせるためにやっている事だ。
「そう...なんですけど....。」
「俺も、胡桃や悠里でさえ、最初は馴染めなかったさ。少しずつ慣れればいい。ここで過ごしていく内に、何をすべきかも見つけられるかもしれないしな。」
不安なのも分かる。
このままでは、いつか食料がなくなるし、世界がどうなっているのかも分からん。
だから美紀はこんな事をしてていいのかと思ったのだろう。
「.....友達の事か?」
「っ.....。」
...図星、か。...これは少し席を外した方がいいな。
「...とりあえず、片づけが終わったら屋上辺りにでも行こう。」
「......はい。」
そういう訳なので、さっさと片付けを終わらせ、皆に一言言ってから屋上へ行く。
「確か...圭だったか?」
「...私、圭の名前教えましたっけ?」
「呟いたのを聞いただけだ。名字はしらん。」
屋上にて、風に当たりながら会話をする俺たち。
「....やっぱり、心配なんです。いくらなんでも一人でだなんて....。」
「俺と違って、武器も持ってないだろうしな...。」
武器なしなんて、蘭でないと無理だろう。
「....緊急時に避難先として選ぶ場所...。」
「え...?」
「少しぐらいは分かるだろう?緊急時に避難する先として指定されている場所。」
公民館とか、とにかく人が集まるような場所...。...そう、
「...学校...とか?」
「その通り。もしかしたら、大学とかに避難している可能性もある。」
避難先として指定されているのは、学校もだ。
「...でも、人が集まるのなら...。」
「奴らも多いだろうな。」
むしろ、避難先に指定されている場所が一番危ないかもしれない。
「...どの道、そろそろ俺は生存者の探索に出かけようと思っていたんだ。」
「え....?」
「....まぁ、なんだ。ついでになるが、その圭って子も探してやるよ。」
希望は薄い。だけど、それでも諦めたくないのは分かる。
だから、俺は美紀に対してこう言った。
「...ありがとうございます。」
「おう。もし見つけたら、連れて帰るから、歓迎の準備ができるように美紀も早めに馴染んでおけよ?」
「ふふ...わかりました。」
...これで美紀も少しは気が楽になっただろう。
「....遼先輩。」
「...なんだ?」
「学園生活部に、正式入部をさせてください。」
「そういえばまだ仮入部だったな....。」
ぶっちゃけて言えば仮でもどっちでも変わらないんだがな。決意の表れってとこか?
「....悪いが、それは悠里か先生に言ってくれ。入部の担当はあっちだ。」
「えっ、あ、そうですね。」
「部長は悠里で、顧問は先生だしな。一応、俺はただの一介の部員だしな。」
なんか締まらない会話に、俺と美紀は少し笑う。
「...さて、戻るか。俺たちの部室に。」
「....はい。」
そう言って、俺たちは生徒会室へと戻っていった。
=蘭side=
「あの....ここは...?」
「親友の家。」
私は圭ちゃんを連れて、遼の家まで辿り着いた。
「...あ、開いてた。ラッキー。」
「か、勝手に入っていいんですか?」
「今更だよ。これまで、他の家にも無断で入ってたんだから。」
それに、もう暗いからね。むしろ遼の家なら安全かもしれない。
「....っと、奴らが入った形跡はないね。」
「シャッターも全部そのままでしたね...。」
このパンデミックが起きた時、遼が何をしていたのかは分からない。
だけど、一度遼は家の中で安全を確保して学校へ行ったのは分かる。
「....となると武器も食料もなさそうだねー。」
中が安全なのはいいけど、暗いままだし...。
「ダメ元で電気を付けてみたり...。」
「...電気、通ってないと....」
手探りで電源を見つけ、入れてみる。
すると、電気がついた。
「.....あれ?」
「ついてる....?」
おかしい、圭ちゃんが言うに、電気は止まっているはず。
現に、今まで私が仮拠点にしてきた家も全て電気が止まっていた。
なら、どうして.....。
「...まさか、自家発電機?」
「そういえば、ソーラーパネルがありましたね。」
よくよく遼の家を見れば、ソーラーパネルがあったのを思い出す。
「じゃあ、もしかして....。」
とりあえず外に光が漏れないように気を付けながら、奥の方へと進むと...。
「...あー、やっぱり。」
「凄いですね、この家。」
電気が溜められていて、これで家の電力を賄えるようになっていた。
「これで家の中を漁りやすくなったかな。」
「って、漁るんですか!?」
そりゃあ、遼はもう学校に行ってるんだし。
「食料とか武器、残ってないかな~?」
「食料はともかく、武器なんて....。」
「あ!ハンドガン見っけ!」
「どうして!?」
フローリングのちょっと怪しいを思った所を探ると、よくある隠し場所みたいに板が外れて、中にハンドガンといくつかの弾倉が入っていた。
「私のRPG能力を舐めないでね!」
「いやいや、そうじゃなくて、どうして普通の家に銃が!?」
どうしてって言われても....ねぇ?
「そういう家だから?」
「そういう家って....!....はぁ、もういいです。」
「サプレッサーは....ここだっ!」
テレビの裏にある小さな箱を開け、サプレッサーを見つける。
「むふふ~、遼は探すの下手だね~。隠し武器がそのまま残ってるよ。」
「隠し武器が普通あると思いませんよ...。」
武器がある事は分かっているけどね!
「食料は....おお!電気が通ってたから、全部無事だ!」
「本当ですか!?」
さすがに元々賞味期限が短い物は無理だったけど、それ以外はほとんど無事だった。
「それにこの電気の貯蓄量から考えると...お風呂にも入れるよ!」
「っ.....!」
その事に圭ちゃんも喜ぶ。
女の子ならお風呂に入れるのは嬉しいもんね!
「後は音と光を外に漏らさなければ、今日は楽しく一夜を過ごせるよ!」
「ホントですか!?」
こんな状況で、楽しく一夜が過ごせるのは精神的にも良い。
その事が圭ちゃんも分かっているのか、私達は大層喜んだ。
「そうと決まれば色々と準備しなきゃねー。」
「あ、そういえば明日には学校に着く予定でしたね。」
そう。私達が遼の家を仮拠点にしたのは、明日の昼の内に学校に着くためだ。
「そっ。武器と食料もあればいいかなって思ってたけど、やっぱりあったよ。」
「銃とか、音さえ大きくなければ強力ですからね...。」
何度か警官のゾンビから銃と弾を拝借したけど、音が大きいため、一切使わなかった。
でも、これならサプレッサーもあるし少しは使える。
「じゃあ、私は荷物とかを整理するから先に入ってなよー。」
「いいんですか?じゃあ....。」
着替えとかはないから、色々と面倒だけど、それでも圭ちゃんはそう言ってお風呂に行った。
さて、荷物を整理しようか。
「もうすぐ会えるよ。遼。」
学校にいるであろう大好きな親友を思い浮かべ、私は笑った。
後書き
以前遼はシャッターを開けましたが、なんの拍子にまた帰ってくるか分からないので、出る際にもう一度閉めたという事にしておきます。(書いてから気づいたなんて言えない...。)
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