ぶそうぐらし!
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第14話「ようこそ」
前書き
テキパキと原作の展開は進めて行きたいです。(オリジナルの部分もあるので)
みーくんが学園生活部に入ります。
=遼side=
「....さて、何か聞きたい事があればどんどん聞いてくれ。」
“遠足”の翌日。生徒会室にて俺と胡桃、悠里、そして直樹が集まっていた。
先生と由紀は授業という事で今はいない。
「あの...生存者は....。」
「今は俺たちだけだな。」
「.....。」
早速暗くなってしまう。...おい、事実なんだからジト目はやめろ胡桃。
「...由紀先輩と起きた時会いましたけど、あの明るさは以前からなんですか?」
「由紀の性格...か。胡桃や悠里の方が詳しいな。」
俺は胡桃と悠里に話を振る。
「...由紀ちゃんはこのパンデミックが起きた時は、ずっと泣いていたわ。」
「正直私達も泣きたかったが、そうも言ってられなかったしな...。」
そして悠里と胡桃は学園生活部を始め、先生が皆を庇い噛まれた事件の後、いきなり平和な日常を幻視するようになった事を伝える。....って、噛まれた事言っちまった。
「ちょっと待ってください!噛まれたら感染するんじゃ...!?」
そして、当然そこに反応する直樹。
「...後で伝えておこうとは思ったが...早くなっちまったな。」
そう言って俺はあのマニュアルを取り出す。
「これは...?」
「中になんで噛まれた先生が無事なのか分かる文がある。見てみろ。」
マニュアルを開け、直樹はそれを読む。
「薬...ですか?」
「ああ。俺が学校に辿り着いた時、真っ先に行ったのが薬のある地下でな。その時は俺も噛まれていて、九死に一生を得た。後は噛まれた先生に偶々遭遇して同じように治療したって事だ。」
「こんなものが、なんでこの学校に....。」
それは俺たちも気になる所だ。
まるでパンデミックがこの学校付近で起きる事を想定しているようなもんだ。
「話を一端戻すぞ。由紀がどうしてあの性格になったかだったな。」
「めぐねえが噛まれた所までは話したな。」
一度話を戻す。どの道、後で同じ話をするからな。
「...まぁ、簡単に言えばそれで心が壊れたようなものだ。」
「それからは、あんなに明るくなってしまって...。」
「そう、ですか....。」
それで大体理解してしまって俯く直樹。まぁ、暗くなるのも分かる。
「...早く、元に戻るといいですね...。」
「....由紀にとっちゃ、このまましばらくは元に戻らない方がいいかもしれんがな。」
「っ、どうしてですか?」
俺の呟きを聞き逃さなかったのか、睨みつけるように直樹は俺を見る。
「さっき胡桃が言った通り、由紀は心が壊れたようなものだ。所謂、今のこの現実を受け入れきれずに拒絶し、逃避したという感じだ。」
「...そんなの、いつまでも野放しにしてたら...!」
「飽くまで、心は壊れた“ような”だけだ。実際に壊れていない分、無理に現実を直視させると....今度こそ、心が壊れ、あいつは生きる意志を喪うだろうな。」
「っ.....。」
ハッとしたような顔をする直樹だが、まだ納得はしていないようだ。
「...でも、あの子のおかげで私達は元気でいられる。あの子が元気に振る舞ってくれているから、私達も、めぐねえも平気でいられる。」
「だから、私達はここを守って、由紀は由紀で自由にさせてるんだ。」
悠里と胡桃がそう言う。...俺も、由紀がいなければどこか平常ではなくなっていただろう。
「....そんなの、ただの共依存じゃないですか。」
「っ....あなたね...!」
「落ち着け。」
直樹の一言で悠里と直樹が険悪な雰囲気になる。
それを俺が一言で止めておく。
「状況が状況だ。精神状態は正常に保つため、仕方ないと思ってくれ。」
「...その精神状態が、由紀...先輩は正常じゃないんですけど....。」
直樹は俺にそう言ってくる。
どうでもいいが、今由紀の事を先輩を付けずに別の呼び方をしようとしなかったか?
「...そうだな。悪く言えば、由紀を犠牲にする事で俺たちは平静を保っている。」
「っ.....。」
「現実、誰も犠牲にならない選択なんて滅多に存在しない。ましてや、パンデミックが起きたこの状況では...な。それに、さっきも言った通り、由紀はしばらくは元に戻らない方がいい。」
「.......。」
....理解はしたが、納得はしてないって顔だな。
「これでも、一度生存した者が一人も欠けていないのは相当運がいいんだ。...直樹、お前の所も、一度生存しても壊滅たんだろう?」
「っ....はい...。」
「どの道、由紀の性格や心からして、今はこのままの方が断然いい。...由紀自身から元に戻る場合は何とも言えんがな。」
現実逃避も一種の防衛本能だ。俺らから何かするべきではない。
「....すいません、軽率でした。」
「まぁ、普通はそう思っても無理はない。」
分かってくれるだけ理解があると俺は思うな。
「....次の話に行こう。次はさっきも気にしていたマニュアルの事だな。」
「正直、私達もほとんど分からないわ。」
前提として悠里がそう言っておく。
「このマニュアルは恐らく職員室に一冊。教頭先生と校長先生は個人で持っていたのだろう。...と言っても、手元にあるのは職員室のと教頭先生のだけだが。」
「...職員室のはともかく、教頭先生のはどうやって手に入れたんですか?」
ふと、直樹が気になった事を聞いてくる。
「教頭先生はマニュアルに書いてある地下で首を吊って自殺をしていたんだ。どうやら、薬を事前に打っていたらしいから噛まれていてもゾンビ化はしなかったが。...その時同じ部屋にマニュアルが置いてあった。」
「自殺....どうして....。」
「...罪の意識に耐えられなかった。...俺はそう捉えている。」
既に死んだ教頭先生の気持ちは誰も知らないだろう。
「他に分かる事は、この状況がマニュアルでは想定されていたって事だ。」
「だから、学校の設備が異様に充実していた....。」
「そう言う事だな。」
想定しているならそのための設備を整えているからな。
「....多分、直樹がいたあのモールも同じようにこの状況を想定していたのかもな。」
「え....?」
「元々ショッピングモールという物が充実した建物なんだ。普通に避難拠点としても備えてあるからな。別におかしいことではない。」
そう考えると高校であるこの学校も想定していた事に合点が行くな。
「物が豊富なショッピングモール、敷地が広くモール程ではないにしろ物が充実している....。他にもこの状況を想定した建物はありそうだな。」
そして、生存者がいる可能性もある。
「例えば....大学とかな。」
「大学?なんでだ?」
胡桃が疑問に思って聞いてくる。
「理由の一つとしては、高校より全体的に設備が良く、敷地も広い。食料関連ならショッピングモールにも引けを取らないかもな。」
「なるほど...。」
....っと、話が逸れたな。
「直樹、他に聞きたい事はあるか?」
「えっと...遼先輩はどうして家にそこまでの武装を....それに、いくら親が元軍人でも銃があるのは...。」
「あー、それか...。」
まぁ、普通は銃刀法違反だからな。どうやって所持できるようにしたんだか...。
俺自身も親父から普段は絶対に持ち歩くなって言われてるし。
「家に銃があるのは親父がいざという時のため...としか聞かされてないな。それに、親父は今は傭兵として外国によく行ってるし、何度か武器がある理由を聞いたけどはぐらかされてしまった。」
「そうなんですか?」
「ああ。...次になんでここまでの武装をするかって事だが...まぁ、こういう武器を扱えるのが俺しかいないからな。以前に一通り試させてみたが、奴ら、頭を撃ち抜かないと効果が薄いみたいでな。素人が扱っても当たらん。」
皆当てれたとしても胴体だからな。...かくいう俺も走りながらだとあまり当てれないが。
「後は、俺自身が囮になったりするためだ。普段はサプレッサーで音を抑えているが、それがなければ大きい音だ。それだけで奴らを引き寄せられる。」
「....!それは危険じゃぁ...!」
「まぁな。だが、そんな状況になれば、誰かが犠牲にならない限り、全滅するだけだ。」
「........。」
“犠牲なくして生きられない”...言外にそう言った俺の言葉に、直樹は沈黙する。
「ま、俺は死ぬつもりなんてないがな。」
「よく言うぜ。勝手に奴らを殲滅しに行ってるんだから。置いてけぼりにされて心配している私達の身にもなれっての。」
「はは、悪い悪い。」
胡桃にそう言われ、軽く謝る。
「こいつ、銃をいくつか持って外に群がってた50以上の奴らの大群に一人で殲滅しに向かったんだぜ?しかも、雨が降ってるうえに、まだ暗い時間帯でさ。」
「ひ、一人でですか!?」
「ったく、私はその時5体程に囲まれて命の危険をひしひしと感じてたのに、こいつは50体以上とかを相手に無双してたからな。その時は奴らが多すぎる程度にしか考えてなかったけど、後から考えりゃ、無茶しすぎなんだよ遼は。」
簡潔にあの時の事を話す胡桃。...いや、ああしておかないと群れが校内に入りそうだったし仕方ないだろ...。
「....とまぁ、俺だけが武装している理由はこんな感じだ。...もっと武器が手に入ればいいんだが、悠里や先生が扱いやすい武器となると見つからなくてな...。」
「なるほど...。...あ、もう聞きたい事はないです。」
お?もういいのか?...まぁ、後から気づいた事とかで聞いてくるだろ。
―――タタタタ...!
「...さて、由紀と先生も戻って来たし、ここいらでお開きとするか。」
「そうだな。」
由紀が走ってくる足音を聞き、俺はそう言った。
「学園生活部へ、」
「「「「ようこそ!!」」」」
「は、はぁ....。」
「...どうしてこうなった?」
夕方になり、俺たちは生徒会室でささやかな歓迎パーティを開いていた。
あの時戻ってきた由紀がせっかくだからって言って、後は成り行きだったな...。
「.....ま、この時だけでも気楽でいろ。美紀。」
「わ、分かりました...。」
まだ戸惑っている美紀に、俺はそう言う。
ちなみに、いつの間に名前を呼ぶようになったかというと、帰ってきた由紀が早速美紀を“みーくん”という渾名で呼んだ結果、俺も巻き込まれて名前で呼ぶようになったと言う訳だ。
「...しかし、“学園生活部”ですか...。」
「この状況の精神状況を少しでも楽にするために、部活として認識してるんだよ。」
「それと、由紀先輩を誤魔化すため...でもあるんですね。」
なかなかに察しがいいな。...まぁ、それは結果的にだっただけだけど。
「...お前も入るか?」
「.....それは、ここで生きるためですか?それとも、本当に部活という意味で...。」
「両方...かな。まぁ、学園生活部として動かなくてもいいし、好きにしてくれ。」
すると、俺たちの話(一応声は小さくしてた)を聞きつけた由紀が乱入してくる。
「みーくん、みーくんも学園生活部に入るの!?」
「え、えっと...まだ考えてますけど...。」
「えぇ~?入ろうよー!楽しいよ!」
相変わらず強引だな...美紀が困ってるぞ?
「由紀、すぐに入るとか決められないんだから、何日か待ってやれ。」
「はーい。」
「悪いな美紀。..まぁ、慣れてくれ。」
「は、はぁ....。」
こうして、この日は過ぎて行った。
...どこか、美紀は由紀の事を気にしてたみたいだが...。
「.....ん?」
その日の夜。まだ眠りが浅い時、俺は物音で目を覚ました。
「...先生か?」
ふと気になり、廊下を覗くと...。
「....美紀...。」
美紀が一人でどこかへ行こうとしていた。
さすがに先生が見回りしているとはいえ、一人は危険だ。俺も支度して追いかける。
「(どこに用なんだ?)」
美紀はどこかへ向かっている。...向かい先は....。
「(...図書室?)」
なぜか図書室だった。...まぁ、ライトも持っているし、今日も俺が二階を見回っておいたから奴らはいないだろうけど...。
....あ。
「...遼君?」
「先生、ちょっと....。」
見回りしていた先生と遭遇したので、手招きして呼び寄せる。
「こんな時間に...どうしたの?」
「美紀が図書室に向かうのを見かけたので...。」
「美紀さんが!?」
俺の言葉に驚く先生。...一応、夜中だから声は抑えてくれたみたいだ。
「....長居は危険なので、そろそろ呼び戻しましょう。」
「そうね。」
俺と先生は図書室に入り、美紀を探す。
「.........。」
とある本のコーナーの一角で、美紀はいくつかの本を手に取っていた。
「....おい、美紀。」
「っ!?りょ、遼先輩ですか...それと先生も...。」
声を掛けると、飛び上がる程驚かれる。...まぁ、仕方ないか。夜中だし。
「奴らがいないとはいえ、夜中は危険だぞ。」
「す、すいません。気になった事があったので...。」
「気になった事?」
よく見ると、美紀の持ってる本は....。
「“多重人格の実態と仮説”....?」
「っ....それって由紀ちゃんの...。」
「はい。先輩たちの話を聞いて、気になって...。」
なるほど。それでここに来たのか。
先生も、以前に気になって調べていたとか言ってたしな。
「...まぁ、今は帰ろう。目的の本は手に入っただろう?」
「はい。すいません。起こしてしまって。」
「いいっていいって。」
さて、戻ろうか。
これ以降は特になにかある訳でもなく、一夜を明かす事となった。
「..........。」
「........。」
「.........。」
翌日。生徒会室は沈黙に包まれ、本のページを捲る音しかしなかった。
悠里は菜園に、先生と由紀は授業に行っているので今は俺と胡桃と美紀しかいない。
そして美紀は昨日持ってきた本の一冊を黙々と読んでおり、俺たちも喋る事がないため、こうして全員が沈黙しているのだ。
「......あの。」
「うん?」
俺や胡桃よりも、沈黙の空間を作りだしていると思ったのか、我慢できずに美紀が俺たちに何かを聞こうとしてくる。
「私、何をすればいいんですか?」
「何を....ってのは、ここで暮らすに当たっての事か?」
「はい。」
何を...なぁ。特にする事はないしな。
「今の所は特にする事はないな。強いて言うなら、ここでの生活に慣れてくれって所か。」
「そう、ですか...。」
そう言ってまた読書に戻る美紀。
「あぁ、もし暇なら他の人について行って手伝いとかするだけでもいいな。...由紀の場合は授業をしてるつもりだからちょっと難しいが。」
「なるほど...参考にしておきます。」
また沈黙が訪れる。...さて。
「じゃ、俺はいつものやってくる。」
「え?私にこの沈黙の中残ってろと!?」
「ああ。」
満弁な笑みで返してみる。
「そ、そうだ!美紀!お前、遼について行けよ!どういう事をしてるか知れるし、ついでに自分のやるべきことも見つかるかもしれないぞ!?」
お、沈黙空間にしたくないから美紀を俺に押し付けて来たか。
「え...?でも...。」
「俺は別に構わないぞ?」
元々、会話のネタがないから沈黙が生まれたんだしな。
これを機会に会話のネタを見つけてくれると助かる。
「....なら、ついて行きます。」
「よし、じゃあ、行くぞ。」
そう言って俺は美紀を連れて屋上へと向かう。
“遠足”でしばらくやってなかった日課だ。
「屋上...ですか?」
「ああ。」
「ここに一体なんの用が...。」
疑問に思う美紀を置いて俺は屋上の扉を開ける。
「あら、遼君に美紀さん。」
「よっ、いつもの、しにきたぜ。」
菜園の手入れをしていた悠里に軽く声をかけ、傍にあるロッカーを開ける。
「えっ!?こんな所に銃が...!?」
「スナイパーライフルだ。これも家から持ってきた奴でな。」
そう言いつつ、弾を一つ込め、屋上から狙う。
「スナイパーライフルはこういう状況では持ち出す利点が少ないからな。だから、せめて遠い所からできるだけ数を減らすため、一日に一体は殺している。」
「一体...だけ、ですか?」
「結局の所、弾が少ないからな。節約だ。」
それに、大抵は模造刀でなんとかなる。...偶に徒手だけで済ますけど。
「...っと、あの雨でだいぶ減らしたし、やっぱり少なくなってるな...。」
「....軍人の息子だからって、銃がそこまで扱えるのに納得がいかないんですけど...。」
至極真っ当な事を言われる。確かに、家系は全然関係ないな。
「俺の親父、底が知れないんだよ。いろんなコネも持っているみたいだし、夏休みとか冬休みとかは外国に連れられて実弾で練習させられた事もある。」
「えっ...!?」
「ま、それが今ここで役に立ってるんだがな。」
主にハワイで習った事が役に立つときが来るとは思わなかったぜ...。
「...っし、仕留めた。」
「凄いですね...。一発だなんて...。」
「近接武器なら首から上に致命傷を与えればいいけど、銃だと頭を撃ち抜かなきゃ大抵は倒せん。だから、必然的に確実に命中させなきゃならんしな。」
親父曰く、元々俺には才能があったらしいが。
「さて、屋上で他にやる事と言ったら悠里の手伝いくらいだ。」
「あら?手伝ってくれるの?」
「まぁな。美紀も暇そうにしてたし。」
そういう訳なので、しばらく悠里の手伝いをする事にした。
「.....あの、先輩...。」
「ん?どうしたー?」
手伝いが終わり、適当に休憩していると、屋上から外を見ていた美紀が話しかけてくる。
「先輩は...家族の今って、気になりますか?」
「家族?」
「.....こんな状況になって、もしあのゾンビみたいなのになった家族と会ったら...。」
....うーん、俺の家族はそうなるイメージが湧きにくいが...。
「.....心に大きな傷を負うかもな。そして、そのまま死ぬかもしれん。」
「っ....。」
「だけど、元々知り合いである奴らを俺は既に何人も殺している。...ショックを受けても、殺しにかかると思うな。」
ゾンビと化した事で随分と醜くなったが、それでも知り合いや友人はいた。
知り合いだと分かった時はショックを受けたが、それでも俺は殺した。
今ではもう、あまり動揺する事さえ、なくなってしまったがな..。
「直接知り合いと出会った時は、確かに動揺するだろう。ましてや、奴らになっていたらなおさらだ。...だけど、だからこそ殺してしまう方が、どちらにとってもいいと俺は思う。」
「.....そう、ですね...。」
こんな状況になってしまっては、一度は乗り越えるべき事だからな。
「...まぁ、俺は両親共に....特に親父が死ぬとか思い浮かばないから心配はしてないがな。」
「そ、そうなんですか...。」
むしろ不用意に心配してたら“そんな事より自分の心配をしろ”とか一喝されそうだ。
「....美紀はやっぱり心配か?」
「...はい。生きていれば心配ですし、死んでいれば、辛いです...。」
「普通はそうだよなぁ...。」
むしろ俺の家族が心配いらなさすぎるだけなんだよな...。
「....悠里先輩はどうなんですか?」
「えっ、わ、私....?」
「...?悠里、どうかしたか?」
俺たちの話を聞いていた悠里に、美紀が話を振るが、少し悠里の様子がおかしい。
「な、なんでもないわ....ええ、なんでも...。」
「.......。」
俺たちの話を聞いてからだよな?この動揺っぷりは...。
「...悪い、美紀。先に部室にでも戻っててくれ。」
「え?...はい、わかりました。」
先に美紀を帰らせる。
悠里のこの様子は前にも見た。....そう、確か...。
「...家族が、心配なんだな?」
「っ....。」
「それも、おそらく妹が。」
「どう、して.....?」
なぜ、分かったのか聞いてくる悠里。
「以前、俺が由紀を妹みたいと言った時も動揺してただろ?...で、今も家族について話してて、動揺した。...そこから予想しただけさ。その様子だと、その通りみたいだがな。」
「....ええ。その通りよ...。」
いつもと違う、暗い表情をしながらそう言う悠里。
「あの子がどうなってるか、心配で心配で....。」
「...残酷な事を言うけど、生き残ってる可能性は...。」
「分かってるわよ!まだ小学生のあの子が無事で済む可能性が少ないくらい!」
悠里も分かってはいるが、納得できないのか大声でそう言う。
「妹は小学生だったのか...。...ん?小学生?」
そう言えば、母さんも小学校の教師をしてたな...。
「なぁ、悠里。その妹の通っている学校ってどこだ?」
「...鞣河小学校よ。」
「...偶然か、それこそ奇跡か....。」
まさか、母さんと同じ学校だったとはな...。
「悠里、運が良ければ、お前の妹は母さんに助けられてるかもしれない。」
「どうして、そんな事が...。」
「母さんが教師をしてる学校、その鞣河小学校なんだよ。」
「っ...!?」
衝撃の事実に悠里も驚く。
「生きてる可能性はそれなりに上がった....とでも考えてくれ。」
「ええ...。」
母さんと同じ学校だからって、生きているとは限らないから、それだけは伝えておく。
「じゃあ、俺は先に戻ってるぞ。」
「...落ち着いたら私も行くわ。」
そう言って、俺は生徒会室へと戻っていった。
~おまけ・その頃の...~
「...辿り着いたね。」
「...はい。」
目の前にそびえ立つのは、ショッピングモール。
彼女...圭ちゃんの言っていた場所へと、私達は辿り着いた。
「...あれ....?」
「どうしたんですか?」
ふと、玄関の近くの地面を見て違和感を覚える。
「....誰かがここに寄った形跡がある。」
「えっ!?」
地面には、薄っすらと血によるタイヤの跡が付いていた。
「これは....?」
そして、目につきやすい場所に石を重りとして紙が置かれていた。
「“このショッピングモールに来た者へ。ここは既に探索したが、生存者一名以外は誰もいない。避難するつもりであれば、少し遠いが私立巡ヶ丘学院高等学校に来てください。私達もそこにいます。”....これは...。」
「他にも誰かがいる...って事ですよね?」
しかも、この筆跡はもしかして...。
「...遼?遼、なの...?」
「...知り合いなんですか?」
「親友だよ。...うん、間違いない。この筆跡は見た事がある。」
やっぱり、遼は生きてたんだ。...よかった。
「....よし、学校に行くよ。」
「...はい。」
生存者一名と書かれているという事は、圭ちゃんの言う“美紀”なる人物も助けられたんだろう。なら、学校に行く以外ないね。
「また歩く事になるけど、大丈夫?」
「なんとか。蘭先輩は大丈夫ですか?」
「平気平気。なんともないよ。」
....待ってて遼。もうすぐ、合流するから。
後書き
めぐねえが噛まれていないため、原作三巻から四巻にかけてのイベントは起きず、学校のゾンビは遼が粗方片づけたため、アニメ終盤のイベントも起きないという原作崩壊なうな状態。
なので、合流や、調達などで原作五巻まで繋げていくつもりです。
...飛ばし飛ばしになってあっという間にそこまで行くかもしれませんが。
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