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『夢の中の現実』

作者:零那
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『飲み屋』



後日、働く店が決まった。

父さんとの時間は零那にとってはマダ必要だった。
だから働くのは朝9時~夕方4時迄の受付。

週末の昼は休み。
父さんとの時間にした。
昼は休みやけど、夜は普通の飲み屋で働く事になった。

毎日、朝御飯は父さんと一緒に食べる。
朝御飯作る時に昼御飯も作る。

父さんが出掛けても困らん様に5000円渡してから出勤する。
夕方、買物してから帰る。
夜御飯も一緒に食べる。

なるべく生活リズムは狂わさん様に気を付けた。
迷惑な事、やめて欲しい事、そんな不満とかはチャント素直に言ってもらう約束をした。
零那のせいで父さんがストレス溜めるとか嫌やし...。
父さんに気を遣われるのは嫌だった。
父さんの生活のテリトリーに入ってきたのは零那やから...。

1週間経った。
飲み屋に、父さんが来てくれた。
出勤する時、何も言ってなかった。

毎朝渡してた5000円、何にも遣わず、今日の為に置いてたらしい。
カウンター越しに接客する。
妙な感じ...。
水商売...父さんの目の前で露出姿を晒してるのは、少し恥ずかしいと思った。
露出が恥ずかしいとか、此迄1度すら思った事無かったのに。

生き抜く為、武器として使ってた躰...其れが、父さんの視界に触れると思うと、急に、申し訳無い気持ちでいっぱいになった。
こんな醜く汚れた躰...

恥じらいというものは、服さえ着てれば露出してても感じた事は無かった。
むしろ元々露出系のカッコが好きだったりする。
裸体を晒すのは勿論恥ずかしいとは思うけど。

なんだろ...ただ、父さんやからかな?
父さんの前では、こんなカッコするの初めてやし。
父さんも零那につられたのか、恥ずかしそうに俯く。
其の姿が愛しく想えた。
其の瞬間、父さんに抱き締められたい衝動が走った。
勿論、娘として。

マダマダ甘え足りて無かったのか...自分の貪欲さが怖い。

父さんは、相当酒に強い。
其れは大阪に居た頃から知ってる。
たまに銭湯に連れ出してくれてたオッチャンだったかな?
父さんの心配をしてた零那に『大丈夫や。零那チャンの父さんは酒も喧嘩も強いから安心しぃ』って...。

好んで選ぶ酒の度数も高い。
でも、度数低くて安い焼酎も発泡酒も飲める。
零那が稼げる間は、なるべく出来る範囲での贅沢はさしたげたい。

今迄散々ひもじい思いしたやろうし...惨めな思いもしてきたのは解るから...。

ママには、面接の時ザックリ事情説明してた。
お客さんが父さんと見抜いたママから合図が出た。
ボトル1本サービスで出した。

ママには零那が直接支払った。
あくまでも父さんにはサービスって事で。
零那が出勤して無い日でも、父さんが息抜きに来れるような場所にしたかったから...。
有り難迷惑かもやけど...零那に遠慮して出掛けたり遊んだりせんってのは悪いから。
其の第1歩として、ママと親しくなればなぁって思った。

此処のママが、たまたま人情味のある良いママだったから安心出来ると思った。
父さんは申し訳無さそうにしてるけど、飲み出したら美味しいって凄く喜んでた。
良かった...。

『家で飲むより店のが美味しい?』

『んな事無いで!可愛い可愛い娘と飲める酒なら何処でも美味しい』

お世辞だとしても、其の気遣いが出来る父さんの人間性が嬉しかった。
やっぱり父さんは自慢の父さんやった。

父さんは結局ラスト迄飲み続けた。
零那は、他の人の接客もしてた。
父さんも、他の女の子が来ても特に態度は変わらず、変なこともせず普通に飲んでた。

マダ大阪に居た頃、父さんが飲み屋で暴れて兄ちゃんが止めに行った事がある。
其れがあったから少し不安はあった。
ママにも言ってた。
でも、飲み屋ってそんなトラブル結構あるから気にせんって言ってくれた。


 
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