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神様転生した先のサイバーパンクで忍者になって暴れる話

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リレーションズ・サクラ・アンド・ムラサキ
  2話



 情報交換のため、ふうま達はさくらをアジトに連れ帰る。
 机を挟んでふうまとさくらが向かい合っていた。
 護衛のため、トキコと災禍がカゼミガクの後ろに控えている。銀零だけが治療のために不在だ。
 その場で情報の共有が行われた。

「整理しよう」

 眉間を抑えながらふうまは、情報の整理を行う。
 さくらからの情報を整理するとこうなる。

 さくらと紫は五車学園の生徒である。
 二人で何度か実戦を行っていた。
 ある時、実戦の最中に紫がノマドに攫われた。
 助けようとしたが、時間ばかりがかかり助けられない状況が続く。
 ある時、紫が見つかる。それは最悪の知らせだった。
 紫は魔族に覚醒し暴走。周りを破壊するだけのモンスターと化していた!コワイ!
 さくらはそれでも助けようと、その紫が現れた場所を管理する米連に協力。装備を提供された。
 提供された装備で、紫の実験が行われたノマドの実験室を強襲。

「この時、このデータを何とか手に入れたんだ」
 
 手に持っているデータチップを見せた。
 強襲後米連に帰る最中に偶然紫と遭遇。
 感情を抑えられず紫と一戦。その時、二人してタコのバケモノに襲われた。そのまま気を失う。
 気がつくと、このトーキョーキングダムの路地裏に倒れていた。

「というわけか」
「うん。そう」

 情報を提供をしたさくらが頷く。

「お屋形様。タコのバケモノということは」

 後ろで聞いていた災禍が意見を述べた。

「ああ。十中八九あいつの事だろう」
「あのタコのこと知ってるの!」

 さくらが立ち上がって、ふうまに詰め寄る。この状況を生み出した原因だ。気になってしょうがない様子である。
 彼女の問いに頷いて、ふうまは口を開く。

「プレインフレイヤー。次元侵略者とも呼ばれるこいつらは……」 6

 ふうまの説明曰く、様々な次元や平行世界を移動するバケモノ。生物や非生物問わず他の次元に攫うことができる。混乱した脳髄をすすり栄養とするバケモノとのことだった。

「ってことは!」
「ああ。ここはお前がいた次元ではない」

ふうまの言葉で、さくらは力が抜けたかのように座り込んだ。

「そんな……じゃあ、紫=サンは」
「お前と同じようにこの世界に飛ばされているだろうな。それと、」

 聞こえてくる言葉を理解したさくらは、希望に眼を輝かせた。
 そんな彼女に強い視線を送るふうまは、一度息を継いでから続ける。

「帰れないわけではない。同じプレインフレイヤーを見つけて異界の門を開けさせれば、帰ることは可能だ」

 帰れると聞いたさくらは、沈痛な表情を一瞬だけ浮かべ消した。
 それに気づくもふうまは、指摘することはなかった。 9


「それで、さくら=サンはこれからどうするつもりなのだ?」

 後ろに控えていた災禍の疑問に、さくらも難しく眉を顰める。どうしていいかわからぬ様子だった。
 実際彼女は困っていた。頼る人も組織もいない。金もあまり持っていない。 10
 この状況で紫=サンを探すのは、ラクダに針の穴を通させるかの如く困難である。
 思い悩むさくらにふうまが声をかけた。

「さて、ビジネスの話をさせてもらうか」
「え」

 まださくらの頭が混乱している最中にも関わらず、ふうまの話は進んでいく。

「お前が壊したクローンオーク。それなりの金額がかかっていてな。賠償を請求させてもらう」

 欺瞞!全てのクローンオーク達は彼等ソウカイヤが作っている。諸経費はかかるものの、ヨタモノ達を雇用するよりも実際安い。
 しかし、ふうまがさくらに手渡す資料には、膨大な金額が描かれていた。 12
 たちまち目を見開いたさくらが抗議の声を上げた。

「こんな金額返せるわけないじゃん! イディオット!」

 さらに不敵なキツネサインを向けた!

「バカハドッチダー!」

 その無作法な振る舞いに、ふうまの堪忍袋か爆発!コワイ!
 慈悲が深きブッダでさえも目を背けるほどの口汚い罵声が部屋に響く。
 彼の激怒した様子に、災禍は戸惑いトキコに目線を合わせた。
 彼女も溜息を吐き、

「テメッコラー! 人の妹コラー! 傷つけておいてオラー! 許さネッゾコラー!」
「アイエ!」

 激昂しているふうまに呼びかける!

「御屋形様」
「ドクサレガー!」
「アイエエエ! そ、そこまで怒ることないじゃん」
「坊ちゃん!」

 強い調子でそう呼ばれ、ようやくふうまは気づいた。苦虫を噛みつぶしたような表情で振り返ると、

「坊ちゃんはやめろ」

と言ってさくらに向き直る。
 当惑している彼女に、

「さくら=サン。なにもすぐに返せってわけじゃないんだ」

 やさしみを帯びた笑みを浮かべて話して聞かせていく。慣れた者であればこれが「良い警官・悪い警官」メソッドに則った茶番だということががお分かりいただけることであろう。 16
 しかもこれは両方を一人で行う高等な人心掌握のテクニックである!

「俺達の組織に入ってくれれば、期限はあるけど金利はつけない。仕事を紹介して報酬を支払うこともできる」
「…………」

 ふうまの交渉に、さくらは毅然とした態度をしているように見える。
 しかし、彼女の心の中はすでに彼に寄り添い始めていた。
 完全に心を傾けるため、ふうまは最後の札を使う。

「目的である紫=サンの情報を集めて売ることもできる」
「本当!」

 さくらは立ち上がって、ふうまに詰め寄る。
 この世界に浚われてきてから初めて見え始めた光明に、さくらは飛びついてしまう。
 後ろに控えていたふうま時子が口を出した。

「勿論金額は頂きますが、そちらにとっても悪い条件ではないと思いますが?」

 さくらは紫=サンのためと自身に言い聞かせて、ソウカイヤと契約を交わした。



 三日ほど後の事、ふうまは自身の部屋で書類を片付けていた。部屋には珍しく彼以外誰もいない。
 しかし、UNIXを操作しながらふうまは、

「仕事は終わったのか?」

 虚空に声を響かせた。

「報告ならこの場で受けるが?」

 独り言を喋っている様に見える。
 しかし、家具の影が僅かに揺らぎ、

「相変わらず凄いね。どうしてわかるのかな?」

 その中からさくらが飄々とした顔で現れた。

「カラテが足りないからだ。イイネ?」
「アッハイ」

 ふうまの念押しの言葉に頷くと、持っているケースを机の傍に置く。

「目的のデータはこの中にばっちり入ってるよ」
「仕事が早いな。報酬ならそこにクレジット素子が置いてある」

 さくらは机の上にある素子を満面の笑みで持っていこうとする。

「ああ、紫=サンの情報手に入ったぞ」
「本当!」

 さくらはふうまに顔を向けた。
 こんなに早く手に入るとは思っていなかったのだろう。

「報告の前に、代価を頂こうか。借金の分もな」

 悪い笑みを浮かべて、UNIXからさくらに向き直る。

「うっ……」

 その笑みにさくらは嫌そうな呟きを吐いた。

「調査費用と借金の返金が高いよー。利息は取らないって言ったじゃん」
「期限はあるといった」

催促しないとは言ってないということだろう。

「これがなくなると生活費が」
「もっと高いのもあるぞ。さくら=サンの実力なら十分に対応できるちょうどいいのが」

 ふうまはUNIXの画面をさくらに見やすく動かした。
 そこには、鷲頭茂の暗殺とショドーされている。

「流石に暗殺とかはさぁ」
「こっちならどうだ」

 もう一つの依頼の文書を画面に映す。そこにはヤンバナ・サシミ社の偽装工作とショドーされている。

「いやいや、之って実際悪い仕事じゃん」
「米連や魔族に対する情報工作等は十分悪いことだと思うが?」
「それは、いいかなって」

 彼女なりの論理基準があるのだろうか。
 さくらの答えにふうまは面白そうに笑う。

「米連が紫=サンの事を何か掴んだようだ。しかも捕獲しようと計画を立てている」

かなり重要な情報を掴んだと、さくらに言い聞かせるように話してゆく。

「この情報を得るためにこちらもそれ相応の代償を払っている。契約だから行うけど」
「ああ。もう解りますー! 解っていますー!」

 拗ねるように桜が声を上げた。

「代償を払う限りっていうんでしょ!」
「ああ、その通りだ」

 飄々と言葉を返すふうまに対して、さくらが地団駄を踏んで不満を表した。

「やれば良いんでしょう!? やれば! やりますよ! やらせていただきますよ!」

 やけっぱちの声を上げてさくらは影に潜んでいく。
 すぐにふうまの股間の前に、顔を合わせて浮かび上がってきた。
 二人の間に桃色のアトモスフィアが漂う。

「ああ、お前ほどの女にオイランめいたことをさせるんだ。報酬は弾むさ」
「本番する前に、シャワーあびるから待っててね」
「わかっているとも」

 数分後、

「アタシいま体温何度あるのかなーッ!」

 さくらの艶声が部屋の中に響き渡るのだった。 
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