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真田十勇士

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巻ノ二十八 屋敷その九

「第一の相手は羽柴家とする」
「では今のうちに、ですか」
「甲斐と信濃は出来るだけ手に入れて」
「そのうえで羽柴家に備える」
「そうしますか」
「そうじゃ、焦らぬが用意はしておく」
 今のうちにというのだ。
「よいな」
「畏まりました」
 家臣達は皆家康の言葉に頷いた、そしてだった。
 徳川家は羽柴家を見つつだった、甲斐と信濃の方に動きを見ていた。そうしてそのうえで手を打っていくのだった。
 天下は羽柴家の方に傾いていた、柴田家との戦もだった。
 秀吉は多くの兵とその知略で勝ち己の天下を確かなものとした、柴田勝家は滅び彼が後見役となっていた織田信孝は腹を切らされた。
 それを見てだ、昌幸は信之と幸村に言った。
「これでまず間違いない」
「はい、羽柴家にですな」
「天下は定まりましたな」
「そうなった、では我等は羽柴家につく」
「父上、それでなのですが」
 信之が昌幸に言って来た、ここで。
「気になることが」
「徳川家はどうやら」
「家康殿と四天王がじゃな」
「甲斐、信濃から去っています」
「駿府におられるな」
「どうやら」
「甲斐、信濃に兵は進め続けておられるがな」
 昌幸はこのことも言った。
「今も」
「ですが徳川家の中でも戦上手の四天王がです」
「全てだからな」
「はい、駿府に戻られました」
 主の家康と共にだ。
「これはやはり」
「そうじゃ、羽柴家に備えてじゃ」
「では徳川家は」
「羽柴家との戦になる」
 これからはというのだ。
「甲斐、信濃に攻め続けるがな」
「そうなりますか」
「四天王が来ぬのはいいことじゃ」
 このことにだ、昌幸はよしとした。
「そして徳川家が羽柴家と戦になれば」
「それはそれで」
「こちらも打つ手がある」
「そうなりますか」
「そうじゃ、どの将が来ても守る自信があるが」
 それでもと言う昌幸だった。
「しかしじゃ」
「敵は弱いに限る」
「そういうことですな」
「そうじゃ。ただしじゃ」
「はい、徳川家は武辺の家」
「その武は確かです」
 信之も幸村も確かな声で言う。
「三河武士は武勇と忠義の者揃い」
「むしろ武に偏っている家です」
「ですから家康殿や四天王が出ずとも」
「強いことは強いです」
「その通りじゃ、家康殿と四天王は別格にしても」 
 それでもというのだ。
「他の将も強い」
「ですな、武勇があり」
「采配も見事な方が揃っています」
「徳川家は十二神将も勇将揃い」
「実に強いですな」
「しかも兵も強い」 
 将だけでなくというのだ。 
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